コツコツと木を叩く姿が印象的なキツツキ。ただその時に生まれる衝撃はすさまじく、彼らの体には身を守るためのさまざまな工夫がされていました。この記事では、キツツキの生態や種類ごとの特徴、木をつつく「ドラミング」をしても怪我をしない理由などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本もご紹介するので、最後までチェックしてみてください。
キツツキ目キツツキ科に分類される鳥類の総称で、「キツツキ」という名前の鳥は存在しません。彼らは文字どり「木をつつく鳥」で、漢字では「啄木鳥」と書き、俳句などでは季語としても使われています。
南北アメリカ大陸、ユーラシア大陸、インドネシア、日本など世界各地に生息していて、樹木の多いところでしか暮らせないイメージがありますが、都市部でもその姿を見ることができます。
種類は全部で230ほど。そのうち日本にいるのは10種ほどだといわれています。基本的には小さくてかわいらしい見た目をしていて、食性は肉食に近い雑食。木の中にいる昆虫などをついばんでいます。また鳩の雛を狙ったり、動物の死骸を食べたりもするようです。
アカゲラ
日本でもっともよく見かけるキツツキです。体長は20〜40cmほどで、北海道、本州、四国と広い範囲に生息しています。
お腹からお尻の内側にかけて赤い模様がついているのが特徴です。
ちなみにアオゲラという種類もいますが、こちらは数が少なく貴重で、日本の固有種として認定されています。全体的に濃い緑色をしていて、くちばしの長いウグイスのような見た目だといえるでしょう。
ボウシゲラ
世界最大のキツツキで、体長は50cmほど。ミャンマーやマレーシア、インドや中国などに生息しています。
体は大きいですが、くるりとした大きな目と、頬にピンクの模様をつけたチャーミングな顔をしています。体の色は淡い紺色。鳴き声が笑い声のようなのも特徴です。
木をつつく行為を「ドラミング」といいますが、そもそもキツツキはなぜ木をつつくのでしょうか。
最大の理由は、木の中の昆虫を食べるためです。昆虫のなかには非常に小さなものもいて、それらからできるだけ多くの栄養源を確保するためには、木をつく回数を増やして摂取量を増やさなければなりません。人間でいえば小さな米をひと粒ずつ食べているようなもの。なるべく素早くつつく必要があるのです。
もうひとつの理由は、巣作りです。キツツキは木に穴を掘り、そこを巣とする習性があります。
最後に、コミュニケーションの手段としても木をつついています。縄張りを主張したり求愛の手段として用いられているのです。
キツツキのドラミングは、1秒間に約20回というとんでもないスピードでおこなわれています。その際、彼らの頭や体にはかなりの衝撃がかかっていることが想像できるでしょう。
脳震盪を起こしてしまいそうなものですが、実は彼らの体には衝撃から身を守るための仕組みが隠されていました。
まずキツツキは、異様に長い舌をもっていて、それが頭蓋骨を1周するようにぐるりと囲いこんだ構造をしています。この舌が、木をつついた際の衝撃を吸収するクッションのような役割を果たしているのです。
また、脳が小さく、頭蓋骨にぴったりと収まっているのも特徴。激しくドラミングをしても揺さぶられることがほとんどありません。
さらに、瞼にも独特の構造があります。上瞼と下瞼のほかにもうひとつ3つ目の瞼をもっていて、これが眼球に対するシートベルトのような役割を果たしており、木をつついて激しい衝撃を受けても眼球が飛び出さないようになっているのです。
首の筋肉が異様に発達をしていて、むち打ちの症状が起こらないよう衝撃を吸収しているのも特徴でしょう。
- 著者
- 渡久地 豊
- 出版日
- 2015-07-01
沖縄の県鳥にもなっているノグチゲラを追いかけた写真絵本です。絶滅危惧種に認定されている貴重なキツツキで、日本の固有種、さらには天然記念物にも指定されています。
著者は沖縄県生まれの渡久地豊。環境省ノグチゲラ保護増殖事業の調査に携わり、長年現地でその生態を探っていました。本書には、そんな彼だからこそ撮影できた貴重な写真が盛りだくさん。美しい自然の様子とともに楽しむことができるでしょう。
写真には文章も添えられていて、ノグチゲラが巣を掘った木が台風の影響で倒れてしまったこと、そのせいで雛鳥が天敵に狙われやすくなってしまったこと、そんな子どもを守ろうと親鳥が賢明に子育てをしている様子などを物語のように読むことができます。
沖縄の大自然のなかで強く生きるキツツキの暮らしに触れてみてください。
- 著者
- 林原 玉枝
- 出版日
- 1998-10-01
動物たちを主人公にした短いお話が数編収められている作品です。なかでも「きつつきの商売」は小学校の国語の教科書にも掲載された実績があり、心温まるものになっています。
森でキツツキが開いたのは、「音」を売るお店「おとや」。看板には「できたての音」「すてきないい音」などのメニューがあります。そこに野うさぎや野ネズミなど森の生き物たちがやってきて注文し、キツツキが生み出す音にうっとりと酔いしれるのです。
擬音が多く、音読や読み聞かせにもぴったり。森の生き物たちの暮らしに想像を膨らませて、優しい気持ちになれる一冊です。