飛べない鳥、ダチョウ。草食で天敵が多いにも関わらず、200万年前にはすでに現在と同じ種が存在していたそうで、非常に高い生命力をもっていることがうかがえます。この記事では、そんな彼らの生態や足の速さ、卵、人間との関係などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
ダチョウ目ダチョウ科に分類される鳥類です。オスの平均体高は2.5m、平均体重は120kg、メスの平均体高は2m、平均体重は90kgほどで、鳥類のなかで最大の大きさを誇っています。
野生下では4種類の亜種が現生していて、すべてアフリカ大陸に生息し、サバンナや砂漠地帯を好んで暮らしています。
大型でオスの首と大腿部が赤いのは「北アフリカダチョウ」と「マサイダチョウ」で、オスの首が灰色で脛骨の前側が赤いのが「南アフリカダチョウ」と「ソマリアダチョウ」です。また人為的に交配させた「アフリカンブラック」という種が存在し、日本国内で姿を見ることができる大半はこちらの種です。
階級のある群れを形成して暮らしていますが、そこまで知能が高いわけではないため、あまり高度な社会性は見られません。脳は約40gで人間の眼球ほどの重さしかなく、また皺がなくてツルツルだそうです。その一方で眼球は片目だけで60gもあることから、視力や聴力を頼りに生活をしているのかもしれません。
「竜骨突起」と呼ばれる、鳥が飛ぶために必要な部位が存在しないため空を飛ぶことはできませんが、走っている際に方向転換をするために、翼を舵のように使うことがあります。
彼らが生息している場所は天敵の肉食獣が多いですが、繁殖力と生命力ともに高いことから、野生での平均寿命は40年、長ければ80年近く生きる個体もいるようです。
平均で時速50km、時には時速70km以上のスピードで走ることができ、鳥類のなかで最速の足の速さを誇っています。これは陸上哺乳類でみても、チーターやサラブレッドに次ぐ速さだそうです。
さらに持久力もあるため、1時間ほどは最大速度で走り続けることができます。チーターが400mほどしか最高速度を出せないことを考えると、その凄さがわかるのではないでしょうか。
ダチョウの足は長さ100~120cm、爪先から踵までが30cm以上あります。指は2本しかなく、そのうちの1本は短く、もう1本は爪の長さだけで10cm以上あるという変わった形をしています。
また筋肉が発達していて、キックによる圧力は最大で4.8tにもおよぶため、ライオンなどの獰猛な肉食獣を蹴り殺す姿も確認されているそうです。
ダチョウの卵は、縦13~18cm、横10~15cmあり、平均で約1.5kgと鶏の卵のおよそ25倍の重さがあります。殻の厚さは2mmほどで、55kgの負荷まで耐えることができるそうです。
この分厚い殻を除いた総重量の約80~85%が内容物で、食べることが可能な部分です。約400gの卵黄と約800gの卵白で構成され、ビタミンAの含有量は鶏卵に劣るものの、アミノ酸やビタミン、ミネラルなどが豊富で、さらに脂質が少なく、栄養面でも優れています。
味は鶏卵に似た風味があるものの淡泊で、臭いもありません。ただ殻の薄膜に独特の生臭さがあるので、ダチョウの卵は臭いというイメージを抱いている方も多いようです。
半熟卵にするには45分、硬茹でにするには90分の調理時間が必要です。
実は人間の暮らしと密接にかかわっているダチョウ。まず、肉は鴨肉のような赤身でクセがなく、低コレステロール、低脂肪、低カロリー、さらに鉄分の含有量が多くヘルシーなことが特徴です。胸や手羽には肉がないため、可食部分は腰から太腿にかけての筋肉部分です。精肉として流通しているのもこの部位のみです。
また内臓も珍味として人気があり、首や脛からはよい出汁が出るため需要が高く、中国では足の裏の肉が高級珍味として扱われています。
また革はオーストリッチとして古くから親しまれており、ハンドバッグや靴、ベルトなどの服飾小物から、家具や車の内装にまで使用されています。
他の部位に関しても、脂肪から精製したオイルを使った化粧品や、羽を使用した扇子、爪を原料とした漢方薬など用途はさまざまです。牧草や廃棄予定の野菜といった低コストの飼料で飼育が可能なため、日本でも商業用のダチョウを家畜として導入するケースが増えているようです。
- 著者
- 塚本 康浩
- 出版日
- 2009-03-19
ダチョウの生命力はすさまじく、怪我や病気をしても自らの力で回復することができるそうです。作者で獣医学者の塚本康浩はそこに目をつけ、卵から新型インフルエンザの抗体を発見しました。
本書は、そんな彼のダチョウとの出会いや、研究の過程を綴った作品です。
新薬の開発、というと難しそうな印象を受けますが、その内容はダチョウがいかに「アホ」であるかという説明から始まり、塚本が通っていたダチョウ牧場のスタッフの雑さや、研究助手として指名された大学院生のキャラクターなど笑えるポイントが満載です。楽しく読み進めることができるでしょう。
顔面にダチョウの尿を浴びるなどのドタバタの末に、抗体を浸透させたマスクを無事開発させた話も興味深いです。その後も新たな治療薬を開発したいと意気込む作者の姿も印象的な1冊です。
- 著者
- ["おのき がく", "おのき がく"]
- 出版日
本書の主人公は、一息で1000mも走れることから、アフリカで「千」を表す言葉である「エルフ」と呼ばれるオスのダチョウ。彼が群れの子どもを守る姿を版画で描いた絵本です。
作者は、おのきがく。画家であり版画家でもある小野木学の別名義です。エルフのみならず、群れを襲うライオンやクロヒョウなどさまざまな動物たちが、躍動感あふれる描写で迫ってきます。
群れを守るためにライオンと戦ったエルフは、自身の象徴でもある足を1本失ってしまいました。走ることも、餌を探すこともできず、しだいに弱り、やがては周囲から存在を忘れられていきます。
弱者に転落してしまった彼が最後にとった行動に、読者はもしかすると悲しみや理不尽さを抱くかもしれません。また、一方でその勇気に憧れを抱くかもしれません。読後に感想を語り合いたくなる1冊です。
飼育のコストがかからないことから、肉が流通するようになれば食料難を解決する可能性を秘めているとされるダチョウ。もしかしたら今後、人間にとってもっと身近な動物になるかもしれません。