彼は本作に登場する強敵。いつも不気味な薄笑いを浮かべています。裏切りに裏切りを重ねた行動の真意とはなんだったのか……最後まで目が離せないキャラクターです。
- 著者
- 久保 帯人
- 出版日
- 2005-12-02
市丸ギンは、いつも薄笑いを浮かべたような笑顔を崩さず、真意のつかめない飄々とした性格。糸目なので普段は彼の瞳を見ることはできませんが、時折真剣な表情になって見開いた目から、瞳が淡い水色をしているのがわかります。 一人称はボク。京都弁で話しており、どこか人を小馬鹿にしたような口調が目立ちます。
護廷十三隊では五番隊副隊長で藍染の下についていた過去があります。一護たちが尸魂界へやってきたときには、三番隊隊長を務めていました。隊長としての実力は本物で、鬼道は達人級です。作中では鬼道の玄人にしか使えない、白伏という技を使って見せる場面もありました。
隊長時は袖のない型の羽織を着用しており、尸魂界を裏切ったのちも、色合いや形は当時の面影の残る衣装を着ています。
彼の斬魄刀の始解の名は「神鎗(しんそう)」。その能力は、刀を伸ばすこと。刀百本分伸びるといわれ、幼いころは百本差しと呼ばれたと彼は語ります。脇差ほどの大きさで、ほかの死神に比べればいささか弱そうにも見えまが、戦闘能力はさすが隊長格というだけの力です。
彼は一護と2回、戦っています。2度目の戦いは藍染との総力戦のとき。このときの一護の強さは尸魂界の隊長格を凌ぐほどでした。
作中では、その彼を圧倒しながら戦ったのです。一目では強いとわからない斬魄刀。まるで、真意のつかめないギンの本質を写し取っているようでもあります。
卍解の名は「神殺鎗(かみしにのやり)」。なんと13㎞も伸びると言い放ちます。しかし神殺鎗の持つ強さは伸びる距離ではなく、その速さ。
彼の斬魄刀の1番の強みは、伸縮の速さだったのです。
彼の発言から察するに、音速の500倍の速さで刀を伸び縮みさせることができるよう。刀を伸ばして相手を斬ればいいことになるので、彼が動かなくとも相手を斬り倒すことが可能。そんな速さで伸び縮みするのですから、1秒間に百回以上も相手に突きを入れることができる計算にもなります。
しかし彼の口から、その能力は偽りであったと告白されます。言ったほど刀は伸びず、そして速くもないと。
本当の能力は刀が伸び縮みするときに、一瞬塵になること。そしてその刃の内側には細胞を溶かして崩す、猛毒が含まれているというのです。
その力は崩玉を取り込んだ藍染の体を破壊してしまうほどでした。なぜ彼が藍染を襲っているのか……その理由は、後程ご説明しましょう!
彼は阿散井恋次や雛森桃と同期で、真央霊術院を首席で合格した実力者です。三番隊の副隊長で、ギンには絶対の信頼を寄せていました。
雛森のような敬愛の気持ちを持っていたわけではないようですが、上官のいうことが絶対という思想から従っていたようです。
- 著者
- 久保 帯人
- 出版日
- 2004-12-03
ルキアの処刑をめぐって尸魂界が混乱していたときも、ギンの不可解な行動にも疑問を持たず、自分が利用されているとは気づいていませんでした。四番隊副隊長の虎徹勇音の天挺空羅で雛森の重傷を知り、初めて疑念を抱いたようです。
ギンは彼のことを気に入っているらしく、子供っぽいいたずらを仕掛けることもたびたびあったよう。イヅルは、ギンが尸魂界を裏切った後には、酒飲みの乱菊のもとでやけ酒している場面があります。
作中では2人の関係性は深くは描かれていませんが、 師弟なりの絆はあったのではないかと感じられる細かな演出です。
- 著者
- 久保 帯人
- 出版日
- 2002-03-04
17巻でルキアが処刑のために双極へと連れていかれる道中、ギンがその後をついてきました。
恋次が白哉の前に倒れ、霊圧が薄くなったことに気付いて話しかけます。恋次が倒れたのはルキアを助けようとしたからだと話し、さらに、自分なら恋次のこともルキアのことも助け出せると言い出すのです。
そんなことをして、彼に利益などありません。
それまで死ぬことなど怖くなかった彼女が、もしかすると彼が自分たちを助けてくれるかもしれない、と僅かな希望を抱いてしまいます。
処刑される覚悟が揺らいだ瞬間、彼は「嘘」とつぶやきました。覚悟の揺らいだ彼女は、その場にひざまずき、絶叫します。
ただいたずらに人の心をもてあそび、平然と立ち去っていく彼の姿は悪役そのものです。
ギンは流魂街の出身です。同じく、十番隊副隊長の松本乱菊も流魂街の出身でした。
実は、2人は幼少期をともに過ごしています。餓死寸前で倒れていた乱菊をギンが助けたことをきっかけに同居していたようです。
このとき彼女に手渡したのが干し柿。彼の好物です。
2人の関係を知っている死神は多くないらしく、ギンが裏切ったことで彼女を気遣う死神の発言は見受けられません。しかし2人はお互いのことを、本当に大切に思っているようです。
- 著者
- 久保 帯人
- 出版日
- 2010-08-04
十番隊隊長の日番谷冬獅郎の誕生日を祝う場面で、彼女は自分の誕生日にまつわるエピソードを思い出しています。 生まれたときのことなど覚えていない彼女に、それなら……とギンが「自分と会った日を誕生日にしてほしい」と話している場面でした。
彼女は、1人でどこかに行ってしまうギンを切り捨てることが、どうしてもできません。藍染との総力戦の際も、重傷を負いながら、1人で彼を追いかけます。
そこで無謀にも藍染とギンの前に立ちふさがる乱菊。ギンは藍染が手を下す前に、彼女を遠くビルの上に連れ去ります。
すぐに藍染のもとへ戻り「殺しました」と彼は報告しますが、本当は白伏という鬼道を使って彼女を気絶させただけでした。 どんな相手にも気を許さず、邪魔なら簡単に斬ってしまう彼ですが、彼女だけは違ったようです。
幼い2人が身を寄せ合って暮らしていたときや、すれ違っている現在のことを考えると、彼らの絆は一言では言い表せそうにありません。
- 著者
- 久保 帯人
- 出版日
- 2010-12-03
ギンは100年以上も前から裏で藍染とつながっていたわけですが、2人の信頼関係はどれほどのものなのでしょうか。 2人が会話をしている場面からは、ギンも藍染もお互いを信じているようには見えません。むしろ探りあっているようにも見えます。
藍染と尸魂界の空座町における総力戦では、一護の父・一心と浦原喜助が藍染と戦っている最中、ギンは一切手を出しません。離れたところで傍観していたようです。藍染も「長い見物だったね」と彼の真意を探るような発言をしています。それに対して彼は、手をだす隙がなかっただけだと言い訳したり。
2人が信頼しあっていないことだけは伝わってくる場面です。
ギンは乱菊を置いて行き、イヅルや護廷十三隊、そして最後には藍染のことすら裏切ります。
藍染と死神たちとの総力戦において、崩玉を取り込んだ藍染に刃を突き刺し、彼を1度は破壊します。裏切りに裏切りを重ねた、その目的は一体なんだったのでしょう。
先ほど書いたとおり、ギンと乱菊は幼馴染であり、幼少期は同居していました。しかし、あるとき彼が帰宅すると家は無残に壊され、意識を失った乱菊が倒れていたのです。
調べると、彼女の魂魄から一部が欠けていました。
彼は冷静に犯人を追いかけ、数名の死神を従えていた藍染を見つけ出します。その手にはまだ完成していない崩玉が。藍染は霊力のある魂魄の欠片を集めて、崩玉を作り出そうとしていたのです。つまり藍染の手のなかに彼女の魂魄の欠片があるわけですね。
魂魄の一部を奪ったのは藍染である。そう確信したギンは、それから藍染への復讐と、奪われた彼女の魂魄の欠片を奪い返すことにすべてを捧げることにしたのです。
彼の裏切りは、全て乱菊のためを思ってのことだったのでした。
自分のことしか考えていない悪役かと思いきや、昔から何も変わらず彼女のことを一途に思う「いいやつ」だったという結果には、驚きが隠せません。
彼は100年間ものあいだ、藍染に従いながら弱点を探っていました。その期間で、やっと見つけた攻略法。それは鏡花水月によって完全催眠がおこなわれる前に、鏡花水月本体に触れておくこと。そうすれば完全催眠にかからないでいられるのです。
そして神殺鎗の真の能力を使えば、藍染を倒せる……そう考えていました。
1度は藍染の体を破壊し、そのなかから乱菊の魂魄の一部が入った崩玉を奪います。しかし、取り出されたあとも崩玉が藍染に力を与え続けたために、復活した彼によって殺されてしまうのです。
ラストでは修行を積み強くなった一護を見て、あとは任せられると安堵し、息を引き取ります。
ギンが倒れたことで白伏が解けた乱菊は、すぐに彼のもとへ駆けつけます。しかし時すでに遅く、言葉を交わすこともできないまま彼を看取ることになるのです。
乱菊の涙を見ると、ただ一途なだけの2人には、あまりにもつらい結末だったともらい泣きしてしまいます。
遠まわしで含みのある言い方や、悪役ならではの非情な言動の多い彼。しかし、誰にも心を許さず孤独を貫き通しながらも、セリフのなかには彼の想いがあふれんばかりに詰まっています。
5位
「君が明日 蛇となり 人を喰らい 始めるとして
人を喰らった その口で 僕を愛すと 咆えたとして
僕は果たして 今日と同じに 君を愛すと 言えるだろうか」
(『BLEACH』47巻から引用)
47巻に記載されていた、彼の言葉と思われるポエムです。個人的には乱菊の言葉ともとれるのではないかと思います。相手のことを心の底から真摯に考えていることが伝わってきますね。
4位
「門番が“負ける”ゆうのは…
“死ぬ”ゆう意味やぞ。」
(『BLEACH』9巻から引用)
一護に負けた兕丹坊は勝負に負けたことで門を開けて、瀞霊廷に入れようとしました。そのとき、彼が現れます。
門を開けた途端、間髪入れずに兕丹坊の左腕を落とし、さらにはこのセリフ。情の欠片もない冷徹なふるまいに、恐ろしさを感じざるを得ません……!
- 著者
- 久保 帯人
- 出版日
- 2010-10-04
3位
「乱菊 あかんかった
結局 乱菊のとられたもん とり返されへんかった
ああ やっぱり 謝っといて 良かった」
(『BLEACH』48巻から引用)
彼の最期のシーンです。最期まで乱菊を想う姿に、切なくなります。
それも生きててよかったでも、好きだ、でもなく、謝罪を言っていてよかったと心の中でこぼしています。自分の想いを伝えることより、ただひたすらに彼女の幸せだけを願っていることが伝わっくる言葉です。
2位
「もうちょっと捕まっとっても良かったのに…
さいなら 乱菊 ご免な」
(『BLEACH』20巻から引用)
ギンたちの裏切りが明らかになったとき、真っ先に彼を止めようとしたのが乱菊でした。1度はつかまりますが、虚圏に逃げ去っていきます。
彼の最期を見たあとに読むと、もうちょっとつかまっていてもよかったのに、という言葉は本音だったのだろうと思い、切なさが募りますね。そしてこの言葉が5位に選んだ「やっぱり謝っといてよかった」が指していた謝罪の言葉にあたるのではないでしょうか。
この時点ですでに、彼自身が藍染に負ける場面を想像していたかもしれないと思うと、その覚悟の強さに心が打たれます。
1位
「決めたんや ボク死神になる 死神になって変えたる
乱菊が 泣かんでも済むようにしたる」
(『BLEACH』48巻から引用)
彼が流魂街に、乱菊を残して去っていく場面です。このときすでに、彼のなかでは藍染に復讐をして、彼女の魂魄の欠片をとり返す覚悟が生まれていました。
死神になるのも、復讐するのも、乱菊のそばを離れるのも、すべては彼女のため。大切な彼女のそばにいられないことが、彼にとってどれだけつらいことだかわかりません。
それでも彼女のためにと、幼少期からつらい日々を乗り越えていこうとする彼の健気さが描かれています。
『BLEACH』に登場するキャラクターの強さをランク付けした<【再アニメ化】漫画『BLEACH』(ブリーチ)最強ランキング!藍染は3位!>の記事もおすすめです。ギンは何位にランクインしているのでしょうか。
お読みいただきありがとうございます。ギンの不気味な笑顔の裏に隠された、純粋すぎる健気な姿は見えたでしょうか?彼の魅力は最後まで自分を悪役に徹してでも、たった1人のことを思い続けた一途さではないかと思います。いつも薄笑いを浮かべている彼ですが、乱菊のこととなるとほんの少し表情に変化が現れています。
ぜひ原作で確認してみてください!