リスのように小さいことが名前の由来でもある「リスザル」。かわいらしい見た目からペットとしても人気が高いですが、いったいどのような生態をしているのでしょうか。この記事では、彼らの暮らしの特徴や性格、飼育方法などをわかりやすく解説していきます。またサルについて学べる書籍もご紹介するので、最後までご覧ください。
日本国内でペットとして飼育されている種の正式名称は、コモンリスザルといいます。南アメリカ北部の広い範囲に生息しており、体長は27~37cm、尾長は36~45cmで、体重は500~1100gほど。オマキザル科のリスザル属に分類されます。
他のリスザル科の種と比べて広範囲に生息しており、数も多いことからもっともポピュラーだとされている種です。
樹上で暮らすコモンリスザルは縄張りを持たず、30頭ほどの群れを作って広い範囲を移動しながら生活しています。良質な餌場には300頭以上が集まることもありますが、群れ同士が敵対して争うことはありません。
夫婦という概念がなく子育ては母親のみでおこないます。ただまったくの単独で子育てをするわけではなく、群れのメス同士でお互いの子どもの世話をする姿が確認されていて、高い社会性を持っていることがうかがえるでしょう。同種の群れだけではなく、ウアカリやオマキザルなど他種のサルとともに行動することもあるのです。
野生の個体の寿命は15年前後。天敵には鷲などの猛禽類やネコ科のオセロットがいますが、群れのなかでのコミュニケーションが発達しており、危険が近づくと警戒音を出して仲間に知らせるため捕食されることが少ないそう。天寿をまっとうできる個体が多いといわれています。
ストレスが少なく医療が受けられる飼育下での寿命は、20~30年とさらに長くなります。
リスザルは大胆で活動的な性格をしていて、また環境への順応性も高いため、ストレスを感じづらい傾向にあります。
遊び好きで人にもなつきやすいので、ペットとしても大人気。ただ群れで生活をする習性があるため、1匹で過ごすことには過度の精神的負担がかかってしまいます。留守番の時間が多い家庭で飼うことはおすすめできません。
また縄張りを持たずに広い範囲を遊動する生活をしているため、飼育下での刺激の少ない暮らしを退屈に感じてしまうこともあります。リスザルを飼育する際には、変化に富み、十分に動き回れる環境が必要です。
たとえばニホンザルなどの同じサルの仲間と比べると、攻撃性も低く飼育しやすい部類に入りますが、犬や猫のような感覚で飼うことは難しい動物です。
リスザルと一緒に暮らすうえで最大の難点は、トイレのしつけができないことによる臭い問題でしょう。知能が高いため簡単に覚えてくれそうなイメージがありますが、彼らはもともと移動をしながら生活する習性があるため、決まった場所で排泄をすることが無いのです。トイレを覚えるということはありません。
そのためケージから部屋に出す場合は紙オムツをすることになりますが、これを嫌がる個体が多いので糞尿の掃除がとても大変になってしまうのです。自分の体に排泄物がつくことにも無頓着なので、衛生的に生活をさせるのはかなりの手間がかかるといえるでしょう。
また群れで生きるリスザルは、犬などと同様に家族内の順位付けをおこないます。飼い主を自分より下位だとみなした場合は、気に入らない行動をとったなどの理由で噛みついてくることもあるので注意が必要です。ちなみに噛むという行為は彼らにとって自然な行為のため、しつけでやめさせることは困難。
もしも噛まれてしまった場合は、怪我だけではなく、感染症に罹る可能性もあるので注意が必要です。もともとエイズやエボラ出血熱などの病気はサルから人間に罹患した病気。反対にインフルエンザなどが飼い主からリスザルにうつってしまうこともあります。これらの理由から、ペットとして迎え入れたら、まずは動物病院で感染症の検査をしたほうがよいでしょう。
餌はサル用のペレットを主食とし、果物や野菜などの植物性タンパク質、煮干しや肉などの動物性タンパク質をバランスよく与える必要があります。野生の個体は昆虫やトカゲを捕食するため、可能な場合はこれらを与えると喜ぶでしょう。コウロギやミルワームは生餌も売っているので、年間をとおして手に入りやすいです。
一般的なペットショップで売られているリスザルの価格は40~60万円。ペットのなかでは高価な部類に入るうえ、実際に飼育するとなると大型のケージやライトなどの設備のほか、医療費も高額。金銭面の準備も必要です。
またサルの診察をできる動物病院はとても少ないのが実情。1件目の診察内容に納得がいかなくても他の病院でセカンドオピニオンを受けるわけにはいかないのも、リスザルの飼育が難しいとされている要因のひとつになっています。
人類が初めて宇宙に旅立ったのは、1961年のこと。ソビエト連邦のガガーリンが、単身で搭乗しました。その14年前の1947年、初めて宇宙へ送り出された生物が、ハエです。
その後1949年に、アカゲザルのアルバート2世が霊長類初の宇宙旅行に旅立ちましたが、パラシュートの故障が原因で死亡。次いで1958年にリスザルのゴードが「ジュピターIRBM AM-13」に搭乗して宇宙へ出発し、8分30秒にわたる無重力状態にも耐えたものの、地球へ帰還する際にパラシュートが作動せず、大西洋に沈んでしまいました。
この翌年の1959年、アメリカはリスザルのベイカーとアカゲザルのエーブルを、「ジュピターIRBM AM-18」に乗せて宇宙へと送り出します。
2匹はおよそ9分間の無重力状態に耐え、16分間の宇宙旅行を終えて無事に帰還。エーブルはその4日後に命を落としてしまいますが、ベイカーは27歳まで天寿をまっとうし、彼らは宇宙旅行から帰還した初の霊長類となったのです。
リスザルが宇宙へ送り出された理由は、小柄で軽量であることと、解剖学的に人間に近い構造であることが挙げられます。
- 著者
- 出版日
- 2017-11-26
2018年現在440種が確認されている野生のサル。本書は、その全種が掲載されたボリューム満点の写真集です。
生息地ごとに索引付けされているので、種類ごとに知識を深められるだけではなく、生活圏が被っているサルの暮らしを想像しながら楽しむこともできます。
コモンリスザルが生息している南アメリカの森林には、全霊長類の3分の1が生息するそう。そのほとんどが小型で樹上生活という共通点を持ちながら、細かな種に分かれた背景を探り、想いを馳せるのもおもしろいでしょう。
撮影をすることが困難とされている希少なサルの写真も掲載されていて、彼らの生態や姿を堪能できる文句のない一冊です。
- 著者
- 京都大学霊長類研究所
- 出版日
- 2009-09-18
サルの基本的な生活様式からゲノムまで、1問1答の形式でわかりやすく学べる一冊です。
回答してくれているのは、チンパンジーのアイとアユムの研究で有名な京都大学霊長類研究所の研究員。たとえば「霊長類を研究すると何が分かるの?」といった初歩的な質問にもわかりやすく解説してくれています。
南米のサルはどこから来たのか、サルと他の動物の関係はなど、リスザルについて知識を深められる項目も多く、特にサルの生理と病気について書かれた章は、飼育を考えるうえで1度は目をとおしておきたい内容です。
「サルを通して人間を知る」というテーマのため、社会性や認知能力についても詳しく記述されています。サルにも人間にも興味をもつきっかけになるでしょう。