『孤高のメス』は、外科医である当麻鉄彦が、自分の信念に基づいて医療をおこなっていく物語です。彼は権威などに屈することなく、患者を救いたいという一心で医療をおこなっていきます。 この記事では、そんな本作のあらすじや結末まで、詳しく解説。2019年滝沢秀明主演でドラマ化もされる本作について、ぜひ最後までご覧ください。
本作は、当麻という天才外科医を主人公にした物語。彼は地域医療の発展を信念に掲げ、医療に従事していました。誰にでも媚びへつらうことなく、言いたいことは言う性格。そのため、彼のことを煙たく思う医師も存在しました。
しかし、当麻の外科医としての腕はやはり素晴らしく、その見事な手術にしだいに心を奪われていきます。なぜ、彼の手術は、そこまで素晴らしいのか。それは、邪念がないから。心を100%、患者のために捧げています。ただ治したい、良くしたい一心で、メスを握っているのです。
そんな当麻にある時、脳死肝移植の手術が舞い込みます。当時、日本では脳死に対する法律の制度が整っていませんでした。つまり脳死は死として判断されないということで、脳死肝移植をしてしまうと医者が殺人罪に問われる可能性が十分にありました。
普通の医者であれば、自分の保身が第一であるため、絶対に脳死肝移植をおこなうことはないでしょう。しかし、当麻は違いました。助けられる命があるかぎり、それを見捨てることはなかったのです。
そして日本では前人未到の、脳死肝移植を実施します。果たして患者の命はどうなるのでしょうか。また、手術をおこなった当麻は、やはり殺人罪で捕まってしまうのでしょうか。
本作は、映画化もされています。堤真一や夏川結衣など、豪華俳優陣が出演している作品です。また、2019年1月13日には滝沢秀明主演、仲村トオル、山本美月出演などの豪華キャストでドラマ化もされました。
小説ではシリーズ化されており、本作の続編として、「神の手にはあらず」「遥かなる峰」「命ある限り」「完結」があります。どれも皆、1度読み始めたら最後まで止まらないスリル満点の作品です。
- 著者
- 大鐘 稔彦
- 出版日
- 2007-02-01
本作に登場する人物を、簡単にご紹介させていただきます。
作者である大鐘俊彦(おおがね としひこ)とはどんな人物なのでしょうか。彼は小説家でもあるのですが、実は医者でもあります。ペンネームは高山路爛。本作の元となった漫画である『メスよ輝け!!』の方でも、原作を務めています。
彼は、京都大学の医学部を卒業。現在は手術から離れているようですが、過去には、エホバの証人の無輸血手術等も手がけたこともあるなど、非常に才能ある外科医のようです。
小説の他にも、医療漫画の原作やエッセイなど、数多くの作品を手がけています。
作者のプロフィールでもご紹介した『メスよ輝け!!』。『孤高のメス』の原作となった漫画ですが、一体、どのような作品なのでしょうか。
- 著者
- やまだ 哲太
- 出版日
- 2008-04-18
本作は原作・大鐘稔彦、作画・やまだ哲太による漫画であり、「ビジネスジャンプ」に4年間掲載されていました。『孤高のメス』は、この漫画を元に小説化されました。
『メスよ輝け!!』は、孤高の外科医である当麻鉄彦が滋賀県の民間病院で、その確執やしがらみと戦いながら患者の命を全力で救っていくところを描いています。単行本は70万部以上も売り上げる大ヒット作品となりました。
その主人公のエッセンスを踏襲し、文章でその世界観を表現したのが『孤高のメス』。医療現場のリアルさを感じることでも両者共通しているので、ぜひどちらも読んでいただきたい作品です。
『孤高のメス』はもちろんフィクション作品ですが、孤高の天才外科医である当麻鉄彦には、どうやらモデルがいたようです。
その人物とは、永末直文。北海道の外科医です。彼は日本で初めて、脳死肝移植をおこなった人物でもあります。
永末は当麻と同じように、まったくといっていいほど私的な欲望がなく、目の前の患者を救うこと以外は頭にないような先生だったよう。この設定を当麻はほとんど受け継いでおり、だからこそ、魅力的な主人公となったのではないでしょうか。
本当にこんな先生が日本にいるのだと思うと、日本の医療も捨てたものではないと、なんだか誇らしい気持ちを感じさせてくれる人物です。
本作は他の医療作品よりも、それが実際に起きているかのように、非常にリアルに感じ取ることができる小説です。それは、やはり作者である大鐘が、実際に医師をしていることに関係するのかもしれません。
医療ものは専門用語も多く、徹底的に取材をしたり、自身に知識を詰め込まないと書けない分野であることは、誰でも想像がつくことでしょう。そのため、医療ものを書いている作家は徹底的に勉強をするのだと考えますが、彼の場合は本業が医師のため、そもそもの知識がついています。
また、身を以て体験もしており、その実体験があるからこその、独特の視点も感じられます。そして当麻のモデルである永末が生体部分肝移植をおこなっていることも、よりストーリーが現実に存在する人物のものであるかのように感じられる理由であるかもしれません。
そのような理由から、本作は物語がより身近に受け入れられ、どんどんと感情移入できる作品なのです。
- 著者
- 大鐘 稔彦
- 出版日
- 2007-02-01
当麻は前人未到の脳死肝移植を成功させることができました。しかし、この手術は日本ではまだ認められていないもの。成功しても失敗しても、世間からありとあらゆるバッシングがくることは想定されていました。そして最悪の場合、彼は殺人罪に問われてしまうのです。
しかし、彼は世間の好奇な目を気にすることなく、救える命を全力で救います。それが当麻鉄彦という医師です。日本の法律に疑問を投げかけるこの結末は、非常に考えさせられるものがあります。
命を救った彼の運命は、どうなってしまうのでしょうか。果たして、彼は殺人罪で捕まってしまうのでしょうか。この続きが気になる方は、ぜひ本編でご覧ください。