文芸

堂場瞬一の文庫作品おすすめ6選!警察シリーズものといえばこの作家!

更新:2016.2.18 作成:2016.2.18

堂場瞬一は、警察小説・社会派ミステリー小説・スポーツ小説の分野で活躍している作家です。文庫本書き下ろしのスタイルで書く先駆けとなり、数々のシリーズを世に出しています。書店に行けば、堂場瞬一のシリーズ作品がずらりと棚に並んでいます。

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多読で、書くスピードも速い堂場瞬一

堂場瞬一は、1963年茨城県生まれの作家です。青山学院大学卒業後、10年間の新聞記者生活を経て小説を書き始め、2000年にスポーツ小説『8年』で小説すばる新人賞を受賞し、作家となりました。ペンネームは、学生時代の恩師の名前からもらったということです。

堂場瞬一は「刑事・鳴沢了」シリーズをはじめ、「警視庁失踪課・髙城賢吾」シリーズ、「警視庁追跡捜査係」シリーズなど数多くの警察シリーズものを書いています。

その時々で世の中の話題になっていることや社会問題を絡ませているので、興味深く読むことができます。重い問題がテーマであっても、さらさらと読みやすい文体なので、堂場作品にはまっている読者も多いのです。

海外のミステリーやハードボイルドを多読しているという堂場だからこそ、流れるような文章を書けるのでしょう。

堂場瞬一が小説を書くうえで大切にしていることはストーリーとキャラクターであり、ストーリーやキャラクターの動きを邪魔するような文であってはならないと思っているそうです。

彼の描くキャラクターは、ストイックであったり、悲しみを秘めていたりとそれぞれに個性的なのですが、主人公の持っている弱さもさらけ出しているのが特徴です。また、他のシリーズの主人公が脇役として登場するカメオ出演も多く、彼の作品を読む上での楽しみとなっています。

ストイックに事件を追う鳴沢了、最初の事件!

「鳴沢了」シリーズ第1弾です。主人公である鳴沢了は、新潟県警捜査1課の刑事。煙草も吸わず、食べる物にも気をつけ、刑事として恥ずかしくない身なりにも気を使っています。祖父は“仏の鳴沢”と呼ばれ、温厚で多くの後輩刑事から慕われていた元刑事、父親も“捜1の鬼”と呼ばれていた元刑事という、3代にわたる刑事一家の鳴沢ですが、現役署長である父親との間には深い溝があります。

祖父も父も、妻を早くに亡くしていたので、小さな頃から実質的に鳴沢を育ててきたのは祖父でした。とうの昔に退職した祖父は、今でも、たまに帰る鳴沢に、自分で釣って調理した魚料理をふるまうなど、いつでも応援してくれるあたたかい存在です。

湯沢で殺人事件が起こり、父が署長をしている魚沼警察署に特捜本部が置かれることとなりました。できることなら父親と顔を合わせたくない鳴沢でしたが、事件捜査のためにはそうも言ってはおられません。

事件の被害者は一人暮らしの老女で、調べていくうちに最近は霊能者としてお祓いをして得たお金と年金で生計を立てていましたが、過去に宗教団体「天啓会」の教祖をしていたことが判明したのです。そして、50年も前にあったその宗教団体で、信者による殺人事件が起こっていたこともわかりました。

「天啓会」の元信者を探し歩いて話を聞いて回っていた時に第2の殺人事件が起こります。被害者は、「天啓会」の元信者でした。

 

著者
堂場 瞬一
出版日


懸命に捜査を続ける鳴沢に反して、特捜本部長である父は、なぜかこの件から手を引くことを鳴沢に示唆するのです。昔、祖父も関わったに違いない事件であるのにも関わらず、祖父も覚えていないと言います。

さて、祖父や父が口をつむるのはなぜでしょうか?

この作品では、事件とともに鳴沢親子の確執も描かれ、それを胸に抱きながらこれから刑事として人間として鳴沢がどんな風に成長していくのかが見どころです。

傷ついた被害者の心を守る、それが使命!

シリーズ第1弾。警視庁総務部に設けられた犯罪被害者支援課は、事件の捜査ではなく、犯罪被害に遭った人や家族を助けるための部署です。ここで働く35歳の村野秋生が主人公で、彼は元・捜査1課の刑事でした。

5月のある月曜日の朝、事故が起こりました。それは、歩道を歩いていた、通勤途中のサラリーマンと通学中の小学生の列に車が突っ込んで、小学生3人を含む計5名が亡くなるという大惨事でした。運転していた加害者は事故後の混乱に紛れて逃亡。支援課のメンバーが動き出すことになります。

村野は所轄の新人支援員・安藤梓と組んで、事故で亡くなった妊婦の夫のケアに当たります。そう、妊娠7か月だった被害者はお腹の子とともに命を失ってしまったのです。

 

著者
堂場 瞬一
出版日
2014-08-12


妊婦の夫の大住は、怒り、悲しみ、歩くのもままならないような状態です。情報を収集し、感情を露わにする家族に寄り添い、マスコミから守ったり、事務的にやるべきことを教えたりと、自分の心まで疲弊してしまうハードな支援課の仕事に、新人の梓は身も心もくたくたになります。村野は、甘やかすことなく、梓が自分自身で今やるべきことに気づいて動けるよう、少し距離を置いて冷静に指導するのです。

逃げた犯人は捕まるのか、梓は支援員として成長できるのか、そして、村野がこの支援課に配属になった理由が、今の村野の働きぶりとリンクして胸を打たれます。

犯罪被害者や家族の、どこにもぶつけようもない怒りや悲しみに向き合う支援課の仕事には、全てに通じる正しい答えはないけれど、傷ついた人達に寄り添う村野達を応援したくなります。

シングルファーザー・鉄のファン続出!

アナザーフェイスシリーズ第1弾。刑事総務課に勤め、事務仕事や研修の準備などの仕事をしている大友鉄は、かつて捜査1課の刑事でしたが、交通事故で妻を亡くした2年前から、一人息子の優斗の子育てに支障の出ないように、定時帰宅できる今の部署に希望を出して異動してきました。

ある日、銀行員の息子が誘拐され、特捜本部が設置されます。刑事時代の大友の能力をかっていた上司の福原の指示で特捜本部へと派遣される大友。

学生時代、演劇部だった大友は、変装してどんなところにでも溶け込んでしまう特技を持ち、人間観察に優れています。また、人当りがソフトなので警察官の雰囲気を消し、相手に緊張感を抱かせずに本音を聞き出す力も持っていました。

今回の誘拐事件は、犯人の指定してきた身代金の受け渡し場所が、アイドルグループのコンサート会場という特異な事件でした。不特定多数の人間が集まる場所で、どうやって犯人を特定すればいいのか。捜査陣はあせりますが、果たして犯人は捕まり、少年は解放されるのでしょうか。

 

著者
堂場 瞬一
出版日
2010-07-09


およそ刑事らしくない大友鉄のキャラクターが女性の心をくすぐり、堂場作品の中でも女性ファンが多いシリーズです。仕事帰りに食材を買って毎晩息子と二人の夕食を作り、息子の成長に合わせて家のことを考えている鉄。また、穏やかな性格で、同僚との関係も大事にしている鉄。何よりも、亡くなった妻を未だに愛している鉄。今までの警察小説にはなかったキャラクターではないでしょうか。

がさつで男っぽくて強面の柴、可愛い顔にごつい体の高畑敦美など、同期も素敵なキャラクターに描かれ、鉄の大変な時にさりげなく助ける友情も、読んでいて気持ちいいものです。

それぞれの平成。2人はどう歩んだか!?

1989年(平成元年)、日本は好景気の真っただ中。大学を卒業し、社会へ出た鷹西仁と大江波流(はる)。鷹西は、作家になる夢への足掛かりに、新聞記者として働くことが決まっていました。大江は、父の後を継いで政治家になり、日本を正しい方向に引っ張っていきたいと夢見ていました。

1994年(平成6年)、大蔵官僚となっていた大江は、父の死をきっかけに父の後援者から、次の選挙に出馬するよう勧められますが、大江自身は資金をためるためにまずは会社を興そうと考えています。そんな矢先、母親から自らの家が借金まみれだと知らされ、ある行動に出るのでした。

新聞記者として伊東支局に異動してきた鷹西は、特ダネを取りたい一心で元代議士殺人事件について調べていましたが、東京への異動を命じられ、事件調査は途中のまま、後任に託すことに。

以降、大江はITビジネスで成功を収め、鷹西はとうとう新人賞を受賞して作家への道を歩み始めます。

 

著者
堂場 瞬一
出版日
2015-08-20


青春時代を共に過ごした仲間2人の平成になってからの足跡を追ったストーリーで、世の中で起きた大きな事件や世相、大震災などにも触れているので、読者にとっても、自分のことを振り返るいい機会になる本です。

2011年(平成23年)で終わるストーリー。鷹西と大江は、夢をつかみとったのでしょうか。

成長まっただ中!新人刑事の活躍を描く

25歳の一之瀬拓真が、新人刑事として成長していくシリーズ第1弾。東日本大震災後、まだ日本が混乱のさなかにあった時に、拓真が配属されたのは千代田署刑事課でした。千代田署の管轄は、オフィス街、官庁街、皇居外苑などがすっぽり含まれるため、居住者の少ない特殊なエリアです。窃盗犯が中心だと聞かされていましたが、拓真にとって刑事としての初めての事件は、殺人事件でした。初めて目にする無惨な遺体、被害者の父親への対応、交番勤務とは全く違う不規則な勤務、戸惑うことばかりの拓真でしたが、教育係の藤島のフォローや恋人である深雪の励ましによって、少しずつ刑事らしくなっていきます。

事件の被害者・古谷は、30歳でIT企業の課長という出世を遂げ、忙しすぎて人とのつきあいも極力してこなかったことがうかがえました。古谷は、福島県郡山出身で、実家は地震で被災し、両親は親戚の家で避難生活中、しかも母親は入院中という中で起こった事件でした。古谷本人は、故郷を嫌ってあまり帰省もしていませんでしたが、故郷で執り行われた葬儀での聞き込みで、拓真と藤島は、宮原由衣という女性と知り合います。自宅の酒屋は被災し、営業できなくなったので、物資の運送や被災者の面倒をみるボランティアをしている由衣は、つっけんどんな態度ながら、最近の古谷が不安を抱えていたことを教えてくれます。

若くして異例の出世を遂げたかに思われた古谷でしたが、実際は、何か深刻な問題を抱えていたようです。一之瀬自身の生活や藤島との会話など刑事側の心理を丁寧に描写しながら、捜査も進んでいきます。堂場作品では、食べる物の描写が細かいという特徴がありますが、この作品でも、忙しさの中で食べるファストフード、恋人と一緒に作る夕飯、捜査中に藤島と共に食べるランチなど、食事ひとつにも人物の心理が巧みに表現されています。

 

著者
堂場 瞬一
出版日
2014-03-20


ゆとり世代と揶揄される一之瀬、新人類と呼ばれた世代の藤島、それぞれに自分達が持っている、育った世代ゆえの特徴をお互いに感じながらも尊重しあって仕事をします。藤島が、一之瀬の成長のために仕事を多くふったりと、刑事のチームワークという点がこの作品のひとつの魅力です。

また、一之瀬の同期で、郡山に派遣された城田の気持ちの変化、一之瀬と城田という若い2人の切磋琢磨して成長していく様子も爽やかに描かれています。さて、事件は、どういう方向に向かうのでしょう。

この作品は、これまでベテラン刑事や捜査1課を辞めて特別な部署で持ち味を発揮している警察官を多く書いている堂場瞬一としては異色とも言えます。真っ直ぐに刑事の道を歩んでいく、未来を感じさせる作品です。震災後に堂場瞬一自身が、未来を意識して書いたのかもしれません。一之瀬と藤島のコンビには、これからも注目していきたいものです。

堂場瞬一の描く、大人のスポーツ小説

箱根駅伝に出場する“学連選抜チーム”を主役としたスポーツ小説です。学連選抜チームとは、予選会で出場権を獲得できなかった大学から1校1名ずつ成績の優秀な選手が選ばれ結成される選抜チーム。チームが結成されるのは本戦の2ヶ月前。それぞれに想いを抱えた選手、監督らがチームに選ばれます。わずかな期間で彼らは“チーム”を作り上げることができるのでしょうか。

 

著者
堂場 瞬一
出版日
2010-12-04


主人公は浦大地。彼は、前年の大会でアンカーを務めるも、故障した膝の痛みから途中失速し順位を落としてしまったことを悔やんでいます。そんな彼をチームに引き入れるのは監督の吉池幸三。監督歴30年の超ベテランでありながら、自身のチームを本戦出場へ導いたことがなく“悲劇の名将”と呼ばれています。また天才ランナーとされるも一匹狼の山城、大会初出場の朝倉、そのほかチームメンバーそれぞれの葛藤や、チーム以外の裏方スタッフの想いが描かれています。寄せ集めのメンバーがチームとして成長する姿にすがすがしい感動を覚えることでしょう。

舞台が箱根駅伝、主役が大学生で大人といえる年齢のため、暑苦しすぎず大人も楽しめるスポーツ小説になっています。本番の走っているシーンはとても臨場感があふれ、読んでいるこちらも緊張させられるのではないでしょうか。またスポーツ小説にありがちな希望的なことばかり描かれておらず、とてもリアリティにあふれています。ランナーがけがで故障する様子や、走行中の葛藤など自分が体験しているような感覚を引き起こします。

この作品を読むと箱根駅伝の見方が変わってくるはずです。やはり、選手1人1人抱える想いは違うことを感じさせてくれる作品です。大人のスポーツ小説、ご一読いかがでしょうか。