本作は企業のM&Aを題材にした物語であり、実際に存在する事件をモデルとしています。そのため非常に細かく、そしてスリリングに描かれており、読む人を虜にします。過去には映画化や、ドラマ化もされました。 この記事では、そんな本作のあらすじから結末まで、詳しく解説。ぜひ最後までご覧ください。
『ハゲタカ』は、企業のM&Aを題材にした物語。主人公である鷲津は、ホライズン・キャピタルという会社で、日本企業のM&Aを手がけていました。しかしM&Aといっても、良好的なM&Aではありません。倒産寸前の企業の債券を破格の価格で債権者から買い取り、それの全額返済を求めるような買収です。
求められた企業は払えるわけがなく、オーナー社長は追い出されてしまいます。もちろん、身ぐるみは全て剥がされ、それを理由に自殺をする人まで出る始末。鷲津はその非道なやり方から、世間では「ハゲタカ」という異名で呼ばれていたのです。
そんなやり方ではありますが、彼はもちろん法律違反をしているわけではありません。違法スレスレのこともありますが、結果的に彼が手がけたM&Aは企業として命を吹き返し、日本経済に返り咲いているのです。オーナー経営者にとっては、彼は敵であるかもしれませんが、働いている従業員にとっては救世主でもあります。
そんな彼は、リン、アランとともに、狙った獲物は絶対に逃さない敏腕。徹底的にM&Aを仕掛けていきますが、その本当の目的は別のところに隠されていたのです。
彼の本当の目的とはいったい、何なのでしょうか。
- 著者
- 真山 仁
- 出版日
- 2013-09-13
本作はNHKでドラマ化され、大森南朋、柴田恭兵、松田龍平などが出演。また、このドラマから4年後には、大友啓史がメガホンを取り、映画化もされました。
作者である真山仁は、大阪府の出身で、同志社大学の法学部政治学科を卒業しています。最初は中部読売新聞社へ入社しましたが、その後フリーのライターとなりました。その後2003年に、『連鎖破綻 ダブルギアリング』で小説家デビューを果たすのです。
本作はシリーズ化されており、続編には『ハゲタカ2』や『バイアウト』、『シンドローム』という作品があり、どれも人気を博しています。
本作に登場する人物を、簡単にご紹介させていただきます。
日本でも一時期ハゲタカファンドという言葉の知名度があがり、該当企業はメディアに叩かれていたと記憶にある方もいらっしゃるでしょう。本作にも、実在するモデルが存在するといわれています。
鷲津率いるホライズン・キャピタルと同じような手法でビジネスをしていたのが、ニューヨークを拠点とする投資ファンド、コールバーク・クラビス・ロバーツ。この企業が生み出した買収手法が、LBOと呼ばれる将来の収益を担保に、手元の資金が不十分でも買収できるという手法です。
この会社は日本にもオフィスを開設しており、主に企業や不動産に投資をおこない、3〜5年で利益を回収するというスタイルで、ビジネスを展開しています。
鷲津のやり方が汚い、ずるいということを感じることもあるかもしれませんが、彼の手法はアメリカで生み出された実績あるノウハウなのです。
本作はストーリー展開がスリリングで、物語の世界にどんどん入り込んでいってしまうエンターテイメント的な側面があります。しかしそれだけではなく、経済の教科書としても参考になる本でもあるのです。
本作には、どんなことをおこなっていたら企業は倒産の道を進んでしまうのか、そして企業、経営者とはどんな存在であるべきかなど、鷲津から直接発せられることはありませんが、彼の行動や、ターゲットの情報から読み取ることができます。
さらに株式会社の仕組みや、M&A、企業再生の仕組みなどがストーリーに織り交ぜられており、どんな方法でお金が生み出され、市場を循環しているのかなどを学ぶことができるのです。もともと新聞記者をしていた作者だからこそ、書けるリアルで勉強になる内容となっています。
ここでは、本作に登場する名言、作者・真山仁の名言から、より作品の魅力が伝わると思えるものをランキング形式でご紹介していきます。
第5位
プロフェッショナルとは、自分の職責や技術が何かを理解し、
任されたことに対して落とし前がつけられる人。
まるで、本作の世界を言い表しているかのような、作者の名言です。鷲津に狙われた企業の経営者は、皆プロではありませんでした。自分の責任をどうにかして人のせいにしようとし、責任から逃れ、すでに地獄にいるのにまだ甘い蜜を吸おうとしてる人ばかりだったのです。
そのような人たちはプロとは呼べないと伝えたかったのかもしれません。
第4位
現状に不満があっても、とりあえず1度その枠の中で全力を尽くしてみる。
その経験はきっとどこかでいきてくるはず。
最初の名言に通じるところもあるような、作者の名言です。与えられた材料、環境で勝負することが、たとえその時の結果に繋がらなかったとしても、のちに経験として活きてくる。経験がある方も多いのではないでしょうか。ダメだったからすぐ諦めて表面だけを見るのではなく、まずは深堀してみることが大事だと言いたかったのではないでしょうか。
第3位
日本社会の最大の弱点は1つの価値観が真ん中に、
非常に強い勢力としてあることです。
でも多様性があるともっと生きやすくなるはずです。
すると可能性も変わる。
こちらも、作者の名言。日本はアメリカとは違い、皆が同じということを好みます。そのため、仁義や人情を大切にした商売もおこなわれており、結局は自分が苦しむビジネス手法も多いことは事実だといえるでしょう。
アメリカのように合理主義ばかりがいいとは考えませんが、違う価値観もあり、その価値観も検討したうえで生きていくのが、よい方法だと言いたかったのではないでしょうか。
第2位
弱肉強食の国際金融の世界で生き抜く最大の武器は、情報収集力です。
一つの情報は、時に数億ドルの金を凌駕するほどの力を持っています。
(『ハゲタカ』より引用)
情報過多の世の中で有利な情報を仕入れることは、非常に困難だと考えます。だからこそ情報1つで、天にもいければ、地獄にも落ちてしまうのです。日本人はその感覚に乏しく、そのため国際的な感覚を本作に盛り込むことで、世界のビジネスの状況を伝えたかったのかもしれませんね。
第1位
お前は正義のために死ねるか
(『ハゲタカ』より引用)
人は自分の信念と命を天秤にかけられたら、どちらをとるのでしょうか。本作では、自分の信念を取った人物の話が登場します。命が軽いものだとは作者も考えていませんが、命と同じように、自分の信念に責任を持つ仕事こそがプロだと伝えたかったのではないでしょうか。
- 著者
- 真山 仁
- 出版日
- 2013-09-13
鷲津は、どんどんM&Aを進めていきましたが、日光ミカドホテルが買収案件に浮上したとき、強制的に追い詰めるような買収をすることはありませんでした。彼は松平貴子に好意を持ってしまったのでしょう。
その理由はリンが彼をおいてニューヨークに行ってしまったことから、推測することができます。彼女は彼のために、日本に10年間もいました。捨てゼリフが「結婚する」です。しかし物語上では、彼は松平貴子への好意については深く言及していません。
そして、彼は日本に残り、さらに自分の復讐を遂げようとしました。実は、彼が日本でM&Aを進めている理由の裏には、個人的な復讐が隠されていたのです。その復讐の理由は、日本国家が関わっている隠し口座の存在。
いったい彼は、誰に、どのような復讐をおこなうのでしょうか。そして、その復讐は成功するのでしょうか。
復讐の悲しい理由が明かされ、鷲津の人間らしさを感じることができるでしょう。特に名言紹介の部bんでもご紹介した言葉が、彼の生きざまを表しており、心に響きます。詳しい物語の結末が気になる方は、ぜひ本編でお確かめください。