「もうすぐ死ぬ動画」に映った人は、死ぬ。そんな噂のある動画に姿が映った少年・陸と、少女たち。陸に愛された1人だけが救われるというメッセージに、少女たちが生への執着と愛を見せつける本作。 しだいに狂気に満ちていく彼女たちの姿から目が離せない本作について、その見所を全巻ご紹介します。ネタバレ注意です。
幼馴染の少女と、憧れの少女に囲まれながら、普通な日々を送っていた小湊陸。ある日、転校生が目の前で死ぬ場面に立ち会ってから、彼らの平穏な日々はどんどん変わっていくことになります。
幼馴染、クラスのアイドル、生徒会長、気に食わない相手。この4人のうち1人の少女を「真実の愛」で選ばなくてはいけなくなった陸を待ち受けていたのは、大切な人の死と、狂気に歪んでいく少女たちの「愛」でした。
果たして「真実の愛」とはなんなのか。彼は愛の形を模索していきます。
- 著者
- 竹井 10日
- 出版日
- 2014-01-11
本作を一言で表すなら「愛」の作品。しかし、それは決して綺麗なだけではなく、純粋なものもあれば、打算もあり、またサイコパスでもある。そんな多種多様な愛が描かれていくのです。
相手を静かに思うだけが愛なのか、熱烈に思うだけが愛なのか。自分以外の女性を選ばせるのか……。「愛」という感情が複雑極まりない様子を、ポップに、サイコパスに描いています。
おそらく本作の1番の見所といえるのが、主人公の幼馴染・葉樹ではないでしょうか。もっとも狂気に満ちていて、ずっと陸を愛していた彼女。その愛は道を踏み外し、どんどん異常性を増していくのです。どうしようもないほど誰かを愛してしまえば、こういう風になるのではないかとも考えさせられます。
また本作はハーレム的要素もあるのですが、それが行き過ぎるとこうなるのではないか、とも思わされる作品です。どれもこれも突き詰めたような究極の要素が多く、愛と生への執着が究極まで達すると、人間はこんな境地にまでたどり着くのか、と考えさせられてしまいます。
作品自体は決して明るい内容ではないですが、そのなかでそれぞれが明るい未来を進んでいこうと模索する姿に、ほの暗いだけではない魅力を感じさせますね。
面倒見のいい幼馴染・米坂葉樹(よねさか はじゅ)、憧れのクラスメイト・紀勢莉子(きせい りこ)に囲まれながら楽しい学校生活を送っていた、高校生の小湊陸(こみなと りく)。ある日、3人のクラスに美しい転校生・姫新のどかがやってくることで、彼らの絆と友情が歪んでいきます。
本巻の見所はやはり、葉樹と莉子の友情が壊れていく場面ではないでしょうか。陸たちの周りでは、「もうすぐ死ぬ動画」というものが出回っていました。その動画に出てきた人物は必ず死ぬというもので、実際、彼らの前で動画に出てきたのどかは死んでしまったのです。
- 著者
- 竹井 10日
- 出版日
- 2014-01-11
その死を受けて、初めて動画の存在を知った陸・葉樹・莉子の3人。彼らが動画を確認していると、葉樹・莉子の動画がアップされるのです。そして動画の最後に、陸が真実の愛を捧げた少女だけが救われるというメッセージが……。
この動画が本物なのか、タチの悪いイタズラなのか判断しかねていた葉樹と陸ですが、そんな2人を尻目に、今まで陸に興味を示さなかった莉子が、やたら彼にべったりとするように。
彼女はもともと友人以上の気持ちを彼に持っておらず、葉樹の陸に対する想いを応援していたのですが、動画を視聴してからというもの、彼の好意を自分の向けようとするような行動ばかりが目立つようになります。
彼女の裏切りとも取れる行為に、葉樹は絶望したようで……。明るく元気だった葉樹は見る影もなくなり、そしてついに常軌を逸した行動を起こすことに。
物語冒頭の可愛らしさが一気に消えていく葉樹に、ぜひ注目したいですね。
生徒会長・札沼碧依(さっしょう あおい)と、何かと陸を目の敵にする伯備巫女兎(くび みこと)も加わり、計4人の少女の命を預かることになった陸。
碧依は動画メンバーに選ばれても態度を変えず、彼と協力して動画の謎を突き止めようとしますが、巫女兎は「絶対に生き残る」という意志のもと、今までとはまるで違う従順な態度で彼に擦り寄るようになるのです。
- 著者
- 晴瀬 ひろき
- 出版日
- 2014-04-12
そんな本巻の見所は、莉子・巫女兎、2人の思惑がうごめくところと、碧依と陸が動画の運営会社まで乗り込むところではないでしょうか。
まず、何かと陸に言いがかりをつけては喧嘩をしていた巫女兎は、自分に死の可能性があることを知ると、どんな手段を使ってでも選ばれようと、捨て身の体当たりをおこないます。潔すぎる手のひら返しは本当に見事で、彼女の生に対する執着の強さがうかがえますよ。
また、葉樹に大きな傷を負わされた莉子は、しばらくの入院ののち学校へと戻ってきますが、陸のことも葉樹のことも何も覚えていない状態でした。そんな彼女に接触した巫女兎が、彼女に言われたことは……。莉子もまた、強かな人間だと感じさせられる内容です。
そして、唯一動画そのものの謎を解こうとしていた碧依・陸コンビは、ついに運営会社へとたどり着きました。しかし、そこでは有力な情報は手に入れられず、得られたのは動画のサーバーオフィスの住所のみ。
数少ない情報を頼り、碧依と陸は動画の謎に迫ります。
ついに5人が揃い踏みとなった本巻。多少ぎこちなくても、今までのように過ごせればと、陸・葉樹・莉子は以前のように3人で行動します。そんな彼らを見守りながら、碧依は巫女兎とともに、サーバーオフィスへと訪れるのです。
- 著者
- 竹井10日
- 出版日
- 2014-09-12
本巻の見所は、巫女兎の気持ちの変化や、葉樹の異常性ではないでしょうか。まず、碧依とともにサーバーオフィスへ行くことになった巫女兎は、憧れ続けた碧依の心意気・性質に再び惚れ込み、自分が本当はどういう道へ進めばいいのかを、あらためて気づきます。
巫女兎は本作のなかでは、異常な葉樹や莉子、正常な碧依のちょうど中間にいるような人物。その態度の変わりようには驚きますが、それでも憧れている人の言葉で正常に戻れるところは好感が持てますね。
2人がサーバーオフィスを訪れているころ、陸は動画に上がっていたのに生き残ったという少女の元へと訪れます。まともな会話はできませんでしたが、彼女の言葉から、彼は生き残るための道を探ろうとしていました。
周りが少しずつ変化するなか、一向に様子の変わらない葉樹と莉子。一見まともそうに見えた葉樹は、節々でその異常性を発揮します。彼女は陸のことが好きすぎるゆえに、道を踏み外していくようでした。
しかし、この彼女のおこないがもとで、いがみ合ってきた陸と巫女兎は、互いに手を取り合うようになっていくのです。
友情を深めた陸・巫女兎のもとに、碧依の訃報が……。
陸は再び精神的なショックを受けますが、碧依を一心に慕う巫女兎の意志を聞き、動画の謎を解決するため再び立ち上がります。そしてついに、莉子・葉樹も動画の謎解明に動き出すことになったのです。
陸と巫女兎は、以前知り合った動画の運営会社の人間に連絡を取り、その制作元である大学へ行くことに。一方、生きるための努力を再びすることを決めた莉子は、陸たちと合流し、始まりの犠牲者・のどかの家で情報を集めることになりました。
- 著者
- 竹井10日
- 出版日
- 2015-05-12
そこで彼女は動画の黒幕に命を狙われますが、葉樹の手によってなんとか生きながらえることに。2人は偽物の友情を、再び育むことになったのです。このやりとりは、まるで女子の友情の裏側を見ているような気分になりますね。
しかし、利害が一致しただけとはいえ、再び一緒に行動することになる2人に、1巻の仲よさげな雰囲気が思い出されます。関係性はまったく別ものになってしまいましたが、強かで狂っている彼女たちの様子がよく伺えるようですね。
黒幕の住んでいるであろう建物を突き止めた4人は、ついにそこへと乗り込むことに。全てが終わったと思いきや、彼らは命をかけた脱出ゲームをすることになったのです。助かるのは2人。それ以外には死が待ち受けているという状況で、陸の下す決断は……。
最後までぞくりとするようなサイコパスな展開が続きます。最終回は、「ハッピーエンド」という言葉について考えさせられるような様子が描かれています。葉樹の最後の言葉にも注目です。
果たして「真実の愛」とはなんなのか。「愛の形」について考えさせるような本作は、終始狂気に満ちていながらも、紛れもない愛が見え隠れする作品となっています。ぜひ、ご一読ください。