5分でわかるエウロパ!水がある?生命体がいる?概要とNASAの探査を紹介

更新:2021.11.14

エウロパという衛星の名を聞いたことはあるでしょうか。地球外生命体がいるのではないかと考えられている星のひとつで、さまざまな探査の計画がたてられているんです。今回はそんな期待が高まる衛星について、大気や重力などの基本情報や、水や生命体がいる可能性などをNASAの探査結果とともにわかりやすく解説していきます。宇宙好きの人ならきっと気に入るおすすめの関連本もご紹介するので、あわせてチェックしてください。

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エウロパとは。名前の由来は?

 

1610年、ガリレオ・ガリレイにより発見された木星の第2衛星です。比較的明るいので、地上から双眼鏡で観察することができます。

直径は約3100kmで、地球のおよそ4分の1。平均表面温度は-170度と極寒です。中心に鉄のコアがあり、その周囲には岩石のマントルが、そして表面は非常に反射率の高い氷で覆われています。

氷にはデコボコが少なく、クレーターもほとんどありません。網目状のひび割れがあり、これらは表面の氷が動いているためだと考えられています。

「エウロパ」という名前は、ギリシャ神話に登場する王女エウローペーに由来します。神話に登場する神・ゼウスは、地中海の東岸にあるフェニキアの浜辺で遊ぶ女性たちを見て、なかでもひときわ美しい彼女に一目惚れをしました。

ゼウスが白い牡牛に姿を変えて近づいたところ、その不思議な魅力に惹かれたエウロパは、誘われるがままにに牡牛の背中に乗りました。牡牛はそのまま彼女を連れ去り、妻にしたそうです。ちなみに当時牡牛が走りまわった場所が、現在の「ヨーロッパ」になったといわれています。

木星の別名はローマ神話に登場する神「ユーピテル」なのですが、これはゼウスと同一人物だとされています。そんな木星の周りをエウロパが回っているという、なんともロマンチックな名前の由来なのです。

エウロパの大気と重力

 

1990年代、NASAの探査機とハッブル宇宙望遠鏡による観測で、エウロパの大気には非常に希薄な酸素があることがわかりました。

表面の水分子が、太陽からの紫外線や荷電粒子の衝突によって酸素と水素に分解され、エウロパの引力につかまった酸素のみが表面に残ったためだと考えられています。

重力はおよそ1.314m/s2で、地球の13%ほどしかありません。地球での体重が50kgの人は、エウロパでは6.5kgほどになるのです。

エウロパと地球の距離

 

地球からエウロパまでの距離は、およそ6億2830万km。地球1周が約4万kmなので、およそ1万5700周分となります。

もし時速1000kmの飛行機で向かうとすると約72年、マラソン選手が時速15kmで走ったとすると約4780年かかる計算です。

NASAが発表!エウロパには水がある⁉

 

2012年、NASAがハッブル宇宙望遠鏡を使ってエウロパを観測したところ、間欠泉のような水の噴出が起きていた痕跡を発見しました。さらに2018年5月にも、間欠泉が存在することを示す新しい証拠が見つかったという論文を発表しています。

これは、かつてすでに観測していた古いデータを最新の技術で分析しなおした際に得られた情報で、仮に水が噴出している間欠泉に探査機が到達することができた場合、新たな事実が判明するのではないかと期待が高まっています。

エウロパに生命体がいる可能性は

エウロパの地表は厚い氷に覆われており、厚さは場所によって違うものの、数kmから数百kmと推定されています。そしてその下には深さ160km程度の海が広がっているそうです。

地球のガラパゴス海嶺の深海にある海底熱水噴出孔付近では、バクテリアなどの原核生物だけでなく、貝や甲殻類、チューブワームなども発見されています。エウロパの海にも熱水噴出孔が存在すると推定され、同様の生命が存在している可能性が高いと考えられています。

この海には想定していた値のおよそ100倍の酸素が含まれているという研究結果があり、魚のような生命体が生息している可能性もあるのです。

不思議に満ちた宇宙を面白く解説

著者
柴田 一成
出版日
2016-01-23

 

太陽の研究を専門としている宇宙物理学者の作品です。一般向けの啓発活動を積極的にしている方で、専門的な知識がない読者にもわかりやすい言葉で説明してくれています。

難しい内容になりがちですが、「中国では大気汚染のため太陽を直接見ることができる」「平安時代の貴族が超新星を日記に書いていた」などの雑学も交えておもしろくしてくれているのが嬉しいところ。

エウロパについても、地球外生命体がいるもっとも有力な場所のひとつだとし、そのうえで地球外生命体が存在する確率はどれくらいなのかという議論を展開。研究者でなくとも考えさせられるものになっていて、心に響く一冊です。

エウロパとアストロバイオロジー

著者
松井 孝典
出版日
2013-08-21

 

「『インドの赤い雨』という話を聞いたことがあるでしょうか」(『生命はどこから来たのか?アストロバイオロジー入門 』より引用)

このような冒頭から始まる本作。「アストロバイオロジー」とは造語で、日本語にすると宇宙生物学という意味です。地球以外の天体ではまだ生命体は見つかっていないのに、宇宙生物学とはいったいどういうことなのか……疑問を抱きつつ、興味をもって読み進めることができます。

この学問の究極の命題は、「生命とは何か」ということ。もしこの広い宇宙に地球外生命対がいれば、その共通項から「生命」をより厳密に定義できるようになるのではないでしょうか。

生命の起源についての解釈が時代とともに移り変わり、現在はどのような研究がされているか、さまざまな視点から説明してくれています。エウロパもアストロバイオロジーにおいて非常に重要なポジションを占めているので、ぜひじっくり読んでみてください。

地球外生命体がいる可能性がある木星の衛星、エウロパを紹介しました。NASAは2022年に「エウロパ・クリッパー」と名付けられた無人探査機の打ち上げを予定しており、今後の研究にもますます拍車がかかりそうです。

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