おもわず手のひらに乗せたくなるような小さな体で、「チュンチュン」と鳴く声もかわいらしいスズメ。私たち人間にとっては身近な鳥類ですが、実は近年その数を減らしていることをご存知でしょうか。この記事では、彼らの生態や個体数減少の理由、巣の場所や特徴、保護する際の注意点などを解説していきます。あわせてもっと魅力を学べるおすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
スズメ目スズメ科に分類される小鳥です。日本人にはとても身近な鳥で、庭先でチュンチュンと鳴く様子は夜明けを意味する描写などにもよく使われます。
大きさは全長14cmほどで、ハトの半分くらいでしょう。翼を広げると23cmほどになります。体色は背面が茶色で、前面の首からお尻にかけてが白色です。頭部はより赤身を帯びた茶褐色で、首と背中の境目に白のラインが入っています。
小鳥に多い「ホッピング」という歩き方をし、飛ぶとき以外は両足を揃えて飛び跳ねながら移動するのが特徴です。
分布域はかなり広く、日本では小笠原諸島を除く全国に生息しています。世界的に見てもユーラシア大陸の広い範囲に生息しています。ただしインドにはほとんどいません。
食性は雑食で基本的には何でも食べますが、好物はイネ科の植物で、その種子や近辺にいる虫を食べます。ただし体が小さく攻撃性もないので、争いは好みません。街中に住んでいる個体では、人間が出した生ゴミやパンくず、お菓子などを食べている姿がよく見られます。
しかし、彼らがゴミを荒らしているイメージはあまり無いでしょう。なぜならそこには、天敵であるカラスがいる場合が多いからです。スズメが厄介者として扱われるのは、どちらかというと田んぼに現れる時で、夏から秋にかけて稲を荒らしてしまうことがあります。その一方で、稲を枯らしてしまう害虫を食べてくれることでも知られています。
寿命はおおよそ2年ほどです。ただし、調査がしづらいため正確なことはわかっていないようです。野生下では約6年、飼育下では約15年生きたという記録もあります。
身近な鳥という印象のあるスズメですが、近年はその数が減少していて、なんと20年間のうちに5分の1にまでなったそうです。もともと個体数が多いため早急に保護が必要となるわけではありませんが、生態系のバランスなどを考えると原因を知っておくべきでしょう。
考えられる最大の理由としては、人間による環境開発が挙げられます。スズメは身を隠せるような隙間を好み、そこに巣を作るのですが、かつては民家の茅葺屋根などが絶好の場所でした。
しかし近年は隙間のない鉄筋のマンションなどが増えてしまい、居場所がなくなってしまったのです。
また道路などが舗装されたことによって生餌の数が減っていることや、農家の機械化が進み「おこぼれ」を貰う機会が減ったために餌の量が足りず、子育てや越冬をしづらくなっている可能性が高いそうです。
警戒心の強いスズメは、なるべく外から見つかりづらい場所に巣を作ります。そうすることでカラスや猫などから身を守っているのです。
体の小ささを利用して、他の生物が入りこめない隙間や穴の中に作ることが多く、街中では、街灯や換気扇カバーの裏側などにも営巣します。
巣作りに使うのは、藁や茎、長めの草などです。大きめの素材で土台をしっかり形成し、体に触れる内側を柔らかい素材で埋めていきます。
巣の大きさは、だいたいお茶碗くらいです。他の鳥の巣は中に入ってもスペースができるよう余裕をもって作られますが、スズメの巣は中に入るとぎゅうぎゅうになる傾向があるようです。
繁殖期である3~8月頃にもっとも巣作りが盛んになるので、注意して探してみると見つけられるかもしれません。
そのかわいらしい見た目から鳥類のなかでも人気の高いスズメですが、野生の個体を捕獲して飼育することは「鳥獣保護法」で禁じられています。スズメに限らず、許可なく野鳥を捕獲し飼育をすることを禁じるものです。
ただ、弱っているスズメを見つけて放置するのも心が痛みます。その場合は役所に連絡し、「飼育許可証」を貰えば保護することが可能です。
では保護する際の注意点を紹介しましょう。
まず保護対象のスズメがヒナだった場合。ヒナは親鳥から飛び方や餌の捕り方を学びます。これらを習得していない状態で保護してしまうと、後に野生に返しても自分の力で生きていくことができません。周囲を見渡して巣や親鳥がいないことを確認したうえで、どうしても必要な場合に手を差し伸べましょう。
成鳥の場合は、保護の必要性を行動で見極めます。もともと警戒心の強い鳥なので、人間が近づけば逃げようとするはずです。その素振りを見せれば、ほとんどの場合は保護の必要はありません。近寄っても逃げようとせず、飛ぼうともしない場合は、かなり弱っている可能性があるので保護してあげましょう。
- 著者
- 三上 修
- 出版日
- 2013-10-05
あまりにも身近すぎてなかなか注目されないスズメですが、彼らのことを深く知ることで、外で見かけるたびにワクワクできるのではないでしょうか。
本書は、スズメの生態をはじめ、文化や歴史、人間との関わりなど意外と知らない事実をまとめた作品です。好奇心をそそられる1冊でしょう。
タイトルにもある「つかず・はなれず」は、まさに人間とスズメの関係だといえるのではないでしょうか。彼らは上手に人間の暮らしに入りこみ、共存しています。
漫画家のとりのなん子が手掛けるイラストもかわいらしく、楽しく読み進めることができる作品です。
2013年ごろからスズメを被写体に写真を撮り続け、インスタグラムで人気と知名度を上げていった中野さとるの作品です。
餌である虫を捕まえる瞬間や、体を丸く膨らませてもふもふしている姿など、生き生きとした写真がたくさん詰まっています。
また「歳時記」とあるように、年間を通してスズメを追っているため、季節ごとの姿も見ることができます。
生態やコラムなどの情報も満載で、単なる写真集ではなく読み物としても楽しむことができるでしょう。
1歩家の外に出れば実際に会えるところも身近な鳥であるスズメの魅力です。本書でかわいさを知った後は、これまで気づかなかった表情を見てみてください。