岩場にゴロンと転がる姿がかわいらしく、また芸も覚えることから水族館では人気者のオットセイ。しかし野生で生きる彼らは、かなり過酷な現実に直面しているようです。この記事ではそんな彼らの生態や、ペンギンとの交尾、アシカやアザラシとの違いなどをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
鰭脚類アシカ科に分類され、北太平洋に分布するキタオットセイとアフリカ南岸やオーストラリア南岸に生息するミナミオットセイの2種が存在します。
日本近海ではほとんど確認されていませんが、キタオットセイを見かけることができる南の限界が銚子沖だそうです。まれに漂着したり、迷いこんだりするケースがあるようです。
主な餌は、魚やタコ、エビなど。地域によってはペンギンを捕食していることも確認されています。
体の特徴として、「耳介」という耳たぶのようなものがあること、四脚で体を支えながら陸上を移動することができることが挙げられるでしょう。海中を泳ぐ際は、前脚を翼のようにして水を掻きます。
体毛は狭い範囲に密生していて、触り心地はまるでビロードのようです。アシカの毛はごわごわとしていますが、オットセイの毛は柔らかく、より防寒性が高いだろうと考えられています。
陸上と水中どちらでも眠ることができ、水中で眠る際は左脳だけを休ませて右脳は覚醒させたままという独特なスタイルをとります。また海に暮らしていますが、淡水で飼育をすることも可能です。
オットセイの捕食対象となっているペンギンですが、時に食欲だけでなく性欲を掻き立てる存在でもあるようです。南アフリカのプレトリア大学が撮影し、公開した映像が世界中で話題になっています。
インド洋のマリオン島で、浜辺にいたキングペンギンの群れのなかにナンキョクオットセイが現れます。そして突如1羽のペンギンを捕まえると、地面に押さえつけてマウントを取りました。窒息させて捕食するのかと思いきや、そのまま交尾をしたのです。体格差は明らかで、ペンギンはまったく抵抗できません。そのまま行為は5分ほど続きました。
このほかにもオットセイとペンギンが交尾をする例はいくつか確認されていて、終わった後に解放されるペンギンもいますが、そのまま捕食されてしまうものもいるようです。
オットセイがこのような行動をとる明確な理由はわかっていませんが、交尾をしたのが若いオスだったことから、性欲の解放だと考えるのが自然のようです。水族館では芸を覚えるほど学習能力のある彼らが、ペンギンをメスと勘違いするとは考えられません。
またオットセイは、1頭のオスの周りに複数のメスがいるハーレムを形成して暮らしています。メスをめぐる戦いに敗れたオスは、交尾をする機会が無いまま一生を終えることもあるそうで、このような習性も関係しているのかもしれません。
水族館ではほのぼのとした様子を見ることができますが、実は野生のオットセイは完全なる弱肉強食社会のなかで生きています。
オスは繁殖期の直前になるとメスの奪い合いをくり広げます。1頭のメスが対象になっているわけではなく、勝ち残ったオスが支配下にいる複数のメスとハーレムを築いて、すべてを自分のものにできるのです。
負けてしまったオスは、敗者が集うオスだらけの群れに移動します。まだ若ければ、オス同士でじゃれあいながら戦い方を学び、体格を大きくして次の繁殖期前に再チャレンジをする個体もいるようですが、ほとんどの個体が気力を失ってオス同士の群れのなかで生涯を終えるそうです。
なんとも厳しい世界ですが、少しでも強い遺伝子を残すために本能的にこのような仕組みを作ったと考えられています。
オットセイによく似た動物として、アシカとアザラシが挙げられるでしょう。三者とも鰭脚類に分類されていて共通点も多いですが、そこからアシカ科、アザラシ科、セイウチ科と細かく分かれます。
オットセイとアシカは、どちらもアシカ科。アザラシはアザラシ科です。
大きな違いは、耳でしょう。オットセイやアシカには「耳介」という音を集めるための突起物が顔の横に付いています。一方のアザラシにはそれがなく、「耳孔」という穴が開いているだけです。
またオットセイとアシカには鉤爪がありませんが、アザラシは前ヒレに5本もっています。
さらに、同じアシカ科のなかでも違いはあります。もっとも見分けやすいのは後ろのヒレで、オットセイは先端の長さがきれいに揃っている一方で、アシカは不揃いなのです。
ちなみに、三者とも牙はありません。鰭脚類のなかで目立つ牙をもっているのは、セイウチ科のセイウチのみです。
- 著者
- ["荒井 一利", "田中 豊美"]
- 出版日
- 2010-03-01
オットセイ、アシカ、アザラシ、セイウチなどを取りあげた鰭脚類の図鑑です。写真はオールカラーでどれも生き生きとしており、細かい違いもしっかりと観察することができます。
作者は鴨川シーワールドで海獣の飼育担当をしていた経験もあり、壮大な自然のなかで暮らす海獣はもちろん、水族館で育った個体の写真も掲載しています。
またそれぞれの生態を解説しているだけでなく、海で暮らす哺乳類たちが陥っている危機的状況についても言及しており興味深いです。海獣のなかでもとくに鰭脚類について知りたい方は必携の1冊だといえるでしょう。
- 著者
- 高梨 みどり
- 出版日
- 2016-11-16
職なし、資格なし、学歴なしの45歳女性が主人公の漫画です。スタートはお先真っ暗な状況ですが、ひょんなことから水族館のトレーナー職の仕事に合格し、海獣たちのお世話をすることに。完全に素人ですが、持ち前の明るさで動物たちと心を通わせ、成長していきます。
とにかくイラストがかわいらしく、それでいてそれぞれの動物の特徴をきちんと掴んでいるのが見どころでしょう。楽しみながら生態を学ぶことができます。
全体的にはほのぼのとした雰囲気ですが、要所に心に突き刺さるメッセージが散りばめられていて、目が離せなくなります。水族館の仕事についてもよくわかる作品です。