ゲームのキャラクターになったり、物語に登場したりと世界的にも有名な「ドードー」。しかしその姿を実際に見ることはできません。今回は、彼らの生態や生息地を紹介しながら絶滅の理由を解説していきます。
ハト目ドードー科に分類される、すでに絶滅してしまった鳥類です。
名前はポルトガル語で「のろま」という意味。英語では「滅びてしまった存在」を指す言葉として使われています。
体長は推定100cmほどで、七面鳥よりも少し大きい鳥だったと記録されています。尾は20cmほど、体重は25kgほどでした。翼は小さくて飛ぶことはできず、丸々と太っていたようです。
速く走ることもできないため、主食は果実や木の実、木の葉など動かないものでした。
生息地はマダガスカル共和国沖にあるモーリシャス島、レユニオン島、ロドリゲス島。マスカリン諸島と呼ばれる島々で、島ごとに異なる種類が暮らしていたとされています。ただそのほとんどがモーリシャス島のものであるうえ、目撃例も少ないので、生態は謎に包まれている部分が多いのが実情です。
飛べない鳥として有名なドードー。速く走ることもできないうえ、鳥なのに巣は地上、卵もひとつしか産まなかったといいます。また警戒心が非常に薄かったという記録も残っていました。
それもそのはず、彼らが生息していたマスカリン諸島は、絶海の孤島。人間は暮らしていません。総面積は東京都ほどで、木々が生い茂る緑あふれた島だったといいます。
閉鎖された独特な場所だったため、大型肉食獣はおらず、ドードーには天敵がいませんでした。彼らは空を飛ぶ必要はなく、また速く走る必要もなかったのです。地面をゆっくりと歩くことで翼は退化。のんびりと木の実を食べ、ひとつの卵から産まれる子を大切に育てていました。
ドードーが暮らしていたマスカリン諸島が人間に発見されたのは、大航海時代初期の1507年のことです。ポルトガル人によって発見され、その後は貿易航路の補給基地として開拓されていきました。
1598年にはオランダ人が8隻の船を率いて寄港した記録が残っています。後に彼らが発表した「航海日誌」によって、ドードーの存在が世界に知られることになりました。
警戒心が薄く逃げ足も遅かったため、ドードーは人間の絶好の食糧だったといいます。さらに人間が島に連れ込んだ犬や家畜などによって、卵や雛鳥も食べられていきました。
追い打ちをかけるように森林開発も進み、生息地を失った彼らは1681年の目撃情報を最後に、絶滅してしまいます。人間がマスカリン諸島を発見してからわずか150年ほどで、滅んでしまったのです。
ドードーの存在を世に広めたオランダ人のファン・ネック提督の航海日誌には、ドードーの肉は煮込むと固くなり、おいしくなかったと記されています。
ただ当時は、航海中に肉を補給できるだけでもありがたいこと。労力を使わず、危険な目にもあわずに捕獲できる肉は重宝されたでしょう。その噂はあっという間に広まり、塩漬けにして保存食にするなど、さまざまな船乗りたちが入植し、捕まえていきました。
また人間が連れてきたイヌや家畜の餌としても用いられ、どんどん数を減らしていくことになります。
- 著者
- ["ポール・ライス", "ピーター・メイリー"]
- 出版日
ドードーをはじめ、人間の手によって絶滅に追い込まれた生き物を紹介する絵本です。15種類の動物たちが姿を消すことになる経緯が、美しいイラストとともに語られています。
内容は実にシビアで、事実をただ淡々と述べるその文体がかえって虚しさや悲しさを際立たせているでしょう。
ドードーが生存していた16世紀前後は、まだ動物を保護するという概念が薄かった時代です。21世紀に生きる我々は、その重要さを理解しているはず。過去の過ちをくり返さないよう、自然と共生することを考えさせられる一冊です。
- 著者
- 倉科 昌高
- 出版日
- 2004-12-01
モノトーンで描かれているにもかかわらず、あたたかい印象を与えてくれるイラストが魅力の絵本です。登場するのはドードーをはじめ、ステラーカイギュウ、タスマニアンタイガー、オオウミガラスなどすべて絶滅してしまった動物たち。
彼らがどんな姿をしていたのか、どんな声で鳴いたのか、どんな暮らしをしていたのか……もう我々は見ることができません。「たしかに そこに いたはずなのに ぼくたちは であえたはずなのに」という文章が胸を打ちます。
大人が読んでも考えさせられるほか、文字はすべてひらがなで書かれているので小さい子どもでも読むことができるでしょう。読み聞かせにもぴったりです。
絶滅した動物の代名詞でもある「ドードー」を紹介しました。知れば知るほど愛らしく、できることなら見てみたいと思ってしまいますが、出会えるのは本の中。そのほかにも姿を消した動物たちが数多くいることを教えてくれる2冊なので、ぜひお手に取ってみてください。