右目と左足を失くした代わりに「知恵の神」となった岩永琴子と、妖怪の肉を食べたことにより不死の身体と未来決定の能力を持つ桜川九郎。 今回ご紹介するのは、1度読めば引き込まれる設定に続きが気になること間違いなしのミステリ小説『虚構推理』のコミカライズ作品です。 2020年1月にはテレビアニメが放送。注目を集めている本作の魅力をネタバレ有りで紹介します!
2020年1月に『虚構推理』がテレビアニメ化されました。
注目のキャストは、鬼頭明里や宮野真守、福圓美里、上坂すみれ、浜田賢二といった豪華声優陣。岩永琴子を演じる鬼頭明里は作品について、「『嘘の推理』をするという、全く新しい推理作品で、読んでいてどうなるんだろう、と続きが気になって仕方ない作品」とコメントしています。
虚構を成立させるための推理が『虚構推理』のテーマですが、それに深く関わってくるのが「あやかし(怪異)」と呼ばれる存在です。
まさに本格ミステリ×ファンタジー。
テレビアニメの最新情報は、アニメ「虚構推理」公式サイトをご覧ください。
本作の原作者の城平京は、これまでに『スパイラル~推理の絆~』や『絶園のテンペスト』など、大ヒット作品やアニメ化作品を手掛けてきました。
本作は講談社ノベルスの推理小説『虚構推理 鋼人七瀬』が原作です。
作画を担当している片瀬茶柴は、本作がデビュー作。しかし、新人とは思えないほどの画力を誇ります。
表情豊かで可愛らしい岩永とクールビューティーな紗季といった、それぞれのキャラクターの魅力を存分に表現。さらに、とても読みやすい画面構成で読者を楽しませています。
『絶園のテンペスト』について紹介した、
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城平京の作品を紹介した
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- 著者
- ["城平 京", "左 有秀", "彩崎 廉"]
- 出版日
主人公・岩永琴子は11歳の頃に「知恵の神」となり、怪異と意思疎通を取れるようになります。しかし、その対価として右目と左足を失ってしまいます。
そして15歳の時、通院している病院で出会った桜川九郎に一目惚れ。
当時彼には弓原紗季という彼女がおり、岩永にはまったくチャンスがありません。しかし、怪異が関係するとある事件をきっかけに2人は破局してしまうのでした。
これ幸いと猛烈なアプローチをかける岩永に根負けし、九郎は彼女と付き合うことに決めたのです。
- 著者
- 片瀬 茶柴
- 出版日
- 2015-10-16
本巻は2人のあらまし、そして事件発生までの説明の巻となります。
2人の出会いから2年半、真倉坂市で顔のない怪物が目撃されるようになります。鉄骨で人を襲うというそれは、なんと事故死をとげたアイドル七瀬かりんによく似ているというのです。
そして人々を恐怖に陥れる怪異は「鋼人七瀬」と名付けられ、まことしやかに噂が広がっていきます。
鋼人七瀬に顔がない理由はアイドルの七瀬かりんが亡くなった事故に関係があるのですが……。その事故の内容とは?そして彼女は、この街で起こる怪異は、一体どうなっていくのでしょうか。
偶然再会した岩永琴子と弓原紗季。彼女たちは、それぞれの思惑から鋼人七瀬に関わります。
そして紗季の知り合いにも、この怪異について独自に動こうとする男・寺田刑事がいました。
しかし、彼は怪異を見ることが出来ない一般人であったため、鋼人七瀬を集団グループの犯行だと誤解してしまい、事件として個人的な捜査を始めてしまうのです。
しばらくは別々に捜査を進めていた岩永と紗季ですが、事件解決のため協力関係を結ぶことに。2人が会議をしようとしたタイミングで鋼人七瀬が出現。すぐに岩永たちが現場へ駆けつけます。しかし、すでにそこでは、別の切り口から鋼人七瀬を追ってきた九郎が鋼人七瀬と対峙していたのでした。
- 著者
- 片瀬 茶柴
- 出版日
- 2015-11-17
本巻の見所は、九郎の秘密についてです。
11歳の時に人魚の肉を喰らい不死となった九郎は、自分の身体を囮に戦います。格闘経験のない彼は鉄骨を振り回す相手にやられてしまいますが、不死の力を使って即座に復活。そして彼のなかに宿るもうひとつの怪異・くだんの力を使うのです。これも、肉を喰らったことによって身についたものでした。
くだんの力は未来を予言する能力です。ただ予言といっても、決められた未来が見えるのではありません。起こりうる可能性のある近い未来が見え、その選択肢の中から選ぶことができるという能力なのです。ユニークな能力であり、今後のポイントともなるものなので、注目していきたい設定です。
人魚の不死と、くだんの未来視。2つの能力を駆使して戦う九郎。このバトルの行方はどうなるのでしょうか。
鋼人七瀬を一時的に退けたものの、倒すには至らなかった一行。作戦会議のため、紗季の部屋へ移動します。そこで岩永の口から語られたのは、鋼人七瀬は通常の怪異とは違う「想像力が生んだ怪物」という結論でした。
人々の妄想を具現化して生まれた怪物であり、決して七瀬かりんの亡霊ではない、というのです。
そしてキーとなるのが、怪異を生み出す原因となった「鋼人七瀬まとめサイト」。このサイトを潰す事が、鋼人七瀬を倒すことに繋がることとなって……。
- 著者
- 片瀬 茶柴
- 出版日
- 2016-04-15
本巻の見所は、七瀬かりん事件の真相と次の犠牲者が出てしまう展開です。
鋼人七瀬の元の人間である七瀬かりんの死亡の原因ですが、岩永は警察でも見つけられなかった真相を、岩永だからできるある方法で解明します。
それは死亡現場を見ていた、第三者の幽霊からの証言。
工事現場で事故死した自縛霊は、鉄骨が不運にも鉄骨がかりんに倒れこんできた瞬間を目撃していました。その証言から事故であるという真相に結びつき、鋼人七瀬を倒すための虚構の推理を作り上げることになるのです。
また、これまで人に危害を加えつつも殺人を犯していなかった鋼人七瀬ですが、本巻のラストではついに人を殺してしまいます。それによってさらに力をつけてしまう彼女をどうやって倒すのか。いよいよ、戦いが本格化していきます。
小さい市の片隅の出来事として噂されていた鋼人七瀬事件ですが、犠牲者が出た事によってテレビにも取り上げられ、爆発的に広がりを見せました。
「鋼人七瀬」という怪物は存在しない、という話を広めることを最終目標を定めた一行。ハードルが上がったことを感じる岩永ですが、九郎の従姉である六花の存在を知ります。
人々の妄想であるはずの鋼人七瀬が具現化し、実際に殺人を犯したという謎の事態。その黒幕はどうやら六花であることが浮き彫りになってきました。九郎と同じ人魚とくだんの2種類の怪異を喰らった彼女は、その能力を使って積極的に鋼人七瀬を作り上げ、事件をさらに大きくさせているようで……。
- 著者
- 片瀬 茶柴
- 出版日
- 2016-08-17
本巻の見所は、解決法の提示です。
六花はくだんの能力を使い、鋼人七瀬の噂が盛り上がる未来を選択し続けました。その結果、ただの事故死だったかりんについての根も葉もない噂が怪物として具現化したのでした。まさに、人々の妄想・噂が作り出してしまった怪物というわけなのです。
こうしたなかで、事態はタイミングを逃すと大量虐殺さえ起きてしまうという段階にまできていました。岩永たちはそれを防ぐため、大人数が納得する、偽の噂の真相や嘘の犯人をでっち上げることを思いつきます。
事件に関する解答をいくつも用意し、鋼人七瀬の噂は嘘だと人々に納得させることが重要だと考えた岩永は、4つの解決策を用意して、鋼人七瀬の退治に向かうのです。
彼らはどんな方法で、この事態を乗り切るのでしょうか。ますます加速する展開から目が離せません。
ついに始まった、鋼人七瀬の攻略議会。
人々が作り上げた妄想・噂を打ち消すには、それ以上の説得力を持つ話を広めなければなりません。鋼人七瀬と七瀬かりんはまったくの別人だという説を考案します。
しかし、六花がくだんの能力を使い、自分の望む未来を決定することで、これらに対抗してくるのです。
- 著者
- 片瀬 茶柴
- 出版日
- 2016-12-16
そこで一行は、かりんの悲運を語った物語を仕立て上げました。
彼女は自殺したかのように見えるものの、それは父親が彼女をはめた罠であったというもの。彼女は死後の世界でその真相を知り、怒りに駆られ、事件の真相を知ってもらいたいがために亡霊となって現れた、という案です。
オカルトなとんでもない暴論ですが、嘘の塊である鋼人七瀬を倒すための嘘として、また一般大衆が興味を持つ話題として有効と思われる解決策の1つでした。
これは六花により跳ね除けられますが、さらなる案を提示する事で、彼女を追い詰めていきます。その案とは一体どのようなものなのでしょうか?
ミステリーの謎解きを聞いているような、はたまた怪談を聞いているような、不思議な内容となっています。読みごたえのある、第5巻です。
鋼人七瀬編も、ついに解決編に突入。この巻では前巻の内容に続く3案、4案を用いることで、鋼人七瀬を退治することに成功します。
かりんの姉・初実は、マスコミに妹の悪評を流していました。そこから程なくして、妹は不審死を遂げます。その事実を利用したのが、第3者がかりんの亡霊を装っているという案。しかし、この案は六花によって棄却されてしまうのです。
そして、第4案。ここで、かなり思い切った案を提案します。それは、鋼人七瀬はかりん本人である、というものでした。現場で見つかった死体は別人のもので、彼女は未だ死んでおらず、鋼人七瀬まとめサイトを作って亡霊を作り出した、という内容です。
ここで重要なのは、鋼人七瀬は嘘の存在であり、なおかつ、かりんが寺田刑事を殺した犯人である、という事。
これにより、一般大衆に鋼人七瀬という怪物は存在しないという話を広め、倒す事に成功したのでした。
- 著者
- 片瀬 茶柴
- 出版日
- 2017-06-16
「鋼人七瀬」の怪異は解決しましたが、この巻での見所は今後の展開についてです。
六花の願いは、作中では細かく語られていませんが、九郎いわく自分の中の人魚やくだんの能力を消し去り、普通の人間として暮らすというささやかなもの。
望まぬ形で得た2つの能力を、いかに排除できるか。このために、鋼人七瀬のような想像力の怪物を作り出してしまったようなのです。
六花が、次にどういう手段に出るのか。まだまだ目が離せない展開が続きそうです。
1巻から続いた鋼人七瀬事件は終わり、7巻以降は短編集となります。
「喫茶店のカレー」「大蛇の夜も眠れぬ悩み事」「うなぎ屋の会話の真実」、の3本のうち、「大蛇の夜も眠れぬ悩み事」のエピソードを簡単にご紹介します。
水神様でもある大蛇は、最近夜も眠れぬほどの悩みを抱えており、それを岩永に解決してほしいと依頼してきました。
その悩み事は、大蛇の棲む沼に捨てられた他殺死体について。
事件としては死亡した男性についても、殺害した女性の名前も、動機もわかっており、ほぼ解決している状況。しかし大蛇は、女性の「うまく見つけてくれるといいのだけれど」という意味深な独り言を聞いていました。
山奥に死体を遺棄しにきたにも関わらず、見つけてほしいと願う女性の不安定な行動の意図を知りたいというのでした。
- 著者
- 片瀬 茶柴
- 出版日
- 2017-12-15
見所は、1つずつ解決を否定する大蛇と、それらに反論する岩永です。
神と崇められていた大蛇は、自身の発言や見聞きしたものに対して絶対の自信を持っており、彼女は1つ間違えば危ない状況に陥ったかもしれない状況。そこをあっさりと超えて、大蛇にとっても納得のいく、矛盾の無い解決を提示する、彼女の物語を作る能力はさすがの一言。
解決案はなかなかにエグい人間ドラマがあるので、一見の価値ありです。
本巻も前巻に引き続き、短編集となります。今回は「電撃のピノッキオ」「豆腐小僧の受難」の2本です。ピノッキオについての話が前後編となっておりメインでもあるので、そちらについてご紹介します。
事の始まりは海辺の町で起きた、魚の怪死事件です。
毒や外傷などはなく、ショック死の症状に似ているとの検査結果が出ます。怪異に呼び出されて到着した岩永と九郎ですが、なんとそこでは、電撃を放つ木の人形が夜な夜な暴れまわっていたのです。
- 著者
- 片瀬 茶柴
- 出版日
- 2018-04-17
見所としては、人形が暴れるに至った原因です。この人形は戸平善太という男性によって作られたもので、大きさは大人ほどのサイズがあります。長い鼻と、右手に埋まった石以外目立った特徴がなく、不気味な見た目です。
その人形を作った理由は、孫を轢き殺した大学生への復讐のためでした。彼の願いを打破すべく動く岩永ですが、電撃を放つうえに呪詛をかける人形は、壊す事も困難です。
果たして彼女は、無事に人形を破壊する事ができるのでしょうか?また戸平が復讐を決意した理由にも注目です。
9巻は、岩永の高校時代の話から始まります。
彼女はその美貌とドラマチックな生い立ちから周囲の注目を集めていたものの、凄惨すぎる過去を持つがゆえに周囲から距離を置かれていました。
しかしそういうことに疎いミステリ研究部の部長・天知学は、廃部の危機にあるミステリ研究部の人数合わせにしようと提案して……。
- 著者
- 片瀬 茶柴
- 出版日
- 2018-10-17
岩永の高校時代が描かれる「岩永琴子は高校生だった」はもちろん面白いのですが、9巻の見所は、何と言っても、「ギロチン三四郎」というエピソードではないでしょうか。
世間では「ギロチン殺人事件」が話題になっていました。それは骨董品や芸術品を収集している宮井川という男が義理の弟を口論のはずみで殺してしまい、そのあとに「本当に人間の首を切り落とせるのか試してみたかった」という理由で首を切断したと自供しているものでした。
しかしそこには真の犯人がいたのです。
そしてその物語を解き明かすと、似た価値観や感性を持つ友人たちの関係性が見えてきます。恐ろしい事件であるにも関わらず、心が動かされる不思議なエピソード。解決策も岩永らしく、心がすっとなる結末です。