恐竜の知名度ランキングがあったとしたら、ティラノサウルスとトップ争いをするであろう「トリケラトプス」。猛々しい角はまさに強さの象徴で、幼い子どもたちにも人気です。この記事では、そんな彼らの生態や特徴、ティラノサウルスやトロサウルスとの関係性、化石発見の歴史などをわかりやすく解説していきます。あわせて恐竜をもっと好きになる関連本も紹介するので、最後までチェックしてみてください。
トリケラトプスが地球上に生息していたのは、今から約6500万年も前の白亜紀の終わり頃。生息地は現在の北アメリカで、同じフィールドにはティラノサウルスも生きていました。恐竜界の2大スターが共存していたということです。
体の特徴としては、なんといっても3本の角でしょう。角を持つ恐竜は「角竜」というグループに分類されますが、その中での知名度は間違いなくトップクラスです。全長は9メートルほど。化石が狭い範囲からたくさん発見されているので、群れで暮らしていたと考えられています。
また顎が発達しているのも特徴です。歯の形状も、かたい繊維を切り刻むのに適していて、かなりかたい植物なども餌として食していたことがわかるでしょう。草食ではありますが、多少は動物質のものを食べていたのではないかと主張している研究者もいます。
寿命ははっきりとはわかっていません。ただ代謝能力の論理から約20年〜30年ほどだったのではないかと推測されているようです。
角や襟飾りはオスにとっての強さの象徴で、求愛行動のアピールにも使っていたと考えられています。化石に角の傷があることから、群れのなかの階級争いなど同じ種族間で争っていたのだろうとされています。
恐竜界ではツートップの知名度を誇るトリケラトプスとティラノサウルス。決して仲良く暮らしていたわけではありません。トリケラトプスは草食性で、ティラノサウルスは肉食性、つまりティラノサウルスはトリケラトプスにとって天敵だっと考えられます。
事実、発見されているトリケラトプスの化石のなかには、ティラノサウルスの噛み傷だろうと思われる痕跡が存在します。
この2種の攻防を映像にすればたしかに迫力のあるものになるでしょう。よって再現映像などではたびたび戦いが描かれていますが、この構図に疑問を呈する研究者も少なくありません。
ティラノサウルスの全長は、成体でも約11メートル。強靭な体と角を持っているトリケラトプスを狩りの標的とするには無理がありそうです。
よってティラノサウルスは、積極的にトリケラトプスを捕食していたのではなく、小さな子どもや力の衰えたものを中心に狙っていたのではないかという説が有力です。
多くの化石が発見されていて知名度もあるトリケラトプスですが、そのポジションを揺るがしかねない論争が巻き起こりました。それがトロサウルスとの関係性です。
それまで、類似している点はあるものの、この2種は別々の恐竜として扱われていました。ところが2010年、アメリカのロッキーズ博物館がとんでもない説を打ち出しました。トリケラトプスは、トロサウルスの子どもの姿だというのです。2種の頭骨は別々の形をしていましたが、成長とともにトロサウルスの形になっていくという見方が強まりました。
もしこの説が正しい場合、どうなるのでしょうか。これまでトリケラトプスとして認知されていた恐竜が、すべてトロサウルスであるということになってしまいます。つまり教科書などからトリケラトプスという単語が消えてしまうかもしれません。
しかし実際は、先に発見されたうえに認知度が高いのはトリケラトプスで、名前が消えるのであればトロサウルスの方だそうです。もっとも両者の関係性はいまだ解明途中なので、同一種として扱うかは未定。いずれにしてもトリケラトプスファンは一安心というところでしょう。
トリケラトプスの化石が最初に発見されたのは1872年のことです。場所はアメリカのワイオミング州で、背骨と腰の腸骨が見つかりました。しかしこの骨がトリケラトプスのものだろうと推測されるようになったのはずいぶん経ってからです。
象徴である角が発見されたは、1887年、アメリカのコロラド州で見つかりました。しかしこの時もすぐにはトリケラトプスと断定されませんでした。この化石の研究を担当したマーシュ博士は、巨大なバイソンのものだと記録したのです。
ところが翌1888年に再び別の角の化石が発見され、そこでようやく角竜という概念が生まれました。
1889年により保存状況のよい化石が発見されると、バイソンと記録していたものも角竜のものだと判明しました。研究を重ねて間違いなく3本の角を持った恐竜が存在していたと確信できた時点で、文字通り「トリケラトプス(3本の角)」という名前が誕生したのです。
ちなみに彼らの化石はたびたびオークションにかけられることがあります。全身の70%ほどで約8600万円と高額で、誰もが簡単に手を出せる代物ではないでしょう。
- 著者
- 土屋 健
- 出版日
- 2013-03-19
今はその姿を見ることができない恐竜たちですが、彼らが確かに存在し、生きていたことは事実です。もし映画のように人間と同じ時代にいたとしたら、私たちはどのような関係性を築くことになるのでしょうか。
トリケラトプスなどの恐竜を犬や猫と同じように捉え、ペットとして飼うことはできるのか、その場合の世話はどうすればいいのか、というユニークな観点からさまざまな種類の生態を学ぶことができます。突飛な設定から本質に近づいていくので、好奇心を揺さぶられながらも正しい知識を身につけることができるでしょう。
抽象的な内容かと思いきや、いい意味で期待を裏切られます。リアルなイラストと詳細なデータで、真剣に「もしも本当に飼うなら……」と考えさせられてしまうのです。エンターテインメント性抜群の一冊で、楽しく恐竜について学びましょう。
- 著者
- 黒川 みつひろ
- 出版日
- 1992-06-01
生物のリアルな世界を追うのにもっとも適した手法は、ドキュメンタリーではないでしょうか。しかし絶滅してしまった恐竜をカメラで撮影することはできません。
そこで活躍するのが本書です。まさにトリケラトプスの日常をドキュメンタリー調で追っていて、餌探しや群れでの移動、はたまた気候の変化などもわかりやすく描かれています。
児童書ですが、大人が読んでもなるほどと思える情報が盛りだくさん。トリケラトプスの暮らしに感情移入しながら読むことができる作品です。