体を丸めて身を守るイメージのあるアルマジロですが、実は完全に丸くなるのは一部の種類だけってご存知ですか?この記事では、彼らの生態や種類ごとの特徴、性格、飼育方法などをわかりやすく解説していきます。またあわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
哺乳綱異節上目被甲目アルマジロ科に分類される動物で、名前はスペイン語で「武装した小さなもの」を意味する「armado」という言葉に由来します。まるで鎧を着て武装しているように見える姿から名付けられたのでしょう。
北アメリカからアルゼンチンにかけて生息していて、最大種のオオアルマジロで体長75~100cm、体重約30kg、最小種のヒメアルマジロで体長8~12cm、体重100gほどです。
最大の特徴である「鱗甲板」と呼ばれるウロコ状の硬い鎧は、実は体毛が変化したもの。背中だけでなく、頭部や尻尾、四肢などほぼ全身を覆っています。
夜行性で、日中は地下に穴を掘って作った巣の中で過ごしています。睡眠時間が非常に長く、1日に18時間眠ることも。
餌を探す際には主に嗅覚を使用し、ヘビや昆虫、ミミズ、カタツムリなどの小動物を食べます。
寿命は種類にもよりますが、概ね8~12年ほど。ただし過去には、飼育下で20年以上生きた個体もあり、環境によっては長生きするようです。
全部で約20の亜種がいますが、そのなかに「ミツオビアルマジロ属」「ムツオビアルマジロ属」「ココノオビアルマジロ属」など属名に「オビ」が入っている種がいます。
オビとは、鱗甲板にある「帯」のこと。この帯の数が種を分ける判断材料となっていて、たとえば帯が3本であれば「ミツオビ」、6本~8本であれば「ムツオビ」と名付けられています。彼らはこの帯があることで、鱗甲板をある程度自由に動かすことができるのです。
体を丸めて身を守るイメージがありますが、実際にボール状になれるのはミツオビアルマジロ属のマタコミツオビアルマジロとミツオビアルマジロの2種類しかいません。
これ以外の種は外敵に襲われた場合、ボール状になるのではなく、手足を引っ込めて硬い甲羅で身を守ります。
彼らが住む地域には、ライオンやオオカミ、ピューマなどの天敵がいます。それらの牙から身を守るために体毛が変化して鱗甲板となりました。
非常に硬いことで知られていますが、なんと「銃弾を跳ね返した」というにわかには信じがたいエピソードがあります。
穴を掘る習性をもっているアルマジロは、時には農地などを掘り返すこともあり、そのためアメリカのジョージア州では、害獣に指定され駆除対象となっています。
2015年、ある男性宅付近にアルマジロが現れたため、駆除のために拳銃で撃ちました。しかし銃弾は、命中はしたものの跳ね返り、離れた場所にいた男性の義母に命中してしまったのです。
その甲羅の頑丈さには驚くばかり。地元の警察では、通常の拳銃だと鱗甲板を貫通することが困難なため、駆除の際にはショットガンを使用することを推奨しているのだそうです。
野生のアルマジロは基本的に群れを形成せず、1頭で行動しています。夜行性のため、昼間は巣穴の中で休み、夜に活発になります。
性格は穏やかで、実は人にとても懐きやすい動物なんだそう。日本ではまだまだ少ないですが、アメリカではペットとして飼われることも多く、テキサス州では州の動物に指定されるほど親しまれているのです。
ペットとして飼育する場合、日中も活動的になったり、危機感を抱かなくなったりして、本来の生活サイクルで活動しなくなることもあります。自然界のリズムを離れてもストレスなく生きていける点は、環境への適応力が高いといえるでしょう。
また南米では昔から食用にされていたり、アンデス地方の民族音楽で使用する弦楽器「チャランゴ」の材料にも用いられるなど、馴染み深い動物です。
日本国内では特に法令による規制はなく、個人でもペットとして飼うことができます。人に懐きやすく、犬のように甘えてくるので、最近じわじわと人気が上昇しているのだそうです。
価格は種類によっても異なりますが、おおよそ30~45万程度と決して安くはありません。
野生下では昆虫類やミミズなどを食べているので、飼育する場合は、動物性蛋白質を十分に取れる餌を与える必要があります。ドッグフードやフェレットフード、キャットフードのほか、コオロギやミルワームなどがよいようです。
室内で飼育する場合は、穴を掘る習性があるため床などがすぐにボロボロになってしまうので、対策が必要です。
また、元々は暖かい地方に生息する動物なので、冬場の温度管理にも気を使ってください。乾燥にも弱く、皮膚トラブルを起こしやすいので、湿度にも注意が必要です。
ちなみにアルマジロは、人間以外で唯一ハンセン病に感染する動物です。ハンセン病は口や鼻から吸い込む飛沫感染と、傷口などから感染する接触感染があります。触れた後は手を洗うなどして対策しましょう。
- 著者
- 安東 みきえ
- 出版日
- 2009-03-01
1994年、小さな童話大賞にて大賞および今江祥智賞を受賞した作品。親を探しているアルマジロのほか、森の歌を歌うオオカミ、心配性なコウノトリなど動物たちを主人公にした5編を収録した短編集になっています。
どの話も、「―――卵があった」というフレーズから始まるのが印象的。そこから描かれるのは、自分の命を必死に生きながらも、どこか違う自分も探しているような、人間社会にも通じる彼らの姿です。読んでいるうちに、不思議と切ない気持ちになってくるでしょう。
幸せに必要なものとはなんだろう。愛なのか、信頼なのか、それともお金なのか……。
ユーモアたっぷりの童話のなかに、人生に大切な指針が散りばめられています。子どもだけでなく、大人が読んでもドキリとさせられる一冊。ぜひ読んでみてください。
- 著者
- 山田玲司
- 出版日
- 2011-02-23
漫画家である山田玲司が手掛けた絵本。記憶をすべて失くしてしまった男の旅路が描かれています。
旅の中で、男は疑問に思います。なぜアルマジロは丸いのか、と。
「知らない」ということは好奇心を抱くきっかけですが、人間は普段の生活のなかで「知らないということ」を自覚することはなかなかありません。もし本作の主人公のように生きられれば、もっと豊かな生活を送ることができるのかもしれないですね。
読者ごとに解釈が分かれる内容ですが、忙しさに追われる日々のなかでふと立ち止まり、物事を考えるきっかけを与えてくれる一冊です。