「刺されたら死ぬかもしれない」という恐怖のイメージが強いスズメバチ。最強の昆虫ともいわれる彼らの生態を理解することで、正しい対策をとることができます。そのほか意外と知らない女王蜂の巣作りなどについてもわかりやすく解説していくので、ぜひご覧ください。
ハチ目スズメバチ科に属する昆虫の総称で、その名前は「大きさが雀ほどある」「巣の模様が雀の模様に似ている」ことに由来しています。
強力な毒をもっていることが特徴で、性格も攻撃的。飛行スピードは時速40kmに達することもあるそうです。
4属67種が存在し、分布はユーラシア大陸を中心に、アメリカ大陸やアフリカ、オーストラリアなどにも広がっています。日本には16種が生息し、北海道から沖縄までの全土が分布範囲です。
一般的な大きさは2~3cmほどですが、日本にも生息するオオスズメバチの女王蜂は、約4~4.5cm。働き蜂は2〜4cmほどあります。
活動時期は、春になる4月前後から冬眠前の10月頃まで。梅雨時に巣作りを始め、7~8月にかけてどんどん大きくなり、10月頃が最大。もっとも活発なのが7~10月だといわれていて、人が襲われる被害が多いのもこの時期です。
スズメバチのなかで冬を越すことができるのは、基本的には次期女王蜂のみ。交尾をした後、単独で朽木や土の中に潜り、越冬します。3~4月になって暖かくなると活動を開始。体が弱っている状態なので、花の蜜などを吸って力を蓄えます。
ある程度の体力がついた梅雨入り前後から巣作りを開始。たった1匹で作るので、最初にできるのは小さいもの。そこに産卵をします。
その後女王蜂は、生まれてくる働き蜂を育てながら、巣作りやエサ集めなどを単独でこなしていくのです。
7月頃になると働き蜂がどんどん羽化し、9月~10月にかけてその数は最大となります。この頃から新女王蜂の育成も開始。寒い冬が訪れる前に現女王蜂は短い生涯を終え、新女王蜂が巣から飛び立っていくのです。
ちなみにオスの蜂は子孫を残すためだけの存在で、一切働きません。交尾をしたらまもなく死亡します。
ハチ類のなかでいえば、スズメバチ属は間違いなく最強だといえるでしょう。ニホンミツバチやトウヨウミツバチの数万匹をもってしても、数十匹のオオスズメバチが襲えば2〜3時間で全滅させることができるほどです。
ただ彼らにも天敵は存在します。まずは人間。巣を駆除したり、食用として幼虫やさなぎ、成虫を採取したりします。同様にクマも巣を破壊し、幼虫やさなぎを食べるとして天敵に挙げられるでしょう。
そのほか野鳥やオニヤンマ、オオカマキリ、クモなどもスズメバチを捕食します。また巣の中で幼虫に寄生をする菌類などもいて、一概に「最強」とはいえないようです。ただ好戦的な性格と、強力な毒を持っていること、集団で襲ってくることなどを考えると、やはり危険なことには変わりありません。
スズメバチに刺されて命を落とす人は、日本国内で毎年20人前後にのぼります。もしもの時の対処法を知って、自分の命を守れるようにしておきましょう。
まず刺された事例の多くは、巣の近くで起きています。まとわりつくように飛んできた場合、近くに巣があり、彼らも人間が敵がどうかを見定めている状態です。手で払いのけるなど攻撃的な行動はとらないようにしましょう。
また、身につける衣類は白や淡い色がおすすめです。スズメバチは黒いものをめがけて攻撃してくるので、濃い色のものを着用するのは避けるようにしましょう。髪の毛の色が黒い場合は、帽子などを被るのも対策のひとつです。
また彼らは嗅覚も優れているので、強い香りを発するものは身につけないようにしてください。
それでも刺されてしまった場合、まずはその場所から遠くに離れ、刺された箇所の毒液を体外に出すようにしましょう。指で絞り出しながら、綺麗な水で洗い流すのが効果的です。水溶性のため、傷口に口をつけて吸い出すのはやめてください。
その後は傷口を冷やしながら病院を受診しましょう。
- 著者
- 中村 雅雄
- 出版日
- 2013-06-28
作者の中村雅雄は、40年以上スズメバチの研究をしてきた人物。彼の目線をとおして生態や人間との関係性を綴っています。文章の端々から愛情を感じることができるでしょう。
人を刺し、しかも殺傷能力をもっているため、「害虫」として名高いスズメバチ。普段私たちの目に触れるのも、被害の報道などがほとんどです。
しかし彼らの目線に立ってみると、どうでしょうか。人間はスズメバチにとって「よい」ものなのでしょうか。
新たな視点を与えてくれるとともに、スズメバチがどのように生活をし、成長しているのかも知ることができる一冊です。
- 著者
- 出版日
- 2014-05-01
小学校低学年から楽しめる図鑑です。写真はオールカラーなうえ、コミカルなイラストや図も豊富に掲載。眺めているだけでも楽しめるでしょう。
またハチの種類や食性、巣の構造など生態に関する情報も網羅されているので、情報量もたっぷり。調べものをしたい時にも役立つはずです。
日本は全国どこに行ってもハチが生息しています。身近な存在である彼らの魅力にとことん迫れる一冊です。
害虫として悪名高いスズメバチですが、彼らの目線になってみるとまた違った見え方ができるのではないでしょうか。