【初の実写映画化】『夏への扉』は名作?つまらない?賛否ある古典SF小説の魅力をネタバレ考察

更新:2018.8.12

本作はロバート・A・ハインラインが書いたSF小説です。タイムトラベルを扱った古典SFの名作として知られており、特に日本では高い評価を得ています。その一方で作品内容に問題や矛盾があるとして、本作を批判する声も少なくありません。 なぜ評価が二分されているのか。その理由を考察しながらご紹介したいと思います。

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『夏への扉』あらすじ、登場人物を解説!つまらないという批判が多い?

本作の主要人物は、4人(と1匹)です。

  • ダニエル・ブーン・デイヴィス

    通称、ダン、あるいはダニイ。本作の主人公です。彼は多数の特許を持つ優秀なエンジニアで、まだ30代にして後述するマイルズとロボットを販売する会社を共同経営しています。

     
  • マイルズ・ジェントリイ

    元弁護士で口の立つ男。共同経営と書きましたが、ダニイは主に開発に専念しており、実質的には彼がトップ。

     
  • ベリンダ・シュルツ・ダーキン

    通称、ベル。会社の実務を担当する女性です。さまざまな方法で人を操る、妖艶な美女。ダニイと婚約していましたが……。

     
  • フレドリカ・ヴァージニア・ジェントリイ

    通称・リッキィ。マイルズの義理の娘で、11才の少女です。

     
  • ピート

    ダニイの愛猫。気難しい猫ですが、ダニイとリッキイには心を開いています。
著者
ロバート・A. ハインライン
出版日
2010-01-30

 

舞台は1970年。ダニイは失意の底にいました。会社の経営は順調、ベルとも結婚寸前まで行って幸福の絶頂にありましたが、あろうことかベルと親友マイルズに裏切られたのです。婚約の際に持ち株をベルに譲渡していた彼は、用済みとばかりに経営権を取り上げられ、追い出されました。

世の中に未練のなくなった彼は、実用化された冷凍睡眠に心惹かれ、衝動的に30年間の契約を結びました。翌日、自暴自棄を考え直したダニイ。マイルズらに一泡吹かせようと意気込むも、ベルに麻薬を打たれて前後不覚になり、口封じとして契約済みの冷凍睡眠に送られてしまいます。

気付けば彼は30年後、西暦2000年にいました。誰も彼を知らない未来で、とにかく居場所の確保に奔走していくことになります。

彼の精神的タフさが事態を好転させていくところが痛快です。が、釈然としない展開がいくつか出てくるので、そのすっきりしないところが不評の原因にもなっています。

 

ネタバレ考察:『夏への扉』はSF小説というよりは、ライトノベルに近い雰囲気の作品?

海外SF小説には、ビッグ・スリーと呼ばれる大御所作家がいます。

アイザック・アシモフ、アーサー・C・クラーク、そしてロバート・A・ハインラインです。本作の作者ハインラインは、名実ともに偉大なSF作家の1人。

……という色眼鏡をとおしてしまうと、どうしても読む時に萎縮してしまうことでしょう。事実、ハインラインや他の海外SF作家の作品は、翻訳の難しさもあって読みにくいことが多々あります。

しかし、本作は特に難しい設定も難解な言い回しもなく、登場人物も限られているので、非常に読みやすいです。サクサクと詰まらずに進むので、ライトノベル感覚で読めてしまいます。

これはSF初心者におすすめ出来るポイントである反面、SF第一人者の作品と期待して読むと肩透かしを食ってしまうという欠点でもあるのです。

ネタバレ考察:発売当時は夢のある設定だったが、今となってはありふれているように見えてしまう?

 

『夏への扉』が書かれたのは1957年のこと。作中では主人公が未来に行くことになりますが、執筆当時からしても作中の舞台は十数年先の未来だったのです。

1950年代は今でいうレトロ・フューチャー(超高層都市、空飛ぶ自動車などのイメージ)が、未来の理想像として思い描かれていた、まさに最盛期。

当時は先進的だった作中発明品の数々、あるいは先進的な考えや仕組みは、現代の視点から読むと時代遅れに映ってしまうでしょう。昔のほとんどのSF作家が携帯電話(スマートフォンではない)の登場と普及を予見出来なかった、といえば、その程度がわかるでしょうか。

ただ、いくつか現実と重なる面白い符合があります。ダニイが発明した文化女中器(ハイヤード・ガール)は、最近珍しくなくなりつつある、円盤状のロボット掃除機そのものです。また当時まだなかった、ワープロに酷似した機械も登場しています。

そのような面白い偶然があるのは、タイムトラベルSFものの魅力の1つでしょう。

 

ネタバレ考察:『夏への扉』は設定にご都合主義が多い?ロリコン展開との批判も

 

SF作品に限らず、ストーリーに重点を置く作品では、ほとんどの場合で登場人物が大なり小なりの困難にぶち当たります。そこをいかに克服し、あるいは回避するのかが見所です。

ダニイの前にもさまざまな問題が出てきます。が、彼はこれを機転、幸運、偶然の出会いであっさり切り抜けてしまうのです。まるで用意されたかのように(事実そうですが)。ストレスなく読めるのは利点ですが、ご都合主義的と取られても仕方ありません。

また実質的なヒロイン、リッキイが11才というのも引っかかるところでしょう。いくら仲が良い女の子とはいえ、30代の男がご執心というのはちょっと……。

 

ネタバレ考察:目的意識が薄いようにも感じられてしまう?

 

『夏への扉』は、主人公ダニイが流れに流されがちであることが目立ちます。はっきりといえば、場当たり的なのです。

冷凍睡眠を決めたのも、開き直って復讐に行くのも、未来世界でいきなり漕ぎ出すのも、何から何まで行き当たりばったり。知人もおらず、着の身着のままで放り出されたら、とりあえず目の前の課題に集中するものかも知れませんが……。

彼は八方手を尽くして、未来のリッキイの消息を調べたり、さまざまな特許を当たります。それらは最終的には1つに繋がるものの、総じて目的意識が感じられないのです。

 

しかし、『夏への扉』が今なお残る名作なのは事実!爽快な雰囲気や気負わずに読める面白さは魅力であり、おすすめ!

著者
ロバート・A. ハインライン
出版日
2010-01-30

 

実はこれらの批判はナンセンスです。

なぜなら本作は半世紀以上前に書かれた、タイムトラベルSFの初期作品の1つ。展開が陳腐に感じるのは、本作を含む初期作品群から後、さまざまな作品が生み出されたからに他なりません。技術力についても完全に後出しジャンケンです。現代の視点で云々すべきではないでしょう。

これらを踏まえたうえで、SFに馴染みがない人(特に中高生)にこそ本作をおすすめしたいです。先入観を持たずに純粋に物語を楽しめます。サクサクと読みやすいのも理由の1つ。

ぜひ1度、読んでみてください。

 

タイムトラベル小説の古典『夏への扉』が日本で実写映画化へ

数々のタイムトラベル作品に影響を与えてきた小説『夏への扉』の初の実写映画化が決定。2021年に公開予定です。

ストーリーは1995年と2025年の日本を舞台に再構築。主人公で、孤独な科学者の高倉宗一郎役を山崎賢人が演じます。監督は『ソラニン』や『フォルトゥナの瞳』といった数々の実写化作品の監督を務めた、三木孝浩です。

日本で人気の高い本作が、設定を新たにどのように描かれるのか期待が高まりますね。猫のピートがどのように登場するのかも注目です。

映画『夏への扉』オフィシャルサイトでは、主演の山崎賢人のコメントも公開されていますのであわせてご覧ください。

 


山崎賢人が出演した作品を見たい方は、こちらの記事もおすすめです。

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いかがでしたか?『夏への扉』は時代性を考慮すれば、画期的な名作であることは紛れもない事実です。ただし、普遍的な内容ではないため、面白く感じるかそうではないかは、読者の知識と想像力によります。いずれにせよ、もしまだ本作を1度も読んだことがないという方は、ページをめくって扉を開いてみることをおすすめします。

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