見た目はまるで木の枝という、驚くべき擬態能力を身に着けているナナフシ。気が付かないだけで、実はすぐそばにいるかもしれません。この記事では、そんな彼らの生態や種類ごとの特徴、手足を再生できる「自切」や飼育方法などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。
自然の中を何気なく歩いているだけではなかなか見つけることができないナナフシ。それもそのはず、容姿が木の枝にそっくりで、見事に風景に溶け込んでいるからです。節足動物門昆虫綱ナナフシ目に分類されます。
「不完全変態」という特性をもち、サナギにならずに幼虫から成虫になり、脱皮をくり返すことで徐々に体を大きくして成長していきます。
特徴はやっぱりその体で、生き物というよりも、木の枝に生命が宿ってそのまま動き出したと考えるほうが自然なほど細長いのです。体長は種類によってさまざまですが、数cmのものから大きいものだと50cmほどのものまで存在します。
草食性で、主な餌はケヤキやコナラ、サクラなど植物の葉っぱ。自然豊かなところであればどこにでも生息しています。ただ葉っぱを主食としているため冬に木々が枯れてしまうようなところでは生きていけません。そのため、基本的には熱帯から温帯の地域に暮らしています。
天敵は鳥で、彼らに見つからないようにするために木の枝に擬態しています。ちなみに幼虫のときは擬態がまだ完璧ではないため、体に縞模様がついています。森における縞模様毒性のある生き物だという危険を意味していて、やはり幼いころから「偽って」いきているのです。
世界に約2500種の仲間がいることがわかっています。そのなかから、日本で見ることができる種を紹介しましょう。
まずは九州から沖縄にかけて生息しているコブナナフシです。ちょっとぽっちゃりしているのが特徴で、太くて短い枝がついているなと思って近づき、もしも動いたら彼らだと思ってよいでしょう。
本州や四国、九州に生息しているエダナナフシは、擬態能力がかなり優秀です。ただでさえ枝に似ているのにさらに名前に「エダ」とつけられてしまうほどそっくり。体色のバリエーションが豊かで、枝だけでなく葉や茎にそっくりなものも存在します。生き延びる力が強いからか、意外と都市近郊でも遭遇することができる種類です。
さらに、温かい地域を好む彼らですが、北海道でもシラキトビナナフシという種を見ることができます。体は緑色、動きは緩慢で、発見できれば比較的簡単に捕まえることができるでしょう。単為生殖で子孫を残していると考えられていて、オスが見つかっていません。ナナフシには珍しく羽があり、いざというときには飛ぶことができます。
彼らは高い擬態能力をもっていますが、その一方で攻撃力は皆無。毒針もなければ鋭い歯などもなく、またほとんどの種類は飛ぶ能力もありません。とにかく「見つからないこと」に徹することで生き延びてきた昆虫なのです。
しかし万が一的に見つかってしまった時の最終手段があります。それが、自ら足を切って逃げる「自切」という方法です。
幼虫の段階であればなんと手足の再生が可能。脱皮をくり返すことでまた生えてきます。
成虫になってからは再生することはありませんが、彼らはもともと手足が長く、たとえ1本がなくなったとしても他を使ってしっかりと木に捕まることができるため、大きな問題にならないのです。
昆虫が苦手な人でも、植物の緑に癒される人は多いでしょう。ナナフシはその見た目から、虫嫌いの人にも受け入れられやすいです。木の枝にそっくりなうえ、動きものんびり。鑑賞していると飽きません。
ペットとして飼育をする場合は、1000~2000円程度で購入することができます。プラスチック製の虫かごを使い、パネルヒーターなどを用いて温度管理をしてあげましょう。虫かご内の環境が複雑だと、足を引っかけてしまい自切する場合があるので、注意が必要です。
餌は広葉樹の葉っぱ。新鮮なものを与えてください。水分は、水を吸わせた小さなスポンジを置く程度で大丈夫です。寿命は3ヶ月ほどです。
- 著者
- 川邊透
- 出版日
- 2014-07-31
大人になったら虫に触ることはできなくなったけど、子どものころは何も気にせず土や泥の中に手を入れ、さまざまな生き物をとっていた人も多いのではないでしょうか。本書は、当時のワクワクした気持ちを思い出させてくれる図鑑です。
ナナフシを含め、数多くの鮮明な写真が掲載されていて、その擬態能力の高さを実感することができるでしょう。
本書の最大の特徴は、大きさと色で感覚的に検索することができる「写真検索マトリックス」がついていることではないでしょうか。たとえば名前のわからない昆虫を見つけた時、分類などもわからないので調べようがありません。本書のマトリクスは見た目の特徴で検索できるつくりなので、見つけやすいのです。
昆虫採集をする際のお供にしたい一冊です。
- 著者
- 出版日
- 2013-02-12
子どもの頃の遊びの代表といえば、「かくれんぼ」。ナナフシの擬態はまさにかくれんぼで、どこに隠れているか探すだけで楽しいのではないでしょうか。
また昆虫のなかには、ナナフシ意外にも擬態をする種がたくさんいます。クイズ形式でつくられているので、ワクワクしながらページをめくることができるでしょう。大人が見てもあらためてその能力に感心させられるに違いありません。
生き物の魅力を知るには、どんなものでもよく観察することが大切です。擬態している昆虫を見つけるために目を凝らし、そうすることで彼らの周りの植物や環境などひとつひとつが見えてきます。自然への愛情が生まれる一冊でしょう。