オオカミやイヌと似ているようで異なるコヨーテ。身体能力や環境への順応力は群を抜いたものがあります。この記事では、彼らの生態やオオカミとの違い、名前の由来、性格などを解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。
ネコ目イヌ科イヌ属に属する哺乳類です。北アメリカ大陸からパナマ西部にまで広い範囲に生息しています。外見はオオカミによく似ていて、実際に近縁種ですが、細かな違いがいくつかあります。
まずは体格です。オオカミよりも小柄で、頭胴長が75~100cm、尾長30~40cm、体高60cm以内、体重は平均で14kgほどです。小柄な理由は生息地域の環境の影響と考えられるでしょう。
コヨーテは比較的暖かい地域で暮らしていますが、オオカミは寒冷な地域にも生息しています。厳しい寒さから身を守るためには、脂肪や筋肉、体毛も丈夫でなければならず、そのためオオカミの方がどっしりとしているのです。また体色にも若干の違いがあります。オオカミは灰褐色ですが、コヨーテは黄色が混ざった茶色です。
コヨーテは主に林の中や開けた草原で暮らしています。ただ環境への順応性が高いので、天敵の少ない湿地帯や砂丘に生息しているものもいるそうです。基本的には小規模な群れを作って行動しています。
餌はネズミやウサギなどの小動物。時には群れでシ力を襲ったり、水にも抵抗がないので魚を捕まえたりすることもあるようです。
「コヨーテ」という名前には、彼らの習性が大きく関係しています。オオカミやイヌなどと同様に遠吠えをするのですが、他の種と比べてその頻度が多く、規則性もあるのが特徴です。
コヨーテの遠吠えには、縄張りの主張や仲間とのコミュニケーションの意味があります。基本的には明け方と夜の決まった時間に、必ず数匹で集まって吠えます。
吠え方にも特徴があり、まず最初の1匹が大きく吠えた後に、それに続く形で順番に他の個体が吠えるそうで、1~2分間続きます。また他のイヌ科の種と比べるとキーが高く、まるでコーラスのようだといえるでしょう。
彼らの遠吠えを「歌声」だと感じた先人たちは、メキシコ周辺でよく使われているナワトル語で「歌う犬」という意味の「コヨーテ」と名付けました。
小柄な体なので、特にイヌ好きの人にとってはかわいく見えてしまうかもしれませんが、安易に近づこうとすると危険です。
コヨーテは大変賢く、学習性に優れているのと同時に、性格は凶暴で残酷な一面があります。また環境への順応性が高いので、都会の街にも堂々とやってきて悪さをするケースも珍しくありません。農村の家畜を襲ったり、ペットを食べてしまったりすることもある厄介な存在なのです。
さらに身体能力が高く、時速65kmほどで走ることができます。顎の力もペットとして飼われているイヌとは比べ物になりません。狙われれば人間でも太刀打ちできず、命を奪われてしまうこともあるのです。
日本ではコヨーテに遭遇する機会はほぼありませんが、海外で出会ってしまった際は適切な対応をとる必要があります。餌をあげるのは厳禁です。人に慣れてしまうと街中で悪さをするコヨーテが増えてしまいます。もしも遭遇したら走って逃げることはせず、背中は決して見せないようにしましょう。視線は合わせたまま、ゆっくりと後ずさりをして安全地帯へ避難してください。
先述したとおり、コヨーテとオオカミはよく似ています。分類は異なっていて同一種ではありませんが、近縁種であり交配も可能です。
しかし本来はコヨーテにとってオオカミは天敵です。反対にオオカミにとっては格下の存在でした。動物の本能として、子孫を残す際はより優秀な種を残そうとするものですが、なんとオオカミのほうからコヨーテと交配をするようになったのです。
その理由は、彼らが生活していた環境が森林伐採などによって失われ、個体数が激減したからだと考えられています。種を絶やさず、より環境に適応した子孫を残すためにはやむをえない選択だったのでしょう。
北アメリカ東部に生息するハイイロオオカミはコヨーテとの間に子孫を残し、コイウルフと呼ばれるようになりました。
こうして種を超えて生まれた動物は「ハイブリッドアニマル」と呼ばれます。他の動物でもその例はありますが、コヨーテとオオカミのように、自然環境下で繁殖に成功し、そのまま子孫を増やしていけることが立証されているのは珍しいそうです。
- 著者
- リー ペック
- 出版日
街で悪さをしたり農作物を荒らしたりすることもあるため、現在は少々厄介者として扱われているコヨーテですが、かつては人間とうまく共存している時代がありました。ネイティブアメリカンの民話には、コヨーテが人間に崇められていた様子が記されています。
本書は、そんな彼らにまつわる逸話をまとめた1冊です。少しずる賢いところやイヌほど従順ではないところなど、その性格がわかる内容になっています。
イラストも挿入されている子ども向けの作品ですが、とんちのきいた話も織り交ぜられ、大人も楽しく読むことができます。
- 著者
- マーク・ベコフ
- 出版日
- 2014-02-24
作者のマーク・ベコフは、動物行動学者の第一人者です。コヨーテとイヌ、ゾウなどの動物をとりあげ、彼らの行動からその心理を解説していきます。
動物たちはただ自由きままに生きているわけではなく、彼らにも心があります。本書を読めば、行動のひとつひとつに確かな意志があることがわかるでしょう。
多少仮説も織り交ぜられていますが、言葉の通じない彼らのことを知るためには、まずは妄想を膨らませるしかありません。そしてその仮説を根拠のあるものにしていくために、よく観察する必要があるのです。コヨーテたちに親近感を抱けるようになる1冊です。