世界で2番目に大きい鳥、「エミュー」。実は過去には、人間と戦争をしたこともあったようです。この記事では、彼らの生態や性格、子育ての仕方、飼育方法、「エミュー戦争」などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
ヒクイドリ目ヒクイドリ科エミュー属に分類される、世界で2番目に大きな鳥類です。体高は1.5〜2m、体重は40〜60kgほど。二足歩行で生活し、飛ぶことはできません。
オーストラリア大陸の全域に分布し、草原や砂地などの拓けた場所を生活の拠点としています。寒暖の差に強く、日本でも多くの動物園で飼育されています。
人間に対する警戒心はそこまで強くないですが、物音に対しては非常に敏感です。雷や金属音、子どもの高い声などがすると、驚いて走り回ることがあります。身の危険を感じた時は蹴りで攻撃することもあるので、近くにいる時は大きな音をたてないほうがよいでしょう。
オスとメスで異なる鳴き声をしているのも特徴です。オスは低く唸るように鳴き、一方のメスはドラムのような音で短く鳴きます。比較的容易に雌雄を判別することができるでしょう。
雑食性で、主な餌は昆虫や果実、種子、草など。体が大きいため食べる量も多く、農作物を荒らして害鳥として扱われてしまうこともあります。
寿命は20~30年で、鳥類のなかでは長生きだといえるでしょう。
子育てに熱心な父親のことを「イクメン」といいますが、エミューのオスはまさに動物界のイクメン。その様子を紹介しましょう。
彼らの繁殖期は11〜4月頃で、その間にメスは20個以上の卵を産みます。メスに複数のパートナーがいる「一妻多夫制」で、彼女たちは交尾をして産卵を終えると、すぐに次の相手を探しにいってしまうのです。
そのため、母親がいなくなってしまった卵の面倒はオスがみます。10cmほどの大きさの卵をあたため続けること、なんと7~8週間。飲まず食わずで、排泄もしません。
また孵化した後は、およそ7ヶ月間は雛鳥と一緒に生活をして、餌の探し方や捕り方など生きるために必要なスキルを教えます。
基本的には温厚な性格をしているエミューですが、この期間は警戒心が強くなり、たとえ母親であってもそばに寄せ付けません。使命感たっぷりに子育てに励むイクメンなのです。
温厚な性格をしているため、動物園などでも人気のあるエミュー。土地や環境さえ整えることができれば、個人でペットとして飼育をすることも可能です。自治体などへの許可は必要ありません。
1頭あたりの販売価格は、10~20万円ほど。生後1ヶ月以内なら5万円以下で売られている場合もあるようです。
大きい体でも動き回ることのできる、土と草のあるスペースが必用です。飛翔能力はないのでケージは必要ありませんが、逃げ出さないように柵や壁は作っておいた方が安心でしょう。また寒暖差には強いものの、雨宿りや体を休めるための小屋も必用です。体が大きいため排泄量が多く、掃除などの手入れは大変でしょう。
なんでも食べてしまう習性があるため、口にしてはいけないものは目のつかないところにしまっておきましょう。飢餓状態には強いですが、水は常に清潔なものを飲めるようにしてあげてください。
また、エミューを診ることができる動物病院は限られるので、迎え入れる前にきちんと下調べをしておくことが大切です。
1932年に、西オーストラリアで大規模なエミューの駆除作戦が実施されました。第一次世界大戦後のオーストラリアでは、農業が盛んにおこなわれていて、群れで押し寄せて農作物を荒らすエミューは害鳥として扱われていたのです。
現地の人たちは政府に対応策を求めます。通常であれば税金の優遇措置や損害の補償などがなされるところですが、相談を受けた国防大臣のピアースは、軍を使った駆除作戦を決行したのです。
そのため一連の対策は「エミュー戦争」と呼ばれています。これには、当時最新とされていた機関銃を試したいという思惑や、兵士たちの訓練の意味合いが込められていました。ところがいざ実戦となると、人間は彼らの力に圧倒されてしまうのです。
群れを待ち伏せして一斉射撃をするものの危険を察知されて逃げられ、約2万頭を対象に車で並走して射撃をしても、1000頭未満しか駆除できませんでした。
人間側に死傷者などが出たわけではありませんが、9860発もの弾丸を消費し、軍事費を無駄遣いしたと国民の批判を招く結果となりました。
- 著者
- 出版日
- 2015-02-06
実は世界中に約40種類もいるという「飛べない鳥」。彼らは空を飛ばないかわりに、さまざまな能力を身に着けています。
たとえばペンギンは海の中を縦横無尽に泳ぎ回ることができ、エミューやダチョウは力強く大地を駆けることができます。
本書では彼らの生態や生活を紹介し、「飛べる」鳥と比較をしながらその特徴を解説してくれる作品です。「飛べない」ということは鳥類として劣っているわけではなく、むしろ進化の結果だということがわかるでしょう。
- 著者
- ワクサカソウヘイ
- 出版日
- 2017-08-01
綺麗な鳥や美しい鳥を特集した図鑑は数多くありますが、本書は作者が「ゾクゾクする」鳥を集めたという図鑑です。
図鑑というと、分類や生態などが形式的に記されている印象がありますが、本書は一味違います。「ここがヤバい」という面白さを教えてくれる作品になっています。
作者のワクサカソウヘイは、文筆家。鳥類学者でも研究者でもなく、趣味としてバードウォッチングをしていました。それがある時から「鳥の脚」に着目して観察をすると、ゾクゾクとした快感を得ることに気づいたそうです。それ以降、脚だけでなくさまざまな視点で鳥たちを観察するようになりました。
彼の目線で、鳥類の新たな魅力に気付かせてくれる一冊です。