「お前はもう死んでいる」の決めセリフで有名なケンシロウの戦いを描いた『北斗の拳』は、漫画好きならご存知の名作でしょう。そんな作品の作者である原哲夫の漫画『蒼天の拳』は、代表作と同じく北斗神拳が登場し、人物や設定にもつながりがあります。 今回の記事では、そんな本作の見所をご紹介。仲間との熱い友情と、恋人への愛を描いた力作を、ぜひご覧ください。スマホアプリからは『蒼天の拳』、続編「リジェネシス」も無料で読むこともできるので、お見逃しなく!
本作は、ケンシロウ生前の北斗神拳伝承者の男を描いた物語。
本作の魅力は、男同士の友情や恋愛といった、人間関係の深さにあるでしょう。アクションシーンは比較的簡単に終わるのですが、登場人物の過去や因縁が細かく描かれています。敵に捕らえられた仲間を救出したり、マフィアと戦ったり、ヒロインとの再会があるなど、感動的な場面が多いのが見所なのです。
「朋友(ポンヨウ・仲間、友達という意味)」との友情がテーマになっており、主人公・拳志郎は朋友との約束のために戦うのです。
- 著者
- 原 哲夫
- 出版日
- 2011-12-20
『北斗の拳』で有名な「お前はもう死んでいる」も、中国語の「儞已經死了(ニイイチンスラ)」となって、拳志郎が敵を倒すときに使われます。
2018年春には、アニメ版『蒼天の拳 REGENESIS(リジェネシス)』が放映された本作。アニメはフルポリゴンで制作されました。オリジナルストーリーであることが特徴で、原作とは違ったおもしろさが見所です。拳志郎の声優は、あの山寺宏一が務めてらことでも話題になりました。
主人公は第62代北斗神拳伝承者・霞拳志郎(かすみ けんしろう)。『北斗の拳』のケンシロウより2代前の伝承者です。ケンシロウよりもおしゃべりで人を喰ったような態度をとることが特徴で、「北斗の文句は俺に言え!」が決め台詞。好物はタバコです。
時代設定は1930年代。日本で大学の講師をしていた拳志郎のもとに、かつての「朋友(ポンヨウ)」である李(り)という男性が訪ねてきます。彼は、拳志郎が上海にいたころに所属していた青幇(チンパン)という組織が、紅華会(こうかかい)によって壊滅状態になったことを伝えるために来日したのでした。
拳志郎が日本で幸せに過ごしていることを知った彼は、その事実を知らせずに帰ろうとしますが、かつての拳志郎の敵に捕らわれて命を落としてしまいます。そして息を引き取る際に、彼は拳志郎に事実を伝えたのでした。
朋友の熱い心を知った拳志郎は、青幇と仲間を救うために上海へ旅立つことを決めます。紅華会との戦いの火蓋が切って落とされたのです。
2作品の大きな違いは、ギャグ要素が多くなっていることです。『北斗の拳』はシリアスな内容で、戦いの描写がありました。『蒼天の拳』は笑える場面が多く、悪役でもマヌケな描写が多々あります。
敵の組織「紅華会」の幹部・田学芳は鋭い目つきも印象的ですが、彼の特徴はなんと言っても、その頭。てっぺんがツルツルしたその外見から、「水虎(カッパ)の田」の異名がつきました。そして彼はそのコンプレックスを、カツラで封印。一発でカツラだとわかる外見なのですが、なぜか彼はバレていないと自信満々……。
- 著者
- 原 哲夫
- 出版日
- 2011-12-20
さらに、同じ会の呉東来も印象的です。過去に負った傷が原因で、体の一部が機械化している人物なのですが、普段は車椅子で生活をしています。しかし実は足にバネが仕込んであり、普通に立つことができるどころか、ものすごい速さで動くことができるのです。
さらに怒ったり驚いたりすると「首はいつ届く!?」と言ってから銃を打ちまくるという、とんでもない癖を持っています。
ちなみに拳志郎は、この組織を壊滅させ「閻王」の異名で上海で有名になりました。
このようなギャグシーンが満載となっているのですが、一方戦闘シーンは簡単になっており、テンポよく進みます。人物同士のやりとりがメインになり、朋友との友情が描かれる場面では感動的な演出がされるのです。義のために戦う彼らの姿に、思わず胸が熱くなるでしょう。
原哲夫は硬派な画風で、『北斗の拳』のグロテスクな描写が有名になっているかもしれませんが、『蒼天の拳』なら気軽に読めますよ!
またギャグ要員ではないのですが、葉(よう)という人物も取り上げましょう。彼は青幇の幹部で、二丁拳銃の早打ちを得意とする人物。そんな彼ですが、敵に3度捕まったことが理由で火傷だらけ。そのため全身に包帯を巻いています。しかしパッと見マスクをつけているように見えるので、まるで『犬神家の一族』のスケキヨのよう……。
さらに「謎の道士」という人物にも注目。通称「運命の爺」と呼ばれる。占星術を得意とする人物です。北斗に関わる人物の前に時折姿を見せるのですが、果たして何者なのでしょうか。アニメ版では、ストーリテラーのような役回りもしています。
こうしたミステリアスな人物が見られるのも、本作ならではかもしれません。
拳志郎の腹違いの弟・羅門。本作に登場した時はまだ10歳程度の子どもであり、旅立つ兄を港で送りました。彼は兄の後を次いで北斗神拳の伝承者となるのですが、本作においてはほとんど活躍しません。
しかし、彼は成長すると、北斗七星のアザを持った赤ん坊の出産に立ち会います。それを見た彼は、その赤ん坊に兄と同じ名前をつけたのです。
- 著者
- 原 哲夫
- 出版日
- 2012-01-20
これが、『北斗の拳』の主人公・ケンシロウ。あの人気漫画のキャラクターと、ここで関係するのです。このように『北斗の拳』の登場人物との関わりが見えるのも、本作の面白みの1つとなっています。
そして羅門はリュウケンとして、ケンシロウたちに北斗神拳を教えるのでした。
本作の見所の1つは、張太炎編です。
張太炎(ちょうたいえん)は拳志郎の宿敵として現れ、拳志郎とも戦い、互角に渡りあうほどの実力を持っています。紅華会の2番頭でもあり、拳志郎たちの仲間を殺したり上海に馬賊(ばぞく)という荒くれ者たちを引き連れてくるなど、悪行の限りを尽くしました。
しかし、張太炎の言動は、本来の意志とは正反対のものだったのです。彼はある目的を持っており、周囲の目をごまかすために演技をしていました。彼もかなりの強さを誇りますが、その原動力になったのは、ある人物への憎しみだったのです。それを知れば、彼をただの悪役とは思えないでしょう。
彼は北斗曹家拳に独自の拳法をミックスした戦い方をして、拳志郎と死闘をくり広げます。最初に拳志郎と出会ったときは、梨花という女性を奪いあって戦いました。張太炎は彼女の結婚式に乱入して花婿を殺害したのですが、それも別の目的のためにおこなったことだったのです。
初登場のときはかなりの悪党でしたが、拳志郎との決戦の後は様子が変わります。心を入れかえた後の活躍にも注目です。
シャルル・ド・ギーズはユダヤ系フランス人。妹はソフィーです。
彼は、その出生のせいでナチスから迫害を受けた過去を持ち、そのためユダヤ人の楽園を作るという夢を持っていました。最初は拳志郎たちを利用する得体の知れない人物でしたが、何度か助け合ううちに彼らと心を交わし、「朋友」として認められます。
陸軍の大佐という立場を活かし、拳志郎たちを資金面で援助するギーズ。物語の序盤で、彼は悲惨な事故にあって肉親を失います。その後犯人を追いつめるのですが、ここで意外な行動を取るのです。どんな思いがあって彼がその行動を取ったのか、ぜひ注目して読んでみてください。
本作では、中盤で重要な役割を果たす人物が登場。ギーズはその人物のために大けがを負い、瀕死の状態になるのです。しかし彼は驚きの方法で延命し、拳志郎たちに重要な事実を伝えます。その後命を落とす彼の姿に、胸を打たれるでしょう。
仲間のために命をかけた彼の最期に、胸が熱くなること間違いなしです。彼こそ、朋友のために戦った男といえるのではないでしょうか。
最終決戦では、拳志郎が朋友(ポンヨウ)と恋人のために戦います。最後の敵は宗武(そうぶ)という男で、拳志郎とは2度目の戦いになる人物。そんな2人の勝負は、「奇跡」により引き分けとなるのでした。拳志郎はヤサカという人物との決戦に挑みますが、その途中で彼らは意外な事実を知るのです。
ヤサカは北斗神拳創始者であるシュケンに仲間を殺されたので、北斗に関わる者を憎んでいます。そんな彼にも意外な過去が秘められており……。
- 著者
- 出版日
- 2010-11-09
最終巻では、謎だった過去が明らかになります。北斗神拳はなぜ生まれたのかが語られるのです。そこで、それまでの憎しみが精算され、愛と和解がテーマになっていく展開となるのでした。
北斗神拳は「愛から生まれた」という事実が明らかになり、拳志郎と戦っていたヤサカは、自分の出生の秘密を知ります。その様子を見て、拳志郎は拳を止めるのです。
ヤサカは、拳志郎の「朋友」の命を奪いました。そんな自分を殺さずにはおけないだろう、と挑発するヤサカ。拳志郎はもちろん彼への憎しみを抱いていますが、朋友とのある約束が、彼の拳を止めたのです。
果たして、ラストの戦いはどうなるのでしょうか。結末はぜひ作品でご覧ください。
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