映画などのエンタメ作品にたびたび登場し活躍する恐竜。知名度ではティラノサウルスがトップを誇っていますが、実はそんな彼らよりも強いといわれている「アロサウルス」という最強の恐竜がいるんです。この記事では生態や化石についてわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
恐竜界のトップスターといえば、ほとんどの人が「ティラノサウルス」と答えることでしょう。しかし、本当にそうでしょうか。真の恐竜マニアのなかには、アロサウルスこそスター性があると主張する人もいるのです。
アロサウルスは今から1億5500万年〜1億4500万年前の中性代のジュラ紀に生きていました。体長は9〜12m、二足歩行で自分よりも大きな恐竜をも捕食していた肉食恐竜です。路線バスの全長が約10mということを考えると、それだけの大きさの生き物が襲ってくる恐ろしさがわかるでしょう。
しかも化石の多くに傷が残っていて、戦いの跡が確認できることから、性格は凶暴で好戦的だったと分析されています。
体の特徴として、頭があまり大きくないことが挙げられます。この点がティラノサウルスに比べて見た目の迫力に劣る理由かもしれません。ただ生物学的な構造としては頭が小さい方が素早い動きができるのです。
顎の力はあまり強くありませんが、そのかわり前足のかぎ爪が立派に発達しています。さらにバランス感覚や嗅覚が優れていたこともわかっていて、群れで待ち伏せをするなど戦略的な狩りもしていたのではないかと考えられています。
効率的で頭が良く、抜群の運動能力をもったアロサウルスは、ジュラ紀の食物連鎖の頂点にいたといわれているのです。
知名度や人気では完全にティラノサウルスに負けているアロサウルスですが、実際に戦ってみた場合はどちらが強いのでしょうか。
まずティラノサウルスが有利なのは体格です。頭だけでなく体長も13mほどありアロサウルスよりも一回り大きな体をしています。
至近距離での攻撃や、捕らえられてしまった際の強靭な顎の力には太刀打ちできないでしょう。つまり1対1の勝負ではティラノサウルスに軍配があがると考えられます。
しかし自然界の勝負にルールはありません。やるか、やられるかです。アロサウルスが優れているのは、足の速さです。ティラノサウルスのスピードは平均時速20〜40kmほどだと推測されている一方で、アロサウルスは時速60kmで走れることができたといわれています。
どんなにパワーが強くても相手を捕まえることができなければ、意味がありません。素早いアロサウルスはあちこちに動き、相手を撹乱させることでしょう。また頭もよいので、1匹がおびき寄せてそこに待ち伏せていた群れの仲間が一気に襲いかかったらどうでしょうか。アロサウルスがティラノサウルスに勝つ可能性も十分にあると考えられます。
「恐竜ははるか昔に絶滅した」ということになっていますが、実は現代にも生きていると主張する研究者がいます。なんと鳥類の骨格や体の構造が、恐竜の標本と類似しているところが多くあり、恐竜が進化したものだといわれているのです。
これから化石が発見されていくことで、鳥類に進化していった過程も明らかになっていくのではないかと見込まれています。
アロサウルスも現代に生きる鳥類の特徴によく似た構造をもっています。特に顕著なのが、「中空」という骨を持っていること。これは体を軽量化するのに適した骨で、空を飛ぶ鳥類にみられる特徴です。巨大な体をしたアロサウルスがもっているのは興味深いことでしょう。
また中国で発見された大型肉食恐竜の化石から、羽毛があった痕跡が発見されました。
我々が日ごろ図鑑などで見ている恐竜の姿は、皮膚の色や質は人間が骨格から想像したものでしかありません。つまり彼らの皮膚が羽毛に覆われていたとしても不思議ではないのです。
時は19世紀後半、恐竜の化石をめぐる競争が激化していました。通称「化石戦争」ともいわれるこの時代を牽引したのが、古生物学者のエドワード・ドリンカー・コープとオスニエル・チャールズ・マーシュです。
アロサウルスの化石が初めて記録されたのは、1869年のこと。アメリカの地質学者が人づてに入手をしたもので、おそらくロッキー山脈の東側モリソン層で発掘されたものと推測されています。
研究者に贈られたこの化石は「アントロデムス」と名付けられましたが、標本が不十分だったため定着しませんでした。
「アロサウルス・フラギリス」という正式な学名が付けられたのが、1877年のこと。マーシュが命名した標本で、初めて脊椎が軽量化されている構造がわかったものでした。他の恐竜にも同じ構造があることは後々わかりますが、当時では珍しい発見であり、アロサウルスという学名には「他とは異なるトカゲ」という意味合いが込められています。
1960年代に入ると、クリーブランド・ロイド発掘地で数十体もの骨格が発掘されました。そして1991年、全身の95%がそのまま残った化石が発見され、通称「ビック・アル」と名付けられます。保存状態が良く、学術的に価値の高い標本として知られています。
ちなみにアロサウルスは、日本で初めて全身骨格の展示がおこなわれた恐竜です。1964年に上野の国立科学博物館で公開されました。
- 著者
- 土屋 健
- 出版日
- 2015-06-12
恐竜の時代はいくつかのカテゴリに分けられていますが、ジュラ紀がもっとも面白いという人も少なくありません。映画「ジュラシックパーク」でも表題に使用されています。
本書は、そんなジュラ紀に生きていた生き物の生態などを記した学術書。イラストも豊富でわかりやすい解説なので、初心者の読者でも問題なく読み進めることができるでしょう。
多くの生き物が変化する環境のなかで生き延びるため、さまざまな進化を遂げました。そのなかで食物連鎖のトップに君臨していたアロサウルスの迫力は見ものです。
- 著者
- 黒川 みつひろ
- 出版日
- 2003-07-01
草食のトリケラトプスと肉食のアロサウルスは敵同士。本書はそんな両者の戦いを描いた児童書です。
主人公はトリケラトプスですが、敵役のアロサウルスの表現が秀逸。獰猛さや恐ろしさを描くだけでなく、賢さや運動能力の高さもしっかりとわかります。
小さな子どもが恐竜に関心をもつのにぴったりの作品でしょう。自然界の掟や食物連鎖についても学べるので、親近感を抱きつつもしっかりと知識をつけることができる一冊です。