瞬く間に遠くまで届く「光」。光の速さは宇宙で1番速いといわれています。いったいどれくらいのスピードなのか、計測方法や、光よりも速いものはあるのかなど、わかりやすく解説していきます。また宇宙にもっと興味を持てるようになるおすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてください。
夏の夜空を彩る花火を見ていると、花火が開いてからしばらく経って、ドーンという音が聞こえてきます。これは、光と音で伝わる速さが違うからです。
まず最初に「音の速さ」について説明しましょう。
音の速さ(音速)は「秒速340m」といわれています。1秒間に340m進むという意味ですが、正確には「秒速331.45m」で、気温や湿度、気圧によって変動し、1気圧、湿度0%、気温15℃の時に秒速340mになります。
ちなみに、速さの単位として「マッハ」というのを聞いたことがあるでしょう。これは音速を基準にした単位で、「マッハ1」は音の速さと同じです。ジェット戦闘機などは超音速機と呼ばれ、マッハ2~3で飛ぶことができます。
では、光はどうでしょうか。
光の速さ(光速)は「秒速30万km」といわれていますが、正確には「真空中で秒速2億9979万2458m」です。音速と比べると遥かに速いのですが、あまりピンとこないので、自動車と比べてみましょう。
自動車では「時速」という単位がよく使われます。1時間に進む距離のことで、一般道の制限速度は「時速60km」です。同じように光の速さを時速で表してみると「時速10億8000万km」になります。やはり凄まじい速さですね。
先述したように光は秒速30万kmで進み、1秒間に地球を7周半もできるほどの速さです。ではもっと遠いところまで行くには、どれくらいかかるのでしょうか。
たとえば地球に1番近い天体「月」までの距離は、平均すると38万kmなので、光の速さだと1秒ちょっとで着きます。人間が歩く場合、月まで時速4kmで休みなく進むとしても約11年かかります。
同じように計算すると、光が太陽まで届く時間は8分20秒ほどです。
ちなみに冬の星座として有名なオリオン座のなかでひときわ赤く見える星「ベテルギウス」までは、光の速さでも約642年かかります。
イメージがしづらい光の速さですが、どのようにして計測するのでしょうか。
古くはイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが、2つの電球を使って光の速さを計ろうとしましたが、うまくできませんでした。
当時は、そもそも光の速さは無限なのか、有限なのか、という議論もあったくらいです。
ところがガリレオの死後の1676年、デンマークの数学者オーレ・レーマーは、木星を使って光の速さが有限であることを証明します。当時は、木星の衛星「イオ」が周期的に木星の陰に隠れることがわかっていました。もし光の速さが無限ならば、公転によって地球と木星の位置関係が変わっても、その周期は変わらないはずです。
レーマーはこれに着目して、イオが木星に隠れる周期を計測。そして地球と木星が近づいた時は、離れている時よりも早くイオが隠れることを突き止めたのです。つまり、地球と木星が近づいた距離の分、光が進む時間が短いということです。
この時間差と、木星から地球までの距離の変化をもとに光の速さを計算すると、秒速21万3000kmになりました。精度はともかく、これで初めて光の速さが有限であることがわかったのです。
1849年には、フランスの物理学者アルマン・フィゾーが、歯車と鏡を使って光の速さを求めました。回転する歯車の歯の隙間から光を通すと、先に置いた鏡から反射してきた光が見えますが、歯車の回転数を上げていくと、光が往復する間に歯が回ってきて、戻ってきた光を遮るようになります。この時の歯車の回転周期と光の往復距離から光の速さを求めたところ、秒速31万3000kmとなりました。
その後、フランスの物理学者フーコーやアメリカの物理学者アルバート・マイケルソンは、歯車の代わりに回転する鏡を用いた実験で光の速さを求めました。フィゾーの実験同様、先に置いた鏡から反射してきた光が戻ってくるまでの間に、回転鏡が何度傾いたかによって計算します。
マイケルソンはこの方法で計測した結果から、光の速さは秒速29万9910±50kmであると1879年に発表しました。
現在は、レーザー光線の波長と周波数を正確に計測することで、光の速さを求めています。
光の速さを超えるものはない、といわれています。それは、アインシュタインの相対性理論で「光速に近づくほど質量が無限大に近づく」とされているからです。つまり、光速に達すると物質はそれ以上加速できなくなるのです。
このように、質量が存在する以上、光速を超える移動は不可能とされています。しかしこの命題に果敢に挑んだ男がいました。メキシコの物理学者、ミゲル・アルクビエレです。
彼が提唱した理論は「アルクビエレ・ドライブ」と呼ばれるもの。ある物質の後方でビッグバンを起こし、物質の前方でビッグクランチ(空間の収縮)を起こせば、時空の流れに乗って光より速い移動ができるようになるという理論でした。
しかし、どのようにしてビッグバンおよびビッグクランチを起こすのか、具体化はほぼされておらず、机上の空論にすぎないのが現状です。もしこの理論が現実的なものとなれば、「ワープ」が可能になる日が来るかもしれません。今後の展開に期待しましょう。
- 著者
- 新堂 進
- 出版日
- 2010-08-19
本書は、光の速さは不変であるとしたアインシュタインの相対性理論を、わかりやすく解説しています。 この分野の書籍にはつきものの計算式も、書いてはいますが詳しい算出方法などは飛ばしており、余計なところで躓かせません。
文章で説明したことをイラストで補ってくれる構成なので、理解を深めながら読み進めることができるでしょう。
著者によると、この理論を理解するためには「常識を捨てる」ことが大切だそうです。まず本書を読んで、「相対性理論は難しくない」という気持ちになってみましょう。初心者にもおすすめです。
- 著者
- 中川人司
- 出版日
- 2013-06-21
著者の中川人司は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の元職員です。退職後は、当時の知識を活かして公立高校の教師を務めました。
本書は、実際の授業の内容を1冊にしたもので、光の速さも含め、さまざまなテーマをコンパクトにまとめています。
理系でなくてもまったく問題ありません。素朴な疑問に答えてくれて、宇宙を身近に感じられるようになる教科書です。