5分でわかるステラーカイギュウ!生態や絶滅した理由、目撃情報などを解説!

更新:2021.12.7

絶滅してしまった生物といえば、何を思い浮かべるでしょうか。この記事では、最初の発見からわずか数十年で姿を消すことになってしまった「ステラーカイギュウ」について、生態や絶滅した理由、目撃情報などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

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ステラーカイギュウの生態は?北海にいた幻のカイギュウ

カイギュウ目ジュゴン科に分類される海生哺乳類です。1741年にロシア東部にあるコマンドル諸島で発見され、わずか27年後の1768年に絶滅が確認されました。全長は9m、体重は4tほどあったと考えられています。

現存する近種であるジュゴンやマナティと違い、歯が完全に退化して無くなっているのが特徴です。長大な体に比べて胸ビレは小さく、海洋哺乳類に見られるような5列の指の骨もありません。

家族単位で10頭ほどの群れを形成していて、非常に高い社会性をもっていたと考えられています。春から初夏にかけて交尾をし、秋に1匹の子どもを出産したそうです。

寒冷な水域に生息していたステラーカイギュウですが、祖先と考えられるカイギュウ類の化石は太平洋一帯で発掘されており、日本でも山形県で800万年前に生息したと考えられるヤマガタダイカイギュウの化石が見つかっています。

 

ステラーカイギュウは泳ぎが下手?深く潜れなかったワケ

ステラーカイギュウを含むカイギュウ目の生物は、象と同じ祖先である陸上哺乳類から進化し、やがて水辺で生活をするようになったと考えられています。

攻撃手段をもたないおとなしい生物だったため、陸でも深海でもない「浅瀬」という生存競争が緩やかな場所で、海藻を主食にしていました。マナティやジュゴンも川や海の浅瀬で暮らしていて、潜水能力はいずれも高くありません。

特にステラーカイギュウは、分厚い脂肪に覆われていたため、ほとんど潜水することができなかったと考えられています。水面から出た背中にカモメを留まらせていたという記録も残っているほどです。

流氷の季節には絶食をして沖合に逃げ、春に氷が溶けると浅瀬に戻って海藻を食べるという消極的な暮らしをしていたと考えられており、忍耐強く争いを好まない性格であったことがうかがえます。

 

ステラーカイギュウが絶滅した理由

ステラーカイギュウが人間に発見されたのは、1741年のことです。デンマークの探検家、ベーリングが指揮したロシアの探索船が、無人島だったベーリング島に座礁した際のことでした。

アジアと北アメリカの間に陸路があるのかを調査するためにロシアを出発した探索船ですが、記録によると1741年の11月には航路を見失い、乗組員も飢えや病で次々に命を落としていく悲惨な状況だったそうです。

船長だったベーリングが命を落とした後に乗組員の指揮をとったのは、乗船していたドイツ人医師のG.ステラーという人物です。彼をはじめ生存していた乗組員たちの命を救ったのは、ベーリング島に生息していたラッコやオットセイ、そしてステラーカイギュウの肉でした。

ちなみに第一発見者のひとりであるG.ステラーにちなんで、名前が付けられています。

ベーリング島で命を繋ぎ、なんとか帰国した一行。ベーリング島付近にラッコなどの毛皮獣が生息していること、そして今まで見たことのない大型のカイギュウがいること、そのカイギュウの肉が上質な赤身肉のように美味で体脂はアーモンドオイルのように香り高いことなどを報告します。

すると毛皮商人やハンターがベーリング島に押し寄せました。当時ラッコの毛皮は最高級品だったため、猟をしながら現地でご馳走ともいえるステラーカイギュウの肉を調達するようになりました。

それまで天敵がおらず、外敵に対抗する術をもっていなかったステラーカイギュウを狩ることは、容易なことだったそうです。

G.ステラーの発見から27年後の1768年、ステラーの知人だったイワン・ポポフの「まだカイギュウが残っていたので殺した」という記録が、ベーリング島周辺で彼らの姿を見た最後の記録です。

ステラーカイギュウは攻撃を仕掛けてこないだけでなく、高い社会性と強い仲間意識をもっていたため、仲間が捕まると、助けるために集まってきたという記録も残っています。皮肉にもこの優しい性質が仇となり、1頭捕まえれば芋づる式に狩ることができてしまいました。

その他彼らが絶滅した理由としては、ラッコ狩りが激化したためにラッコが餌としていたウニが爆発的に増え、そのウニが海藻を食べつくしてしまったため餓死してしまったのでは、という説もあります。

ラッコ狩りをしていたのも人間なので、いずれにせよステラーカイギュウの絶滅には人間が大きくかかわっているといえるでしょう。

 

ステラーカイギュウは生存している?目撃情報を紹介

1768年に絶滅が報告されたステラーカイギュウですが、実は1780年に1頭捕獲されたという記録があり、その後も目撃情報がいくつかあるのです。

その他1854年に目撃情報、そして1962年には当時のソ連の科学者が、ベーリング海で6頭の巨大で見慣れない海獣の目撃報告をしたことから、ステラーカイギュウの生き残りではないかと考えられています。

その後もグリーンランドなど北氷洋のさまざまな場所で目撃したという報告はあるるものの、2021年現在はまだ生存を確定できる証拠はありません。

 

ジュゴンを通して考える

著者
池田 和子
出版日
2012-06-17

ステラーカイギュウと同じくカイギュウ目ジュゴン科に属する唯一の現生生物であるジュゴン。その愛らしく優しい性格と生態を、さまざまな側面から紹介する1冊です。

ジュゴンの食性や暮らし、繁殖や絶滅に瀕している背景とともに、辿ってきた進化の過程がわかります。共通の祖先からどのようにジュゴン、マナティ、ゾウ、そしてステラーカイギュウと分化していったのかを理解することができるでしょう。

現在のジュゴンが置かれている状況を説明するうえで、ステラーカイギュウの悲劇は避けてはとおれません。海の神や神の化身として大切に扱われてきたジュゴンに、同じような道を歩んでほしくないとあらためて思わせてくれます。

 

ステラーカイギュウも泳いだ海と生き物の写真集

著者
カラム・ロバーツ
出版日
2017-05-26

温暖なコーラル・トライアングル、冷たいフィヨルドの海、砂漠に横たわる細い線のような海……。

本書は、世界中のさまざまな海とそこに生息している動物たちの姿を捉えた写真集です。

現生する海洋生物の写真を収めているため、ステラーカイギュウの姿はありません。しかし多くの命を生み、育んできた海の様子を眺めると、かつてはいたはずの彼らの姿を感じることができるでしょう。

また海の生物を紹介するとともに、陸上でもっとも成功したといわれる人間はどのように海と関わるべきなのか、という疑問も投げかけています。「鯨はなんのためにいるの?」という問いに人間の傲慢さを感じた、という一文からは生態系における人間の位置についても考えさせられるでしょう。

 

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