おすすめWEB漫画10選!最強のバトル漫画がどこでも読める!

更新:2021.11.27

この記事では、どこでも気軽に読めるWEB漫画の中でも選りすぐりの、魅力的なバトル漫画作品をご紹介します。

ブックカルテ リンク

まさかの出オチ!?勇者を殺した村人の冒険をWEBで『勇者が死んだ!』

勇者が死ぬという出オチから始まる物語。勇者の冒険譚をテーマにした数々の作品の中でも、特にギャグとエロに特化した作品です。自分が掘った落とし穴で勇者を死なせてしまった主人公と個性的なヒロインたちがドタバタ劇を繰り広げていきます。

いわゆる剣と魔法の世界。とある村で怠惰な生活を送っていた主人公トウカは、ある日、幼なじみユナとともに悪魔に襲われていたところを勇者シオンに助けられます。しかし対悪魔用にトウカが仕掛けておいた落とし穴にシオンが落ちてしまい、なんと勇者である彼を死なせてしまうのです。

勇者を死なせてしまったなどとは公表できるわけもなく、トウカは事実を隠蔽しようとします。しかし彼は、勇者シオンの仲間であるネクロマンサーの少女によって魂を抜き出され、シオンの死体に乗り移らされてしまいます。こうしてトウカは、勇者にとって代わり冒険の旅に出るはめになってしまうのです……。

 

著者
スバルイチ
出版日
2015-05-12


エロくてゲスな、たんなる一村人だった主人公が、勇者のゾンビとなって冒険することになるこの物語。そんな彼の周りに集うのは個性的なヒロインたちばかり。幼なじみの元魔法少女と現役武闘家がエロ担当として、勇者シオンの仲間だったネクロマンサーがロリ担当として物語が進んでいきます。出オチとエロを特に強調され紹介されることが多い本作品は、たしかにサービス精神旺盛なヒロインたちばかりで、そういったエロシーンが特に目を引きます。

しかし、エロとギャグだけで出来ているのかというとそうでもありません。世界背景などの設定部分もしっかりしていますし、実はシリアスなエピソードも多く、わりとまじめに冒険ファンタジーしているのです。ヒロインが鼻水をたらしていたり、主人公はトラップの名手であったりと、同じような他作品と比べしっかりと差別化もできています。エロ目的で読んでみたのに以外と読み応えがあった、そんな声をよく聞く作品なのです。

「ドラゴンクエスト」シリーズに代表される、勇者や魔王が存在するこういった世界観は、もはや親しみやすいポピュラーな世界です。そんな溶け込みやすい世界を舞台とする物語では、登場人物たちにも感情移入がしやすく、WEB漫画の気軽さと相性抜群と言えるのではないでしょうか。誰もが気軽に入り込んでいける作品だと思いますよ。

壮大な魔法冒険譚の30年前から始まる物語『マギ シンドバッドの冒険』

世界中で翻訳され親しまれる説話集『千夜一夜物語』をモチーフにした漫画作品『マギ』のスピンオフ作品。船乗りであり冒険者でもあるひとりの男が、7つの海をまたにかけ大冒険を繰り広げる物語です。

魔法の力やジンと呼ばれる精霊などが存在する世界。とある漁村に赤ん坊の産声がひびきわたります。生まれた子の名はシンドバッド、後にシンドリア国の王となる人物です。父親は彼が幼少のころ戦いにかり出され戦死、母親も病気で亡くなり、彼は過酷な人生を送っていきます。しかし彼は、世界中の魔導を扱う人物たちが注目するほどの特別な力を感じさせる不思議な子供だったのです。

そんな彼が14歳になったころ、迷宮と呼ばれる古代王朝の遺跡群探索のため、シンドバッドにも軍の命令がくだされてしまいます。命令を拒めば死刑、しかし迷宮から帰ったものもいない。思い悩むシンドバッドでしたが、世界を変える力を欲していた彼は、運命に導かれるように迷宮に挑む決心をします。こうして彼の、波乱に満ちた大冒険が始ったのです。

 

著者
出版日
2013-09-18


この物語は『マギ』の30年前から始まります。本作品で描かれる物語を知ることで、大高忍が描く広大な魔法ファンタジー世界の見識を広げ、さらに深く物語の世界に足を踏み入れることになるでしょう。もちろん『マギ』を読んだことが無い人でも、楽しめる魔法の冒険譚となっています。

ギャグタッチの作風や主人公の愛らしさから、比較的やわらかい表現でストーリーが進む『マギ』と比べ、本作はかなりシリアス。主人公の辛い幼少時代などが描かれています。しかしそういった苦難があるからこそ、七海の覇王と呼ばれた彼の大冒険が映えるというものです。

そして、『マギ』に登場する重要人物たちの若かりし頃が見れるというのも、本作の大きな魅力のひとつでしょう。シンドバッドの少年姿をはじめ、数々の魅力的なキャラクターが若い姿で登場し物語を彩ります。ファン冥利に尽きる演出ですね。また、彼らの過去を知ることで見えてくる本編の真実などもあり、絵的にも、話的にも非常に楽しめる作品となっています。

2017年現在では、累計発行部数2300万部を突破し大人気作品となった「マギ」シリーズ。今、その壮大な魔法ファンタジーの入り口となる物語を気軽にWEB漫画として読むことができるのです。これはもう読むしかないでしょう。

頭脳戦が光る。ゲームテイスト異能バトル漫画『出会って5秒でバトル』

無理やり特殊能力を与えられてしまった登場人物たちが、力を与えた組織の指示に従い争っていく異能バトル系の作品です。見た目は幼いが頭脳派の主人公を中心に高度な頭脳戦が展開されていきます。

16歳の高校生、白柳啓は全国でもトップクラスの成績を誇る頭脳派の少年。しかし知識を暗記するだけのつまらない学業には嫌気がさしており、むしろ効率的な攻略法を自分で考え敵や障害を排除していく戦略性の高いゲームに面白さを見出していました。ある日、彼は突如現れた包帯男とゲーム感覚の戦いを行い撃退します。しかし次に現れた魔法使いのような少女に、体に風穴を開けられあっさりと敗北してしまうのです。

その後どこかもわからない施設で手当を受け覚醒めるのですが、そこには啓と同じような目にあった人たちが集められていました。彼らはある組織から、それぞれ特殊な能力を無理やり与えられていたのです。こうして、能力を与えられてしまった彼らの戦いが、組織の指示のもと始まっていきます。

 

著者
出版日
2016-02-26


まずは大事なところ、設定の部分ですが、主人公の啓に与えられた能力は「相手があなたの能力だと思った能力」です。要は、相手があいつの能力はきっと「心を読む能力」だ、と思えば「心を読む能力」になるということ。戦いの際にはまず、自分の力を強いと思わせなければならないわけです。そういうわけで、頭を使ってこの力を使いこなさないと勝ち抜いていけません。

こういった特有の能力を、啓と共に集められた個性的なキャラクターたちも有しており、彼らとのバトルが繰り広げられていくわけです。誰がどんな能力を持っているのか、そこを楽しむのもこういった異能バトルのお約束であり醍醐味ですよね。アイデア満載の様々な能力を持った登場人物たちと、啓の独特な能力が織りなす頭脳バトルはなかなかの見ごたえです。

ゲーム好きである主人公を活かすように、バトルは終始ゲームをしているかのような感覚で読めるもの。スタートの合図やタイムカウンターが表示され、それがバトルに異様な緊張感を生み出しています。緊張感のある頭脳バトルやゲームシステム的な要素が好きな方には特におすすめしたい作品です。

平凡に見える少年は、実は平凡じゃなかった『モブサイコ100』

『ワンパンマン』の原作者として名を馳せる、ONEによる漫画作品。何の変哲もない平凡な主人公、あだ名はモブ。彼にはたったひとつだけ人より優れた力がありました。それは強力な超能力を使えるということ。この物語は、平凡だけど超能力を持つ男、影山茂夫の一風変わった青春ストーリーです。

アニメ作品などに登場するその他大勢の人物たちは、通称モブと呼ばれています。本作品の主人公の名は影山茂夫。彼はまさにモブとあだ名される、どこにでもいるような、勉強もスポーツも平凡な男でした。ただひとつ、強力な超能力を使えるということを除いては……。

あやしい除霊のアルバイトをしながら今の自分に疑問を感じ始めていた彼はある日、何を血迷ったのか肉体改造部へと入部することを決意します。果たして彼は、自分を変えることができるのでしょうか。

 

著者
ONE
出版日
2012-11-16

中学2年生の冴えない男子学生を主人公とする本作品は、ONEらしい個性豊かな登場人物で彩られています。主人公、茂夫をアルバイトとして雇うのは、霊能力など一切ない詐欺まがいの霊媒師、霊幻です。茂夫の力を利用しているようにも見えますが、たまに格言的なことを言って茂夫の心の支えにもなっています。後に秘密結社を巡る戦いに巻き込まれた際にも、何の能力もないのに敵に説教をしたりと、なかなか面白いキャラクターなのです。

本作には、こういった魅力的なキャラクターが続々登場します。思えば『ワンパンマン』にも個性豊かなヒーローが登場しますし、ONEはキャラクターメイキングにかけては他に類を見ない達人と言えるかもしれません。最初は気になるかもしれないその絵も、徐々にいい味を出すように見えてくるのですから不思議です。多くの読者に愛好されるのもうなずけます。

序盤からテンポよく話が進み、中盤から後半にかけては怒涛のバトル押しとなる本作品は、シュールなギャグセンスが光る良作品です。

『モブサイコ100』については<『モブサイコ100』の魅力を全巻ネタバレ紹介!無料で読める激アツ漫画!>で詳しく紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

荒廃した世界で垣間見える人の強さ。感動のおすすめ漫画『虫籠のカガステル』

舞台は人が巨大な虫へと変貌してしまう奇病、カガステルが蔓延する世界。21世紀末、変貌した同胞によって人類の大半が食い殺さてしまいます。この物語は、秩序が崩壊してしまったそんな世界であっても、強く生きる人々の姿を描いたダークファンタジーです。

人が巨大な虫となり、同胞である人類を捕食するようになる奇病カガステル。この謎の奇病が発生し始めてから30年後の西暦2125年から物語は始まります。カガステルにより虫となったものたちを殺す、駆除屋と呼ばれる仕事を生業とする少年キドウは、ある日虫に襲われ死にかけている男と出会います。今わの際に男の娘イリを託され、この荒涼とした終末世界で、彼と少女の生活が始まるのです。

 

著者
橋本花鳥
出版日
2016-01-13


世界は人口が激減し、秩序が失われた終末の様相を漂わせています。厳しい世界というだけでなく、自分や家族がいつカガステルに襲われ虫となってしまうかわからない……、常にそんな不安がつきまとう絶望に支配された世界なのです。しかしそんな世界であっても人は強く生き、どんな状況であっても希望を失いません。本作で描かれ貫かれているテーマは、人の強さ。そしてそんな人々の美しさです。

殺伐とした世界観のわりに絵柄は落ち着いた感じで、それほど暗いイメージは感じません。そのため残酷な描写などが苦手な人でもさらっと読めるのではないでしょうか。なにより、作中にたびたび描かれているのは荒廃した世界で生きる少女や人々の強く明るい姿です。

ヒロインのイリは、父を失いながらもキドウの言葉によって現実と向き合い、強く生きていくことを決心します。そうやって厳しい世界に向き合っていく人々の姿はを美しく、それほど暗い印象を受けないのでしょう。

人が突然虫となってしまう突拍子もない設定の奇病カガステル。完全に変貌するまでには20分という時間が設定され、この間に、人の尊厳や命の重さに対する選択が迫られます。駆除屋として生きる主人公キドウは、どんな人間が虫になろうとも仕事をまっとうする男です。彼はこの20分に何を考え何を想うのでしょうか。

壮大な宇宙バトル漫画と思わせておいてからの……『宇宙戦艦ティラミス』

宇宙を舞台にしたSFスペクタクルロマン作品……と言いたいところですが違います。コックピットにひきこもる主人公と、彼を中心にして描かれるシュールなギャグが根幹を成す、壮大なコメディ作品なのです。

主人公スバルイチノセは宇宙戦艦ティラミスのエースパイロットとして任務に従事しています。しかし思春期を迎えたばかりの若者の彼は、世代も人間性も違う艦内の人間たちとは馴染めず、自然とコクピットに引きこもるようになっていきます。この物語のほとんどは、彼のコクピット内を舞台として展開されていきます。

 

著者
出版日
2016-05-09


一見すると、非常に高い画力が目を引くカッコイイ表紙で、壮大なSF作品の印象を受けてしまいます。しかしよーく見ると、お菓子やペットボトルなどが散らばっており、主人公が引きこもりなのが伺えます。本作品の中身はSFロマン作品とは全くの別物で、むしろそういった作品をうまくギャグに昇華した内容になっています。

みなさんはSFというジャンルの作品に触れたことはあるでしょうか。それが映画であれ、漫画であれ、宇宙を扱った作品であれば、そこには無限の広がりや壮大なロマンが描かれているはずです。しかし宇宙という大舞台でありながら、本作品で描かれているのは日常のちょっとしたあるあるネタ。壮大な舞台での日常が楽しめます。

食事をする時に、おかずの串カツのころもがコックピット内に散らばってしまったり、任務中、大事な局面でTシャツが後ろ前なのに気がついてショックを受けたり、宇宙服のヘルメットに丁寧に保護シートを貼ったり、誤って大気圏突入しようとした時などは、ネットの知恵袋で質問したりもしています。壮大な舞台とこのシュールなギャグによるギャップが、なんとも言えない面白さを生み出している作品です。

実況プレイヤーが自分を実況をするハメに!『ナカノヒトゲノム【実況中】』

主人公たちは「ナカノヒトゲノム」というフリーゲームの実況をしていた時に、ゲームクリアによってゲームの世界へと連れ込まれてしまいます。このゲーム世界のリアル実況を行い、再生数一億ビューを達成することが唯一の現実への帰還方法。彼らの再生数を増やすための戦いが、今始まります。

主人公、入出アカツキは脱出ゲームを得意とする少年。花粉実況などでゲーム実況主として人気を得ていた彼は、ある日実況プレイしていたナカノヒトゲノムというフリーゲームをクリアしたところ、画面におかしな文章が表示されているのに気づきます。その内容は、選ばれた実況プレイヤーであるあなたに、クローズドステージのプレイ権限を与えるというもの。

「これよりお迎えに上がります」(『ナカノヒトゲノム【実況中】』より引用。)

このセリフとともにゲームの中に引き込まれたアカツキは、同じようにゲーム世界に連れてこられた他の実況者たちとともに、この世界をリアル実況することになるのです。彼らの目標は再生数一億ビューを達成すること。果たして彼らは無事に目標を達成し、ゲーム世界から脱出することができるのでしょうか。

 

著者
おそら
出版日
2015-06-27


 

アカツキたちが引き込まれてしまったナカノヒトゲノムという世界は、巷では失踪ゲームなどと噂され、実際に少年少女たちの失踪事件も起きていました。そしてゲーム世界の案内人パカが語るところによれば、実際にケガもすれば死にもするという世界。巨大な生物との戦いもあり、まさに命を賭けたデスゲームなのです。

そんなゲーム世界で、引き込まれた8人の実況者たちは、それぞれが得意とする分野を駆使しながら、ひとりひとりに課せられた一億ビューという目標を達成するため再生数を稼いでいきます。

与えられたテーマに対し、各々が個性を活かしながら、人とは違うやり方で再生数を稼いでいくところが最大のポイント。ある女の子は入浴シーンを見せることで再生数を稼いだりします。8人それぞれが非常に個性的なキャラクターですので、必ずひとりはお気に入りの人物がいるはずです。

デスゲームと表現しましたが、作品の雰囲気はそれほど重くはありません。ギャグも多めで、そのところどころにシリアスな場面を挟んでくるようなストーリー展開となっています。冒頭から謎の多いお話ですし、それらが明かされていくストーリーも見応えバッチリ。WEBで気軽に見れるからといってあなどれない、読み応えのある作品です。

『ナカノヒトゲノム』については<漫画「ナカノヒトゲノム」の魅力を全巻ネタバレ考察!アニメ化決定!>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

ハラハラする展開。謎の事件から始まるサスペンスホラー『ヒト喰イ』

2010年のWEB投稿漫画から始まり、2014年にリメイク版が正式に連載開始となった作品『ヒトクイ』のスピンオフ作品。世間を騒がせる謎の集団突然死事件。その元凶であるヒト喰イという存在を巡る物語です。

世間では、謎の集団突然死事件が大きなニュースになっていました。全く無関係の人々が、同時刻に突然心臓麻痺を起こし死亡してしまうというこの現象。謎多き一連の事件はすべて、ヒト喰イという存在が引き起こしているもので、本作品の主人公、研修医の佐々木アキラは、このヒト喰イに関する事件に巻き込まれていきます。

 

著者
太田 羊羹
出版日
2012-12-18


『ヒトクイ』、『ヒト喰イ』、『ヒトクイ-origin-』など、本作品に関連する作品の位置づけなどは少々わかりづらいかもしれませんので補足説明をしましょう。まず、元々WEBコミックの投稿サイト新都社に登録されていたのが本作品の原作となる『ヒトクイ』という作品です。原作者はMITA。そしてその後「裏サンデー」で『ヒトクイ』のスピンオフという形で連載されたのが、作画を太田羊羹が担当する『ヒト喰イ』。ここでご紹介している作品です。

さらにこの後に『ヒトクイ-origin-』という作品が連載開始され、作画は引き続き太田羊羹が担当しています。本作品は『ヒトクイ』に登場していた佐々木アキラという人物を主人公として描かれていますので、スピンオフ作品という位置づけになるわけです。

物語は最初、主人公アキラが事件に巻き込まれていくだけのパニック映画のような展開です。しかし、徐々に謎が明らかにされ張り巡らされた伏線が回収されていくと、彼は次第に謎を解き明かすために行動を始めます。研修医という肩書からか、常に患者を救うということを行動理念にしている部分があり、その一貫性のある姿には好感が持てます。このアキラという主人公の人柄自体が、本作品の見どころのひとつとなっているのは間違いないでしょう。

ストーリーはサスペンスです。いつ誰が死んでもおかしくない状況で、アキラを中心とした人物たちが追い詰められていくお話にハラハラドキドキする。ヒト喰イという謎に包まれた存在もどんどんその姿をあらわにしていきますし、終盤にはアキラ自身の謎も明らかにされ、衝撃的な展開が待っています。

スピンオフ作品でありながら本編より先に完結しているところも珍しい点です。謎解き部分を、細部にわたってしっかりと把握したい方は『ヒトクイ』と合わせて読むことをおすすめします。より一層深い楽しみ方が出来るはずです。

WEB漫画で読む、宇宙スペクタクル『鉄腕アダム』

舞台は戦争や大気汚染が深刻となった終末世界。地球は、宇宙からくる「蝶」と呼ばれる謎の存在により滅亡の危機に瀕してしまいます。地球の存亡をかけ蝶を撃滅するため、感情を持ったヒューマノイド、アダムの戦いが今幕を開けます。

海洋汚染が深刻化し、動植物は絶滅の一途をたどる世界。人類が新天地を目指し火星への入植を始めているそんな時代に、宇宙の彼方より蝶と呼ばれる謎の存在が飛来します。全長30メートルを越えるほどの巨大な怪物と渡りあえるのは、人間と同じような感情表現ができるAIを搭載したヒューマノイド、アダムだけ。この物語は、彼と蝶との、人類の存亡を賭けた戦いを描く作品です。

 

著者
吾嬬 竜孝
出版日
2016-09-02


この作品を一言で表現するならば「引き込まれる」。この言葉に尽きます。冒頭から謎の巨大生物との激しい戦闘シーンが繰り広げられ、まず最初に、なんでこんな戦いを?あの巨大な蝶のような生物はなんだろう?敵を倒したのは何者だろう?という疑問が次々に浮かんでくるのです。この時点ですでに作品の世界に引き込まれてしまっています。

そこからさらに、世界背景などが解説されふたりの中心人物が登場します。淡々とふたりによる会話が続けられ、話の内容から作品の世界観が徐々にわかっていき、冒頭で登場したアダムという男が何者なのかもだんだんとわかっていくのです。多くの疑問を抱かせ、その疑問をゆっくりと解いていってくれる、そうやって読者を引き込み、それが本作品の魅力をつくるひとつ目の大きな要素です。

ストーリー構成の他に、読者を引き込んでくれる大きな要素がもうひとつあります。それは要所に張り巡らされた伏線です。ただ単純に謎めいた事柄を並べているだけではなく、計画的に物語のプロットを組み上げています。荒廃した世界やアダムのAI、前後に起きた事件の真相や、度々登場するSFチックな用語の数々。それらすべてが的確に組み上げられているのです。

作中には注釈や科学に関するミニ講座などもあり、非常にわかりやすく解説されていますので、スルスルと紐の結び目が解けるように話が理解できます。複雑に伏線を張り巡らせながらも、読者にわかりやすく解説してくれる、この親切さが話に引き込んでくれるふたつ目の大きな要素となっています。

大きなふたつの要素によって物語に引き込んでくれる本作品は、SFというジャンルに特化した作品でもあります。宇宙、科学、未知、こういったものに刺激を得ることができる読者の方ならば、まず間違いなく楽しめるでしょう。

凄惨なプロローグに衝撃が走る!予想外の展開のバトル漫画!『ファイアパンチ』

生まれながらに特殊な力を使える人間、祝福者。そのひとりとされる氷の魔女によって世界は氷の世界に閉ざされていました。冷気と飢餓が蔓延する時代に、ある事件をきっかけに最愛の妹を失ってしまった少年。『ファイアパンチ』は、消えない炎をまとう復讐者となった彼を描く、怒りと悲しみに満ちた物語です。

祝福者と呼ばれる、生来から人知を超えた力を扱える者たち。この世界にはそんな特殊な力を持った人々が数多く存在しています。ある村に、強い再生能力を持った兄妹がいました。兄アグニは、腕を切り落としても瞬時に新しい腕が生えてくるほどの強い再生能力を持ち、妹ルナも兄より弱いが同じ能力を持っていました。彼ら兄妹は飢餓に苦しむ村人へ自分の肉を分け与えるという生活を続けていたのです。

しかしそこへ食料を求め、炎の力を持つ祝福者ドマが村を訪れます。彼は村の家々にアグニの「人肉」があることに気付いてしまいます。人食いに衝撃を受けたドマは、一方的に村を焼き払ってしまうのです。彼の炎の能力は「焼け朽ちるまで消えない炎」。村人すべてが焼け死ぬ中、アグニとルナは再生能力によりすぐには死ねなかったのです。消えぬ炎によって肉が焼かれ再生することを繰り返す地獄のような光景。やがて再生能力の劣る妹は塵となり、アグニだけは8年もの間焼かれ続け、再生し続けるのです……。

 

著者
藤本 タツキ
出版日
2016-07-04


表紙の睨みつける少年の顔が鬼気迫る怪作。「このマンガがすごい!」ランキング オトコ編2016年9月分で第1位となり、主人公の壮絶な生き様と意外性のあるストーリーが反響を呼んだ作品です。あらすじを少々長めに書き込んだのは、主人公であるアグニのまとう炎の意味を理解していただきたかったからです。彼の背負う炎には、とてつもない怒りと悲しみが宿っています。本作品を読んだ読者が大きな衝撃を受けた理由が十分に伝わったのではないでしょうか。

文字通り、自らの身を切る思いで共に生きてきた村人と、最愛の妹を焼き殺された主人公アグニ。自らも実に8年もの間消えぬ炎に焼かれ続け、痛みに耐え続けます。作中で描かれるここまでの凄惨なストーリーは、目を覆いたくなるような光景です。しかし物語はここからさらに過酷な展開を見せ始めます。ご都合主義などは期待できず、物事は常に現実的に進んでいくのです。

一般的な作品ならば、主人公に凄惨な過去があったとしても、そこから始まる物語にはなんらかの救いや、何かしらの事の達成などがあるのではないでしょうか。しかし本作はそういった作品とは一味も二味も違います。アグニの復讐の旅は、おおよその読者の予想の遥か外をひた走っているのです。とにかくインパクトの強い作品ですので、心に残ることは間違いありません。そしてその読者が受けたインパクトをヒラリとかわすように、物語は意外な展開を見せていきます。

『ファイアパンチ』が気になる方は<『ファイアパンチ』衝撃作の魅力を全巻考察!【最終8巻ネタバレ注意】>もあわせてご覧ください。


WEB漫画作品の中には、今までには無かった斬新なアイデアを扱った作品も多いようです。新境地を開き読者に新しい刺激を与えてくれる場であり、新たな才能を開花させる場にもなっているのでしょう。WEB漫画は、これからますます注目するべきコンテンツだと言えます。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る