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5分でわかる立憲主義!民主主義との違いと関係性、歴史等をわかりやすく解説

更新:2020.11.29 作成:2018.8.19

国民の権利を守るために不可欠な要素である「立憲主義」。具体的な内容をご存知でしょうか。この記事では、歴史や民主主義との違い、問題点などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

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立憲主義とは?概要を簡単に解説。日本国憲法の理念のひとつ

立憲主義とは憲法によって国家権力を制限し、法に基づいた政治をおこなおうとする考えのことです。

国家権力の無制限な行使を防ぐため、法によって権力を制限することを「法の支配」と呼びます。立憲主義はこの「法の支配」のひとつの形態で、成文法によって権力の行使に関する規定を定める手法です。

これに対して、憲法などの規定が存在せず、君主など特定の個人の裁量によって統治がおこなわれる形態を「人治主義」と呼びます。「人治主義」は統治者の行動を制限する枠組みが存在しないため、権力の暴走を防ぐことができないという問題があります。こうした問題を防ぐために、立憲主義が提唱されたのです。

日本国憲法の第99条には、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」とあり、国家の運営に携わる者に憲法を尊重することを義務付けています。

この他にも各種の基本的人権を尊重することや、三権分立を用いて権力の暴走を防ぐことを規定。日本国憲法は立憲主義の理念にのっとり、国民の権利を守るために国家権力にさまざまな制限を課している憲法なのです。

立憲主義の歴史。中世、近代、現代について。

立憲主義の歴史は古く、その源流は都市国家が形成されていた古代ギリシャまでさかのぼることができます。今日の礎となる考えは13世紀のイギリスで提唱され、17世紀以降ヨーロッパ各地に広まっていきました。

1215年、当時のイングランド王ジョンの統治に諸侯や市民が反発、これを抑えるためにジョン王は「マグナ=カルタ(大憲章)」を制定しました。「マグナ=カルタ」は、王の権利を制限し、市民の自由の保障や不当な逮捕の禁止など、今日の人権擁護につながる内容が含まれたものです。ところがテューダー朝の力が強まっていくにつれて、その内容は忘れ去られてしまいました。

このような状況が転機を迎えるのが、16世紀から17世紀です。16世紀になると「マグナ=カルタ」が再評価されるようになり、さらに17世紀の「ピューリタン(清教徒)革命」や「名誉革命」が生じた後は、国王に対する議会の優位を保障した「権利の章典」とともにイギリスの立憲主義を規定する重要な文書となったのです。

こうしてイギリスにおける立憲主義が成立しました。ただイギリスの場合は、国王の存在を認める「立憲君主制」の形態です。このような身分制を前提としたものを「中世立憲主義」と呼びます。

その一方で、身分制を否定し、個人と国家の関係を法によって規定しようとするのが「アメリカ独立戦争」や「フランス革命」後に成立した「近代立憲主義」です。

革命以前のフランスは、聖職者・貴族・平民の3つの身分に分かれた身分制社会でした。しかし18世紀になると王政を批判する「啓蒙思想」が広まり、その過程でイギリスの立憲主義を参考にロックが「社会契約説」を唱え、ルソーは「人民主権説」を主張しています。

さらにアメリカは、国民に統治の権利がある「共和政」を定めた「合衆国憲法」を制定、これらの動きはフランスの人々に影響を与えました。

1789年、身分制への不満を爆発させた人々によって「フランス革命」が発生します。革命に参加した人々は自分たちの権利を守るため、「人間は、生まれながらにして自由かつ平等な権利を持っている」ことや、「すべて主権は、本来人民にある」ことを記した「人権宣言」を発表しました。

その後フランスでは王政が倒れ、ナポレオンの帝政を経て「共和政」が成立しています。このようにして、フランスにも立憲主義が定着していきました。

こうしてイギリス型の「中世立憲主義」と、フランス型の「近代立憲主義」が成立しました。しかしこれらは、資本主義の勃興にともなう格差の拡大に対応することができませんでした。

そこで新たに生存権や労働基本権などの「社会権」を法に盛り込み、格差の是正を目指す動きが生じます。このように格差是正のため「社会権」を盛り込んだものを「現代立憲主義」と呼びます。

立憲主義と民主主義の違い、関係

立憲主義と民主主義は、どちらも国の政治のあり方を定めた考え方です。立憲主義が憲法によって国家権力を制限、法に基づいて政治をしようとする考えであるのに対し、民主主義は国民の意志を反映した政治をしようとする考え方です。

共通点は、どちらも国民の権利を守るために役立つということ。そのため日本のように両方の制度を採用した「立憲民主主義」の形態を採る国家も数多く存在します。

一方で、大きな落とし穴も存在します。

立憲主義が目指しているのは、あくまでも法に基づいた政治をおこなうこと。つまり民主主義とは異なり、政治に参加する人々については規定がありません。そのため仮に非民主的な政治手法が法によって正当化された場合は、非民主的な立憲主義が成立してしまうのです。

立憲主義に問題点はある?

上述のとおり、立憲主義はあくまで法に基づいた政治をおこなうことなので、法そのものに問題がある場合は、独裁的な政治や人権を抑圧する政治が正当化されてしまう場合があります。

たとえば戦前の日本では、「大日本帝国憲法」は人権を法律の範囲内に制限すると定めていました。その結果「治安維持法」のように人権を抑圧する法も正当化され、大々的な言論弾圧を招く結果につながっています。

そのほかドイツで1933年に成立した「全権委任法(授権法)」は、ヒトラー内閣が立法権を独占することを認めた法律です。これによってヒトラーは、合法的に独裁者として強大な実権を握ることに成功しました。

このように、立憲主義は国民の権利を守るために不可欠の要素ではありますが、立憲主義であれば必ず国民の権利が守られるとも限りません。そのため法自体に問題がないかチェックする機能や、問題のある法を認めないようにする仕組みを整備する必要があるといえるでしょう。

古代ギリシャから日本国憲法までの歴史と理念を知る一冊

著者
佐藤 幸治
出版日
2015-04-09

2015年に、日本国憲法の改憲問題を背景に刊行された作品です。日本における憲法学の大家である著者が、古代ギリシャから現代の日本国憲法にいたるまでさまざまな立憲主義の理念について紹介しています。注釈も多く読みごたえのある内容で、それに見合う多くの発見があるでしょう。

立憲主義の成立過程や日本における展開、さらにはファシズムを防ぐことができなかった歴史を知ることは、今日の改憲問題を考えるうえでも大きな手掛かりになるはず。

立憲主義とは何なのか、自分なりに考えていくためにぜひ読んでもらいたい作品です。

日本国憲法を読んで立憲主義を知る

著者
齋藤 孝
出版日
2015-07-30

タイトルのとおり、小中学生向けに日本国憲法を解説した作品です。筆者の齋藤孝は「知識は、体をアクティブに使うことでより定着する」と考えていて、憲法の条文も自分のなかに定着させるために本文を音読してほしいと述べています。そのために難しい漢字にルビを振るなど、読みやすくするためにさまざまな工夫がされています。

大日本帝国憲法の反省を踏まえ、日本国憲法は国家権力にさまざまな制限を課しています。問題のある法を防ぐために日本国憲法がどのような措置をとっているのか、学んでみてください。