いまも宇宙のどこかで起こっている「超新星爆発」。年老いた星がその生涯を華々しく終えるときに起こる現象です。この記事では、その爆発がどのようにして起こるのか、その威力やメカニズム、ベテルギウスで起きている予兆、発見の歴史などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本もご紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
自ら光を発しているガス体の天体である恒星がその命を終える時、何らかの原因で大爆発を起こし、まるで新しい星が突然誕生したかのように見える現象を「超新星爆発」といいます。
そのメカニズムは大きく2種類に分けられます。
I型超新星
恒星では、水素ガスが重力によって引き寄せ合い、高い圧力が発生して核融合という化学反応が起こっています。質量によって核融合反応がどこまで進むかは変わりますが、小さい恒星はある段階まで反応が進むと、その生涯を終えて「白色矮星」になります。
白色矮星になっても依然として大きな重力を持っているので、周囲にあるガスや塵などをどんどん吸収。もし近くに別の恒星があった場合は、そのガスをも吸い込んで質量を増やしていくのです。
そしてある限界まで達すると、その重さで内部の圧力が一気に高まり、再び核融合が始まります。その暴走的な反応によって引き起こされる爆発が「I型超新星」です。
II型超新星
恒星は、重力によるガスの収縮で、その中心に向かって大きな力が働いています。その一方で中心からは核融合反応によって生み出された力が外側に向かっていて、双方の力のバランスが保たれた状態で存在しているのです。
ところが、核融合反応が終わってしまうとこのバランスが崩れ、一気に内側へ収縮していき、これを「重力崩壊」といいます。重力崩壊が起こると、中心に押し寄せてくるガスの反動で外側へ向かって大きな力が働き、周りのガスを吹き飛ばします。これが「II型超新星」です。
超新星爆発が発生すると、ガンマ線と呼ばれる放射線が凄まじい勢いで放出されます。爆発を起こした恒星から5光年(光の速さで5年)離れた範囲では、すべての生命体が絶滅するとまでいわれているのです。たとえ50光年離れていても、壊滅的な影響を受けるそう。
そして爆発の後には、質量が太陽と同じくらいなのに直径が20km程度の「中性子星」や、とてつもなく大きな重力で光すらも吸い込んでしまう「ブラックホール」など、超高密度・超高圧な天体が残ることがあります。
冬の星座として有名なオリオン座を形作る恒星のひとつ「ベテルギウス」。赤みを帯びたこの星は「赤色超巨星」と呼ばれています。
ベテルギウスは、仮に太陽と同じ位置に置いたとすると、表面が木星の軌道近くにまで達するほど巨大な恒星です。質量も太陽のおよそ20倍。地球から観測すると、その大きさが加速度的に収縮していて、形も変形して不安定なことから、近い将来に超新星爆発を起こすのではないかと考えられているのです。
もし、ベテルギウスが爆発したらどうなるのでしょうか。
地球から約640光年離れているので、爆発が起こってもすぐに甚大な被害が起こるわけではありません。しかし超新星爆発が起こった際に発されるガンマ線によって、有害な電磁波などを吸収する「オゾン層」が破壊される可能性が懸念されていたのです。
ただ最新の研究で、ガンマ線は爆発した恒星の自転軸とほぼ同じ方向に放たれること、ベテルギウスの自転軸と地球の位置が20度ほどズレていることがわかったため、影響はほとんど無いと考えられています。
これまでにいくつかの超新星爆発が観測されています。今回はそのなかでもっとも有名な観測例のひとつをご紹介しましょう。
2016年、アルゼンチンのアマチュア天文家が、天体望遠鏡に取り付けた新しいカメラのテスト撮影をした際のこと。1時間近く経った後に、新しく輝き始めた星が写っていることに気付きました。光が短期間に明るくなっていったことから、超新星爆発であることが確認されたのです。
この現象は「SN 2016gkg」と名付けられ、研究が進められます。すると、超新星爆発が起こる瞬間に発生する「ショックブレイクアウト」と呼ばれる段階を撮影していたことが判明。2018年に発表されました。
ショックブレイクアウトは、理論的には予想されていたものの、その瞬間を捉えることが難しく、世界中の研究者が何十年も観測を続けていたもの。そんななかアマチュア天文家が偶然発見したことで話題になり、またこれまでコンピュータでおこなっていたシミュレーションが正しかったと証明された瞬間でもありました。
実は歴史的な資料にも、超新星爆発の記録が残っています。そのひとつが、鎌倉時代初期の歌人である藤原定家が記した『明月記』です。
『明月記』は、定家が56年間の出来事をつづった日記。そのなかで超新星爆発は「客星の出現」と表現され、3例もの記録があります。そのうちのひとつは1054年に発生したもので、同様の記録が中国などでも見つかっています。
しかし定家は1162年生まれです。なぜ1054年の出来事が記されていたのでしょうか。
この時代、客星の出現は、疫病の流行や飢饉の発生などの前触れであると恐れられていました。定家は天変地異の発生を予測しようと、陰陽師と呼ばれる人々から客星の情報を入手し、『明月記』に記したのではないかと考えられています。
- 著者
- 田中 雅臣
- 出版日
- 2015-07-23
宇宙の突発的な現象を研究している田中雅臣の作品。
タイトルが文学的ですが、研究者である著者が、物理学に詳しくない人たちにもわかりやすく超新星爆発のことを伝えたいと考え書き起こした、宇宙物理学の解説書になっています。
イラストや図を使って丁寧に解説されているので、とても読みやすく、基礎から最先端まで一連の流れを理解できるでしょう。
初心者におすすめの一冊です。
- 著者
- 松原 隆彦
- 出版日
- 2016-02-16
超新星爆発をはじめ、宇宙の誕生から終わりまでをストーリー仕立てで解説している作品です。
難しい数式などが使われていないのが嬉しいところ。カラー写真や図をふんだんに使って説明してくれているので、見て理解を深めることができるでしょう。
壮大な宇宙の物語を感じてみてください。