本作は爆弾を駆使して敵と対戦するゲームを、現実のものとして戦う人間達の命をかけたバトルロイヤルもの。2012年にはテレビアニメ化もされました。今回は、そんな本作の全26巻分の見所をご紹介します。 スマホの漫画アプリからは無料で読むこともできるので、ぜひご利用ください。
「BTOOM」とは、さまざまな爆弾を駆使して対戦相手と戦う、オンラインサバイバルゲームです。22歳の坂本竜太(さかもとりょうた)は、そんな「BTOOM」で、世界ランキング10位の凄腕プレイヤーでした。
しかし現実の世界では、定職に就かず毎日ゲーム三昧。引きこもり同然の生活をしていたので、一緒に暮らしている母親からは疎まれていたのでした。
そんなある日、彼はコンビニ帰りに何者かに拉致されてしまいます。気が付いた時、彼がいた場所は鬱蒼とした森や野生動物のいる孤島。そこで強要されたのは、同じように島に放り出された人間達と、なんと爆弾で殺しあうことだったのです。
それはまさに、「BTOOM」の世界を現実で再現したものでした。
- 著者
- 井上 淳哉
- 出版日
- 2009-10-09
本作の見所は、さまざまなタイプの爆弾と、その特性を活かした頭脳戦。そして生死をかけたサバイバルゲームのなかで主人公の坂本をはじめ、暗い過去を抱えたプレイヤー達の交流や成長も描かれていきます。
躍動感のある絵で表現されるバトルは迫力があり、序盤から引き込まれてしまうこと間違いなし。バトルロイヤルものが好きな方にとっては、序盤からぐいぐい引き込まれる作品です。
生死をかけた極限の状態を舞台にした作品では、登場するキャラクターの本性が描かれることが多々あります。本作でもそんな例にもれず、主人公の坂本をはじめ、さまざまなキャラクターの本性が描かれていくのです。
場合によっては心をぎゅっとつままれるような、人間の見たくない本性があらわになって、苦しくなることもあるかもしれません。
たとえば、坂本が島に連れて来られてからの初めての仲間である、平清。彼は一見すると人のよい中年男性ですが、島に来る前は誰も信用できないような生活をしていました。そのため島でも他人を信用するつもりはありませんでしたが、坂本に助けてもらったことをきっかけに、互いに信頼しあう仲間となります。
しかし、そんな信頼もさまざまな誤解の積み重ねで、再び崩壊。最後は坂本を裏切ってしまうのです。
1度は信頼し合った関係でも、疑心暗鬼にとらわれた人間は周りが見えなくなり、闇にとらわれてしまう……そんな人間の本性を、彼から読み取ることができるでしょう。
他にも父親から虐待を受け、殺し合いを楽しむ少年・吉良康介などの狂気じみたキャラクターや、友人を裏切ってしまったためにどこにも居場所を失くしてしまった少女・ヒミコなど、悲しみを背負ったキャラクターが本作にはたくさん登場します。
いずれも人間の暗い面があって、苦手な方は読むのがつらくなることもあるかもしれません。
一方、プライドが高く母親に悪態をつくこともあった坂本が、自分の身を危険にさらしても他人を助ける正義を見せるなど、人間として救われるような本性が描かれることも。良くも悪くも、人間の本性が描かれる作品なのです。
本作の作者である井上淳哉は、もともとゲームクリエイターとして活躍していました。そのためか、本作のキーワードでもあるオンラインゲーム「BTOOM」の仕組みや、それを利用した頭脳戦、心理戦などはとても緻密に描かれ、本作の見所ともなっています。
さまざまな爆弾を駆使したバトルシーンは序盤からくり広げられ、読者をぐいぐい引き込んでいきます。バトルの展開は先が読めず、飽きることがないでしょう。
一方、主人公達がどうして島に集められたのか、黒幕は誰なのかといったストーリーの部分はしばらく明かされることはなく、そういった点を楽しみにしている読者には少し展開が遅く感じられることもあるかもしれません。
しかし、序盤から次々に登場する敵や、さまざまな形の爆弾を駆使した戦法、ヒロインを襲う悲劇的な展開など、見所はたくさんなので、早く先が知りたくてページをめくる手が止まらなくなることは間違いなしです。
突如、拉致され謎の孤島へと連れ去られてしまった坂本竜太。物語は、引きこもり同然でオンラインゲームに没頭する彼が拉致され、そこで命をかけた本当の「BTOOM」を強制されるところから始まります。
物語の序盤は、この「現実版BTOOM」のバトルシーンやキャラクターの登場の話がほとんどで、そもそもこのゲームが何者の手で、どういう目的のもと作られたのかということはわかりません。
そのため、最初の数巻は、どちらかというとグロ描写やエロ描写が中心のバトル漫画として、楽しむことができるでしょう。
1巻では、まだ状況が飲み込めず、本来の力を発揮できない坂本。それでも積極的にゲームに参加して、戸惑いながらも敵に勝利をおさめるなど、冒頭から迫力のあるバトルを読むことができます。
爆弾での戦いなので、人体が破壊されるなどグロい描写も緻密に描かれており、苦手な方は要注意ですが、慣れている方にとっては満足度の高い描写になっているのではないでしょうか。
- 著者
- 井上 淳哉
- 出版日
- 2018-02-09
中盤からは、島へ連れて来られた人間達の過去なども描かれてくるので、最初はただの狂気じみた人間だと思えていたキャラクターにも、それぞれ感情移入できる場面が出てきます。
序盤では戦いに戸惑いを覚えていた坂本が、さまざまな人と出会うことによって覚悟を決め、本来の力で戦いに挑むなどの成長を感じることもできるでしょう。
他にも、坂本とヒロインのヒミコとの意外な関係も明かされ、恋愛要素も含まれてくるので、こちらも目が離せません。
序盤では明かされなかった「現実版BTOOM」とは何なのか、誰がどんな目的でおこなっているのかなどの謎も、中盤辺りからは少しずつ触れられるようになっていきます。それに伴いキャラクターも増え、ますます物語は複雑化。バトルの面白さに意外なストーリー性が加わってきて、なかなか先を予想することもできません。
中盤から終盤にかけては、まさにラストスパート。「現実版BTOOM」の黒幕や、坂本とラスボスの過去の因縁、そして島から脱出することができるのかどうかなど、ハラハラドキドキする展開がどんどん加速していきます。終盤はぜひ、コミックを揃えてから読んでみてください。
全26巻で完結する本作ですが、最終巻は、なんと2種類存在します。漫画作品としては珍しく、「Light 友情編」と「Dark 真実編」と2つのエンディングがあるのです。
ここではまず、「Light 友情編」をご紹介します。
- 著者
- 井上 淳哉
- 出版日
- 2018-08-09
こちらは、作者が「ハッピーエンド」として書いたものだそうで、確かに読んだ後はそれなりに晴れ晴れしい気持ちにもなれます。
坂本達の最後の敵として登場する人物は、坂本とは過去に意外な接点がある人物でした。その過去の因縁があって、坂本はその人物との闘いを避けられなくなってしまうのです。この人物の過去エピソードは、ストーリー上でかなり重要な部分なのですが、ここも分岐する2つのラストで異なっているうちの1つ。
「友情編」では、過去のエピソードには、坂本にも、敵となる人物にも、それぞれ誤解があって、どちらにも感情移入ができる要素があります。そのため敵という立ち位置でも根っからの悪人には思えず、そこが読後感の気持ちよさにも繋がっているのかもしれません。
他にも坂本やヒミコ、それにかつて幾度となく爆弾で戦いあった敵との共闘、ラストバトルの肉弾戦など、少年漫画的な熱さを感じることのできる部分も多くあります。
王道を感じさせる結末なので、安心して読みたい方にはオススメの最終巻です。
「Light 友情編」は、作者が読者のための「ハッピーエンド」を描いたものでしたが、もう1つの最終巻「Dark 真実編」は、作者の思う本当の結末を描いたものだそうです。
では最後に、「Dark 真実編」をご紹介します。
- 著者
- 井上 淳哉
- 出版日
- 2018-08-09
坂本が最後の敵となる人物と対峙する事実や、過去に因縁があったことなどは「友情編」と共通しています。
ただ、坂本と敵との過去エピソードは、「友情編」と大きく異なっており、読者としてもキャラクターに感じる気持ちがかなり違うものとなるでしょう。
「真実編」では、因縁といっても、どちらかというと敵となる人物の逆恨みに近いエピソードで、一方的な恨みによって坂本とのバトルに突入します。そのため坂本には同情できても、敵にはあまり同情できません。
「友情編」はどこか敵にも味方にも気持ちを寄せられる部分がありましたが、それがない分、ヒリヒリする緊張感のようなものを感じることができるでしょう。
それだけではなく、王道な結末を迎える「友情編」とは異なり、「真実編」はかなり意外な展開が続きます。特にラストにかけては怒涛の展開が続くので、衝撃を受ける方も多いのではないでしょうか。生き残るキャラクターも異なる結末は、人によってバッドエンドともハッピーエンドとも取れるものとなっています。
どう解釈するかは読者次第といったところでしょうか。
自分の予想を裏切る結末、王道じゃない最後を読みたい方にオススメの最終巻です。
いかがでしたか?ラストがゲームのように分岐するなど漫画では珍しい手法がとられているのも、作者が元ゲームクリエイターだからこそなのかもしれません。好みの最終巻を選んで、どちらかだけを読むのも面白いですし、両方の結末を楽しむのもよいでしょう。
最後はぜひ、ゲーム感覚も取り入れて楽しんでみてください。