人類が月面に立つ……その歴史的な出来事を実現したのがアメリカの「アポロ計画」です。この記事では、彼らが計画を打ち立てた背景やミッション、費用、アポロ13号の爆発事故、陰謀論などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本もご紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
アメリカ航空宇宙局(NASA)がおこなった人類初の月面着陸ミッションのこと。この計画では、人間が月面に降り立つだけでなく、「安全に地球まで帰ってくること」が最大の目標として挙げられました。
1967年に発表された計画では、7つの段階に分けて目標を達成することが示されました。このような手順を経ることで、確実に計画を進めようとしたのです。
1:最初に司令船と機械船の無人飛行を成功させる
2:月着陸船の無人飛行を成功させる
3:司令船に人を乗せて低い軌道で地球を周回し帰還する
4:司令船と機械船、月着陸船すべての機体を使って低い軌道で地球を周回し帰還する
5:すべての機体を使って高度7400kmまで飛行し帰還する
6:すべての機体を使って月の周りを回った後、地球に帰還する
7:月面に着陸し、地球に帰還する
計画を実行するために、高さ110mもある大型ロケット「サターンV」を開発することや、飛行船に搭載するコンピュータシステムを小型化することにもチャレンジしました。また飛行船を「司令船」「機械船」「月着陸船」に分けたのは、最小限の燃料で月面から地球へ帰還するための工夫だったといいます。
その結果、初めての月面着陸が1969年7月20日に実現しました。月面に降り立ったのは、ニール・アームストロングとバズ・オルドリンの2人。一緒に行ったマイケル・コリンズは司令船に残り、2人の活動を支えました。アームストロングは、月面に立った時に「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」という言葉を残しています。
アポロ計画の初期には3人の尊い命が犠牲となりましたが、1972年までの間に月面に降り立った人数は12人を数え、地上では何十万人という人たちが計画を支えました。
この壮大な計画には、当時の金額で約200億ドル以上、いまの日本円に換算すると10兆円を大きく超える莫大な費用が投じられました。
計画の構想が始まったのは、1960年のこと。当初は有人宇宙船で月を周回することが目標でしたが、1961年1月に、J・F・ケネディが大統領に就任したことで、計画が大きく前進しました。その背景には、旧ソビエト連邦との宇宙開発競争があったといわれています。
ケネディは大統領選挙の期間中から、宇宙開発やミサイル防衛に関してソビエトより優位に立つことを公約として掲げていたのです。しかし莫大な費用がかかることから、大統領就任後すぐには実行に移しませんでした。
ところが、1961年4月12日にソビエトの宇宙飛行士ユーリ・ガガーリンが、史上初の有人宇宙飛行に成功したことを受けて、アメリカ国内の雰囲気が一変します。
その結果、ケネディはアポロ計画の実現性を検討するようNASAに指示を出し、同年5月25日に「1969年の終わりまでに人間を月面に着陸させる」と宣言したのです。国を挙げての一大プロジェクトが動きはじめました。
アポロ計画においては、アポロ11号を含めて、計6回の月面着陸に成功しています。しかし「アポロ13号」では大きな爆発事故を経験しました。
3回目の月面着陸を目指してアポロ13号が地球を旅立ったのは、1970年4月11日のこと。その2日後、電気配線のショートによって発生した火花で機械船の酸素タンクが爆発し、電力発生装置や水などを失いました。
事故発生後すぐに対策が練られ、機械船の損傷が激しく、そのまま地球に引き返すことは困難だと判断されます。そこで帰還に必要な機能を持つ司令船を守るため、本来2人乗りの月着陸船に3人の飛行士を避難させ、月の裏側を回ってから地球への帰還を試みることになりました。
打ち上げから6日後の4月17日、ひとりも欠けることなく無事に地球へ帰還。見事なチームプレーで事故に立ち向かう人々の様子は、映画「Apollo 13」で再現され、アカデミー賞で最優秀編集賞と最優秀録音賞を受賞しました。
「人類が月面に立った」という出来事が、NASAによるでっち上げではないかと話題になったことがあります。いずれも民間の出版物やテレビ番組で取り上げられたものですが、その多くは科学的な知識の不足や未確認な情報に基づいていたといわれています。
「月で撮られたという写真は合成ではないか」「アポロ計画以降、人類が月に行っていないのは、本当は技術力がないからではないか」などさまざまな憶測が飛び交いましたが、すべて明確な理由のもと反論がなされています。
- 著者
- 佐藤 靖
- 出版日
- 2014-06-24
世界の宇宙開発を最前線でリードしてきたNASAの、苦悩に満ちた歴史を克明に描いた一冊です。
科学的な内容にとどまらず、政治的な背景や意思決定、予算に関することなど、組織論にも踏み込んで整理されていることが特徴になっています。
いまや民間企業も宇宙ビジネスに参入する時代。先駆者の足跡を振り返りながら、未来の姿を想像してみましょう。
- 著者
- マーゴット・リー シェタリー
- 出版日
- 2017-08-17
同タイトルの映画も話題となりましたが、本書はその原案となる作品。アポロ計画など宇宙開発競争真っただ中にいたNASAを支えた人たちの、奮闘する姿を綴ったドキュメンタリーになっています。
当時はまだコンピューターが無い時代。まさに天文学的数字を扱う複雑な計算は、人の手でおこなわれていました。その中心となっていたのが、数学教師をしていた黒人女性です。
差別的な処遇を受けていた彼女たちによって、実はアポロ計画も支えられてきたという歴史的事実。しっかり噛みしめながら読みたい一冊です。
当時人類初の月面着陸を中継していたテレビ放送に、世界中の人々が釘付けになり、その一挙手一投足を見守ったといわれています。その陰ではさまざまな困難と戦いながらアポロ計画を支えた人たちがいました。興味を持った方はご紹介した2冊の本をぜひ読んでみてください。