天賦の才を持つサッカー少年・犬童かおると、努力から培われたサッカーセンスを持つ成神蹴冶。偶然出会った2人が、廃部寸前のサッカー弱小校・桜木高校で、頼もしい仲間と強力なライバル相手に奮闘する姿を描いた『振り向くな君は』を読んでみよう。
非凡なサッカーの才を持った男・成神龍。龍の息子・成神蹴冶と、龍にサッカーを教わった少年・犬童かおるが出会うことで、廃部寸前の弱小だった桜木高校サッカー部は生まれ変わり、伝説を作っていくのです。
大人気サッカー漫画『DAYS』より2年前の桜木高校の姿を描いた本作について、その見所をネタバレ含め紹介していきます。
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運動音痴な柄本(つかもと)つくしが、サッカーの強豪・聖蹟高校サッカー部で、チームとともに全国優勝を目指していく様を描いた名作『DAYS』。サッカー初心者にも関わらず、忍耐力と向上心でチームから認められ、成長していく姿は、私たちに勇気を与えてくれます。今回は、そんな本作のあらすじや、見所、登場人物などを分かりやすくご紹介します。なお、ネタバレも含みますのでご注意ください。
- 著者
- 安田 剛士
- 出版日
- 2011-03-17
喘息持ちの少年・成神蹴冶は、姉の忘れ物を届ける途中、日本中を旅しているという少年・犬童かおるに出会います。この必然ともいえる偶然の出会いから、2人は廃部寸前だった桜木高校サッカー部を存続へと導いていくのです。
1巻では、互いの存在を知りながら初めて対面する2人や、サッカーボール以外でリフティングする姿など、注目したい場面が多いのですが、やはり最大の見所は、2人が初めて一緒にピッチに立った場面ではないでしょうか。
- 著者
- 安田 剛士
- 出版日
- 2011-03-17
蹴冶とかおるが桜木高校のサッカー部を目指していたのは、成神龍という男性に導かれたからでした。龍は蹴冶の父で、かおるにサッカーを教えた人、そして桜木高校サッカー部を創設し、監督を務めた人物です。
これだけで2人の出会いは偶然ではなく、運命に誘われたからのような気がしますよね。しかし入学式の前日、今日の試合で勝てば存続、負けたら廃部だと2人は聞かされることに……。龍がいた時代は強かったのだと思いますが、亡くなって5年で廃部を突きつけられることを考えると、よほど成績を残せなかったのでしょう。
想像通り、試合では廃部も頷けるプレーをサッカー部のメンバーは行ってしまいます。彼らの試合展開を見る限り、小学生でももう少しうまく立ち回るような気がしてしまうほど。そのプレーには蹴冶もかおるも驚いた様子。そして2人は、サッカー部を勝たせるため、後半ピッチに立つことを決意したのです。
サッカー関係者の間で知らぬ者はいないという龍の息子で、凡人であり努力の超人である蹴冶と、龍の教え子で天才と言われたかおる。そんな2人の初試合シーンは、ちょっと笑えて、ものすごくかっこいいですよ。
かおるのかつての相棒が入学した、東京トップクラスの強豪校・仁多花高校との練習試合が決まった桜木高校サッカー部。しかし、現在の部員数では人数が足りませんでした。かおるたちの入学前に行っていた試合は、卒業した先輩たちが出てくれていたのです。
弱小という以外にも廃部の原因はあったんですね。成績も残せず、人数も足りない、では学校側が廃部させようとするのも頷けます。
- 著者
- 安田 剛士
- 出版日
- 2011-05-17
人数が足りないということで、新キャラ登場です。まずかおるはゴールキーパーを見つけるため、強い不良を探すことに。不良を探す理由というのが、理にかなっているような、いないような、かおるらしい理論なのですが、それに基づきクラスメイト・近藤留夏をゲットします。留夏が入部を決めた理由がサッカー自体とは関係ないというのが、面白いところです。
そしてもう1人の新キャラは、全国中学大会でMVPをとった如月太狼。太狼の面白いところは彼の持つ二面性で、ユニフォームに着替えるところからピッチに立って試合をするまでの彼の様子はぜひ注目したいです。
留夏を含め未経験の一年4人を抱えることになった桜木高校は、格上相手に勝つための戦略を立て、ギリギリまで調整に励みます。作戦が良かったのはもちろん、やはり蹴冶・かおる・太狼のポテンシャルが高いのでしょう。彼らは想像以上のプレーを披露。
しかし、いくら蹴冶たち実力のある選手がいても、サッカーはチームプレー。たった1人強くても勝てないスポーツです。それでも、チームのために動ける強い選手が1人いて、信じられるチームメイトがいれば、勝利への活路を作り出すことができるスポーツでもあります。
果たしてかおるは、チャンスを作ることができるのでしょうか。
黒夜・青空・赤丸という3人の強者の前に、体力もボールも奪われていく桜木高校のメンバー。誰よりもピッチを走り回り、1人踏ん張り続けるかおるの姿は胸打たれるものがあります。
どんな状況でも仲間にパスを出すかおるは、ただ天才なわけではなく、サッカーを好きな気持ちや、チームの大切さを誰よりも理解しているのではないでしょうか。何かとふざけた言動も多いですが、サッカーに関しては非常に真摯ですね。
- 著者
- 安田 剛士
- 出版日
- 2011-07-15
蹴冶やチームメンバーは、そんなかおるに応えようとします。普通なら「無理だ」と諦めてもおかしくない場面、最後まで全力で出し切ろうとする彼らの姿は、心を熱くさせますね。
読者に彼らの真剣さが伝わるなら、当然対戦相手にもそれは伝わります。試合が終わったあとの仁多花高校との場面はぜひ注目してみてください。
その後、メンバーはそれぞれの課題について考えます。かおるが入学前の試合で見せたプレイスタイルと、仁多花高校でのプレイスタイルはまったく違うのですが、本来はかおるは入学前のものが得意で好きなスタイル。
そしてそのプレイを行える天才的な能力を持っているのです。その能力を活かせるよう、未経験メンバーはもちろん、他の選手たちも彼らなりの努力を重ねていきます。
チームを結成して日は浅いですが、「チームプレー」という点において、桜木高校は十分戦える素質を持っているといえるのではないでしょうか。個がチームを支え、チームが個を支え、個が個が支える……そんな彼らを見ているとこっちまでワクワクしてきますよね。
そしてついに始まったインターハイ地区予選。まだまだフォワードが未熟な彼らの前に、鉄壁のゴールキーパーが立ちふさがります。
留夏が小学生だと思っていたゴールキーパーの師匠・千手は、インターハイ地区予選、二回戦目の相手でした。大きなゴールを守る選手はだいたい体が大きいですが、千手は小柄な蹴冶よりさらに小さい人物。
彼は、キーパーの凄さは決して体当たりでボールを止めることだけではないと示してくれます。正直、チームとしての敗北はあっても、かおる自身が負けることはないと思っていましたが、千手はその期待を破り捨ててくるのです。
- 著者
- 安田 剛士
- 出版日
- 2011-09-16
スポーツものの醍醐味は、やはり主人公たちがライバルたちとの苦い経験を経ておのおの成長していくところ。今まで出会ってきた高校との試合はもちろんですが、千手たちと試合は、まさにライバルといった、熱い展開がくり広げられました。努力と才能がぶつかり合うこの試合は、チームとして本作でもっとも見所となる場面になります。
かおる・蹴冶・太狼が今までは目立ってきていましたが、キャプテンの大塩やゴールキーパーの留夏、もう1人のフォワード猫谷が活躍を見せますし、お調子者な言動が目立つ鳥飼の本心を知ることもできる、大事な試合ですね。
また、最終巻となる4巻では、かおるの過去、蹴冶の父である龍との出会いが明かされることに。ここではかおるがなぜこれほどサッカーに対して真摯なのかがわかり、選手としてだけでなく、1人の人間としてかおるのことを好きになること間違いなしです。
すでに亡くなっている龍自身の出番はあまり多くないのですが、ところどころに彼の面影が表れ、主人公2人にとって彼がどれだけ大きな存在か、彼が2人に残したものの大きさを考えると、熱いものが込み上げてきます。
少々ロマンチックではありますが、最後に出てくるサッカーについての蹴冶とかおるの言葉は、彼らのサッカー人生そのものを表しているのではないでしょうか。
『DAYS』に登場するライバル校・桜木高校の2年前の様子を描いた『振り向くな君は』は、無名だった彼らが仲間と才能と努力を信じ、伝説への一歩を踏み出して行く漫画です。
本作だけでも楽しく読むことはできますが、『DAYS』読者はより楽しめる内容となっています。ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
ライバルさえともにサッカーを楽しむ仲間だと示してくれる『振り向くな君は』。試合中の緊張感と、それ以外の気の抜けるやりとりが読んでいて非常に心地よく、またドキドキさせる作品となっていますよ。