知っておきたいアライグマの生態!特徴や食べ物を洗う理由などを解説!

更新:2021.11.14

ラスカルで知られるアライグマ。愛らしい外見が魅力ですが、近年は特定外来種のイメージも高まりつつあります。彼らが駆除対象にまでなってしまった理由はどこにあるのでしょうか?今回はその生態の特徴や、食べ物を洗う仕草の理由、溜めフンなどについてわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本もご紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

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アライグマの生態の特徴は?生息地や天敵など

 

食肉類に分類される生物で、体長は60~95cm、体重は1.5~10.5kgほど。元々はカナダ南部からアメリカと、メキシコに生息していました。河川や湖岸、湿地といった水気の多い地域を好みますが、都市部にも生息。夜行性なものの、昼間も行動する姿が確認されています。

雑食で、触れるものであれば何でも餌にしてしまう適応力の高さを持っています。また幼獣の成長スピードも1ヶ月で平均1kgと早いのが特徴。メスは生後1年で出産可能となり、1年に約4頭を出産するなど繁殖力も高いため、本来生息していた地域でなくてもあっという間にその数を増やすことができるのです。

かつて北米で毛皮が重宝された時期には、年間500万点以上が生産されていたにもかかわらず、総個体数には影響が出なかったとまでいわれています。

天敵となるのはオオカミやオオヤマネコといった大型の肉食獣。こういった動物がいない地域であれば、アライグマは人間が積極的に関わらない限りは増え続け、生態系を大きく壊してしまう可能性を持つ生物でもあります。

今回は名前の由来でもある食べ物を洗う姿の理由や、特定外来種として扱われている背景、似た外見を持つタヌキやハクビシンとの違いについて解説していきます。

アライグマが食べ物を洗う理由

 

前肢が発達した動物で、リスのように物を持つことができるほか、手のひらを反すような仕草までできます。体の全長に対して長くなっていて、30cmほど先にあるものでも手を伸ばして取ることができます。

この器用で発達した前肢を使って、食べ物を洗うような姿が名前の由来にまでなっていますが、実は餌を綺麗にするために水の中に手を入れているのではなく、水辺にいる魚やザリガニを捕っているからだと考えられてきました。

しかし2009年に京都大学の調査で、アライグマはアカハライモリなどの毒を持つ生物を捕まえた際に、臭いで毒があるか判断し、その後10分以上も獲物をこすり続けて毒を落としてから食べていることが確認されました。

つまり、獲物に下ごしらえを施して食べられる状態にする、という概念があることがわかったのです。

アライグマは溜めフンをする

 

同一の場所でくり返しフンをする動物の習性のことを「溜めフン」といいます。アライグマのほか狸などに見られる習性で、家屋の屋根裏をトイレにされてしまうことも少なくありません。

アメリカに生息するアライグマのなかには、腸内に回虫が寄生している個体もあり、彼らのフンを介して人に感染すると脳神経障害などの重篤な症状が出るうえ、死に至るケースまで確認されています。

日本で回虫の感染例は報告がありませんが、近くで彼らを見た場合は手洗いやうがい、消毒を欠かさないようにしてください。溜めフンに遭遇したら自ら処理しようとはせずに、役所や保健所などに連絡をすることが推奨されています。

アライグマはペットとして大人気!しかし日本では駆除の対象に…

 

1977年にアニメ「あらいぐまラスカル」が放映されたことをきっかけに、日本国内で人気が急上昇。ペット業者はアメリカから大量に輸入をするようになりました。4~5万円と比較的安価な値段で販売されたことも手伝い、飛ぶように売れていったそうです。

しかし、幼体の時のぬいぐるみのような可愛さとは裏腹に、性格は凶暴。飼い主のことさえためらわずに噛むことがあります。その反面で幼体の時から飼育をするとべったり懐くので、何かのはずみで突然機嫌を損ねたときに血が出るほど攻撃され、はっきり言ってまったくなつかない動物より手に負えません。

当時は野生動物を飼うということの大変さも知らずにアライグマをペットにする人も多く、またペット業者も知識を持たずに売っていたため、捨てられることも少なくありませんでした。

2005年に施行された外来生物法で特定外来種に指定され、2018年現在はペットとして個人で飼育することは禁止されています。

外来種としてアライグマの駆除が取りざたされる背景には、農作物への被害のほか、狂犬病に罹患している可能性があること、在来種を捕食するため生態系へ影響をおよぼす可能性があることなども挙げられています。

アライグマ、タヌキ、ハクビシンの違いは?

 

アライグマと同じく農作物などへ深刻な被害を与える獣害であるタヌキとハクビシン。ここでは被害にあった農作物の痕跡の違いや、それぞれの外見の特徴を紹介していきます。

足跡の違い

ハクビシンの指は5本。足跡は丸い手のひらと手のひらから少し離れて5つ小さい丸が並んだ形をしています。タヌキの足跡もハクビシン同様に犬や猫を思わせる形ですが、指は4本。アライグマは指が5本で手のひらと指が繋がった類人猿の手形のような足跡です。

食性の違い

ハクビシンは自分の好物しか口にしないため、移動しながら餌場を変えていきます。また樹になった状態で果物を下から食べるのが特徴です。

アライグマは農作物以外でも蛙やザリガニ、水棲昆虫まで食べ、自分の生活圏の範囲内で食べられるものを探します。樹になっている果物は上から食べる場合が多く、実には爪痕がしっかり残っているのが特徴です。

タヌキは本来であれば縄張りのなかで生活する生物でしたが、寝床としていた民家の軒下などをアライグマに奪われて居場所を転々としている個体が見受けられます。他の2匹と違い、木登りが下手なために落下してきた果物しか食べません。

外見の違い

ハクビシンの顔は細長く、額から鼻にかけて線のように白い毛が生えています。鼻はピンク色で尾が細長く、肢が短いのが特徴です。

アライグマの顔は丸く、耳の縁に白い毛が生えており、ヒゲも白色です。体は丸く、尻尾に5~7段の縞模様があります。

タヌキの顔も丸く、耳の縁には黒い毛が生えており、ヒゲも黒色で四肢の先も黒いです。尾は丸く短いのが特徴です。

ネズミに自活をすすめる絵本

 

働き者のアライグマの家族が、一家の畑から農作物を盗んで暮らしているネズミたちに対し、自分たちで生きていく方法を伝授する絵本。思いやりを持つことや勤勉であることの大切さを描いています。

温かく懐かしいタッチの絵で綴られる本作が出版されたのは1977年。つまり彼らが獣害として扱われる前に作られたお話です。

著者
大友 康夫
出版日
1977-04-01

 

物語のなかでは泥棒をしたネズミを寛大な心で許し、畑の作り方を教えているアライグマ。皮肉にも現実には人間の畑を荒らすことで駆除対象になってしまっている彼らから、読者は人間の身勝手さを省みさせられるでしょう。

助けあうことが大切だという子どもにもわかりやすいメッセージが込められているのも特徴。またネズミの家の構造など、イラスト自体を楽しむことができます。

アライグマによる被害が深刻化している昨今だからこそ、大人も子どもも読みたい一冊です。

アライグマなど外来種は本当に悪なのか?

 

外来種のせいで在来種が駆逐される、生態系が壊れる……。では、外来種の線引きはどこでおこなうのでしょうか?侵入生態学の定説に疑問を投げかける、イギリスの生物学者ケン・トムソンの意欲作です。

我々が在来種だと認識している種であっても、他国から持ち込まれて歴史が浅いものが多いということをラクダを例に説明していくプロローグから、ぐっと読者を惹きつけていきます。

著者
ケン トムソン
出版日
2017-03-03

 

本編では自分たちにとって都合のよい種、たとえば利益をもたらしてくれたり、外見が好ましかったり、爆発的に増殖しなかったり、希少価値が高かったりする動植物に関しては排除しようとしないこと。一方で少しでも不利益が生じれば生態系を脅かす外来種として排除しようとしていることなど、人間の矛盾を含んだ行為について例を挙げて解説。

さらに本来生息していた場所を離れて、いわば迷子の状態になっている動植物の多くは人間の介入が原因で彷徨うことになってしまっているとも指摘しており、これはまさしく日本の特定外来種であるアライグマにも当てはまることだといえるでしょう。

アライグマも個体数が少なく、温和で臆病な性格であればここまで悪者扱いされることもなく、ともすれば可愛い外見から野生化しても温かく迎え入れられていた可能性さえあります。

人間も含めて万物は移動していき、その流れの一点を切り取って在来種は保護すべきもので外来種は悪であるという決めつけはいかがなものだろうか、外来種が介入することで変化していく生態系を受け入れる寛容さも時には必要なのではないか、という新たな視点を提起した一冊です。

動物園などの限られた環境でしか姿を見ることができなければ、おそらく多くの人がこんな可愛い動物を殺すなんて可哀想だと声をあげたであろうアライグマ。今回は駆除の対象になってしまう背景にある彼らの生態や外来種としての歴史をお伝えするとともに、アライグマや外来種の定義について考えさせられる本を2冊紹介しました。

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