彼は、本作の後半に登場した人物。言動とは裏腹の弱さで、何かと批判の的になることも。しかし、彼には彼のよさがあるのです。最後には自称世界最強の男が、いかに世界を救ったか。簡単な略歴などと合わせてご紹介しましょう。
彼は人造人間編の終盤、物語に決着を付けるセルゲームへ、彗星の如く登場した一般人です。
ミスター・サタンという名前は、悪魔を意味する英語のサタンから。本名はマークで、こちらは悪魔のアナグラムです。
- 著者
- 鳥山 明
- 出版日
- 1994-12-01
物語において彼ほど、人によって評価のブレるキャラクターもいないでしょう。口だけ大将か、コメディリリーフか、ヘイトの集め役か、それとも……。
実は作者・鳥山明お気に入りキャラクターであり、実力こそ伴わないものの、作中でも屈指のいい人です。虚勢を張りつつも、隠しきれない優しさが魅力的。
声優は初代が郷里大輔。2代目は『ポケットモンスター』オーキド博士役で知られる石塚運昇です。
彼は初登場時、チャンピオンベルトを巻いて世界チャンピオンであると言い切ります。これは自称ではなく、悟空達が数々の激戦で世界最高峰の武術大会、天下一武道会に出場しなかった空白期間に、彼が優勝してチャンピオンになっていたのです。
デモンストレーションの瓦割りに微妙に失敗する辺りはギャグ要員の一面が強いものの、一般人レベルでは強い方。しかし、セルなどの本物の強者には腹痛を理由に逃げるたり、情けないところが描かれます。
セルに見せたダイナマイトキックからわかるように、彼のセンスは非常に残念です。さらに後の時代、18号と対決した際の決め技の名前は、サタンミラクルスペシャルウルトラスーパーメガトンパンチでした。重要であるほど長くなる傾向があるようです。
サイヤ人編でライフル武装したおじさんの戦闘力は5でしたが、同じように武装した悪漢をサタンは圧倒したことがあります。そこからすると戦闘力は10以上20以下といったところでしょう。
あり得ない前提ですが、もしも悟空とフュージョンしたら、強くなるどころか大幅に弱くなりそうです。
- 著者
- 鳥山 明
- 出版日
- 1993-11-01
彼には、ビーデルという1人娘がいます。子どもは親を越えるものですが、彼女は高校生にして早くも世界チャンピオンを遙かに上回る実力者です。
そんな彼女は第25回天下一武道会で、洗脳強化されて一般人レベルを大幅に超えたスポポビッチと対戦、スタミナ切れで押される前は好勝負を演じました。
- 著者
- 鳥山 明
- 出版日
- 1995-06-01
セルゲームでは道化のようでしたが、ブウ編では一転して重要人物に。彼は初めてブウと間近で接触し、その心を解きほぐした人物なのです。最初は下心からでしたが、懐いてしまった犬のベエを介して、後に種族を越えた友情へと変化しました。
誰も試みなかった平和的偉業に対して、ピッコロも
「力はオレたちにかなわんかもしれんが
やはりお前の父は誇り高い世界チャンピオンだ」
(『ドラゴンボール』41巻より引用)
と称賛しました。
ブウについて紹介した<漫画『ドラゴンボール』のラスボス魔人ブウの10の事実!名言や形態など>の記事もおすすめです。
ビーデルと悟飯は、ブウ編を通してよい仲になり、後に結ばれることになります。彼らが結婚したということは、孫悟空家とサタン家は親戚同士。
サタンは資産家ですが、結果的にセルやブウ戦の手柄を横取りしたことから、悟空やチチには頭が上がりません。特に悟空には「悟空さん」と呼んでへりくだります。
彼が戦闘で活躍することはありませんでした。しかし、彼の取った行動は物語に重大な影響を与えています。自らは戦うことなく平和に貢献した彼の、数々の活躍を名言とともに振り返ってみたいとも思います。
「ふっふっふ……こいつはおどろいた……
この世界ナンバーワンであるミスター・サタンのことを、
よく知らない無知なイナカ者がまだいたとはね……」
(『ドラゴンボール』33巻より引用)
彼の初名乗りです。自信たっぷりに強者感を醸し出していましたが、見る者全ては「誰だこいつ」と困惑。この時は噛ませ役にすらならない道化だったのですが、それがまさか最終章で世界を救う働きをするとは夢にも思いませんでした。
「トリックだな……」
(『ドラゴンボール』33巻より引用)
道化役時代の彼の真骨頂。セルゲームの場にベジータが飛んで来たのを見て、こう断じました。以降も彼の理解を超えた出来事には、度々トリックだと言及するようになります。わけのわからないことをひっくるめる便利な合い言葉。
「セルは……わ、わたしが倒しちゃったかな――」
(『ドラゴンボール』35巻より引用)
悟飯がセルを倒した後、取り残されたテレビ局スタッフは、無事だったサタンに何が起こったか問い詰めました。彼が咄嗟に嘘をついたせいで、読者は歯痒い思いをすることになります。そんな彼も、最後にあんな活躍をしようとは。
「地球のゴミめ……」
(『ドラゴンボール』40巻より引用)
魔人ブウと暮らし、意図せず穏やかさを教えていったサタン。悪逆非道を繰り返していたブウは、サタンに説得されて破壊行為をやめると宣言します。その矢先、暴走した若者が現れ、彼らが大事にしていた犬をライフルで撃ってしまいます。
サタンはブウが怒るより先に飛び出して若者を成敗し、こう吐き捨てたのです。初めて見せた彼の英雄らしい一面でした。幸い犬は治療出来たのですが、この後ブウは……。
「き、きさまらいいかげんにしろ――――っ!!!
さっさと協力しないか――っ!!!
このミスター・サタンさまのたのみもきけんというのか――――っ!!!」
(『ドラゴンボール』42巻より引用)
悟空は原初の姿に還ったブウ相手に、最後の手段として元気玉をぶつけようとしました。しかし、地球の人々は協力要請に耳を貸さず、あまつさえ不満を漏らします。経緯の一部始終を知っているサタンは思わず激昂。期せずして、彼の行動が元気玉完成の決め手となりました。
この瞬間、彼は本当の英雄になったのです。
- 著者
- 鳥山 明
- 出版日
鳥山明の思い入れとは裏腹に、当初の彼の評判はよくありませんでした。ところが物語のラスト、勝負を決する運命の決め手となったのは、彼の鶴の一声だったのです。
そして元気玉をついに打とうとした悟空でしたが、思わぬことに、ブウの近くには動けずにいるベジータが。絶体絶命かと思いきや、そこでも活躍したのがサタンでした。なんと果敢にも、ベジータを担いでその場から連れ出したのです。そして、悟空は彼にこう言いました。
「やるじゃねえかサタン!!!!
おめえはホントに世界の… 救世主かもな!!!!」
(『ドラゴンボール』42巻より引用)
ブウとの和解、地球人の説得。ただの賑やかしか、勘違いしたコメディリリーフ、あるいは読者を逆撫でするうざキャラでしかなかった彼の存在意義がそこで確立されました。
ミスター・サタンは『ドラゴンボール』で最強キャラ、という最強説を打ち立ててもあながち間違いとは言い切れないでしょう。
いかがでしたか?こうして見ると、サタンはやはり間違いなく英雄なのです。