『八犬伝ー東方八犬異聞ー』で知られるあべ美幸の長編BL。「苦労性長男、超美形双子、野生児末っ子が贈る一筋縄じゃいかないトラブル・ラブ」という妄想広がる素敵なキャッチコピーでお馴染み(?)の、アニメ化もされた超人気作です。 今回は、BL初心者さんにもおすすめな本作の見所を徹底紹介!ネタバレを含みますのでご注意ください。
「母危篤」という知らせに騙され、幼少期を過ごしたカナダへやってきた海棠晴(ハル)を待ち受けていたのは、出自のわからない新生児・零(レン)。危篤のはずの母親・春子から「お前の弟だ!」告げられてから、晴と零の格闘の日々が始まります。
はじめこそ誰の言うことも聞かない零でしたが、正面から向き合い、必死に世話をする晴に対してしだいに心を開いていき、楽しい一夏を過ごします。しかし、そんな幸せは長く続きませんでした。ある悲劇が、晴を襲うのです……。そして5年後、物語は再び動き出します。
家族、兄弟、年の差、ショタ……一筋縄じゃいかないトラブル・ラブ幕開けの第1巻!
SUPER LOVERS 第1巻 (あすかコミックスCL-DX)
2010年07月31日
出生に秘密があり、施設から引き取られた零にとって、晴は初めて自分に優しくしてくれた存在です。何も持たない自分に対し、大きな愛情でさまざまなことを教え、与えてくれました。いつしか彼は、晴に対し「離れたくない」「一緒にいたい」という気持ちを抱き始めます。
しかし同時に、そんな優しさが「怖い」という気持ちも芽生えるのです。愛や優しさを知らない彼は、初めての感情に戸惑います。矛盾する気持ちの狭間で葛藤する幼い彼が、健気すぎてつらい……。孤独な子供であったゆえの悲しいところです。
そんななか晴は「一緒に住もう」という約束を彼に与え、日本に帰るのでした。その約束こそが、何も持たない零にとっての生きる意味になります。その約束を遂行すべく、5年後……。
なんと記憶をなくしていた晴は、ホストになっていました。舞台は大自然カナダから、東京・新宿歌舞伎町へ。晴、あのカナダでのキラキラした日々を思い出して!美形双子の亜樹(アキ)と蒔麻(シマ)も登場してドタバタな内容です。
どこかシリアスな雰囲気で展開される本作ですが、そんななかでも「家族」ならではの心温まるやり取りに思わずほっこりも……あれ?BL??ご安心ください。次巻こそBがLするはず……!
零の高校入学を機に、紆余曲折ありつつも、念願かなって兄弟4人での生活が始まります。引っ越し先の新居では、晴がカフェを開店させるということもあって準備に大忙しです。
引っ越しに、進学に、新しい友達に……と新しい環境に置かれながらも、零はいつもと変わらずマイペース。かのように思われていましたが、そんなはずありません!彼の内側には、いつだって激情が渦巻いているのです。
さらに、些細な出来事から晴と零は本音をぶつけ合い、そのことがきっかけで関係性にも変化が。BL的展開にムネアツの第2巻です。
- 著者
- あべ 美幸
- 出版日
- 2010-12-01
零は自分が「弟」であることと、「子供」であるという事実、そして晴が自分をそのように位置付けているということが、不快でたまらない様子。そこを抜けださないと、晴を自分のものにすることはできないと考えています。
家族ではなく、ただ晴が欲しい零と、家族という繋がりを大切にしたい晴のすれ違いがもどかしいです。1人で寝ることが寂しくてたまらないくらい、互いを求め合っているのに。べたべたくっついているくらいが2人にはちょうどいいのです。
落ち着いたかと思いきや、今度は晴の過去の女性の影が引き金となり、2人は衝突。「弟」のためではなく、晴が望むことをしてほしい。「弟」、「家族」を理由にしてほしくない。晴の望むこと以外してほしくないという気持ちをぶつけた零ですが、そのことによって、あることに気が付きます。
「弟」であるからこそ、自分は彼のそばにいられるのだということを……。そしてその結果、ただの「弟」でいることを決意するのでした。
家族や兄弟という関係性に守られていながらも、それに障壁を感じていた零の絶望感がひしひしと伝わって、胸が痛い内容です。
「お前が望むなら俺はただの『弟』でいる」と零に言わせてしまったことを気にしつつも、晴の日常は変化なし。しかしながら、そう思っていたのは当の本人だけでした。彼は、零が見えない壁をつくっていることを双子に指摘され、戸惑います。
一方の零には思春期特有の変化がおこり、何やら刺激的な展開も……!身体にも心にも変化が生まれ、さらに進展する第3巻。
- 著者
- あべ 美幸
- 出版日
- 2011-07-01
本音は胸に秘めつつ、今までのような関係性を保つ晴と零ですが、零が壁をつくったことで、互いのことをより考えるようになります。漠然としていた気持ちが明確になったことで、2人は再び急接近。前巻で、だいぶ締め付けられて苦しんだ胸が解放されます。
最大の見所は、なんといっても零の身体の変化でしょう。思春期の一大イベント、精通……!
これまでの生活環境で、性について触れることがなかった彼は、当然無知で無頓着。しかし、今回身体に変化が表れたことで、晴との行為もステップアップしていきます。
じれったい展開でここまで進んできたからこそ、この微エロの神聖さといったら半端じゃない!あまりの尊さに悶絶です。
さらに本巻では、美形双子の亜樹・蒔麻の関係性にも大注目!お互いのことが気になってしょうがない2人の微妙な距離感に、圧倒的双子萌えを感じます。さすが双子萌えの伝道師・あべ美幸先生といったところでしょうか。大満足の第3巻です。
晴と零の関係も少しずつ進展したと思ったら、今度は晴の実母・春子が突然来日するという知らせが入ります。再会を喜ぶ零をよそに、晴の気持ちは複雑です。
ところが、偶然自分の出生や身元の秘密を立ち聞いてしまったことで、零の様子がおかしくなってしまいます。さらに春子は、彼をスイスに連れていくと言い出し、またもやトラブルの予感です。
性について興味津々な零に周りも振り回されて、まだまだ苦労が尽きない第4巻!零の女装も拝めます!
- 著者
- あべ 美幸
- 出版日
- 2011-12-01
海棠家に春子がやってきたことで零はワンコ化しますが、晴が記憶をなくして大変だったころ、一度も息子に会いに来なかった彼女を亜樹は許しておらず、ピリピリとした空気が流れます。しかし、当時春子が「来られなかった」のにはわけがあったのです。
彼女の来日の目的とは?そして零の出生の秘密とは……?
この物語の主題の1つが、おそらく「家族」であるということが伺える本巻。家族関係が特殊で、いびつで、複雑すぎるからこそ、さまざまな家族の在り方が描かれています。感動必至です!
春子がスイスに帰国し、平穏を取り戻したかのように思えた矢先、今度は零に反抗期が……?「過保護すぎる」と突き放されて、晴はかなりスネ気味です。
さらに、晴によく似た怪しい男・ナツが登場!
落ち着く暇もなく、海棠家にまたもや次なるトラブル発生。波乱の第5巻です。
- 著者
- あべ 美幸
- 出版日
- 2012-08-31
零の世界はいつだって晴を中心に回っているけれど、晴の世界は「家族」が中心。それはわかっていても、やはり零はお子様扱いされることに不満を感じてしまいます。
晴が望んでいるのは、まだまだ手のかかる「子供」で、庇護が必要な「弟」の零。不安と不満は抱きつつも、晴のそばにいられるのならそれでいいはずだったのに……。強まる晴への恋慕が、零の気持ちを揺さぶります。
そして零は、晴に反抗するように秘密を作るのです。晴を突き放す零と、零の反抗に気分がよくない晴。ついに2人の関係に軋轢が生じる出来事が起こります。
少しずつ関係性が変わり始めていたのに、その一件以来、晴はまた「兄」の顔に戻ってしまいました。しかし、飢えているのはどちらも一緒。近すぎるからこそわからない・気づけない気持ちが、歯がゆくてたまりません。
ちなみに海棠家を引っ掻き回したのは、いとこの夏生(ナツオ)という男。彼にも後にカップリングの気配が……!?ということで要チェックです。恋のつらさと絶望を知る、ハラハラ展開に引き込まれます。
夏休み。相変わらず晴の周りに女性が群がっていることで、零のいら立ちは限界に達します。一方の晴も、なんだか様子がおかしい模様。不穏な空気の漂う第6巻です。
いったいどうすれば晴を手に入れられるのか模索する零は、奮闘した結果、今回も晴を掻き乱してしまいます。もはや本作でお馴染みとなってきたこの展開……が、しかし!この2人なら飽きるところを知りません。
- 著者
- あべ 美幸
- 出版日
- 2013-10-31
相変わらず晴のなかでは、子供のころの自分の影が消えていない……だったら自分が大人になればいい!というわけで(?)零は大人の階段を上るべく、夏生とのセックスを試みます。しかし、当然ながら晴を激怒させる結果に……。
そして、晴の様子のおかしさの原因は「時期」にありました。5年前の今頃、ある悲劇が彼を、海棠家を襲ったのです。
零が大切だからこそ、側にいたいからこそ一線を越えようとしない晴と、晴を自分のものにするための自信が欲しい零の、すれ違いが切ないです。ずっとそばにいられる関係は「家族」なのか、それとも……?
決して表情豊かとはいえない零の顔が、悲しんだり傷ついたりして歪むさまがあまりにつらく、胸が痛みます。その分ほうけ顔の破壊力たるや……ショタ好きさん必見です!
気持ちを確かめ合い、また1歩踏み出したじんわりくる展開です。
晴の「俺がお前のものになる」宣言から1か月。あれから零は晴に迫ることもなくなり、海棠家には再び平穏な日々が訪れていました。そんな時に、またしても夏生絡みのトラブルが発生。
夏生狙いの御曹司や、零に近づく天才児……登場人物も増えていき、怒涛の新展開から目が離せない第7巻です。
SUPER LOVERS (7) (あすかコミックスCL-DX)
2014年07月31日
夏生にとって、晴は強烈なコンプレックスそのもの。夏生に近づく謎の御曹司・橘(たちばな)に、その地雷を踏み抜かれてしまいます。新しいおもちゃを見つけたように迫ってくる橘は、かなり手強そう。
さらに、本人たちの知らないところで養護教諭・篁(たかむら)と夏生の意外な繋がりも発覚し、新カップリング誕生!?今後期待です。
一方晴の前には放っておけない女性・紀保(きほ)が表れます。年上で、美人で、不幸体質という、亜樹曰く「兄貴の好み」の女性の登場に、なんだかひと悶着ありそうな予感です。
同時に零の周りでもトラブルが発生。突っかかってくる天才児とバトル!?あっちでもこっちでも新展開、大忙しの内容です。
なぜか自分に敵意をぶつけてくる同級生、天才児の榎本(えのもと)へのいら立ちを募らせながらも、卒業後の進路についても悩む零。思春期かつ成長期の心と体は、どんどん変化していきます。
そんななか海棠家では、何者かによって営むカフェが破壊されるという事件が起こります。これは誰の引き金なのでしょうか?
それぞれの思惑や事情が複雑に絡み合う、第8巻。
- 著者
- あべ 美幸
- 出版日
- 2015-08-01
相変わらず零に突っかかってくる榎本ですが、なんと彼の継母が紀保であることが判明。こちらも複雑な家庭の事情があるようです。家族がいながら独りぼっちの榎本と、血の繋がりがなくとも家族に愛される零。相反する2人がわかりあえる日は来るのでしょうか……。
また、児童心理学者で英語教師の古高(こだか)と関わったり、榎本に絡まれるようになってから、零の心に変化が生まれます。今まで感じることのなかったある感情が、彼を支配するのです。
晴が怖い。
その恐怖心は、「嫌われたくない」という気持ちから来るものでした。周りから見た自分を知ったこと、客観的に自分を顧みたことで、これまでは意識してこなかったことを気にするようになります。普段は年寄りのようだと形容される零ですが、年相応な感じがしてとても可愛らしいです……。
カフェを荒らした犯人も意外な繋がりから浮上し、盛りだくさんの内容です。
思春期真っただ中の零は、性について……とりわけ男同士のセックスに興味津々。晴はそんな末っ子に振り回される毎日を送っています。ある朝、零に寝込みを襲われて怒ったものの「お前はやるのになぜ俺がやってはいけないんだ?」とド正論をぶちかまされる始末。
まだまだ子供だと思っていたのに、いつの間にかいろんな意味で成長していく零に、晴は困惑します。兄の思う以上に、弟の感情は複雑化しているのでした。
くすぶる気持ちにドギマギする第9巻です。
- 著者
- あべ 美幸
- 出版日
- 2016-04-30
いつものイチャイチャの最中「こんな中途半端な慰め合いじゃなくて本気のヤツ」があると言って、晴が墓穴を掘ったおかげで「本気のセックス」に興味津々の零。性行為自体どういうものなのかよくわかっていないのに、またしても晴を煽るのでした。
学校ではヤギ部発足!そして部員には榎本の姿も……。彼と殴り合いの喧嘩をしたせいで、晴を怒らせる事態へと発展してしまうのです。本気で怒らせてしまったことで、捨てられる不安に苛まれる零の弱々しさに、胸が締め付けられます。
そんな彼の様子のおかしさを悟った晴の「愛してるよ 零」の重みがすごい!晴の愛を受けながらも、いつだって不安な零にとって、このシンプルな言葉こそが魔法の一言なのです。
本編は糖度高め。番外編では、貴重な双子ストーリーも描かれて大満足の内容です!
さまざまな出会いやトラブルが続いたものの、なんとか日々は優しく過ぎていきます。家でも学校でも、零の周りや本人には、徐々に変化が見られるようにもなりました。
出会いから8度目の夏を目前に、2人に再び忍び寄るのは……?最後は急展開、ときめきとハラハラの第10巻。
- 著者
- あべ 美幸
- 出版日
- 2017-01-01
押してダメなら引いてみろ、という夏生のアドバイスを実行した結果、思惑通り一歩前進したものの「恥ずかしさで死ぬ」目に遭うことにあった零。頭がいいのに学習しない彼を、ついつい微笑ましい目で見てしまいます。指を突っ込まれて泣いてしまう彼が、犯罪級にかわいい……!
セックスはしてみたいけれど、それが何かはちゃんとはわかっていない模様。「本気のセックス」までの道のりは長そうです。
そして晴も25歳を迎え、幸せに終わるはずだった誕生日に事件が起こります。なんと、彼は救急車で運ばれてしまうのでした。
幸せな日々から一転、急展開!ハラハラが止まりません!
日常の優しさやあたたかさ、恋のときめきや辛さが丁寧に描かれる本作。じれったい展開が続きますが、このジリジリ感もなかなか癖になります。海棠家の行く末を永遠に見守りたい……。今後も大注目の作品です!
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