5分でわかるビーバーの生態!ダムづくりが自然界に与える影響は?

更新:2021.11.15

日々仕事をしている働き者は、なにも人間だけではありません。動物たちもそれぞれの環境で生き残るために、創意工夫をしています。なかでも「建築」に優れているのがビーバーです。この記事では、彼らの生態や「ダムづくり」などについてわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

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ビーバーの生態は?生息地や体の特徴など

 

齧歯目ビーバー科ビーバー属に分類される動物です。体がまるまるとしているため、和名は「海狸」といいます。

とても愛らしい顔をしていて、角度によっては笑っているようにも見えるので、そのキャラクター性に多くの人気が集まっています。ただ実はカピバラに次ぐ世界で2番目に大きな齧歯目なので、実際に目の当たりにするとなかなか迫力がある印象を受けるでしょう。

北アメリカやカナダに生息している「アメリカビーバー」と、ドイツやフランス、ポーランドに生息している「ヨーロッパビーバー」の2種が存在します。両者の最大の違いは体の大きさで、ヨーロッパの方が若干大きく体長80〜100cm、尻尾が25〜50cmあります。アメリカは全体的に10〜20cm小柄です。

その他の生態や体の特徴はよく似ています。陸上よりも水中での生活に適していて、哺乳類であるにも関わらず尾先は平たく、皮膚がうろこ状になっています。また後ろ足には水かきがあり、泳ぎや長時間の潜水も得意です。

寿命は15年〜20年。草食で、木の葉や皮、草、木の実などを食べて生きています。

ビーバーのダムづくりは本能だった!自然界に与える影響は?

 

最大の特技は「ダムづくり」だといえるでしょう。その能力は動物界の天才建築家といわれるほどです。

まずは材料を集めるところからはじまります。自慢の大きくて丈夫な歯を使い、直径15cmほどの木であれば数分でかじり倒すことができるのです。このようにしてかき集めた木材と、泥や砂などを使って、ダムを建設していきます。幅数mの川であればあっという間にせき止めることができるのです。

なぜビーバーがダムをつくるのかというと、暮らしの安全を守るため。川をせき止めてダム湖ができると、その中央に木材を集めて巣をつくるのですが、入口は水の中に設置します。彼らには狼やコヨーテなど天敵が多くいるので、巣の周囲をダム湖で囲い、身の安全を確保しているのです。

この行動は生まれつき備わった本能で、誰かに教わらなくても自然にできるようになるそう。水が流れる音を聞くと、その場所をせき止める性質があります。

またビーバーがダムをつくることで、土地の環境が大きく変わり生態系に変化をおよぼすことがあります。流れていた川が湖になることで、そこに水鳥がやってきたり、水草が生えたりするのです。このことを利用して、人工的に流水音を聞かせ、ダムをつくらせて環境を改善しようという取り組みもおこなわれています。

ただ木の根が水没して腐ってしまったり、水流が変わることで魚に悪影響が出るなど、時には悪影響が出る場合もあるようです。

ビーバーは総排出腔をもつ哺乳類

 

ビーバーは齧歯類で唯一の「総排泄腔」をもっているという特徴があります。総排泄腔とは、便や尿などの排泄物を外に出す器官と、生殖器官が、ひとつになっているもの。

ビーバーの場合は直腸、排尿口、生殖口を兼ねていて、他の哺乳類のように生殖器が体の外に出ていません。オスの睾丸も通常時は体内にあり、交尾をする時だけ外に出てくる仕様になっています。よって彼らは外見からはオスかメスかの判断がつきにくいです。

ちなみにビーバーの総排泄腔からは、香料の元となる「カストリウム」を採取することができます。彼ら自身が縄張りにマーキングをするための分泌液ですが、加工してお菓子や香水などに使われています。

大自然アラスカで暮らす姿を収めた写真集。

 

見た目もかわいらしく、またダムをつくるほど頭もよいビーバーは動物園などでも人気者ですが、そんな彼らにも悲しい過去がありました。17世紀の中頃、アメリカ大陸のインディアン族とヨーロッパ諸国の間で毛皮をめぐる争奪戦が起きたのです。

「ビーバー戦争」と名付けられるほど激しいもので、年間10〜50万匹ほどが乱獲されたそうです。

もともと彼らの毛皮はインディアンたちに愛用されていて、ちょっとした贅沢品でした。当時は必要な分だけ捕獲し、加工していました。ところが外国との交易が盛んになるにつれ、毛皮の質の良さが海外の権力者たちに伝わっていきます。

すると、毛皮を使って商売をし、金儲けをしようと考える人たちが次々に現れました。やがてビーバーをめぐり、部族や国家間で争いが起こるようになってしまったのです。

ビーバーは哺乳類には珍しい一夫一婦制。1つのペアで子どもをつくり育てていくので、繁殖能力がそれほど高いわけではありません。そんななか乱獲されてしまったので、数を極端に減らすことになってしまいました。

現在はアメリカとカナダが保護法をつくり、絶滅の危機は免れています。

働き者のビーバーを躍動感たっぷりに

著者
佐藤 英治
出版日
2007-01-20

動物写真家の佐藤英治が、アラスカの自然のなかで生きるビーバーの姿をとらえた写真集です。山を登り、川を泳ぎ、ダムをつくる彼らの力強い姿を生き生きととらえています。

また天敵のカワウソを尻尾を使って威嚇する様子や、時には立ち向かって攻撃する様子など、動物園ではなかなか見ることのできない仕草も楽しめるでしょう。

掲載されている写真はどれも躍動感があり、まるで本当に生きているよう。添えられている文章はシンプルながらも彼らの生態がシンプルに表されていて、本書があればビーバーに関するさまざまなニーズを満たしてくれるでしょう。

ビーバーが主人公の絵本

著者
ニコラス・オールドランド
出版日
2012-06-22

 

森で暮らすビーバーさんは働き者。しかし忙しすぎて中途半端になってしまい、いつも周りに迷惑をかけてしまっていました。本書は、そんな彼がある日怪我してしまったことから、のんびりと生きることにシフトチェンジしていく様子を描いた絵本です。

物語には、ビーバーの生態や環境問題なども絡んでくるので、楽しみながらもしっかり知識をつけて学ぶことができるでしょう。また登場するキャラクターたちが個性豊かなので、小さい子どもでも飽きずに読むことができます。

日本語訳が丁寧なところにも共感を抱けるはず。読み聞かせにもおすすめです。

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