化粧水の原料などにも使用されている「どくだみ」。臭いが強烈な印象ですが、具体的にどのような成分や効果があるのかご存知でしょうか。この記事では、古くから薬草として重宝されてきたどくだみについて、生態や効能、民間療法として有名なお茶の作り方、副作用などを解説していきます。あわせて薬草についてもっと深く理解できる関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
本州から沖縄にかけて広範囲に生息する多年生植物です。湿り気のある平地で多く見ることができます。
横走りした地下茎は枝分かれしていて、切れた場所から次々芽を出すために繁殖力が非常に高く、薬草でありながら農家の人からは「シブト草」と呼ばれ嫌われている側面があります。
地上に出ている茎は直立で、葉はつぶれたハート型です。6月頃に白い花をつけます。とはいっても白い花びらに見えるものは、植物学上は花を保護するための「総苞」というものです。花と呼べる部分は中心にある3本の雄しべと1本の雌しべです。
また強い青臭さがあるのが特徴で、中国では「魚腥草(ぎょせいそう)」と呼ばれています。
別名「十薬」とも呼ばれるどくだみ。実はさまざまな効能をもっています。
まず、生のどくだみには独特の臭気があり、その元となっているのが「デカノイルアセトアルデヒド」という成分です。この成分にはブドウ球菌や糸状菌の増殖を防ぐ作用があり、外用薬として使うことで水虫やニキビ、汗疹、おでき、蓄膿症などを改善できるとされています。
また生の葉には、外科手術後の軟膏としても使用される「クロロフィル」が含まれています。アトピーなどの炎症で傷ついた皮膚の改善にも効果が見込めるといわれているのです。
さらに乾燥させた葉や茎には「クエルシトリン」、花には「イソクエルシトリン」が含まれていて、これらには毛細血管を強化する作用があるため、動脈硬化や脳卒中の予防にも有効とされています。
「カリウム塩」も含まれていることから利尿・排便作用も期待でき、まさに10種の薬の効能があるといえるでしょう。
実は元々は馬用の薬として、食べさせると病気の予防になっている気がするという漠然とした動機で使用されていたそうです。
そこから人間への外用薬としての使用に転じ、江戸時代には梅毒性の皮疹に塗布していたことから広がり、「万能の毒下し」として内服もされるようになりました。
家庭でも実践できるどくだみ茶の作り方を紹介しましょう。血管を強化するため血行促進や、利尿作用があるためデトックス効果、さらには整腸作用が期待できます。
まず採集する時期ですが、古くから野生のどくだみは、土用の丑の日に地上に出ている部分だけを取るのがよいとされていました。これは梅雨明けの時期には背丈が伸び、有効成分も多く含まれていることが理由です。また時間帯は、エネルギーの満ちている夜明けから10時頃がよいとされています。
摘んだどくだみは綺麗に水洗いをし、一掴みずつ紐で束ねて直射日光が当たらない風通しのよい場所で乾燥させましょう。手で触るとガサガサと音をたてる程度まで天日干しをしたら、煎じやすいよう2~3cmの長さに斬り、鍋で乾煎りをして軽く火を通します。
このひと手間を加えることで、青臭さが取れて飲みやすくなるそうです。
1日に飲む量としては、10~20g程度がよいでしょう。土瓶に入れて水300~500ccを加え、とろ火で30分ほど煎じ、茶こしでこしたら完成です。1日分を3回に分け、食事の1時間ほど前に飲むのがよいとされています。
土瓶以外にもホウロウやアルミ製の容器で煎じることができますが、鉄瓶や銅製品はタンニンと化学変化を起こす可能性があるため使用は避けましょう。
どくだみには「カリウム」が多く含まれているため、高齢者や腎機能が低下している方、カリウム保持性利尿薬を使用している方などは高カリウム血症を起こす可能性があるため内服には注意が必要です。
高カリウム血症は血中のカリウム濃度が急激に上昇することで起きる症状で、初期には四肢のしびれや脈拍の乱れ、吐き気などがみられ、放置すると不整脈から心停止を起こす危険性もあります。
また、どくだみの有効成分のひとつである「クエルチトリン」も、1度に多量に摂取すると下痢を引き起こすことがあります。
「カリウム」も「クエルチトリン」も、健康体の方が用量を守って内服する分には、副作用が出る可能性が高いものではありません。「野草茶はまず3日飲み続けることが大切」と言われるように、1度に摂取する量よりも継続して服用することが重要です。
どくだみ茶などを作った際も、効果を急いで大量に摂取することは避けてください。
- 著者
- 出版日
- 2014-01-16
空き地や裏庭など身近な場所に生えている植物のなかから、薬効があるものを100種紹介している植物図鑑です。どくだみをはじめ、ツユクサやオミナエシなどよく見かける植物の活用法を書いているため、生薬についての知識がなくても気軽に薬草を試してみたくなるでしょう。
また野生のタンポポからタンポポコーヒーを作る方法なども載っているため、レシピ本としても楽しめます。
なかには、名前がついていること自体が驚きの雑草も紹介しており、これまで見過ごしてきた路傍の草がもつ優れた効能に感心させられること間違いなしです。
薬効別の索引もついているので、あらかじめ目的の効能をもった草を絞りこみ、探すこともできるでしょう。
- 著者
- 村上 光太郎
- 出版日
- 2010-01-29
食べられる薬草に焦点を絞り、紹介している薬草事典です。苦みや食べやすさをランク付けし、求める効能のなかからもっとも自分にあった草を調べることができます。
葉や芽のみならず、茎や根の食べ方も解説しているので、摘んできた草を余すところなく活用することができるでしょう。
どくだみは、「これだけは食べておきたい薬草」として取りあげられています。根はきんぴら、葉はどくだみ酒や化粧水として使えるそうで、少し変わった楽しみ方ができますよ。
薬草カレーなど食べやすいメニューも多数あるので、初心者にもおすすめの1冊です。
もっとも馴染み深い薬草でもあるどくだみ。生葉に含まれる「デカノイルアセトアルデヒド」は、抗生物質にも負けない殺菌作用があることも確認されていて、非常に優れた薬効をもっていることがうかがえます。ハーブのようにわざわざ植えるのではなく、道端に生えている草にここまでの効能があるとは驚きですね。