1990年代後半に公開された映画で、人間を頭から丸呑みするシーンが衝撃的だった「アナコンダ」。実際にそんなことはありえるのでしょうか。この記事では、彼らの生態や体の大きさ、捕食方法、天敵などを解説していきます。あわせてヘビについてよくわかる関連本もご紹介するので、最後までチェックしてみてください。
ボア科アナコンダ属のヘビの総称で、「オオアナコンダ」と「キイロアナコンダ」の2種が分類されています。見た目は茶色や褐色の体に黒の斑点が並んでいるのが一般的。
乾燥と寒さに弱いため、カリブ海にあるトリニダード島の南部湿地や、アマゾン川流域の熱帯雨林に生息しています。水辺を好み、1日の大半を水の中で過ごしているといってよいでしょう。鼻や目が頭の上部についていて、体を水に潜らせて待ち伏せをするのに適した構造をしています。
性格は獰猛。また口に入る大きさの獲物であればなんでも食べてしまう恐ろしい食性をしています。主に魚類・哺乳類・鳥類などを食べ、オオアナコンダの場合は牛やジャガー、ワニなどを襲うこともあるそうです。
体はオスよりもメスの方が大きいのが特徴。メスは1回の産卵で20~80匹の子どもを生みます。出産の際にメスがオスを食べることもあり、共食いをすることが確認されています。
寿命はだいたい10年前後です。
オオアナコンダ
体長は平均で4~6mほど。10mを超えるサイズの目撃例もあるようですが、正式な記録として残っている最大は9mとのことで、これは世界でも2番目に大きいサイズになっています。
体重は、5mほどの個体で100kgを超え、重いものだと250kgにもおよぶそう。これだけ体重があるため、陸地を陸地を動き回るのにはあまり向いていません。そのため獲物を狙う狩りも水の中で待ち伏せをするスタイルが一般的です。
夜行性で、日中は水の中か、水辺に近い木の枝に巻き付いて体を休めています。
キイロアナコンダ
オオアナコンダに比べるとサイズはやや小さめ。それでも体長は平均で3mほどあります。名前にもあるように、黄色い体に黒い斑点がついているのが特徴です。
狩りのスタイルは待ち伏せと追いかけを使い分けています。
人の生命や身体に危害を加える恐れのある特性や能力をもっている動物を「特定動物」といい、オオアナコンダもこれに分類されています。
彼らの捕食方法は、獲物を胴体を使って絞め殺した後、頭から丸呑みにするという大胆なもの。アナコンダを含むほとんどのヘビは上あごと下あごがつながっておらず、ほぼ水平になるまで口を開くことができます。
また彼らの皮膚は最大で30%も伸びるため、捕食する際に胴回りよりもはるかに大きい獲物であっても、口にさえ入れば食べることができるのです。
さらに消化能力もすさまじく、大きな獲物でも1週間ほどで骨まで分解してしまいます。ただ角やヒヅメなどはある程度体の中にたまると吐き出すようです。
オオアナコンダに人間が襲われた事例も報告されており、なかには絞殺された例もあるため、生息地域に住む人々からは恐れられています。
巨大な体と獰猛な性格をしていて、アマゾンの生態系の頂点に君臨いているといってもいいアナコンダですが、天敵はいるのでしょうか。
アマゾンには、クロカイマンという体長4mをこえるワニが生息しています。水辺で生活しているアナコンダは彼らと遭遇することは避けられません。時にはアナコンダがワニを捕食することもありますが、反対に捕食されることもあるようです。
またジャガーも油断ならず、捕食対象ではありますが返り討ちにあうことがあります。
そして最後は人間でしょう。家畜の牛や豚などを食べるため害獣とみなされ、発見された際は捕獲されることも多いようです。またアナコンダの皮膚は革製品としても活用できるので、ハンターに狙われることもあります。
- 著者
- 内山 りゅう
- 出版日
- 2009-02-01
著者の内山りゅうは水中写真家。カエルや魚、ドジョウ、オオサンショウウオなど、水辺に暮らす生物の作品を数多く手掛けています。本作では、多数の写真をとおしてヘビの素顔を紹介してくれています。
たとえば脱皮について。まずは目が白くなり、その後口の先からずるっと剥けていくのをご存知でしょうか。その様子が写真で見事に表されていて圧巻です。そのほか卵を丸呑みしている姿や、木登りをしている姿など、彼らの素顔が見えてきます。
アナコンダをはじめ「怖い」「気持ち悪い」というイメージが先行してしまうヘビですが、彼らの生態を正しく知ることで、その印象や対策の仕方も変わるはずです。
- 著者
- ["今泉 忠明", "岡島 秀治"]
- 出版日
- 2013-09-18
本作は、世界中に生息している危険な生物を迫力満点のイラストと写真で紹介している一冊。ビジュアルで理解することができます。また添えられている解説文は、難しい漢字にふりがながふってあるので、小学生のお子さんでも自分で読み進めることができるでしょう。
草原、森、町のまわりなど、生息地別に分けられているのが特徴です。ただ生態を説明しているだけではなく、体のどの部分が危険なのか、なぜ危険なのかがしっかりわかります。
巻末にある「危険生物事件ファイル」のなかには人を丸呑みにする大蛇のほか、5つの事件が紹介されています。日本に生息する危険生物に関するコラムもあり、読みごたえも充分です。