ゲームを実況しながらプレイする動画が人気を博しておりますが、『ナカノヒトゲノム』も、ゲーム実況をモチーフとした作品。リアルゲーム実況というサスペンス要素で緊迫感は抜群、アニメ化も決定した作品の魅力を、ご紹介いたします。ネタバレを含みますので、ご注意ください。
45人もの少年少女が行方不明となる、謎の失踪事件が巷を騒がせていた頃、高校生の入出(いりで)アカツキは、ゲームの実況動画を配信し、人気を獲得していました。アカツキがプレイしていたのは、「ナカノヒトゲノム」というフリーゲーム。クリア直前に実況者が失踪するという、曰くつきのゲームです。
ゲームをクリアし、隠しステージを出現させたアカツキ。画面上には、隠しステージのプレイ権を獲得したこと、他者には譲渡できないこと、そしてこれから迎えに行く旨が記載されています。そんなまさか、と思っていたアカツキでしたが、目覚めるとそこは自分の部屋ではないどこか。見知らぬ美少女と大自然の山の中に放置されていたのでした。
- 著者
- おそら
- 出版日
- 2015-06-27
突如巨大な動物に襲われかけたアカツキと美少女・更屋敷カリンは、和装の男鬼ヶ崎カイコクの助けや、巨大パンダと和解するという方法で、なんとかピンチを脱出。第1ステージクリア、と言いながら登場したアルパカのかぶりものをした謎の人物パカにより、リアルゲーム「ナカノヒトゲノム」の実況をし、再生数1億ビューを稼がなければならないと告げられます。
13番街というチームに振り分けられたアカツキ、カリン、カイコクは、そこで仲間となる5人の人物と出会います。おのおのがゲームの実況をしており、名前の知られた存在。彼らは協力し、パカに提示されるステージをクリアしながら、再生数を稼いでいくことになります。
1巻では、リアル「ナカノヒトゲノム」のルールと、13番街メンバーの紹介を兼ねた内容。特に主人公であるアカツキの魅力である、ナチュラル実況を可能とさせる、マイペースかつ天然な部分が前面に押し出されています。
「リアルゲーム実況をし、再生数を稼いでいく」という大きな目的と、各ステージクリアという課題が提示されていますが、パカが何者なのか、なぜゲーム実況者が集められているのかは、1巻の段階では不明。監視者であるパカですらわからない、謎の少女の存在や、焼却炉で燃やされていた人のような何かなど、謎が深まります。
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1巻では第1ステージ「アニマル合戦」、第2ステージ「取り替えこっくりさん」が行われ、何とか課題をクリアしてきました。おもにゲーム実況者である主要キャラクターの紹介と、彼らが取り込まれたリアルゲームのルールの一部が公開され、第3ステージの内容と課題、そしてパカの正体が判明するか、という緊迫したところで終わっています。
2巻では、第3ステージ、恋愛育成シミュレーション「ときめきエッグ☆ムラサキノウエ」と、第4ステージ「ミミクリー・マンイーター殲滅」を主軸とした物語になります。
第3ステージは、卵から誕生した少女と、学園のアイドルである光源氏の恋を成就させるというのが課題。アカツキの他にも、格闘ゲームが得意でアカツキの友人駆堂アンヤ、恋愛シミュレーション実況を得意とする逢河マキノ、育成シミュレーション実況で人気の伊奈葉ヒミコが活躍します。
- 著者
- おそら
- 出版日
- 2015-10-27
ステージをクリアするために、アカツキ達が奔走するところはもちろんですが、本編には路々森ユズとカリンの入浴シーンが登場するのも見所。また、パカの正体を暴こうと迫るカイコクと忍霧ザクロの連携が見られるなど、実況者の中で交流も楽しめるポイントです。
また、1巻の段階では実況者であること、得意なゲームや性格などしかわかっていなかった各キャラクターの隠された部分が明らかになってきます。アンヤが睡眠障害を持っているというのも明らかになりましたが、ユズのアカツキに対する異常な執着が注目ポイント。マンイーター戦ではぞっとする場面もありますが、それ以上にぞわりとするユズのヤンデレな一面にも注目です。
第3ステージ、第4ステージともにクリアした8人の実況者たちが挑むのは、第5ステージ「鬼退治」。アカツキや戦国統治ゲームを得意とする武闘派のカイコク、常に黒いマスクをしているザクロとカリンが中心となり、ステージクリアを目指します。
「鬼退治」という名前通り、和風ステージで鬼を討伐していくのですが、鬼たちはチート級の強さで、歯が立ちません。鬼たちをどう倒していくのか、ステージをクリアするために奮闘する姿は見どころのひとつ。また、リアル実況ゲーム「ナカノヒトゲノム」システムの謎が少しずつ明らかになり、物語全体の謎が深まります。
- 著者
- おそら
- 出版日
- 2016-04-27
2巻から少しずつ各キャラクターの抱えている事情や、問題が明らかになってきていますが、3巻ではカイコクとザクロの生い立ちが公表されました。カイコクは、実はお金持ちの御曹司ですが、祖父と折り合いが悪く、勘当された身です。どうやら祖父はカイコクを跡継ぎにしようとし、熱心に指導をしていたようですが、カイコクが反発していた様子。家を出た彼は、そのまま「ナカノヒトゲノム」に連れ去られたのでした。
対するザクロは、他の人とは少々事情が違う様子。2年前に行方不明になった双子の妹、サクラを探しており、「ナカノヒトゲノム」をプレイして、わざと失踪者になっているのです。サクラも「ナカノヒトゲノム」のβ版をプレイした後に行方不明になっているのですが、消息は不明。「鬼退治」ステージでサクラの持ち物が発見され、現段階では命を落としたのでは、と言われています。
少しずつ明らかになる、キャラクターたちの抱えている事情や、「ナカノヒトゲノム」全体の謎。緊迫感は増していきますが、4巻では第6ステージ「カラカラ遺跡」にアンヤとヒミコの異色コンビが挑みます。
4巻ではヒミコの抱えている事情が明らかになりますが、彼女は祖父母と両親、弟3人と暮らす大家族の1人。常に家事に追われ、1人の時間をなかなか持てずにいます。おとなしく、穏やかな性格のヒミコですが、その実、兄を殺したという罪の意識に苛まれていました。
- 著者
- おそら
- 出版日
- 2016-10-27
兄はヒミコを守るため、両親によって養子に出されましたが、後に行方不明となり7年が経過。法律上は死亡したことになっており、そのことに責任を感じているのです。ちなみにこの巻では、ヒミコが怒るシーンがあるのですが、そのキレっぷりがあまりにひどく、アンヤにトラウマを残すこととなりました。
そして「ナカノヒトゲノム」ゲームの外の動きも活発になるのが4巻の見所。アンヤの兄、駆堂シンヤが、カリンの兄で探偵業を営む更屋敷ヒノキに、アンヤの捜索を依頼します。ゲーム内部ではカイコクが、ゲーム失格者やリタイアした者が強制収監される「白の部屋」へ収監されてしまいますが、その原因となったのは第7ステージ「呪奪の三姉妹」とのかくれんぼの最中に、13番街メンバーのデータが書かれた紙を発見したため。
ゲーム内外双方から、少しずつ「ナカノヒトゲノム」の謎に迫っていきます。
4巻では、人が死んでいると思しき描写も登場する強制収監施設「白の部屋」にカイコクが収監されてしまうという、かなり緊迫した場面で終了しました。5巻では、「白の部屋」に収監された者たちがどうなったのか。他の行方不明者がどうなっていたのかが明らかになります。
ユズの行動を怪しんでいたカイコクが、ユズの自室を調べたことにより「白の部屋」に強制収監されてしまいます。厳しい監視の中、浴槽の下にあった抜け道を通ったカイコクの前に現れたのは、他の番街の実況者。13番街メンバーよりも早く誘拐された、男女嶋ナナミ、ザクロの妹であるサクラをはじめとしたゲーム実況者たちでした。カイコクは地下に住む実況者たちと合流し、「ナカノヒトゲノム」のシステムを知ることになります。
- 著者
- おそら
- 出版日
- 2017-04-27
一方、カイコクへの処遇を不服として、一時はゲームからの離脱を口にしたアカツキたちでしたが、敗者復活ゲームとなる「ホワイトパズル」に挑むことになります。パズルゲームを得意とするユズを中心に謎に挑みますが、その過程で明らかになったのは、ユズが何を考え、行動しているのか。そして、何者なのかでした。
得意分野を活かし、仲間を救うために尽力しましたが、5巻ではユズがパカ側、つまりはゲーム主催者側の人間であることが明らかになります。しかし、なぜアカツキに執着するのか、第1巻「こっくりさん」でも登場した、関係者らしき少女は本当に姉なのか、多くの謎は明かされていないままです。
地下街にさらわれた実況者たちを残す形になりましたが、無事にカイコクを救い出した13番街チーム。しかし、「ナカノヒトゲノム」自体が終了したわけではありません。新たなステージ「なかげの幼稚園」に、アカツキ、アンヤ、ザクロ、カリンが挑みます。
新たなステージは、幼児になってしまったカイコク、マキノ、ユズ、ヒミコの好感度を上げていく、というゲーム。幼くなった4人は可愛らしく、ついキュンとなってしまいます。当然見所は幼児になった4人ではありますが、それだけではありません。寝ていることが多く、口数の少ないマキノの、崩壊した家庭の事情や恋の話など、かなり内面に踏み込んだエピソードに注目です。
- 著者
- おそら
- 出版日
- 2017-11-27
そして、外部で調査を続けていたカリンやアンヤの兄、ヒノキたちにも新たな動きがありました。失踪者たちを調査していたヒノキたちは、彼らがフリーゲーム「ナカノヒトゲノム」をプレイしていた可能性にたどり着きました。さらなる調査を続ける中で、アカツキの実家である入出家を訪れたヒノキとシンヤは、ぐるぐるまきの包帯にくるまれた人形を、アカツキだと口にする、母ユカコの異常な姿を見たのでした。
今までちょっと天然な気質を見せていたものの、裏表がなさそうだったアカツキに、実は養子であり、義母ユカコとは歪な親子関係を結んでいたという事実が判明しました。入出家は何か「ナカノヒトゲノム」に関わっているような描写も見られ、緊迫感が増します。
入出家という、新たな謎を持った存在も登場しましたが、ゲームは進んでいきます。第10ステージは、室外が舞台。広大な森や地下水路など、かなり巨大な施設であること窺えましたが、新たなステージはまさかの雪山。「珍獣イエティ狩り」で、13番街全員で雪山に挑みます。
「珍獣イエティ狩り」は、パカすら安全ではない危険なゲーム。洞窟に閉じ込められたアカツキ、アンヤ、マキノとパカは、脱出を図るため洞窟の奥へと足をすすめます。パカが案内するのは、基盤であるマザー・ミミクリーのある島の深層部でした。
- 著者
- おそら
- 出版日
- 2018-05-26
一方、島へ上陸することを決意したヒノキとシンヤ。アカツキの叔父にあたる仁木イチヤと協力していくことになります。イチヤの口から明かされたのは、島には7人の定例会議メンバーがおり、元々はテーマパークの予定地だったが、遺伝子研究施設として買い取られたこと。アカツキの義父である入出アキトが島を引き継ぎ、現在はアカツキが所有者となっているという事実です。
パカを含め、「ナカノヒトゲノム」に関わっているのは、この研究施設に関わりのある人間であることが示唆されました。アカツキ自身は、島の所有権を持っていることを知っているのか、どこまで事情を把握しているのかは不明です。主人公でありながら、巻を追うごとに謎が深まっていくアカツキの今後も気になります。
地下からどうにか脱出したアカツキたち。心配したユズにたっぷりお説教を受けてしまいますが、ほっとしたのもつかの間、すぐに次のゲームがスタートします。
今回のゲームは地下を除くタワー全体が停電になるということを活かしたゲーム。実はこのタワー「闇満ちる時 死者が起き上がる」という噂があるらしく、そのなかで肝試しをしてほしいというのです。
その際に必要なアイテムが、顔にそれぞれ喜怒哀楽と欠かれた4体の「過感情ドール」。このドールたちはそれぞれの感情の解放を望んでいるらしく……?
- 著者
- おそら
- 出版日
- 2018-11-26
8巻は、それぞれの過去が明かされます。
まずは感情の解放がキーワードということで、それに関してカリンの過去が明かされます。実は優秀な兄が家を出た後、彼の身代わりのように両親からプレッシャーを受け、ずっと苦しんでいたのでした……。
また、唯一このゲームに参加しなかったユズはマザー・ミミクリーのもとへ。そしてそこで彼女に対して驚きの言葉をかけるのです。
ラストに剥けて加速していく物語。少しずつ明かされる物語から目が離せません。
ユズがマザー・ミミクリーを「お姉ちゃん」と読んでいてたことが気になるラストだった8巻。アカツキたちは今のところそのことを知らず、再生回数1万回を目指して最後のゲームに挑みます。
今回のゲームは巨大ラフレシアの中にあるゴールデンパカメラを回収するというもの。アカツキたちはお留守番でしたが、ラフレシアの中に侵入した忍霧が戻れなくなってしまい、そにアカツキが向かうのですが……?
- 著者
- おそら
- 出版日
- 2019-06-27
ついに再生回数が1万回達成となる9巻。それと並行して、ユズがゲームから離脱したことが告げられます。
それと平行して明かされるユズの秘密。そしてマザー・ミミクリーとユズ、そしてひいてはアカツキとの関係が示唆される描写……。
かつてこっくりさんの時に約束したアカツキのある約束が意味を持ってくることになりそうです。
このゲームに関してアカツキが真相に迫ったとき、果たしてどんな全容が見られるのでしょうか?
緊迫したリアルデスゲームに巻き込まれた、という内容ではありますが、絵柄とキャラクターの雰囲気も相まって、ホラー色が強いわけではありません。残酷描写が苦手な方でも手に取りやすいライトさはありながら、謎の部分ではしっかりと読ませてくれます。
まだまだ謎の多いリアルゲーム「ナカノヒトゲノム」がどうなっていくのか、アニメ化も決定して盛り上がっていく本作の、今後の展開から目が離せません。