小さな体に愛らしい目、そして長くてフサフサの尻尾をもつ「ヤマネ」。ペットとしても大人気です。この記事では生態や生息地、驚くほど長い冬眠についてなどを解説していきます。あわせて彼らのことをもっと好きになれる関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。
ネズミ目ヤマネ科に分類される小動物で、漢字では「山鼠」と書きます。大きさは6~8cm、体重は14~25gほどで、見た目はハムスターやラットとよく似ているでしょう。全体的に淡い褐色をしていて、お腹のあたりは白く、背中には1本黒い筋が入っています。
特徴は長さが5cmほどあるフサフサとした尻尾。毛の長さは1本が2cmほどもあるのです。
前足の指は4本、後ろ足の指は5本で、足裏には肉球があります。指先のカギ爪を使って木にぶら下がり、尻尾でバランスを取りながら素早く動くことができます。
食性は雑食で、昆虫を中心に木の芽や種子、果実などを食べています。果物の皮を残して中身だけ食べる上品さもあるとか。
主な生息地は、ヨーロッパやロシア、アフリカ、中央アジア、中国、日本と広範囲におよびます。日本には固有種の二ホンヤマネが生息していますが、国の天然記念物に指定されているので、飼うことはおろか捕まえることもできません。ペットとして飼育できるのは、外来種です。
野生のヤマネは、森で木の穴の中に苔や木の皮で巣をつくって生活しています。夜行性のため、日中に姿を見ることはほとんどありません。 行動範囲はオスで2ヘクタール、メスは1ヘクタール弱と、体のサイズと比べて広大だといっていいでしょう。
メスは1回の出産で3~7匹の子どもを産みます。生まれた赤ちゃんは生後20日ほど経つと自分で餌を集められるようになり、自立していきます。野生下の寿命は3~5年程度、飼育下だと9年近く生きることもあるそうです。
気温が15度を下回ってくると、木の穴や隙間、落ち葉の下、地中などに潜り込み、体を丸めて冬眠に入ります。民家の屋根裏などで寝ていることもしばしば。また複数で肩を寄せ合って眠ることもあるそうです。
1度眠りにつくと、およそ半年間ものあいだ目覚めないのだとか。そのため日本では別名「冬眠鼠」と呼ばれることもあります。
冬眠中は哺乳類としては珍しく、外気温にあわせて体温を調節。0度近くになることもあるそうです。また呼吸数や心拍数も低下させ、仮死状態となります。冬眠前には体重が2倍になるほど餌を食べ、蓄えた脂肪を少しずつ消費していきます。
恐竜が絶滅したといわれる6500万年前、白亜紀の後に始まった「新生代の古第三紀」に、他の哺乳類や鳥類とともに出現したと考えられています。
その後「中新世」と呼ばれる2300万年前~530万年前に、日本列島が形成。おそらくこの頃から日本のヤマネは独自の進化をはじめたようです。
ヨーロッパではおよそ5000万年前、日本では2000万年前の地層から化石が見つかっていて、古より骨格や生態が大きく変わらないことから「生きた化石」と呼ばれています。
長期にわたって種を存続させてきた彼らですが、もちろん天敵も存在します。最大の敵はアオダイショウで、カラスやフクロウ、キツネ、テンも要注意です。
夜間はカギ爪や尻尾を駆使して素早く逃げることができますが、日中は動きが鈍く、簡単に捕まってしまいます。また冬眠中であればひとたまりもないですし、目覚めた後も動けるようになるまでは1時間ほどかかるので逃げられません。なるべく見つかりづらい場所で眠る必要があるのです。
ニホンヤマネは国の天然記念物に指定されているため、飼育をすることはできません。一時はレッドリストにも準絶滅危惧種として登録されていましたが、その後の調査で本州、四国、九州と広く生息していることがわかり、現在は外れています。
ただ彼らの生息環境の保全とともに、保護しなければならない存在であることは間違いないようです。
ペットとして飼育できるのは、海外から移入された種類です。代表的なのはアフリカヤマネで、見た目は二ホンヤマネとほぼ同じです。価格は1万円前後といわれています。ハムスターと同様の設備があれば生活できるので、比較的飼育はしやすいといえるでしょう。
- 著者
- 西村 豊
- 出版日
- 2011-08-29
1年の大半を冬眠しているヤマネ。それ以外の期間も夜行性のため、出会えるチャンスは限られています。本書は、自然写真家をしつつ、長野県でヤマネなどの救援活動をおこなっている西村豊の作品で、さまざまな表情を切り取った写真集です。
丸くなって冬眠をしていたり、眠りから目覚めて大きく伸びをしていたり、尻尾をふりながらすばしっこく動き回ったり……どれもとても愛らしく、見ているだけで微笑んでしまいます。
作者の想いにもありますが、ヤマネたちが健気にも力強く生きる森の環境を守っていかなければならないと、切に感じさせてくれる一冊です。
- 著者
- どい かや
- 出版日
- 2002-02-01
ヤマネの家族の様子を、やわらかいタッチの色鉛筆で描いた絵本です。
主人公のネンネは、冬眠中に夢の中で木の実を取ろうとしますが、寝ぼけて木から落ちてしまいました。その後もカラスにくわえられて泣きそうになるなど、事件が次々と起こります。そんな様子をパパとママが優しく見守ってくれている様子が微笑ましいでしょう。
七五調の文章のリズムが心地よく、読み聞かせにもぴったり。親子で楽しめる物語です。
5000万年以上もの間、命のたすきをつないできたヤマネ。半分の2500万年間は寝ていたことになるのでしょうか。おすすめした本を片手に、たまには夢見心地で彼らに思いを馳せてみるのもよいかもしれません。