国会に関するニュースでは必ずといっていいほど耳にする「衆議院」と「参議院」。日本の政治を語るうえで、欠かせないものです。しかし両者の違いをきちんと説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。この記事では、任期や定数、被選挙権、解散、内閣不信任決議などをわかりやすく解説していきます。あわせてもっと理解が深まるおすすめの関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。
日本の国会は、衆議院と参議院の2つで形成されています。
ではそもそも「国会」とは何でしょうか。端的にいえば、日本国憲法によって「国権の最高機関」と定められているもので、「国の唯一の立法機関」でもあります。
憲法で規定されている三権分立の「立法」「行政」「司法」のうち、「立法」を担う機関。日本の衆議院と参議院のように、独立して活動する2つの議院、もしくは議会があることを「二院制」または「両院制」と呼びます。
この制度は、法律や予算など、国家の運営に関する重要なことを議論する国会という場において、幅広い視点で議論をおこなうことで、与党の暴走を抑えることをに役立っているのです。
幅広い視点から議論をしてチェック機能を働かせるためには、衆議院と参議院に「違い」がなければいけません。
フランス革命の指導者であったエマニュエル=ジョゼフ・シエイエスが「上院は下院と一致するならば無用」と述べたように、2つの院があっても、同じ人々が議論をしていたのでは意味がないからです。
議会制度発祥の国であるイギリスでは、世襲貴族からなる「貴族院」と、選挙によって選ばれた「庶民院」の2つを設け、身分の異なる人々から募った多角的な意見を政治に反映させる仕組みを取り入れています。
戦前の日本における「衆議院」と「貴族院」の関係も、イギリスに近いといえるでしょう。
しかし戦後の日本では、華族などの身分制が撤廃されたため、現在では身分ではなく、任期、定数、被選挙権など「選ばれ方」に違いを設けています。
定数
衆議院:465人
参議院:242人
任期
衆議院:4年
参議院:6年
被選挙権
衆議院:25歳以上
参議院:30歳以上
衆議院には解散がありますが、参議院にはありません。3年ごとに半数の121人が選挙で選ばれます。
衆議院の方が任期が短く、また総選挙によって一斉に議員が入れ替わるため、リアルタイムの国民の違憲を反映しやすいのに対し、参議院はより長期的な視点で見た国民の意見を反映しやすいという違いがあります。
参議院の存在意義は、目先のことにとらわれずに議論をすることができることで、それが「良識の府」と呼ばれる所以だといえるでしょう。
衆議院と参議院の違いとして、「解散による総選挙の有無」が大きな意味をもっています。
解散があるのは衆議院だけです。「任期を満了した時」「衆議院において内閣不信任決議案が可決された時」「衆議院において内閣信任決議案が否決された時」「内閣が必要だと思った時」のいずれかにおいて、内閣総理大臣が解散を決定し、総選挙で議員を選びなおすことになります。
ただ、戦後実際に任期満了によって解散されたのは、1976年の1回だけでした。
憲法第69条では、「衆議院が内閣不信任決議案を可決した時、または信任決議案を否決した時には、10日以内に衆議院を解散するか、総辞職をしなければならない」と定められています。この条項に基づく解散は「69条解散」と呼ばれ、これまでに4回実施されました。
解散の理由としてもっとも多いのは、憲法第7条にもとづく「7条解散」です。内閣総理大臣が現在やっていること、これからやろうとしていることについて国民の意見を問うために解散をするというもの。
こうして選挙で選ばれた衆議院は、より直近の民意を反映していると考えられます。
多角的な視点から議論するために二院制を採用していても、衆議院と参議院が真っ向から対立してしまっては政治が前に進まなくなってしまいます。
そのため、より民意を反映していると考えられる衆議院には、参議院に対して「衆議院の優越」と呼ばれる権限が与えられているのです。
主な内容としては、法律案の議決、予算の議決、条約の承認、内閣総理大臣の指名、予算先議権、内閣不信任決議および内閣信任決議、国会の会期決定などが挙げられます。
このうち法律案の議決は、衆議院で可決された法律案を参議院で否決された場合、衆議院の出席議員3分の2以上が再可決すれば、法律としてとおすことができるというものです。
「ねじれ国会」とは、衆議院と参議院で多数派を担っている政党が異なり、衆議院で可決した法案を参議院がことごとく否決するような状況を指す言葉です。
二院制は、幅広い層の国民の意思を反映させることで多角的な議論をおこない、ダブルチェック機能を働かせることで与党の暴走を抑えられるというメリットがある一方で、「ねじれ国会」になってしまうとスムーズな政治ができなくなるというデメリットがあります。
たとえ「ねじれ国会」だったとしても、与党・野党の立場を超え、よいものはよい、悪いものは悪いとするのが理想の姿でしょう。しかし実際にはそうではありません。
日本の参議院の場合、与党は衆議院の議決をそのまま可決させることが多いです。一方の野党は、審議拒否や些細な理由での問責決議案提出など、法案の内容に関わらず議事の進行を妨げる行為に終始することが多く、法案の良し悪しを見極める「良識の府」としての機能は果たされていないのではないかという指摘があるのが現状です。
- 著者
- 池上彰
- 出版日
- 2011-10-25
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著者は、テレビ番組でもおなじみのジャーナリスト、池上彰。独自の視点で切り込みつつ、やさしい言葉で説明してくれています。
本書を読めば、なんとなく知っていた断片的な知識と、いま報道されているニュースの内容が繋がるはず。政治に興味をもてる一冊です。
- 著者
- 出版日
- 2018-07-17
テレビでも放送されている国会中継。審議と関係ない質問ばかりする野党議員の姿を不思議に思ったことはないでしょうか。
本書は、ふと生じる些細な疑問をわかりやすく解決してくれる一冊です。2013年に発売されて以降、国会関連の書籍としてベストセラーを誇っています。
図説が多用されているのも特徴のひとつ。構造や流れを視覚的に頭に入れることができ、理解がしやすいでしょう。