夢の話【橋本淳】

更新:2021.12.2

どうも、橋本淳です。包丁を持った男に追いかけられたり、屋上から背中を押されて落下したり、急にピーターパンのようにそれを駆け巡ったりする毎日です。あ、夢の話です。

1987年1月14日生まれ。2004年にドラマ『WATERBOYS 2』でデビュー。『連続テレビ小説 ちりとてちん』(07~08年)でヒロインの弟・正平を好演。以降、TV、映画、舞台と幅広く活躍中。 最近の出演作 舞台では、『君が人生の時』(17)、KERA・MAP『キネマと恋人』(16)、『クレシダ』(16)、『月・こうこう,風・そうそう』(16)、二兎社『書く女』(16)、KAAT『ペール・ギュント』(15)、新国立劇場『海の夫人』(15)、城山羊の会『トロワグロ』(14)、『HISTORY BOYS』(14)、新国立劇場『ピグマリオン』(13)、『耳なし芳一』(13)、ベッド&メイキングス『未遂の犯罪王』(12年)、『阿呆の鼻毛で蜻蛉をつなぐ』(12)、新国立劇場『温室』(12)など。TVでは『悦ちゃん』(17)、『PTAグランパ』(17)、『連続ドラマW グーグーだって猫である2』(16)、『連続ドラマW 夢を与える』(15)、『大河ドラマ 軍師官兵衛』(14)、『闇金ウシジマくん』(10)、『半分の月がのぼる空』(06)など。映画では『At the terrace テラスにて』(16)、『風が強く吹いている』(09)ほか。 ◆◆◆今後の出演作品◆◆◆
泡の子

夢。毎日見ています。

はっきり覚えている日もあれば、まったく記憶にない日もある。不思議な現象です。よく舞台中は、遅刻して公演を潰す夢やら、まったく知らない作品の本番に立たされたりといった、俳優あるある な夢を見ます。

普段は基本的に空系が多いです。あ、空系というのは(勝手に名称をつけましたが)、前述したような、落ちたり、飛んだり、舞ったりするようなやつです。よく夢占いなんてあったりしますが、怖いので調べたりはしません(調べないでね、ねっ!)。

そして、なかには夢を見てるときに、「あ、これは夢だな」なんて気づくときも。これはボーナスステージのような感覚。夢と分かっているから、好きなことができる、好きな場所に変えたり、モノを出したり消えさせたりできる。RPGツクールみたいな。懐かしっ。しかし、やり過ぎは禁物、刺激的なことをしすぎると夢の時間は終わる、瞬間目が覚めてしまうのである。

その塩梅は31歳の僕にはまだ難しい。年齢を重ねればできることでもなかろうが、取り敢えず年輪の所為だと結論づける。

強制終了のように、目が醒めるのはまだ優しいほうで、最近ではやり過ぎた所為なのか、登場人物たちが急に“のっぺらぼう”になり、追いかけ回しきたのだ。これには恐怖、急にコントロールを失い、それまで支配していた世界が大挙して押し寄せてきた。怖かった、起きてからも鼓動はなかなか収まらず。支配しようとした、この身に対する罰なのでしょうか。

人生の3分の1の時間は睡眠に当てられる。だからこそ、この時間だけはコントロールしたい。自分の支配下にし、満足のユートピアを創りたい僕の孤軍奮闘の毎日は続く。なんの話をしているのだろうか。自分すらもコントロールできない私が、訳も分からず付いてきてくださった迷える皆様に、こちらの3冊をご紹介。

Team383

痛快な青春小説。とはいっても、平均年齢は76歳のメンバーがくり広げる青春群像。高齢となり、家族からも言われ自動車免許を返納し、すっかり落ち込んでしまった葉介。そんな葉介の前に現れた1人の高齢者、あることに誘う。それはなんと自転車レースへの誘いであった。毎年一度、開かれるママチャリレース、他にも同じように誘われた個性豊かな面々と参加することに。何歳になっても人は新しい世界を切り開くことができる、心温まるステキな作品。

自分はまだ、この登場人物たちの半分も生きていませんが、今後の人生にポッと灯がともったような感覚でした。それぞれのエピソードが順に語られる形式で、どれも現代の高齢者が抱える問題を、目の前に突きつけられた感覚も。冷え切った心に寄り添ってくれる暖かな作品です。皆様もぜひ。

心に刺さった一節

厚意と敵意は表裏一体だ。ちょっとしたバランスでどちらにでも簡単にひっくり返る。

きみは白鳥の死体を踏んだことがあるか(下駄で)

宮藤官九郎さんによる、エッセイのような小説、いや小説でありながらのエッセイ。どこからが本当の話でどこまでが創作なのか分からない、パンクで青春ど真ん中な下ネタ小説としておきたいと思います(自分的に)。

白鳥だけが名物の東北の町で男子校に通う“僕“。ローカル番組の素人発掘番組に応募したり、信じられない男子校の恒例行事、男子が集まると始まるのはやはりセックスの話、たけし軍団に入ろうとする僕、そして謎の白鳥おじさん。

あらすじを語ることは難しそうです。ニヤニヤがずっと続きます。ひとまず手にとって読んでみてください。このパンクで刺激的な青春をぜひ。

心に刺さった一節

下駄を履いて、左足で地球を、そして右足で白鳥の死体をしっかり踏みしめて立っていた

残像に口紅を

「あ」が使えなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまった。世界からひとつ、またひとつと、言葉が消えていく。言葉が消えていくなかで、執筆、生活していく小説家を描き、その後の著者自身を思わせるような、究極の実験的小説。

筒井康隆さんの語彙力が素晴らしいです。どんどん一つずつ、音が消え使える言葉が減っていっているなかでも、読者側がなんの違和感もなく読み進められる。時に、あれ? 今なんの音が無いんだっけともう一度ページを戻り読み返してしまうことが何度もありました。現実であり、虚構であり、なんだか頭の中がグワンと掻き回されるような感覚に。今までに読んだことのないジャンルの小説で、これには驚き興奮した自分がおりました。まさに実験的小説、すごいです。

心に刺さった一節

残ったものにだけすがりつき、残余の命を保っていこうとする。

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