トラやライオンと同じくネコ科の肉食動物「ピューマ」。有名なスポーツ用品メーカーのロゴデザインでもおなじみです。この記事では彼らの生態や性格、ペットとして飼育できるのか、よく似たジャガーやヒョウとの見分け方などを解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。
食肉目ネコ科ネコ亜科に分類されるピューマ。ヒョウやライオンが属するヒョウ亜科とは異なり、人とともに暮らすイエネコに近い種だとされています。
ネコ亜科のなかでは最大級の大きさを誇り、体長は100~180cm、体重は65~100kgほど。子どものころは体に黒や黒褐色の斑紋があり尾には黒い輪が見られますが、成長するにつれて消えていき、大人になると全身は黄褐色の毛で覆われ、耳と尾の先端だけが黒くなります。
生息地は北米大陸のロッキー山脈から南米大陸のパタゴニア平原。平地から標高3900mほどの高地、湿地帯や砂漠地帯などさまざまな環境に適応していて、20~30種類が暮らしています。
かつてはアメリカのほとんどの州で害獣指定されており、駆除が進んだ結果、東部から中部にかけて生息していた種はほぼ絶滅。その他の地域も個体数が大きく減少しているのが実情です。北アメリカ東部亜種・フロリダ亜種・コスタリカ亜種の3種は、ワシントン条約によって国際間の取引が禁じられています。
基本的には単独行動をしていて、広い縄張りを活発に巡回。その広さは半径9kmほどにもおよぶそうです。主に食べるのはネズミやリス、ウサギなどの小型哺乳類や、鳥類、爬虫類、魚類など。時にはシカなどの大型哺乳類を捕食する場合もあります。
寿命は野生下では12年ほど、飼育下では20年以上生きた個体もいるそうです。
とても運動能力の高い動物で、木登りが得意なほか泳ぐことも上手です。
またスポーツ用品メーカーのロゴに跳躍する姿が描かれていることからもわかるように、驚異的なジャンプ力をもっています。最高で長さ12m、高さ4mを飛んだ記録も残っているんだとか。
さらに聴覚や嗅覚も優れていて、遠くからでも獲物の位置を察知することができるそうです。
彼らの狩りの仕方は、獲物を見つけると気配を殺してそっと背後から忍び寄り、ジャンプ力をいかして一気に飛び掛かるというもの。その際、確実に獲物の動きを止めるために喉元を狙って食いつくのだそうです。ヤマアラシなどトゲで覆われた防御力の高い相手の場合は、柔らかい腹部を鋭い爪で引き裂くなど頭も使います。
何かペットを飼おうと考えた際、ネコを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。ネコ科に属するピューマも、少し大きなネコといえなくもありません。
日本の一般の家庭で飼育をすることはできませんが、世界に目を向けてみると、実際にペットにしている人がいるのです。
ロシアに住むとある夫妻は、アパートでピューマのメッシと生活しています。専用のプレイルームを作り、1日2回散歩に出かけるのだとか。
メッシは生まれつき筋肉の成長に問題があり、平均的な個体と比べて3割ほど小さいそうで、生まれた時から人間に育てられていることもあり、人懐こくて甘えん坊な性格だそう。その姿はたしかに大きめなネコといった感じです。
もともとピューマは性格が穏やかなほうで警戒心が強く、人を襲うことは滅多にありません。ただ肉食獣なので、下手に刺激してしまえば襲われる可能性もありますし、じゃれているつもりの体当たりが怪我に繋がることもあるでしょう。注意が必要です。
ピューマとよく似た見た目をしている肉食動物に、ジャガーやヒョウがいます。同じネコ科ですが、ネコ亜科のピューマに対し、ジャガーやヒョウはヒョウ亜科に分類されているので系統が異なります。
ジャガーとヒョウには体に黒い斑点があるので、見分けるのは比較的簡単でしょう。
ヒョウはアフリカに生息しているのでピューマと交わることはないですが、ジャガーはアメリカに生息。人間による開発が進んだ影響で、これまで棲み分けてきた生息域が重なることも多くなっているそうです。どちらも広い縄張りを持つ種なため、縄張りや餌をめぐって争いが頻発することが危惧されています。
ちなみにジャガーの体長は120~185cm、体重は50~140kgとピューマより一回り大きく、アメリカ大陸では最大のネコ科動物。争った場合はジャガーが有利だろうといわれています。
また生息域が重なったことで、今後交配が進み、交雑種が誕生するのではないかともいわれています。
- 著者
- ["フィオナ・サンクイスト", "メル・サンクイスト"]
- 出版日
- 2016-07-30
ネコ科動物の専門家である著者が、ありとあらゆるネコ科動物の保全状態や生態などを詳しく解説している一冊。ほぼすべてのページに美しい写真が掲載されているので、図鑑としても写真集としても楽しめるでしょう。
ピューマをはじめとするネコ科特有のかわいらしい仕草と、野生動物の凛々しい姿に目を奪われます。また彼らが暮らしている地域の自然環境に関するコラムなども充実していて、その生息域を守っていかなければならないとあらためて考えさせられます。
- 著者
- 今泉 忠明
- 出版日
ピューマなど世界中のネコ科動物全38種について、生態やデータなどを詳細に記した図鑑です。習性や逸話なども豊富な写真とともに記されているので、楽しく読むことができるでしょう。
こうしてネコ科をまとめてみてみると、トラやライオン、ヤマネコやユキヒョウなど、どの種も狩りの技術に優れていることがわかります。またどの種もしなやかな体をしていて、その美しさに惚れ惚れしてしまいます。
自然界で強く生きる彼らの姿を堪能してみてください。