公園の池などでよく目にするカルガモ。春先には雛を連れて引っ越しをする姿でもおなじみです。この記事では、そんな彼らの生態や子育ての特徴、ペットとして飼育できるのかなどをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。
カモ目カモ科マガモ属に分類される鳥類です。アジアの各地に亜種がいますが、日本で見ることができるのはロシア東部、中国、朝鮮半島に分布している種と同じもの。
基本的には湖や池、川などの淡水域で暮らしていて、まれに河口近くの汽水域や海辺で他のカモと混じって生活することもあるようです。
体はオスの方が大きく、平均で60cmほど、メスは50cmほどです。羽毛は全体的に黒味がかかっていて、オスの方がメスよりも濃い色になる傾向がありますが、一見そっくり。
雑食性で、生息域周辺に生息する小魚や昆虫、水草などを主に食べています。稲穂などを食べてしまうこともあるため、害獣とみなされることもあるようです。
寿命は野生下で5~10年前後、飼育下だと20年ほど生きたケースもあります。
日本に生息している個体は、北海道で暮らす一部を除いて冬場でも渡りをおこなわないので、1年を通じてほぼ全国で姿を見ることができる身近な鳥類だといえるでしょう。
春先になると、さまざまなニュースでカルガモの親子が引越しをする様子が報道されます。親鳥のうしろを雛鳥がついて歩く姿はかわいらしいですが、そもそもなぜ引越しをするのでしょうか。
カルガモは春になると繁殖期に入り、産卵・子育てに取り掛かります。産卵をする際は、卵を隠すために水辺の草むらや竹やぶなどに巣を作ります。しかし孵化して雛が歩けるようになると、今度は雛が餌を確保できるように適した場所へ引っ越しをするのです。
この引っ越しは外敵から姿をくらます目的も兼ねているので、1度だけでなく雛が独り立ちするまで数回にわたって実施されます。
ちなみにカルガモは「刷り込み」という、孵化した後に最初に見た動く物体を親とみなす習性があります。雛たちは刷り込みによって親と認識した相手の後をついてまわり、その行動を学習しながら成長していくのです。
そのため引越しをする際も親鳥を先頭にしてその後ろをついて歩き、その姿が整列をしているように見えています。
繁殖期に入ったカルガモのメスは、1度に10~12個の卵を産みます。卵を温めるのはメスだけで、その間オスは離れた場所で生活をするのだとか。
産卵から25日前後で雛は孵化し、すぐに歩き回れるようになるため、すべての卵が孵化した翌日には引越しがおこなわれます。引越しをした後は、親は外敵から雛を守ることはしますが餌を与えることはしません。
そのため雛たちは親の姿を見ながら自力で餌をとり、成長しなければなりません。約2ヶ月で成鳥となり、巣立ちを迎えることになります。
ただカルガモの雛は数が多いため、時には餌が不足してしまうことがあります。その場合、親が発育の遅い雛を殺してしまうことがあるようです。自分の産んだ雛ではなく、他の家族の雛を殺してしまうことも。残酷にも思えますが、自然界で確実に種を残してくためには必要なことなのかもしれません。
結論からいうと、カルガモをペットにすることは可能です。「狩猟鳥獣」に指定されていて、野生の個体を捕獲して飼育することも認められています。
ただ捕獲する際には狩猟免許が必要なほか、雛や卵の捕獲は禁じられているので、基本的にはペットショップなどで購入することになるでしょう。
雑食性のため、食事については比較的苦労しません。キャベツや白菜などの野菜や、ハトの餌などを代用することも可能です。ただし水鳥なので、彼らが泳げるプールを用意しなければなりません。設備が大掛かりになるので、ペットとして飼育をしたい場合は事前にしっかり準備をする必要があります。
- 著者
- ["氏原 巨雄", "氏原 道昭"]
- 出版日
- 2015-11-02
絶滅種や日本の生息種、観測例のあるものなど全48種のカモを紹介した図鑑です。決定版を名乗るだけあり、さまざまなカモについて詳細な説明がされていて圧巻。豊富なイラストと写真が用いられていて、その特徴を具体的に把握することができます。
オスとメス、夏毛と冬毛、幼鳥の成鳥、鳴き声の違いまで記されているので、本書があれば観察に困ることはなさそうです。
情報量が多く充実した内容に満足できる一冊です。
- 著者
- 細川 博昭
- 出版日
- 2017-03-16
カモをはじめさまざまな鳥類に関する意外な事実やエピソードなどを紹介している一冊。4000ヶ所以上の場所を記憶することができる鳥、体に毒をためこむ鳥など驚く内容ばかりですが、すべて科学的知見にもとづいてまとめられているのが特徴。生物の神秘に触れることができます。
上述したカルガモの引越しや雛殺しにも示されるように、鳥たちは種を残すために独自の生態を身に着けてきました。本書で彼らの創意工夫に触れていただければと思います。