5分でわかるハクチョウの生態!種類ごとの特徴や飛来地などを解説!

更新:2021.12.10

白い体で凛とした佇まいから、さまざまな物語のモチーフとなることも多い「ハクチョウ」。日本でも姿を見ることができる身近な野鳥でもあります。この記事では、彼らの生態や種類ごとの特徴、水に浮く仕組みなどを解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。

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ハクチョウの生態は?大きさや飛来地など

カモ科ハクチョウ属に分類される鳥で、北海道から九州までの幅広い範囲で見ることができます。オオハクチョウの体長は140~165cm、体重は8~11kg、翼開長は2mほどです。

真っ白な羽と黒い足をもち、嘴の先端が黒く、根本の部分が黄色いのが特徴だといえるでしょう。

ユーラシア大陸北部のシベリアで繁殖をし、10月頃に日本に飛来します。4月下旬頃には再びシベリアへと飛び立ち、V字形に編隊を組んで飛び続け、2週間ほどかけてシベリアに到着します。5~6月に4~7個の卵を産むそうです。

孵化したばかりの雛は薄い灰色をしていて、生まれた直後から親鳥の後ろを歩き、一緒に餌を探します。およそ2か月ほどで飛べるようになると、巣立ちをします。羽毛が白色へ変化するのは、2~3年後です。

寿命は野生下だと15年ほど、飼育下だと20~30年ほどです。

 

ハクチョウの種類ごとの特徴を紹介。コハクチョウやコブハクチョウなど

ハクチョウ属には7種類が分類されています。代表的なものを紹介しましょう。

コハクチョウ
体長は120~150cmと、オオハクチョウよりも小型です。白色の羽と黒い足、嘴もほとんど黒いのが特徴です。嘴の模様は生涯変わらないため、個体を見分ける際に役立ちます。

北極海沿岸の湿地で繁殖し、アメリカや中国東部、韓国、日本へと南下して冬を越します。

コブハクチョウ
体長は125~160cmほどです。白い羽と黒い足、オレンジ色の嘴で、名前のとおり嘴の根本に黒色の小さなコブのような突起物があります。

ユーラシア大陸や中央アジアに生息していて、デンマークでは国鳥に指定されています。本来日本には生息していない種のため、国内で姿を見られる個体は意図的に放鳥されたものや、その子孫です。

植物を食べてしまう被害が出ていて、侵略性のある外来種として愛知県内では放鳥が禁止されています。

クロエリハクチョウ
体長は100~125cmほどです。胴体部は白い羽、首と頭部は黒い羽毛という2色の体毛が特徴です。足は薄いピンク、嘴は灰青色で、嘴の根本に赤いコブのような突起があります。

南アメリカ南部の海岸や湖岸に生息し、雛を背中に乗せてつがいで行動する姿を見ることができます。

ナキハクチョウ
体長は150~180cmとハクチョウ属のなかで最大の種類です。北アメリカに生息しています。

羽は白く、黒い嘴に赤やピンク色の筋状の模様が入っているのが特徴です。またラッパのような大きな鳴き声をあげることから、英名は「Trumpeter swan」と名付けられています。
 

ハクチョウはどうして水に浮く?

ハクチョウなどの水鳥は、尻の近くに「油脂腺」があり、ここから分泌される油を羽に塗ることで撥水性をもたせています。羽毛のあいだに空気が溜まり浮き輪のようになることで、水に浮くことができるのです。

水草や水生昆虫などの餌を食べる際は、上半身のみ水中に潜っている姿を見ることができるでしょう。

水面を移動する時は、大きな足についている水かきを動かして前進します。加速する際は、翼を持ち上げて船の帆のように使う姿も確認されています。
 

黒いハクチョウ「コクチョウ」とは

羽の先端部以外は、全身真っ黒な「コクチョウ」。ブラックスワンとも呼ばれ、実はハクチョウの仲間です。嘴は鮮やかな赤やオレンジで、虹彩も赤い色をしています。

オーストラリアの固有種で、ニュージーランドやドイツ、イタリア、シンガポール、日本にも移入されています。

福島や千葉、神奈川などでは姿が確認されていますが、これらは飼育されていたものが何らかの理由で野生化したものだと考えられていて、繁殖力が強いために生態系に与える影響が懸念されているのが現状です。

オーストラリアで初めて生存が確認されたのは、1967年のことです。それ以降、起こり得ないはずのことや予期せぬ出来事のことを「ブラックスワン」と言うようになりました。
 

北海道で逞しく生きる姿をとらえた写真集

著者
竹田津 実
出版日
2007-02-01

北海道に集うオオハクチョウの越冬の様子をとらえた写真集です。作者の竹田津実は、長年北海道で獣医師として働きながら、野生動物の撮影をしてきた人物です。医師を引退した後も、さまざまな著作を発表しています。

本書では、つがいで寄り添う姿や、水面を蹴って飛び立つ姿などさまざなま姿を掲載しています。越冬地とはいえ極寒の北海道で吹雪のなか耐える姿など、大自然の厳しさも感じることができます。

生態をわかりやすく簡潔に説明した文章が添えられているのも魅力的で、児童向けではあるものの、世代を超えて魅了してくれる作品です。
 

美しいハクチョウを描いた絵本

著者
["内田 麟太郎", "いせ ひでこ"]
出版日
2003-07-26

文章は詩人の内田麟太郎、絵は画家の伊勢英子が手掛けた絵本です。

怪我をしてしまい、群れから離れてひとりぼっちになったハクチョウ。その姿に、小さな池が思いを寄せました……。

すべてひらがなで書かれた言葉と、青を基調にしたイラストがマッチして、どこかもの悲しい本作の世界観をつくりあげています。

傷ついたハクチョウを見た池が誰にも見えない涙をにじませること、ハクチョウに傷を負わせたキツネがひとり空を見上げる様子、そして池に癒されたハクチョウが空へと飛び立っていく姿……。静寂のなかに、他者を愛おしむ心を感じられる作品で、プレゼントにもおすすめです。

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