水の中でぷかぷかとのんびり過ごしているイメージがあるカバ。動物園でも人気者ですが、実はアフリカ大陸最強の動物だといわれているのをご存知でしょうか。この記事では、彼らの生態や性格、水中での過ごし方、赤い汗をかくという噂について解説していきます。あわせておすすめの関連本もご紹介するので、ぜひご覧ください。
偶蹄目カバ科カバ属に分類される哺乳類です。英名はヒッポポタムスといい、「川の馬」という意味。日本語で漢字をあてる際は「河馬」と書きます。馬というものの分類学上は牛に近く、DNA的には意外にもクジラに近いことがわかっています。
体長は3.5~4m、体重はオスで1600~3200kg、メスで1400kgほど。地上では象に次ぐ大型動物です。
体はぶ厚い脂肪と皮に覆われていますが、表皮は非常に薄く、体内の水分が外側に放出されてしまうそう。皮膚が乾燥すると裂けてしまう性質があり、見た目に反してデリケートな生態をしています。
頭部が大きいことが特徴で、その側面には鼻・目・耳が一直線に並んでいます。水中に潜りながら周囲の様子をうかがいつつ、呼吸もできるようになっているのです。
巨大な口には長くて大きな門歯と犬歯が生えていて、下あごの犬歯は長さ50cm、重さ2kgに達することもあるそうです。
基本的にオスは単独行動をしていて、メスは子どもを含めた10~20頭ほどの群れで生活しています。昼間は水中で過ごしていますが、泳ぐわけではなく、水底を歩くようにして移動しているんだそうです。
夜間は陸に上がり、草などを1日に40kgほど摂取します。過去には死んだ動物の肉を食べる個体が撮影されたこともありましたが、実際に肉を食べることはほとんどないそうです。
寿命は野生下で30~45年ほど、飼育下では50年ほど。国内の最高寿命は「いしかわ動物園」で飼育されていた「デカ」で、58歳でした。
水面から顔だけを出し、のんびりと過ごしている姿から、穏やかな印象を受けるカバ。しかし野生の彼らは縄張り意識が強く、かなり獰猛な性格をしています。
縄張りに侵入してきたものは、同じカバはもちろん、ライオンやワニ、人でさえも容赦なく攻撃するそう。特にオスのカバが侵入してきた際は大きな口をめいっぱい開いて、尻尾を使ってあたりに糞をまき散らし、後ろ足を蹴り上げるなど、全身で威嚇をします。
それでも相手が逃げない場合、犬歯を使っての戦いになります。あまりにも激しくやりあうと、一方が重傷を負ったり、亡くなったりすることもあるそうです。
また縄張りのボスが交代した際には、しばしば元のボスの子どもを殺す「子殺し」が起こります。獰猛なのはメスも同様で、特に出産前は気性が荒くなるよう。ワニを真っ二つに食いちぎることもあるそうです。
実際、アフリカで人間が野生動物に襲われる事例のなかで、もっとも多いのがカバ。年間約3000人もの死者が出ています。
1日の大半を水中ですごしているカバ。「比重」が基準物質である水よりも大きく、水に沈むため、水底を自由に歩くことができるほか、肺を大きく膨らませることで浮くこともできます。つまり水の中でも自由自在に行動することができるのです。
肺呼吸をする哺乳類なので、水中で息をすることはできませんが、最大で約8分間も潜ることができます。
彼らが水の中にいる理由は、体の乾燥を防ぐためや、思い体重を支えやすくするためのほか、天敵であるライオンなどから身を守るためでもあります。眠るのも子育ても水の中。天敵に狙われやすい赤ちゃんは、お乳も水中で飲むそうです。
ただ陸上でも時速30kmで走ることが可能。顎の噛む力も1000kgほどあるといわれていて、哺乳類でもトップクラスです。獰猛な性格と、水陸両用の機動性をあわせもっていることが、「アフリカ大陸最強の動物」といわれるゆえんなのでしょう。
動物園などで、カバの全身から赤い液体が分泌されているのを見たことがあるのではないでしょうか。「カバは赤い汗をかく」なんて話を耳にしたことがある方もいるかもしれません。
実はあの液体は、汗ではありません。汗は体温調節のために汗腺から分泌されるものですが、そもそも彼らの体には汗腺がないのです。
カバが分泌しているのは、皮膚を紫外線から守るアルカリ性の粘液。いわばローションのようなもので、皮膚の表面を保護しています。
血のような赤い色をしているのは、赤の色素が紫外線を通過させにくい性質を持っているから。さらにこの粘液には細菌の増殖を妨げる効果のある成分も含まれていて、傷などが化膿することも防いでいるそうです。
- 著者
- ["岸田 衿子", "中谷 千代子"]
- 出版日
詩人であり童話作家でもある岸田衿子の作品。詩のように短い文節で区切られ、くり返される不思議なリズム感の文章と、キャンバスの粗い布目を活かしたイラストに惹きこまれる一冊です。
描かれているのは、とある動物園の日曜日。かばくんの目線で物語が進んでいきます。
水の中から姿を現すかばくんの大きな体を見て、びっくりする子どもたち。大きな口でご飯を食べるかばくん……なんでもない日常のシンプルなストーリーで、小さい子どもにもわかりやすい内容でしょう。それでいてどこかあたたかい気持ちになれる、優しい絵本です。
文章のリズムが耳に心地よいため、読み聞かせにもぴったり。動物に興味をもちはじめたお子さんにぜひ読んであげてください
- 著者
- ガブリエラ シュテープラー
- 出版日
- 2017-03-11
縄張り意識が強く、侵入者には容赦なく攻撃を仕掛けるカバ。その気になれば30km以上のスピードで疾走し、強大な顎を使って噛みついてきます。
本書はそんな野生に生きる彼らを、かなりの至近距離で撮影した一冊。その危険性の高さを知ってから見ると、より迫力を感じることができるでしょう。
被写体となっているのは、サバンナで懸命に生き抜くカバの親子。生まれたばかりの赤ちゃんは、息継ぎのため30秒に1度ほど水面に顔を出しながら、水中で懸命に母親のお乳に吸い付きます。
一方、縄張りを守るために命がけで戦うオスや、自分の子どもを守ろうと危害を加える相手と戦うメスの姿は臨場感たっぷり。「最強」といわれる彼らでも、生き抜くことが大変な大自然の壮大さを感じられるでしょう。