不思議な物語を求めている方におすすめする本【住岡梨奈】

不思議な物語を求めている方におすすめする本【住岡梨奈】

更新:2021.11.15

今回は“不思議”な物語を選んでみました。 「読み終えたのに何だかすっきりしない!」という感覚が年齢を重ねてから面白く感じるようになりました。時間を置いてもう一度読み返したくなる3冊です。 この3冊に他にも共通点があるとすれば、それは“死の記憶”だと思います。 登場人物たちにとって“死”は人生において悲劇なのか、喜劇なのか、それぞれが“死”にどう影響され変化していくのか等、想像を膨らまして読むと物語の続きを想像する材料にもなりそうです。 何が正しいかよりも何が起きたのか、それをどう受け止めるかを考える面白さがあります。

住岡梨奈プロフィール画像
ミュージシャン
住岡梨奈
北海道出身。1990年生まれ。2012年6月にシングル「feel you」でデビュー。翌年7月より、海辺のシェアハウスで共同生活を送る様子を放送する人気番組「テラスハウス」に出演。2019年2月公開の映画『あまのがわ』では主題歌と劇中歌を担当し、役者としても映画に初出演。6月5日にベストアルバム『住岡梨奈 2012-2019』のリリースが決定。6月8日の名古屋公演から全国7カ所をまわる、住岡梨奈 弾き語りtour 2019「笑顔のために」を開催する。また、8月にはバンド編成でのツアー、住岡梨奈 LIVE tour 2019「笑顔のために」を東京・大阪・札幌で開催。8月30日の札幌公演をもって活動休止する事を発表している。 http://www.sumiokarina.com/
ブックカルテ リンク

神様ゲーム

著者
麻耶 雄嵩
出版日
2015-07-15

小学四年生の主人公が住む街では、猫が無惨に殺される事件が相次いでいました。友達が可愛がっていた猫が被害に遭ってしまったのを機に、同級生らと以前から結成していた探偵団で猫殺害事件の犯人捜しを始めます。そして、さらなる事件が……。

そんな中、ある日、主人公は転入生の鈴木くんと掃除当番が一緒になりました。二人きりのトイレ掃除。主人公は鈴木くんに話しかけ、転入生への定番の質問をしていると、「ぼくは神様なんだよ」と鈴木くんに告げられます。どんな質問をしても、本当に全知全能かのように迷いなく答える鈴木くんに対して戸惑いを隠せないまま、半信半疑ながらも主人公は事件の犯人を“神様”から聞き出そうとします。そして、犯人に天誅を下してほしいと“神様”にお願いするのです。その“死”が想像を絶する真実に繋がるとも知らずに……。

児童書に分類されている本ですが、あまりにも殺生の描写が痛々しく、大人の私でも時折ブルーな気分になってしまうほどでした。「これはフィクションだ!」と分かっているのにハラハラドキドキしてしまう、そんな気持ちで皆さんにもぜひ読んでいただきたいです。その先に待っている衝撃の真実は読んでからのお楽しみということで。

最後は驚きのどんでん返し、そして「!!??????」となることだけ伝えておきますね。というわけで、続編の『さよなら神様』も気になるので読んでみようと思います!

木漏れ日に泳ぐ魚

著者
恩田 陸
出版日
2010-11-10

恩田陸さんの作品を読むのは、以前紹介した『夜のピクニック』以来です。

同棲解消前夜、男女二人が部屋で思い出を語り合いながら、ある一人の男性の死をめぐってお互いの腹の探り合いをする、という一夜の出来事が描かれた物語です。

男性側・女性側と交互に視点を切り替えながら物語が進むのですが、「あの男を殺したのは相手なのではないか? 今夜自分が相手に殺されるかもしれない!」と互いを疑い、考えを巡らせながら過ごしている二人の緊張感が非常に伝わってきました。ポケットに手を入れるなどの僅かな動きからもそれぞれの思惑や心情が感じられ、緊迫感が増していきます。読んでいる私も気が気ではありませんでした。

女性側の視点で書かれた朝を迎える場面がなんだか素敵で気に入っています。「わからないね、でも答えは見つけられたのかも。もう行かなくちゃ。」なんて彼女が言っていそうな雰囲気がして、素敵に感じたのです。

同棲解消後、二人は一体どんな恋をするのか。そもそも、こんなことがあった後に新しい恋が出来るのだろうか……なんて心配をしてみたり。苦く重たい空気を感じてみたくて読んでみるも良し! 読み始めたなら最後まで、一つの恋を見届けるような気持ちで読んでもらえたらと思います。

風の歌を聴け

著者
村上 春樹
出版日

21歳の頃にあった出来事の記憶を、29歳になった主人公「ぼく」が順々に辿っていきます。泥酔している時に知り合った友人「鼠」とのこと、過去に付き合った3人の女性とのこと、バーで知り合った手の指が全部で9本の女性とのこと。中でも主人公が3人目に付き合った彼女とのことは幾度も話に出てくるのですが、彼女は主人公と関係を持った翌年に自殺していました。彼女の死を他の話題と関連づけて、思い立ったように幾度も話す主人公が非常に印象深かったです。彼にとっては彼女の記憶はほんの一部でしかないかのもしれないけれど。

それぞれの出来事は思い出の断片のはずなのに、実は全て繋がっているということを、何度も読み返しているうちに読み取ることができました。けれど、見出した答えは不確かなもので、全ては著者のみぞ知る、という感じです。

私はこの本を学生の頃から読んでいますが、何度読み返してみてもなぜか舞台を日本ではなく海外に脳内変換してしまいます。10円玉が話に出て来る度にハッとします。キザな喋り言葉の端々に海外の匂いを感じるのでしょうか……? 155ページほどの物語ですが内容はとても濃密で、私にとってはまだまだミステリーな作品です。不思議と引き込まれてしまう文脈や個性溢れる人物像に何年も魅了され続けているのです。きっとこれからも。

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    バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。

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