映画俳優・故松田優作の長男にして、今や日本映画界に欠かせない俳優となった松田龍平。彼の魅力はなんといっても、狂気をはらんだ人間から実直な一般人までを見事に演じ分ける圧倒的な演技力です。どこか飄々とした雰囲気と、訥々とした口調に惹きつけられますよね。 この記事では、松田龍平が演じた役柄と作品について紹介します。
松田龍平1983年5月9日生まれで、年齢は2020年6月現在37歳です。
身長は183㎝と長身。家族は父・故松田優作と母・松田美由紀。兄弟には弟・松田翔太、妹・ゆう姫という芸能一家に育ちました。2009年にモデル・女優の太田莉菜を嫁に迎え、2017年まで結婚生活を送り、娘が1人います。
子どもの頃はサッカーに夢中で、将来はサッカー選手を目指していましたが、中学3年生の時に大島渚監督が映画『御法度』の主演俳優を探している時にスカウトされます。高校受験を理由に一度は断りますが、監督から「受験が終わってからならどうか」と聞かれ、断る理由が見つからずに出演。これがデビュー作となり、1999年度の日本アカデミー賞をはじめとする新人賞を総なめします。
このことから、邦画への興味がわいて俳優への道を歩き始めます。
2002年の『青い春』出演を決めた時期に、高校に通う意味を見出せずに中退。この作品で出会った瑛太とは現在も親交が深いことで知られています。
俳優としてのスタンスは、台本をきっちり覚えていくことを重視せず、現場の雰囲気を大事にするということでも知られる松田龍平。飄々とした雰囲気の彼ですが、髪型や体型を役に合わせて様々に変化させる点からも作品にかける思いが強いことが分かります。
松田龍平が長らく映画やテレビドラマに引っ張りだこである理由は、その唯一無二の存在感にあります。
彼といえば、難しい役をこなしているイメージがあるでしょう。「まほろ駅前」シリーズでの行天や『アヒルと鴨のコインロッカー』での河崎は、冷たく怠惰な印象がありながら、やる気がないわけではないというアンビバレントな役です。また『青い春』の九條のように闇をはらんだ役もぴったり。
一方で、『舟を編む』の馬締、『劔岳点の記』の生田のような真面目であたたかな役もあります。「探偵はBARにいる」シリーズの高田のようなちょっと変わった普通の人、という役もとても上手です。
多様な人の心の一面を掬い取り、表現することができるオールラウンドプレイヤーの俳優はそう多くはいないでしょう。松田龍平という俳優は非常に稀有な存在だといえます。
また、あまりバラエティー番組に出演しないことでも、そのミステリアスさを深めています。人間はどこか謎めいたものに惹かれる生き物ですから、松田龍平はただ存在しているだけで私たちの心を惹きつけるのです。
そんな彼がロングインタビューやアーティストとの対談に応じ、出演作中の写真も収められた書籍が発売されています。当時キャリア15年を迎えた松田龍平を切り取った写真集になっているので、本当はどんな人なのかを知りたい方は、こちらのフォトブックをぜひご覧ください。
- 著者
- ["松田龍平", "キネマ旬報社"]
- 出版日
筆者が1番松田龍平が輝いていると感じたのは、『舟を編む』。大手書店に勤務する馬締光也が、仲間たちと辞書『大渡海』を作ってゆく物語。三浦しをんによる小説が原作の映画です。
この映画化作品で、松田は馬締光也を演じています。人間関係に不器用で実直。その真面目すぎる様子から変人扱いをされる彼が、辞書作りを通じて成長してゆくさまをみずみずしく描いています。
筆者の印象に残ったシーンは、言葉を集める「用例採集」を加藤剛演じる松本とともにファストフード店でおこなうシーン。そして、香具矢へ充てて書いた恋文を西岡に添削してもらうシーンです。コミカルで、しかし登場人物の性格や関係性がよく表現されています。
馬蹄を辞書編纂部署へスカウトするシーンも実に印象的です。一生の仕事となる辞書作りが、馬締と人々を繋ぎ、その中での変化が恋を育ててゆく様子は感動を誘います。また、松本の元に完成間近の辞書を持って走るシーンは、何度観ても涙が出るほどグッとくる瞬間です。
三浦しをんらしいみずみずしい文体で、辞書作りにかける人々を描いた原作は、読むものに勇気を与えてくれます。
ここからは彼の出演作を、古いものから順に原作とともに紹介していきます。彼が変幻自在の俳優であることが分かるとともに、原作の魅力についても再認識できるでしょう。
本作について紹介したセクションはこちらから。
松田龍平のデビュー作としてあまりにも有名な『御法度』。原作となったのは、司馬遼太郎による時代小説です。
近藤勇の書簡の中に、新選組で男色が流行して悩んだ記録があったことから着想し、司馬遼太郎が島原(京都の花街)通いで粛清された加納惣三郎という人物を主人公に書いたものです。もう1つの原作となった「三条磧乱刃」は、六番組組長・井上源三郎を中心とした作品です。新入隊士・国枝が井上の人柄にほれ込み、彼とともに剣術を謗った浪人たちの根城に切り込みをかける物語です。この新入隊士・国枝を加納に置き換えたものが映画に採用されています。
映画は、新選組に新入隊してきた美男剣士・加納惣三郎が、同期入隊の田代によって男色の世界に引き込まれてのめり込み、新選組の統制を乱した咎で土方歳三と沖田総司によって粛清されるまでを描いたストーリーになっています。
松田龍平はこの作品で、新選組の風紀を乱す元凶となる加納惣三郎を演じました。まだあどけなさが残る中にも妖しい魅力を存分に発揮。数々の映画館連の新人賞を総なめにしました。
司馬遼太郎の代表作のひとつともいえる作品で、いくつものエピソードがまとめられた1冊。テレビドラマ化も頻繫にされているので、読んでおいて損はない作品です。
- 著者
- 司馬 遼太郎
- 出版日
伊藤潤二によるホラー漫画作品です。
母とともに生まれ故郷に戻ってきた女子高生・みどりが出会う奇怪な出来事の数々。みどりは毎夜、不思議な夢に悩まされていました。そんな時、転校先で再会した幼馴染・龍介。昔と変わらない穏やかな彼が心の支えとなってゆくみどりですが、クラスメイトが次々と辻占の美少年の呪いと思われる死をとげます。そんな中、龍介が自分にしか見えていないことに気づいたみどりは、自分に起きた本当の出来事を知ることになる、というストーリー。
『富江』を代表作とする伊藤潤二による、ちょっと切ないホラー作品。映画は原作に忠実に制作されました。松田龍平は、みどりの幼馴染で幽霊の龍介を演じています。
- 著者
- 伊藤 潤二
- 出版日
村上龍による小説です。著者が激賛する広島カープ高橋慶彦遊撃手の肉体を軸に、野球を楽しむ普通の人々を描いたコミカルな作品。
映画は『走れ!イチロー』というタイトルで、大リーガーイチローの活躍に声援を送り、その姿に励まされた人々が自分の夢に向かって走り出す様子を描いています。松田龍平はこの作品で、グリーンスタジアム神戸の売り子のバイトをしている一浪中の望月竜介を演じています。
原作の要素がほとんどないというのも、大森監督らしい作品。原作は非常にコミカルで、村上龍の新たな一面が見られる作品です。
- 著者
- 村上 龍
- 出版日
松本大洋による漫画短編集です。男子校を舞台に展開する不良たちの物語で、若さが持つ危うさを生々しく切り取った作品です。
映画はこの短編集に収められた作品のうち、『しあわせなら手をたたこう』をベースとして、いくつかの作品を組み合わせて長編映画として制作されています。
松田龍平は、番長で孤独を深めてゆく九條を演じています。不器用な青木に対する特別な感情を、彼独自の訥々とした口調で表現しています。暴力シーンも多い作品ですが、それだけではなく、若者特有の危うさや切なさを表現しきった作品に仕上がっています。
原作漫画は、会話のテンポがよく、男子校特有の雰囲気をよく表現しているので、あっさりと読める作品。しかし、読後には若さがもつ残酷さや脆さが心に残り、何度も読み返したくなる作品です。
- 著者
- 松本 大洋
- 出版日
- 2012-01-14
村上龍による小説です。
東京都調布市を舞台に展開する6人の冴えない青年と、6人のバツイチ・オバサン集団の殺し合いを描いています。特に共通点のない若者・イシハラたち6人は、深夜に昭和の歌謡曲を歌うパーティーを開くことを楽しみにしていました。ある日、仲間の1人・スギオカが女性を殺害。彼女は「ミドリ会」というグループを作るうちの1人でした。スギオカへの復讐を誓うミドリ会の女性たちと、イシハラたちとの攻防を描いた作品です。
松田龍平はこの作品で、若者グループの中心的なメンバーであるイシハラを演じています。トカレフという銃から原爆まで、淡々と買おうとするイシハラ。原田芳雄演じる怪しげな金物店店主とのかけあいをユーモラスに演じています。昭和歌謡を歌う時の衣装にも注目したい作品です。
原作は実に村上龍らしい淡々とした語り口で、過激すぎるほどの内容を時にユーモラスに描いています。ミドリ会というグループを作る女性たちの描写も実におもしろく、村上龍らしい作品です。
- 著者
- 村上 龍
- 出版日
永井豪による漫画作品です。
体内に「空中元素固定装置」を内蔵した少女の姿をしたアンドロイド・如月ハニーの活躍を描いた作品です。犯罪組織のパンサークローとの闘いがメインとなり、ハニーをサポートする早見一家とのかけあいが楽しい作品。アニメ化され、2004年には庵野秀明監督で実写映画化されました。
松田龍平はこの実写映画に出演し、NSAクライアントとしてエンディングを含めて3シーン程度の出演をしています。友情出演ということもあり、気を付けないと見逃してしまうくらいの自然さで出演しています。
原作では女子高生として暮らしているハニーが、映画版ではOLとして登場。おにぎりが好物であったりと原作を踏襲しながらも、いくつかの違いがありました。
原作は、読み込んでみるとなかなか奥が深い作品。原作の詳細が気になった方は、こちらもぜひご覧ください。
<『キューティーハニー』は半年の連載で、なぜ伝説となれたのか?名作に関する7の事実!>
- 著者
- 永井 豪
- 出版日
- 2013-12-20
羽生生純による漫画作品です。
石で漫画を描く「漫画芸術家」を名乗る蒼木門と、OLを続けながらコスプレや同人誌の発行をおこなう「オタク」の証恋乃の恋のお話です。一風変わった出会いと恋の始まりをする2人。ある漫画新人賞をめぐって、勝負をすることになる門と恋乃、恋のライバル・毬藻田が登場。1週間後の期限に向けて、それぞれが作品制作にとりかかるのですが……?
原作は、社会経験が乏しい若者の葛藤を表現しきった作品で、勢いのある絵が特徴。映画では、いくつかの設定の変更はありながらも原作の世界観をポップに表現しています。
松田龍平は主人公の蒼木門を演じました。自意識が高く、性的なコンプレックスが強いキャラクターを時にコミカルに見事に演じました。
- 著者
- 羽生生 純
- 出版日
矢沢あいの代表作ともいえる漫画作品です。
新幹線で隣の席になる2人の「ナナ」。2人はひょんなことから同居することになり、様々な経験を共有していきます。歌を職業とすることを目指すナナが所属するバンドと、ライバルバンドとの関係を絡めながら、2人の少女の恋愛や自己実現の日々をみずみずしく描いた作品です。
映画化は原作におおむね忠実に制作され、松田龍平は主人公の1人・大崎ナナの恋人でライバルバンドに映る本城蓮を演じています。バンドマンらしく体型や髪型を変え、ライブで演奏する姿はカッコイイの一言。
原作はよく練られたストーリーとキャラクター設定が、矢沢あいらしくとても魅力的です。2009年以降、作者の急病のため休載中ですが、21巻まで刊行されています。読み始めると止まらない魅力にあふれた作品です。
原作の詳細が気になった方は、こちらもぜひご覧ください。
<漫画『NANA』登場人物の名言をネタバレ紹介!再開が望まれる名作!>
- 著者
- 矢沢 あい
- 出版日
- 2000-05-15
江戸川乱歩による短編小説です。
傷痍軍人である夫・須永中尉を虐待することで興奮する妻・時子と、彼らを監視する大家である鷲尾少将との物語。何をされても体を動かすことも叶わない中尉が、時子によって両目を潰された後に失踪し、彼を少将と時子が探すというストーリー。恐ろしくもなまめかしい雰囲気の江戸川乱歩らしい作品です。
映画は、オムニバス形式の『乱歩地獄』として制作されました。松田龍平は原作の鷲尾少将にあたる青年・平井太郎を演じています。夫への虐待を観察する青年を、独特の色っぽさを生かして演じ切りました。
いくつかの設定を変えながらも、おおむね原作に忠実に制作されており、ただ結末に至る理由が異なっています。乱歩作品の魅力である、サスペンスとエロティシズムの共存を堪能できる作品です。
- 著者
- 江戸川 乱歩
- 出版日
正木亜都による小説です。正木亜都は、梶原一騎と真樹日佐夫の兄弟による名義です。
監獄の中で出会った2人の青年・香月と有吉が心を通わせて行きますが、ある日、香月が殺害されてしまいます。有吉は密室殺人の謎を解くために、様々な男性に会うのですが……。
映画では、『46億年の恋』というタイトルに変更。関係性などは原作のままに制作されましたが、香月の首をしめている有吉という衝撃的なシーンから始まります。また、事件を捜査するのは刑事たちという変更がありながらも、明かされていく事実は原作のままです。
松田龍平は主人公の1人・有吉を演じ、彼の持つ複雑な事情を抱える者特有の危うさや、謎めいた雰囲気を見事に演じきりました。
原作は有吉の事情や心情を細やかに描写していて、読みやすい文体も手伝って読後は爽やかな気持ちが残ります。犯罪に手を染める少年たちの抱える悲しみを理解するのにも役立つ作品です。
- 著者
- 正木 亜都
- 出版日
映画監督でもある塚本晋也によるサイコサスペンス小説です。
他人の夢に入り込むことができる探偵に、女性刑事から依頼が入ります。彼女が担当しているのは、数件の変死事件。死者はいずれも夢を見ながら死んでいった可能性があることと、「ゼロ」という人物と死の直前に携帯電話で話しているという共通点が。2人は事件の真相を追い始めます。
松田龍平は主人公の探偵・影沼京一を演じています。人の心の闇に入り込み、揺れる探偵という難しい役どころを見事に演じきりました。原作のサイコスリラー要素を十二分に表現した作品となっており、ホラーが苦手な人にはあまりおすすめできないおそろしさ。
原作は読みやすい文体で、風景が見えるかのような表現が魅力的な作品。レイアウトも読みやすく、読者がその場にいるかのような感覚になる塚本作品の魅力が詰まっています。
- 著者
- 塚本 晋也
- 出版日
前作『悪夢探偵』の続編となる塚本晋也による小説です。
塚本作品としてはめずらしく、完全な続編となっているのが特徴です。今回の依頼人は、怖がりのクラスメイトが夢に出てくるため、眠ることが恐ろしくなってしまった女子高生。京一は助けを求められ、「助けてほしいのはこっちだよ」とぼやきながらも依頼人の夢の中に入ります。しかし、いつしかいなくなった女子高生が自分の母と似ていると感じ始めて……。
映画はタイトルを『悪夢探偵2』とし、松田龍平は主人公の京一を演じています。前作よりもさらに彼自身の事情に迫る切ない物語で鬼気迫る演技を見せています。前作はサイコスリラーに分類されますが、今作はヒューマンドラマとサイコスリラーを足して2で割ったような作品になっています。
原作は映画の世界観そのままに、切なさや特殊能力を持つ者の悲しみを表現。人物の心理描写が素晴らしく、読み物として大変読みごたえがある作品です。
- 著者
- 塚本 晋也
- 出版日
具光然による、焼肉をめぐる対決を描く史上初の焼肉エンターテイメント小説です。
人気テレビ番組の「焼肉バトルロワイヤル」で連戦連勝している大手焼肉店御曹司のトラオ。焼肉の達人といわれる老人の下で修行を続け、達人の店「プルコギ食堂」を切り盛りするタツジという2人の青年が見せる焼肉対決が愉快な作品です。
映画は『The焼肉ムービー プルコギ』というタイトルで制作され、松田龍平は主人公のタツジを演じています。九州のお店で働く青年らしく、九州の小倉弁で臨んでいます。
原作は焼肉にかける青年たちの思いがぎゅっと詰まった作品。白肉も赤肉もどちらも美味しそうで、読み終えたら焼肉を食べたくなる作品です。
- 著者
- 具 光然
- 出版日
伊坂幸太郎による青春ミステリー小説です。
大学に入学する椎名が、アパートの隣人・河崎に「本屋で広辞苑を盗まないか」と誘われるところから物語が始まります。結局断れずに本屋の襲撃を手伝ってしまう椎名。その後にアルバイト先の店長・麗子から2年前にアルバイトをしていた琴美にまつわる事件を聞かされます。その話を聞くうちに、椎名は自分の目の前にいる河崎は「河崎」ではないことに気づいていきます。
映画では、松田龍平は本物の河崎を演じています。無茶苦茶をやるけれど優しい、ある秘密を抱える河崎を、繊細な演技で表現しています。
原作は、椎名と琴美を語り部にして、語り部が入れ替わる方式で描かれています。優しくも謎が多く、それがラストに向けて明らかになっていく様子はもはや快感。悲劇を描いていますが、読後には爽やかな気持ちが待っています。
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2006-12-21
秋元康による小説です。
女子高生・あんずの親友である香奈が目の前で自殺し、その直前まで口ずさんでいた歌が気になったあんずが調査に乗り出していくストーリー。一方、「歌うと死ぬ」という都市伝説を調査する雑誌編集者・陸も、香奈の自殺の調査を始めていました。女子高生とともに調査を続ける陸ですが、ともに調査をしていた先輩編集者が謎の自殺をとげてしまいます。
松田龍平は、歌うと死ぬ「伝染歌」について調査を進める編集者・陸を演じています。不気味な出来事が続くなか、何かに突き動かされるように調査を進める姿は鬼気迫るものがあります。
原作は秋元康らしい読みやすい文体で、女子校から始まるおそろしい出来事を描いています。映画は原作に忠実に制作されたホラー映画。不気味でありながら脇役の大御所たちが時に見せるコミカルな演技で、恐怖を和らげてくれる作品に仕上がっています。
- 著者
- 秋元 康
- 出版日
真山仁による経済小説「ハゲタカ」シリーズのうちの一作です。
多くの企業買収を成功させてきた敏腕ファンドマネージャーの鷲津が、海外にその手を広げていくところから始まる物語。ある日、鷲津の元に盟友・芝野が訪ねてきて、中国系ファンドによる買収を阻止してほしいと依頼します。鷲津は芝野のリクエストにこたえられるのか、「赤いハゲタカ」と呼ばれる劉一華とは一体何者なのか?
NHKでのテレビドラマ化が大好評となり、映画はその4年後の世界を描いた作品。タイトルはどちらも『ハゲタカ』が採用されました。松田龍平はテレビドラマと同じく、IT会社社長から西乃屋旅館社長となった西野を演じています。淡々とした様子ながらも熱さを見せています。
原作は映画制作の時期に起きたリーマン・ショック前の作品で、大まかな設定は原作どおり制作されています。しかし、細かなところが違うので、テレビドラマや映画で作品のファンになった方にはぜひ原作もチェックしてほしい作品です。
原作の詳細が気になった方は、こちらもぜひご覧ください。経済小説の難しいところを、わかりやすく解説しています。
<真山仁が描くおすすめ社会派小説ベスト7!経済小説「ハゲタカ」シリーズ作者>
- 著者
- 真山 仁
- 出版日
- 2011-06-15
新田次郎による歴史小説です。明治時代末期、日本地図における最後の空白を埋めるためのプロジェクトが行われ、そのメンバーが経験した出来事を描いています。当時、未踏の地であった劔岳の測量の命令を受けた一行ですが、暴風雨、雪崩といった自然との闘いを未発達な装備でおこなうことになります。様々な困難に接しながら、勇気と信念をもって臨んだ男たちの物語です。
映画は原作に忠実に制作され、実際の劒岳や立山連峰で撮影を行っており、自然の猛威と美しさを十二分に魅せた作品となっています。松田龍平は生田信という測量チームの若いメンバーを演じており、生田の精神的成長をみずみずしく演じ切っています。
原作は史実と、綿密な取材によって書かれた重厚な作品です。歴史小説の中ではかなり読みやすい文体で、一気に読めてしまう魅力にあふれた作品となっています。
- 著者
- 新田 次郎
- 出版日
- 2006-01-10
小林多喜二によるプロレタリア文学作品です。
戦前にオホーツク海で行われた北洋漁業で使用された船で、漁獲した蟹を缶詰に加工するものを舞台に展開する物語です。様々な労働に関する法律が適用されない現場で、人間扱いもされなかった労働者たちが、権利意識に目覚めて闘う物語。
松田龍平は、蟹工船の乗組員でストライキの指導者となっていく新庄を演じています。新庄は現実を受け入れているかのように見えますが、ある時蟹工船が救助した外国人との交流で権利意識が覚醒。労働者を率いて雇用側に闘いを挑んでいくというカリスマ性をもった役どころです。労働者たちを鼓舞する姿は危うくも美しく、松田の新たな一面を感じさせます。
原作は小林多喜二の名作で、何度も舞台化、漫画化されています。多喜二の弱い者に対するあたたかな視線と、現実への怒りを感じられる作品です。
原作の詳細が気になった方は、こちらもぜひご覧ください。小林多喜二という作家の背景も含めて、本作品の内容がよく理解できます。
5分で分かる『蟹工船』!あらすじ、結末の意味までネタバレ解説!実話なの?
- 著者
- 小林 多喜二
- 出版日
花沢健吾による漫画作品です。
田西敏行の誕生日から始まる物語で、彼の人間的な成長を描いた作品。実家暮らしで彼女いない歴は年齢と同じという田西は、同僚の植村ちはるに恋をしているものの、積極的に話しかけることができません。そんな彼が誕生日前日にテレクラに行くことから物語が大きく動き出します。逃げるために、大事な人を守るために、そして生きるために、とにかく田西が走ります。
映画は田西の年齢など、細かな設定変更がありつつもおおむね原作通りに制作されました。松田龍平はイケメン営業マン・青山を演じています。表と裏の顔が違いすぎる青山を、憎たらしく演じ切っています。
原作は、若者の抱える悩みを見事に切り取って描き、動き出していくことから得られる成長を生き生きと描いた作品。男性からの支持が特に厚く、『このマンガがすごい!オトコ版』2008にも入選しています。
- 著者
- 花沢 健吾
- 出版日
- 2005-11-30
三浦しをんによる小説です。
便利屋を営む多田が、中学生時代の同級生・行天と暮らす1年間を描いた作品。様々な依頼が飛び込む便利屋で、多田は行天とともに仕事をしていきますが、やがてある事件に関わることで、それぞれの過去と向き合うことになります。
大人気シリーズの原作で、映画化・テレビドラマ化されています。そのすべてに永山瑛太とともに主演した、行天役の松田。肩下まで伸ばした髪と、「行天走り」と呼ばれる走り方が特徴的な行天を見事に演じきっています。
原作は三浦しをんらしい、小さな暮らしの中に潜むとんでもない人々を描き出した、痛快な作品です。ドタバタの日々の中で育ってゆく多田と行天の友情に、力づけられる読者は多かったはず。するすると読みやすく、あっという間に読み終えられる作品です。
- 著者
- 三浦 しをん
- 出版日
- 2009-01-09
東直己による小説です。「ススキノ探偵シリーズ」の2作目で、根城にしているバーにかかってきたコンドウキョウコからの電話で始まる物語。簡単な依頼のはずが、とんでもない事態に発展していきます。
映画は『探偵はBARにいる』のタイトルで制作され、松田龍平は主人公の探偵の助手で北大農学部の学生・高田を演じています。飄々とした雰囲気ながら素晴らしく喧嘩が強い高田。できることなら1日中寝ていたいという願いを持つ、けだるげな彼を好演しています。アクションシーンもキレのある動きを見せています。
原作はコミカルなシーンも多い作品で、ハードボイルド小説でありながら軽快な読みやすさ。映画ファンならぜひ読んでおきたい作品です。
- 著者
- 直己, 東
- 出版日
東直己によるハードボイルド小説です。「ススキノ探偵シリーズ」の5作目となります。
探偵とゆかいな仲間たちの1人・ゲイバーのマサコが惨殺された事件を調べ始める探偵。彼女が大物政治家と死の前日に会っていたことが分かるが、探偵と高田はヤクザに追われることに。マサコの死の真相を知りたいと言うバイオリニスト・河島弓子と協力して、調査を進める探偵ですが……。
映画化2作目となる今作は、『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』のタイトルで制作されました。松田は前作に続いて高田を好演。1作目よりもハチャメチャなアクションシーンに臨んでいます。
シリーズ全体として原作はユーモアを交えながら物語が進みます。マサコや弓子が抱える切ない事情を、哀愁たっぷりに描いています。
- 著者
- 東 直己
- 出版日
東直己によるハードボイルド小説「ススキノ探偵シリーズ」。
ススキノにあるバーを根城に働く探偵と、その助手が巻き込まれていく事件を描いた作品。この第1作『探偵はBARにいる』をベースに制作された映画です。タイトルは『探偵はBARにいる3』。命を燃やすものを探していた女性の生きざまと、彼女に巻き込まれた探偵と助手の物語です。
松田は今作も高田を好演していますが、今作の高田は前作よりも探偵のために自分が体を張るということを意識した動きをしています。大学の勉強のためにニュージーランドとの交流をすることになり、助手を解雇される高田ですが、結局は探偵のピンチに駆けつけます。その押し付けがましくなく、飄々とした雰囲気がいかにも高田らしいのです。また、ラストには高田は実はニュージーランドには行かず、札幌市の隣の江別市の大学でニュージーランドの農業を学ぶだけというオチも、いかにもこの作品らしいラストでした。
「ススキノ探偵シリーズ」は2020年までに12冊発売されており、どれも痛快な作品ばかり。映画ファンとしては次にもし映画化されるとしたら、を考えながら読むのも楽しいです。
- 著者
- 東 直己
- 出版日
湊かなえの短編集に収められている短編小説です。定年退職後の小学校教諭が、消息の分からない6人の教え子の行方の調査をかつての教え子に依頼するという短いストーリーです。
映画はこの短編小説を原案に、『北のカナリアたち』というタイトルで制作されました。ロケ地はすべて北海道。吹雪などの自然の猛威を受けながらの撮影となり、吉永小百合の「北の三部作」のラストを飾るにふさわしい作品になっています。松田龍平は、主人公はるのかつての教え子で島の巡査である松田を演じています。訥々とした口調の素朴な青年を好演しています。
原案となった短編小説は、短い中にも謎が散りばめられ、それがラストに向かって回収されてゆくラストにすっきりする作品です。
- 著者
- 湊 かなえ
- 出版日
- 2012-08-02
大ベストセラーとなった、三浦しをんによる小説です。
大手出版社に勤務する変人編集者・馬締光也が、風変わりな面々に囲まれて辞書『大渡海』作りに没頭していく様子を描いた作品。言葉を扱う視点が秀逸だと評価され、編集部の面々とのふれあいから成長してゆく馬締は、林香具矢という女性に出会って恋に落ちます。言葉を扱う仕事をしながら、彼女への思いを伝える言葉を見つけられない馬締ですが……。
松田龍平は主人公の馬締を演じ、生真面目であるからこそのおかしみを見事に表現しています。
原作は、冒頭は辞書作りに打ち込んでいた荒木の話。これが、馬締をはじめとする編集部の面々が辞書作りにのめりこんでゆく理由がよくわかる仕掛けになっています。読みやすく、あっという間に読み切ってしまえる魅力についてもあふれた作品です。ラストに収められた馬締の恋文全文も必見です。
- 著者
- 三浦 しをん
- 出版日
- 2015-03-12
いがらしみきおの漫画作品です。
お金恐怖症になってしまった主人公・高見武晴が、すべてを捨ててたどり着いたかむろば村で起きる様々な出来事。お金恐怖症になる高見と、彼をサポートするマイペースでほがらかな村人たちとの交流を描きます。独特のタッチで描かれる風景が美しい作品です。
映画はタイトルを『ジヌよさらば〜かむろば村へ〜』に変え、原作におおむね忠実に制作されました。松田龍平は主人公の高見を演じています。持ち味である飄々とした雰囲気がぴったりで、村長や村の神様、村長を狙う人物に翻弄される高見を見事に演じきっています。ちなみに、「ジヌ」とは「銭(お金)」を表現する方言です。
原作は、終盤に大きな事件が待ち受けていて、読者を驚かせます。のんびりした村に潜む秘密に向き合う村人の様子は必見です。
- 著者
- いがらし みきお
- 出版日
歴史家・磯田道史による評伝です。吉岡宿という宿場町を救った町人達の記録『国恩記』を基に執筆された作品です。
映画は、『殿、利息でござる!』のタイトルで制作され、阿部サダヲが主演。松田龍平は仙台藩の財政担当者である萱場杢を演じています。町人達の講じた策をバッサリ一蹴しますが、後に町人達の事情や想いを受けて彼らの提案を受け入れるなど、合理主義のように見えて人情味あふれる役どころを演じています。仙台藩主・伊達重村をフィギュアスケート選手の羽生結弦が演じたことでも話題になりました。
原作は、歴史ものとは言え、用語や当時の事情を平易な言葉で解説しながら物語が進むので、歴史小説初心者にも読みやすい作品です。
無私の日本人
2015年06月10日
北杜夫による児童小説です。
北杜夫自身をモデルに書かれた作品で、小学生の雪男から見たおじさんについてユーモラスに描かれています。職業は大学の臨時講師であるというおじさん。30歳を過ぎても兄で雪男の父の家に居候している不思議な存在。彼が見合いをしたり、ハワイ旅行に行ったりする出来事を描いた作品です。
映画は、見合い相手におじさんが一目惚れしてハワイに行くことになるなど、原作とは異なる部分があるものの、雰囲気は原作のまま。ぐうたらという表現がぴったりの雰囲気をまとうおじさんとの珍道中を描いています。松田龍平は雪男のおじさんを演じ、ぐうたらで屁理屈をこねる厄介なおじさんをイヤミなく演じています。
原作は、児童文学だけあってとても読みやすい文体です。精神科医でもあった北杜夫らしく、人間へのあたたかみがあふれた物語です。
- 著者
- 北 杜夫
- 出版日
最果タヒによる詩集です。
43編の詩が収められた本作品は、どれもみずみずしく紡がれた言葉が目の前に風景を想起させます。色とりどりの世界を紡いだ詩集です。
映画は、この詩集を原案に石井裕也監督が脚本に起こして映画化されました。タイトルは『映画 夜空はいつも最高密度の青色だ』。看護師で夜はガールズバーで働く美香と、日雇いの工事現場で働く慎二が、新宿で出会うことから始まるラブストーリーです。危うさを抱えて、生きづらさの中で悶えて生きる若者の抱えるをくっきりと切り取った作品。劇中、最果タヒの詩が随所で朗読されます。松田龍平は生きづらい2人を見守る智之を演じています。彼の静かな演技が光る作品です。
新進気鋭の詩人である原作者について気になった方は、こちらもぜひご覧ください。
最果タヒのおすすめ作品ランキングベスト5!注目される彼女の世界観
今回は最果タヒのおすすめベスト5です!圧倒的な世界観とオリジナリティ溢れる語感を持つ最果タヒ。彼女の作品は映画化もされ、その独特の作風に人気が高まっています。
- 著者
- 最果 タヒ
- 出版日
- 2016-04-22
劇作家・前川知大による人気舞台を書籍化したものです。
冒頭は、祖母が突然別人のようになってしまい、ショックを受ける女子高生に起きる残酷な事件。ついで、ごく一般的な夫婦だった加瀬家の夫・真治が、数日行方不明の後に別人のように優しくなって帰ってくるところから物語が始まります。別人のようになってしまった夫にどう対処したらいいのか戸惑う妻・鳴海ですが、世間では冒頭の一家惨殺事件から次々と不可解な事件が起きていました。事件を追うジャーナリスト・桜井はある出会いから、宇宙人による侵略が始まっていることに気づきます。一方、真治から「自分は宇宙人だ」と告白される鳴海は……?
映画は、原作の設定をおおむね忠実に制作。コミカルなところはそのままに、次々と起こる不気味な事件が鳴海達の生活を脅かしていきます。松田龍平は、記憶をなくして帰ってくる夫・真治でありながら宇宙人という役どころ。地球の常識や情緒が通じない宇宙人という難しい役ですが、「本当に宇宙人がいたらこうかも」と思わせるほどの演技を見せています。
原作は、とても読みやすくコミカルな心情描写が特徴。テンポがよいので、すぐに引き込まれて読破できる作品です。
- 著者
- 前川知大
- 出版日
山上たつひこ原作、いがらしみきお作画の漫画作品です。
過疎化解消のために、元受刑者を新規移住者として受け入れた町で起きる事件を描いた作品。殺人の元受刑者を受け入れるというショッキングな設定と、彼らを何も知らずに受け入れながらも、容易く綻びを見せる島民の親しさ。人の心の危うさと逞しさを描き出した作品です。
映画は、原作におおむね忠実に制作されましたが、移住してくる受刑者の数を原作の11人から6人に減らして展開していきます。松田龍平は、この作品の重要な存在となる元受刑者・宮腰を演じています。凶暴性と穏やかさが共存する不思議な存在を見事に演じきっています。
原作は、重苦しいテーマでありながらも、絵がポップなために深刻さを最初はあまり感じずに読める作品です。しだいに、そのポップさがかえって不気味さを表現する要素となっていくさまは圧巻です。原作の詳細が気になった方は、こちらもぜひご覧ください。
- 著者
- いがらし みきお
- 出版日
- 2011-11-22
将棋棋士・瀬川晶司の自伝です。
将棋のプロ棋士を目指した瀬川ですが、年齢制限で奨励会をやむなく退会。しかし、大学・会社勤めを経てもなお諦められなかった夢を実現させていくまでの物語です。
映画は原作に忠実に制作され、たくさんの本物のプロ棋士が出演したことや、RADWIMPSのボーカル・野田洋次郎が出演したことでも話題に。松田龍平は主人公の瀬川を演じ、泣き虫で将棋が大好きな姿を好演。プロにどうしても手が届かない時期の苦悩の様子も見事に演じ切っています。
原作は、瀬川による一人称で書かれ、読み手が感情移入しやすい作品です。冒頭の見開き2ページは、何度読んでも読者の胸を熱くさせます。
- 著者
- 瀬川 晶司
- 出版日
沼田真佑による短編小説です。
転勤で岩手県に移住した今野が出会ったのは、同い年の同僚・日浅。釣りや飲食をともにすることで、しだいに距離を縮めてゆく2人ですが、日浅と過ごす時間に遅れてきた青春を感じていた今野に何も言わず、日浅は突然会社を退職。しばらくして再会するも、一度開いた距離が縮まることはなく、そのまま音信不通になってしまいます。ある時、日浅が行方不明になっていることを知った今野は日浅を探し始めますが、そのうちに自分の知らない彼の裏の顔がどんどん見えてきて……。
映画は原作の雰囲気に忠実に制作され、松田龍平は今野の唯一の友人であり、行方不明になってしまう日浅を演じています。原作での日浅はどちらかというと感情に素直なタイプですが、松田はこれまでになかった感情を爆発させるタイプの役どころを見事に演じています。
原作は、とても短い作品ながら、LGBTの問題や東日本大震災、また人間の本質に迫る作品です。原作の詳細が気になった方は、こちらもぜひご覧ください。
<小説『影裏』3つの魅力をネタバレ解説!芥川賞受賞作品が2020年に映画化>
- 著者
- 真佑, 沼田
- 出版日
ここからは、テレビドラマのなかから原作があるものを紹介していきます。
どちらも真山仁による経済小説で、『ハゲタカ』の続編が『バイアウト』になります。
敏腕ファンドマネージャーの鷲津と、かつての銀行の上司である芝野との関係性や、彼らが不良債権処理や企業買収を行っていくさまを描いています。
テレビドラマでは、鷲津がファンドマネージャーになるプロセスから、芝野との対立、そして後半はIT企業の社長である西野が鷲津と大手電機メーカーの買収をめぐって対立していくさまを描いています。松田が演じたのはこの西野。鷲津を目標として起業家となり、そしてライバルへと成長してゆく様子を好演しています。
原作は経済小説ではありますが、難しい用語などは解説してくれているので経済小説初心者にも読みやすい作品です。『ハゲタカ』の原作の詳細が気になった方は、こちらもぜひご覧ください。
<小説『ハゲタカ』で経済が学べる!?目が離せないあらすじ、結末などネタバレ>
- 著者
- 真山 仁
- 出版日
- 2013-09-13
- 著者
- 真山 仁
- 出版日
島田雅彦による小説です。
自殺を決意した主人公の、ある金曜日から最期の金曜日までを描いた作品で、死ぬまで楽しく過ごそうとする喜多善男が出会うアクシデントの数々を描いたヒューマン・サスペンスです。
テレビドラマは『あしたの、喜多善男〜世界一不運な男の、奇跡の11日間〜』のタイトルで制作されました。1週間後に死ぬ予定だった原作ですが、期限を伸ばして11日後としている点などの違いがあります。松田龍平は喜多善男が楽しく自殺の日を迎える手伝いをする八代を演じています。キャバクラのスカウトマンらしく乱暴な言葉使いや態度をとるものの、いつしか善男に友情を感じ始め、自殺を止めようと目論む役どころ。ぶっきらぼうでちょっと乱暴な八代を、魅力たっぷりに演じています。
原作は、読みやすい文体と魅力あふれるキャラクターでとても読みやすい作品となっています。
- 著者
- 島田 雅彦
- 出版日
火坂雅志による歴史小説です。上杉家家臣の直江兼続についての伝記で、NHK大河ドラマの原作となりました。物語は川中島の戦いから始まり、直江兼続の生涯を描いています。天下人である織田信長、豊臣秀吉、徳川家康とも真正面からぶつかり、その存在には一目置かれる武将でした。
テレビドラマは妻夫木聡を主演に据え、原作に忠実に制作されたため、史実とはいくつかの違いがあります。松田龍平は独眼竜と恐れられた伊達政宗を演じました。眼帯をして刀を構えるシーンがあるのですが、その表情は父である故・松田優作とそっくりです。
原作は、テンポがよい文体で描かれているので、歴史小説初心者にも読みやすい作品です。原作の詳細が気になった方は、こちらもぜひご覧ください。今作だけでなく、直江兼続の理解を深められる作品を紹介しています。
- 著者
- 火坂 雅志
- 出版日
- 2010-04-09
今野敏による警察小説です。
主人公の宇田川には、公安に所属する蘇我という同期でライバルがいます。ある日、宇田川が狙撃されたところを助けてもらうのですが、その後、蘇我は突然懲戒免職になります。心配して彼の行方を探す宇田川ですが、上層部から圧力がかかります。そのうち、蘇我にはある殺人事件の容疑がかかります。警察組織に疑いを持たなかった宇田川ですが、初めてその組織に反抗することを決意。宇田川は蘇我を助けることができるのでしょうか。
テレビドラマは単発のスペシャルドラマとして制作され、松田龍平は主人公の宇田川を演じています。懸命に同期である蘇我の行方を探し、真相を突き止めようとする演技は鬼気迫るものがありました。
- 著者
- 今野 敏
- 出版日
- 2012-07-13
どちらも黒柳徹子による自伝エッセイです。
黒柳の幼少期を描いて大ヒットした『窓際のトットちゃん』の続編で、黒柳がNHKの放送劇団に入団して以降の出来事を描いています。森繫久彌や渥美清など、今は亡き名俳優たちの人柄を知ることができる貴重な資料とも言えます。
テレビドラマは『トットてれび』とタイトルを変えて制作され、松田龍平は最終話にプロデューサー役で登場しています。
原作は、テレビの生き字引と言っても過言ではない黒柳徹子が語るテレビの歴史。自伝エッセイですが小説風の書き方で、あっという間にその世界に引き込まれてしまいます。黒柳徹子を「この人は一体何者なのだろう」と一度でも思ったことがある方にはぜひ読んで欲しい作品です。
- 著者
- 黒柳 徹子
- 出版日
- 著者
- 黒柳 徹子
- 出版日
- 2016-02-27
朝井まかてによる歴史小説です。
葛飾北斎の娘で天才女性絵師・葛飾応為の知られざる生涯を描いています。葛飾北斎の三女として生まれたお栄は、絵を描くことが何よりも好きな女性で、ついには嫁ぎ先から父の元に戻ってきてしまいます。やがて、天才・葛飾北斎の絵を手伝い、高齢となった父の代わりに絵を描くように……。60代で名作「𠮷原格子先之図」を描き、1つの境地にたどり着くまでを描きます。
テレビドラマは『眩〜北斎の娘〜』というタイトルで、原作に忠実に制作されました。松田龍平は、主人公のお栄が密かに想いを寄せる幼馴染で、絵師の池田善次郎を演じています。お栄に近く遠く寄り添いながらも、放蕩無頼な彼は別の女性と結婚し、やがて絵師もやめてしまうという役どころ。お栄の心の拠り所となるつかみどころのない男性を好演しています。
原作は、女性絵師として葛藤を抱えながらも、絵を描くことだけを追い求めて生きたお栄をみずみずしく描いた秀作。歴史小説らしい重厚さはありますが、とても読みやすい文体です。歴史小説初心者にも読みやすい作品となっています。
- 著者
- まかて, 朝井
- 出版日
岩城宏士による漫画作品です。
普段はホームレスとして暮らす4人の殺し屋が、法律や国家が裁けない悪党を裁いていくストーリーです。ホームレスで実態がつかめないということで「煙」と表現される彼ら。「スモーキング」という名のチームを組んで仕事をしています。
テレビドラマは重厚なストーリーをそのままに、豪華なキャストで制作されました。松田龍平は日本を裏で操る政治支援団体の若きリーダー・榊原を演じています。どこかつかみどころがなく、表情をほとんど変えない榊原を見事に演じきりました。
原作は重厚なストーリーで展開し大人気を博した作品で、続編となる『スモーキング・サベージ』が2020年現在も連載中です。
- 著者
- 岩城 宏士
- 出版日
塩田武士による社会派小説です。短編の連作小説で、現役新聞記者、元新聞記者を主人公に誤報にまつわる物語を描いています。
連作小説それぞれにサブテーマがあることにも注目。「黒い依頼」は「誤報と虚報」、「共犯者」は「誤報と時効」、「ゼロの影」は「誤報と沈黙」、「Dの微笑」は「誤報と娯楽」、そして「歪んだ波紋」は「誤報と権力」となっています。主人公も変えてそれぞれのストーリーが展開します。
テレビドラマは、物語の舞台を神戸から横浜へと移し、5つの作品を1つの物語に仕立て直して制作されました。松田龍平は主人公の沢村政彦を演じています。自分が誤報を出してしまった政彦は、情報源である先輩記者を追いますが、思わぬ事態に巻き込まれていきます。真実を報じるべき立場で誤報を出し、苦悩しながら真実を追う役で鬼気迫る演技を見せています。
原作は読みやすい文体でありながら、読者の心に迫る作品を書く塩田武士ならではの内容。原作の詳細が気になった方は、こちらもぜひご覧ください。
<塩田武士『歪んだ波紋』の面白さを全編ネタバレ!NHKでドラマ化の原作小説>
- 著者
- 塩田 武士
- 出版日
- 2018-08-09
芥川龍之介による新聞社の上海特派員時代の記録を基にした作品です。
1921年、当時29歳の新聞記者・芥川龍之介は特派員として中国・上海に渡ります。憧れの理想郷のはずだった中国で、激動の時代に何が起きていたのかを芥川の視点で描かれます。
テレビドラマはスペシャルドラマとして『ストレンジャー〜上海の芥川龍之介〜A Stranger in Shanghai』というタイトルで制作されました。作家としてではない芥川龍之介像を、松田龍平は生き生きと、時にけだるげに演じています。中国の様々な風景の初見の演技は、まるで理想郷にやってきたという喜びを感じている少年のようでした。やがて見えてくる現実を受け止めて、苦悩する様子も見応えがありました。
原作は、芥川が当時感じたことをありありと綴った記録です。もはや歴史の人である芥川龍之介が生き生きと息づいています。
- 著者
- 芥川 龍之介
- 出版日
- 2001-10-10
【映画】
『御法度』(1999年) 原作『新選組血風録』収録の「前髪の惣三郎」と「三条磧乱刃」
『死びとの恋わずらい』(2001年) 原作『死びとの恋わずらい』
『走れ!イチロー』(2001年) 原作『走れ!タカハシ』
『青い春』(2002年) 原作『青い春』
『恋愛寫眞 Collage of our Life』(2003年)
『17才』(2003年)
『ナイン・ソウルズ』(2003年)
『八月のかりゆし』(2003年)
『昭和歌謡大全集』(2003年) 原作『昭和歌謡大全集』
『キューティーハニー』(2004年) 原作『キューティーハニー』
『IZO』(2004年)
『恋の門』(2004年) 原作『恋の門』
『NANA』(2005年) 原作『NANA』
『乱歩地獄 』「芋虫」(2005年) 原作『芋虫』
『ギミー・ヘブン』(2006年)
『46億年の恋』(2006年) 原作『少年Aえれじぃ』
『悪夢探偵』(2007年) 原作『悪夢探偵』
『悪夢探偵2』(2008年) 原作『悪夢探偵2 怖がる女』
『長州ファイブ』(2007年)
『世界はときどき美しい』(2007年)
『The焼肉ムービー プルコギ』(2007年) 原作『焼肉小説 プルコギ』
『アヒルと鴨のコインロッカー』(2007年) 原作『アヒルと鴨のコインロッカー』
『恋するマドリ』(2007年)
『伝染歌』(2007年) 原作『伝染歌』
『誰も守ってくれない』(2009年)
『ハゲタカ』(2009年) 原作『レッドゾーン』
『劒岳 点の記』(2009年) 原作『劒岳 点の記』
『劔岳 撮影の記 -標高3000メートル、激闘の873日-』(2009年)
『蟹工船』(2009年) 原作『蟹工船』
『SOUL RED 松田優作』(2009年)
『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(2010年) 原作『ボーイズ・オン・ザ・ラン』
『まほろ駅前多田便利軒』(2011年) 原作『まほろ駅前多田便利軒』
『まほろ駅前狂騒曲』(2014年) 割愛
『探偵はBARにいる』(2011年) 原作『バーにかかってきた電話』
『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』(2013年) 原作『探偵はひとりぼっち』
『探偵はBARにいる3』(2017年) 原作『ススキノ探偵シリーズ』
『I'M FLASH!』(2012年)
『北のカナリアたち』(2012年) 原案『往復書簡』所収の「二十年後の宿題」
『舟を編む』(2013年) 原作『舟を編む』
『麦子さんと』(2013年)
『ザ・レイド GOKUDO The Raid 2: Berandal 』(2014年)
『ジヌよさらば〜かむろば村へ〜』(2015年) 原作『かむろば村へ』
『モヒカン故郷に帰る』(2016年)
『殿、利息でござる!』(2016年) 原作『無私の日本人』所収「穀田屋十三郎」
『ぼくのおじさん』(2016年) 原作『ぼくのおじさん』
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(2017年) 原作『夜空はいつでも最高密度の青色だ』
『散歩する侵略者』(2017年) 原作『散歩する侵略者』(舞台が原作となり小説化と映画化)
『羊の木』(2018年) 原作『羊の木』
『犬ヶ島』(2018年)
『泣き虫しょったんの奇跡』(2018年) 原作『泣き虫しょったんの奇跡』
『影裏』(2020年) 原作『影裏』
【テレビドラマ】
『三億円事件〜20世紀最後の謎〜』(2000年)
『ハゲタカ』(2007年) 原作『ハゲタカ』『バイアウト』
『あしたの、喜多善男〜世界一不運な男の、奇跡の11日間〜』(2008年) 原作『自由死刑』
『誰も守れない』(2009年)
『天地人 』(2009年) 原作『天地人』
『いだてん〜東京オリムピック噺〜 』(2019年)
『同期』(2011年) 原作『同期』
『まほろ駅前番外地』(2013年)
『連続テレビ小説 あまちゃん』 第7週 - 最終週(2013年)
『トットてれび』 最終話(2016年) 原作『トットひとり』『トットチャンネル』
『営業部長 吉良奈津子』(2016年)
『カルテット』(2017年)
『眩〜北斎の娘〜』(2017年) 原作『眩』
『スモーキング』(2018年) 原作『スモーキング』
『獣になれない私たち』(2018年)
『歪んだ波紋』(2019年) 原作『歪んだ波紋』
『ストレンジャー〜上海の芥川龍之介〜A Stranger in Shanghai』(2019年) 原案『上海游記』ほか
今回は、松田龍平の人生の半分以上を費やしているキャリアについて、原作がある作品をメインにお伝えしてきました。紹介した原作は、どれも読みやすく、人間の心理をくっきりと浮かび上がらせる作品ばかり。ぜひ原作も手にとって、彼がどんな解釈でその役を生きたのかを感じてみてください。