小説や歌の歌詞などでもよく耳にする「彗星」。その形から「ほうき星」とも呼ばれています。この記事では、一体どんなものなのか概要や構造、種類、よく似た形をしている「流れ星」との違いなどをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するのでぜひチェックしてください。
広い宇宙空間に存在し、我々人類の天文学の対象となる物体を総称して「天体」と呼びます。今回ご紹介する彗星も、天体の一種です。
彗星とは太陽系のはるか彼方からやってくる氷塊のこと。核と呼ばれる部分の80%が水、残りの20%は一酸化炭素や二酸化炭素などの気体と砂粒、塵でできています。
宇宙についてさほど知識のない人は、名前に「星」とついていることから、火星や木星、もしくは月など衛星のようなものを想像する人も多いでしょう。しかし彗星はそれらとは違い、大きさも1~10kmほどで、公転軌道も太陽を中心に回っているわけではありません。
また、かつては「不吉の前兆」を意味するものだと伝えられていました。宇宙についての研究が進んでいなかったころは、彗星が観測できる条件やメカニズムなどがわからず、突発的に現れてはあっという間に消えていくもののように見えていたためです。
タイミングがよければ地球上からでも観測することが可能です。尾を引いている形から「ほうき星」とも呼ばれています。
日本では1996年に、天文家の百武裕司によって発見された「百武彗星」が大きな話題となりました。
水分でできた核を気体や塵などさまざまな物質が覆っていることから、「汚れた雪玉」とたとえられることもある彗星。その構造はどのようなものでしょうか。
本体である核と、そこから放射状に伸びる「イオンテール」と「ダストテール」という2つの尾で構成されています。
核は80%の水と20%の塵でできていて、太陽からの放射圧と太陽風の影響で発散するガス体が「尾」のうように見えているのです。
尾が出ている方向と反対の方向に進んでいると勘違いをしている人も多いですが、実は進行方向はまったく関係なく、尾は太陽から遠ざかるように伸びています。
彗星と流れ星はどちらも「光る尾を引いた星」というイメージですが、まったくの別物。もっとも大きな違いは、星の成り立ちです。
彗星は先述したとおり、氷の核と塵で構成されていて、太陽風の風を受けることで溶けて放出された粒子が太陽に照らされ、尾を引いているように見えます。
一方の流れ星は、宇宙空間を漂う無数の小さな塵が地球の重力に引っ張られ、大気圏で燃えることによって見ることができるのです。
また彗星には公転軌道があり、軌道上に沿って宇宙空間を進行していくため、観測することができれば地球に接近する日を特定することができます。
しかし流れ星は何の軌道にも関係なく宇宙空間を漂っていて、ある時突然地球の重力に引っ張られ大気圏に突入してくるため、発生日を予測することが非常に難しいのです。
彗星は放射状の光で、流れ星は直線的な光なので、実際に観測してみるとその差は一目瞭然でしょう。
彗星は大きく「周期彗星」「非周期彗星」の2つに分けることができます。
この2つの差は「離心率」というもの。離心率とは、軌道の形がどれくらい円から離れているかを示す数値です。完全な円は0で、楕円へと細長く形を変えるごとに数値は上がっていきます。
「周期彗星」は離心率が1未満のものを指します。公転周期が数年のものから100年を超えるものまで、300を超える星が登録されています。
代表的なものとして「ハレー彗星」が挙げられるでしょう。初めて周期性が確認されたため、登録番号1番が割り振られています。その周期は75.4年で、人間の寿命を考えると一生に1度見られるかどうかです。
「非周期彗星」は離心率が1以上のものを指していて、公転周期が定義できず、1度太陽を通過した後は二度と戻ってこない、または数十万年以上の周期であるため観測不可能な場合が分類されます。
非周期彗星のなかで離心率が1以上であったとしても、周期が200年以上のものを「長周期彗星」、200年以下のものを「短周期彗星」と分けています。
- 著者
- ["鈴木文二", "秋澤宏樹", "菅原賢"]
- 出版日
- 2013-09-14
全部で4章に分かれていて、天文学とは何かといった基礎的なことから、彗星の知識や観測方法、デジタルカメラで綺麗に撮影する方法などが収められた一冊です。
著者の3人はそれぞれ天文学を専門とする職業についていて、難解な内容もわかりやすく解説してくれます。彗星に興味が湧いた人だけでなく、実際に観測したり、分析してみたいという人にもおすすめできる一冊です。
- 著者
- 二間瀬敏史
- 出版日
- 2017-11-09
かわいらしいイラストで宇宙にまつわる用語を解説している作品です。用語の解説が濃厚なのが特徴。言葉を厳選して端的に解説しているだけでなく、文字で伝えきれないことはイラストを用いてくれているので、小さなお子さんでも楽しく読むことができるでしょう。
図鑑というと調べものをする時に開くイメージがありますが、本書はちょっと時間の空いた時などについつい見たくなってしまうもの。知れば知るほど宇宙への興味が深まっていきます。