友達を作るというのは意外と難しいもので、人見知りともなるとハードルはかなり高くなります。ぼっち少女の奮闘記である本作は、もしかしたら友達作りの参考になるかもしれません。 この記事では、アニメ化も決定したゆるゆるなぼっち4コマ漫画を、全巻ご紹介いたします。ネタバレに注意です。
本作は一里ぼっちという、名前からしてぼっちな中学1年生の少女が主人公の4コマ漫画です。彼女は極度の人見知りであり、さらにあがり症でもあるため、自己紹介も満足にすることができません。
人と話をするときに緊張のあまり吐き気に襲われたり、足をつったりと身体的な症状が表れるなど、重度のコミュ障です。そんな彼女ですが、八原かいという友達がいました。しかし、中学進学にあたり、かいは私立中学へ通うことになって2人は離れ離れになってしまいます。
かいは、ぼっちが友達を作る努力をしなければならないと考え、彼女に「中学卒業までにクラス全員と友達にならないと絶交」とういう難題を突き付けました。彼女は約束を守って絶交を避けるために、中学校という新しい環境で、友達作りを始めるのでした。
- 著者
- カツヲ
- 出版日
- 2014-11-26
物語は、ぼっちが少しずつ友達を作っていく姿を描いています。彼女はコミュ障でネガティブ思考ではありますが、暗すぎることも重すぎることもありません。感情表現や行動のオーバーさはくすりと笑え、空回りしながらも頑張るその姿を、つい応援したくなります。
新しい学校やクラス、会社に行くとなったときに、なるべく早く顔見知りや友達を作らなければ、と考えたことは誰しもあるでしょう。人と話をすることが好き、という方は、あまり苦も無く環境と人に対応できるかもしれません。しかし、人見知りにはそれができないのです。
何を話そうか相手の出方を窺ったり、話題に悩んだりと、考えすぎてしまうこともしばしば。ぼっちは自己紹介で緊張しすぎて吐いてしまいましたが、そこまではいかなくても、人に話しかける時に緊張しすぎて噛んでしまったり、手汗が出てしまったりという経験をした事がある人もいるでしょう。
自然に話しかけ、盛り上がるような話題提供や、受け答えができない。コミュ力必須などといわれる昨今、彼女のコミュニケーションに対するネガティブ思考やためらい、緊張する気持ちに共感できる方は多いはずです。
やったことが無い物事を、誰しも最初から上手にこなせるわけではありません。彼女は、実質初めてとなる友達作りに奮闘しますが、気持ちとは裏腹に言動は斜め上になったりと、全てが順調にはいきません。
しかし一生懸命で不器用なところが可愛らしく、常に泣きそうな表情から、満面の笑顔になったときには、ほっこりと温かな気持ちになります。
本作はコミュ障で不器用なぼっちが、友達を作ろうと奮闘する姿を描いた作品です。彼女は中学入学時に友達0人。友達がいないという事自体がネガティブな情報であり、誰かとつながりたい社会という現代では、誰かにバカにされたり、いじめられかねません。
友達を作ろうと奮闘する、という本筋自体はかなり前向きです。しかし、連想されるイメージは若干マイナス寄りにな感じはいなめません。心配しながらページを捲る読者の方もおられるかもしれませんが、本作においてマイナス面の描写はほぼありません。
誰かがぼっちをいじめるということもなく、ただ不器用な彼女を戸惑いながらも見守り、受け入れていく過程が描かれています。キャラクターがとても個性的なので、突拍子もない言動が多く、笑える場面は多め。笑いはあっても誰かを貶めるものではなく、ほのぼのとした温かい雰囲気は変わりません。
一生懸命さが受け入れられる世界観があるからこそ、ぼっちが友達を作ろうと奮闘する姿を、読者も素直に応援し、心穏やかにその経過を見守ることができます。
中学校に進学し、自己紹介で緊張しすぎて吐いてしまった一里ぼっちには、ある目標がありました。幼馴染との約束を守り、クラス全員と友達になること。極度の人見知りでコミュ障のぼっちには高いハードルですが、さっそく友達を作ろうと行動を開始します。
- 著者
- カツヲ
- 出版日
- 2014-11-26
最初に話しかけたのは、前の座席に座っていた砂尾なこ。ジト目で金髪、素行が悪そうな見た目からか、どこか近寄りがたい彼女でしたが、ぼっちは一生懸命話しかけた結果、言葉が足らな過ぎてパシリ希望者と勘違いされてしまいます。
なんとかパシリでも友達にカウントされるのか、と斜め上方向に悩みつつも、ちゃんとした友達になろうとアクションを起こします。その結果、友達になりたいという気持ちが伝わり、晴れて友達関係がスタートするのでした。
中学入学から初めての友達、なこが誕生するまで、ほのぼのながら4コマ漫画特有の簡潔な疾走感があり、サクサク読み進めることができます。ぼっちがどういう性格で、どの程度コミュ障で人見知りなのかも、一目で理解できるでしょう。
冒頭からパンチ力がありますが、なこと一緒の傘をさして帰るシーンなど、とにかくにっこり笑顔になれるエピソードが満載。
副クラス委員長で、優等生っぽく振る舞おうと努力しながらも、残念な子と呼ばれる本庄アルなど、個性的なクラスメイトも登場。この彼女の残念エピソードは、特に可愛くておすすめです。
前巻では挙動不審な言動を見せながらも、なこやアルと友達になることができた、ぼっち。このまま順調にクラス全員に話しかけて友達関係を築ける、とまでは簡単にいきません。
あれだけ前向きだった彼女でしたが、本巻は冒頭から完全にネガティブ。学校に行きたくなくて、「熱出ろ」と天を仰ぎながら涙するところからはじまります。原因は国語の俳句発表。人に話しかけることはできるようになっても、人前での発表はまだ無理と、かなりおよび腰です。
- 著者
- カツヲ
- 出版日
- 2016-01-26
人前での発表に緊張しすぎて、結局は失敗してしまうぼっちですが、成長していないわけではありません。なことは普通に会話をしているし、冒頭で嫌がっていた発表も、なんとかしようと努力する姿が見られます。
とはいえ、1歩進んで2歩下がるというようなネガティブ具合は健在で、コミュニケーションに悩む姿を見ると、どこかほっとした気持ちになるでしょう。
ぼっちを忍者の師匠としていた海外からきた女の子、ソトカ・ラキターと正式に友達になったり、新キャラ倉井佳子が登場したりと見どころは満載ですが、なんといっても1番の見どころはプール。夏休みの予定のことで悩む姿もかわいいですが、女の子たちがプールではしゃぐシーンは、ニヤニヤ必至です。
友達が5人に増え、ほくほくのぼっち。しかし、新たな壁が立ちはだかります。それはグループ。彼女はアイドルと勘違いしていましたが、スマートフォンアプリ「LINE」のグループのことであり、同じグループに入ることで、より仲良くなれるのだと知ります。
悲しいかな、彼女はガラケー。スマホは2年生まで待ってと言われてしまいます。打ちひしがれる彼女に追い打ちをかけるように、進級するとクラスがえがあるという新たな問題が立ちふさがるのでした。
果たして彼女は関係を維持したまま、2年生を迎えることができるでしょうか。
- 著者
- カツヲ
- 出版日
- 2017-01-27
1年生も終わりに近づき、友達が増えたことで安心感のあったぼっちに、つらい現実を突きつける本巻。グループに関する個人の見解も見どころですが、新キャラクター、お嬢様の小篠咲真世や、双子の姉妹である二子乃咲、乃継とどのような関係を築いていくのかにも注目です。
なこやアル、ソトカの個性が強すぎて見落としがちですが、ぼっちが普通に友達を作っているという点にも注目。彼女を温かく見守り、その謎の言動に動じないこのクラスの懐の深さと世界観の優しさを、あらためて感じることができます。
なんと、クラス替えはありませんでした。ということで、友人関係を保ったまま進級することになったぼっち。1歩進んで2歩下がるというのは相変わらずで、冒頭から会話についての悩みを爆発させます。
この「面白い会話」の定義は、誰しも1度は悩んだことがあるのではないでしょうか。面白い会話をしようといろいろ考えすぎてしまう彼女に、なこが
「それは一方的に喋るだけで会話とは言えないだろう」
(『ひとりぼっちの○○生活』4巻より引用)
と優しく諭すシーンが印象的です。
- 著者
- カツヲ
- 出版日
- 2018-02-26
コミュニケーションについてさまざまな悩みを抱き、問題に体当たりでぶつかっていくなど、ネガティブなのに行動力のあるぼっちは、本巻でも新しい友達を作ろうと行動しています。
なかでも彼女に近い立場ともいえる不登校の生徒、布藤香とどう関係を作っていくのかが見どころ。クラスで1番の人気者、美奈川らうと香の絆に、涙腺を刺激されます。
そして、ぼっちたちと付かず離れずの距離を保っていた佳子との関係が、少しずつ変化。ぼっちの一生懸命さと行動力が、よい変化をもたらしているようです。
巻を追うごとにぼっちが成長していくところがわかり、親のような目線になってしまう本作。名前がキャラクターの特徴を表しているのも、面白いところです。くすりと笑えて、ほのぼのとして優しい世界観と、彼女の奮闘をお楽しみください。