「恐竜」と聞いて多くの人が思い浮かべるのがティラノサウルスではないでしょうか。化石も多く発見され、新しい研究結果が続々と発表されています。この記事では、彼らの生態や羽毛の有無についての最新説、化石発掘の歴史などを解説していきます。あわせておすすめの関連本もご紹介するので、ぜひご覧ください。
約7200万~6500万年前の白亜紀末期に、現在の北アメリカ大陸に生存していた肉食恐竜です。体長は12m前後、体重は約6tと推定されているかなりの大型。
頭の骨は吻部後方で大きく広がり、サイズも1m以上。顎の筋肉の付着面が大きいため、噛む力は肉食恐竜のなかでもトップだったといいます。
大きな口には50~60本の歯があります。前方は断面がD字形で、対象物をしっかり捉える形に、奥歯はナイフのように鋭くて薄く、肉を切り裂くのに適した形になっていました。
後ろ足には長いスネと3本の指があり、二足歩行をしていました。広い歩幅をとることが可能だったといいます。ただ大きさに対して筋肉量が少ないため速く走ることはできなかったという見解や、時速39kmまでスピードを出せたとする研究など、実際の動きがどのようなものだったのかはまだ明らかになっていません。
大きくて強靭な後ろ足と比べ、ティラノサウルスの前足はかなり小さいもの。2本の指と鋭い爪がついています。
なぜこのような形状になったのか、どのように使われていたのかは、研究者の間でも意見がわかれており、正確なことはわかっていません。
彼らは二足歩行をするため後ろ足が異様に発達し前足が退化したという説、大きな頭と尾のバランスをとっていた説、はたまた腹這いの状態から起き上がる際に体を支えられるほど丈夫だったという説や、腕相撲をしたとしたら人間より弱いだろうという説まであります。
また、鋭い爪がついていて強い圧力をかけられると推測されていることから、獲物の肉を引き裂くのに使われていたと考えられています。
現代に生きる鳥類は、獣脚類の恐竜が進化したものだと考えられています。そしてティラノサウルスの先祖はジュラ紀中期に生息していた小型獣脚類のグアンロン。
このグアンロンの体には羽毛があり、よってティラノサウルスにも羽毛が生えていたのではないかという説が浮上したのです。しかし化石に残った皮膚の模様を調べた結果、大部分がウロコで覆われていたことがわかりました。
こうして一時は羽毛説はないものとされませしたが、新たな見解が登場します。それは、「幼体には羽毛があったのではないか」というもの。ただ幼体の化石はまだ見つかっておらず、皮膚の状態ははっきりとはわかっていません。
しかし彼らが鳥類にとても近い生物であることは確実だそうで、その特性を考えると、幼体は体温を維持するために羽毛で覆われていた可能性が高いそう。幼鳥のものと同じく、空気を多く含む下毛であると考えられています。
また鳥の翼は獣脚類の前足が進化したものだとされていて、翼をもつ必要のないティラノサウルスの仲間は、前足を進化させずに退化したため、小さくなったのではないかという説もあります。
1902年、これまでには見たことのない大型恐竜の骨盤や大腿骨などの化石が、アメリカのモンタナ州で発見されました。この化石をもとにした「ティラノサウルス・レックス」に関する論文が発表されたのが1905年のことです。
1915年には全身骨格が復元され、ニューヨーク自然博物館で公開。この頃の標本は直立して尾を引きずる「ゴジラ型」で公開されたため、その後長いあいだ間違った姿勢が広がってしまいます。
1990年代には発掘技術が進み、さらに多くの化石が見つかってパーツが揃ったことから、頭と尾を平行にした現在の「バランス型」の姿勢に修正されたのです。
世界でもっとも有名な全身標本「スー」が発見されたのも、1990年。かなり保存状態のよいものでした。発見者のスーザン・ヘンドリクソンにちなんで「スー」と名付けられます。所有権をめぐり、民間企業と政府との間で争いが起こったため、最終的に一般公開されたのが2000年になってからでした。
保存率は73%と世界最高。スーの化石からわかったことは、彼らが数匹の群れで生活をしていたこと、寿命は28年ほどなこと、10代に成長期をむかえて1年で700kg以上大きくなっていたことなどです。その成長スピードは、他の恐竜よりも早いこともわかりました。
スーが見つかったことでティラノサウルスの研究は一気に進み、現在もっとも多くのことがわかっている恐竜のひとつだといわれています。
- 著者
- 土屋 健
- 出版日
- 2015-06-19
ティラノサウルスの生態や歴史を隅々まで知ることができる一冊。監修は恐竜の化石を専門にした研究者で、テレビ出演などでも活躍している小林快次です。
恐竜が生きていた時代はどのような環境だったのか、そもそも古生物学とはどんな学問なのか、ということまで記されているので、ティラノサウルスに関わらず恐竜好きの人であれば楽しめること間違いなし。イラストや写真、図版などを多用しているので、事前の知識がなくても大丈夫です。
「恐竜の王者」といわれている彼らの生態を知ることで、太古の時代に思いを馳せてみませんか。
- 著者
- 宮西 達也
- 出版日
卵から産まれたプテラノドンの赤ちゃんは、お父さんとお母さんの愛情をたっぷり受けてすくすく育っています。ひとり立ちしたあと事故で目が見えず動けなくなってしまったティラノサウルスに出会いました。
お父さんから言われた「ティラノサウルスには気をつけなさい」という教えと、お母さんから言われた「困っている人がいたら助けてあげるのよ」という教え。そのどちらも守るために、プテラノドンは「おれはティラノサウルスだ」と嘘をつきながら看病をしてあげるのです。
2匹のあいだに生まれた友情の結末はどうなるのでしょうか……?
ティラノサウルスを主人公とした絵本シリーズのうちの一冊で、ほっこりとするイラストに癒されるでしょう。内容は大人が読んでも感涙必至。恐竜に興味をもちはじめたお子さんへの読み聞かせにもおすすめです。