せきしろのおすすめ本5選!俳句やラノベ、小説となんでもできる天才作家

更新:2018.10.9 作成:2018.10.9

構成作家として活躍するせきしろ。独特の無気力さが光る文体で人気を博しています。また作品の映像化や、又吉直樹・西加奈子など著名人との共著など話題も尽きません。この記事ではそんな彼の作品のなかから特におすすめのものを5つ紹介していきます。

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せきしろとは

 

1970年生まれ、北海道出身の作家です。幼い頃からラジオが身近な存在にあり、小学生時代には自作もしたとか。バンド音楽やアイドル、プロレスなども好んでいたそうです。

高校を卒業できることがわかると、上京。この頃から深夜ラジオにハガキの投稿をするようになり、ハガキ職人としての道を歩みはじめます。

やがて伊集院光がパーソナリティを務める番組で構成作家として修行。圧倒的なユーモアが評価され、さまざまな芸人へコント脚本を提供するようになりました。また雑誌「SPA!」で連載を担当したほか、コラムニスト、文筆家としての活動も開始。ハガキ職人を続けたなかで鍛え上げられた文章力には定評があり、エッセイが東海大学の入試問題に使われたこともあります。

2006年に初めて発表した単行本『去年ルノアールで』はテレビドラマ化されたほか、お笑い芸人の又吉直樹、バッファロー吾郎A、作家の西加奈子など著名人との共著も多数。小説やエッセイだけでなく、自由律俳句や短歌などにも挑戦し、日本文学の可能性を広げると期待されています。

 

せきしろのデビュー作「無気力文学」の決定打『去年ルノアールで 完全版』

 

主人公の「私」が、喫茶店ルノアールで客や店員たちの様子を眺めながら妄想を膨らませていく「妄想エッセイ」という新ジャンル。せきしろのデビュー作です。

どこにでもあるようなありふれた光景なのに、彼が活字にするとなぜか面白くなる……「無気力文学」と評された一冊です。

 

去年ルノアールで 完全版 (マガジンハウス文庫 せ 1-1)

2008年12月05日
せきしろ
マガジンハウス

 

2006年に発表された初版に、16本の書下ろしを加えた完全版です。

「私」が毎日ルノアールを訪れ、ぼーっと人間観察をします。やがて妄想と現実が入り乱れ、シュールな場所に着地。この妄想がとんでもなくぶっ飛んでいるわけでもなく、言い得て妙なポイントを突いているのが魅力でしょう。

「無気力文学」というのもそのとおりで、読者にとって何か大きいものを残してくれるわけではありませんが、それでも何となく本書を手放せなくなってしまうのがせきしろの凄いところです。ちょっとだけ奇妙な世界観へ惹きこんでくれる文章力もさすがでしょう。

せきしろという名を広めたデビュー作、彼の作品を読んだことが無い方はまずこちらをどうぞ。

 

せきしろの本領発揮!妄想エンターテイメント『妄想道』

 

主人公の前川は、廃墟ビルで開催される「妄想道大会」に出場することになってしまいました。

出場者は全部で8人。1対1のトーナメント式で、出されたお題からどちらがより面白い妄想を発表できるか競うのですが……。

 

著者
せきしろ
出版日
2009-10-30

 

登場するのは、妄想四天王や謎の組織、老婆など。ひたすら妄想を突き詰めていきます。ただ妄想「道」と銘打っているだけあって、中途半端な妄想ではありません。あちこちに伏線が張り巡らされ、臨場感のあるスピーディーな展開を楽しむことができます。

ライバルたちとの勝負の行方はどうなるのでしょうか。

まさに「くだらない」が誉め言葉。妄想でお腹いっぱいになります。本書を楽しめる人は、せきしろにハマっているといってよいでしょう。

 

せきしろと又吉直樹の自由律俳句集『カキフライが無いなら来なかった』

 

お笑い芸人「ピース」の又吉直樹。『火花』で芥川賞を受賞し、作家としても活躍しています。本書はそんな又吉とせきしろの2人が手掛けた、自由律俳句集です。

「自由律俳句」とは、五・七・五の形式にとらわれず自由な韻律でよむ俳句のこと。季語や切れ字などを使う必要もなく、口語調なのも特徴です。

 

カキフライが無いなら来なかった (幻冬舎文庫)

2013年10月10日
["せきしろ", "又吉 直樹"]
幻冬舎

 

「登山服の老夫婦に席を譲ってもよいか迷う」
「電気のヒモが長ければと布団で思う」
「遅刻が確定した電車で読書」
「現地集合現地解散なら行く」(『カキフライが無いなら来なかった』から引用)

たった1行で、情景をありありと思い浮かべることができるでしょう。もともと俳句は言葉のスケッチといわれているので、その遺伝子を忠実に受け継いでいます。

自由に短文を書いているように見えて、いずれも情景の切り取り方や言葉のチョイスが秀逸。タイトルになっている「カキフライが無いなら来なかった」も、見た人それぞれにイメージが浮かぶのではないでしょうか。

合間に挿入されているエッセイと、どこか哀愁ただよう著者近影も本書の魅力を引き立てています。続編として『まさかジープでくるとは』も発表されているので、気に入った方はぜひあわせて読んでみてください。

 

拗らせた思春期を描いた短編集『学校の音を聞くと懐かしくて死にたくなる』

 

せきしろが自身の経験を交えて、学校に関する物語を綴った短編集です。

思春期真っただ中の男子生徒の日常が描かれていますが、同年代の方よりも、とうにその時代を過ぎてしまった大人が読むと、ノスタルジーに押しつぶされて悶絶してしまいそうな内容になっています。

 

著者
せきしろ
出版日
2012-10-01

 

クラスのスクールカーストの、真ん中よりも下の方にいた少年。拗らせた自意識が邪魔をして、他人から見たらどうでもいいようなことを気にしすぎたり、せっかくのチャンスを取りこぼしてしまったり……。

思わず、切ない共感と痛々しい笑いが出てしまうかもしれません。むずがゆく、同情したいけど苛立ちを覚えてしまう人もいるでしょう。

帯に「ライトノベル」とありますが、苦くて甘い「青春小説」として読むこともできる一冊です。

 

ハガキ職人せきしろの原点『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』

 

友人とお笑い芸人になることを目指し、高校を卒業して上京した主人公。しかし友人と別れ夢を断念し、孤独になった彼は、深夜ラジオにハガキを送ることで自分の居場所を見出そうとしました。

同じくハガキ職人だったせきしろが描く、「自伝的小説」です。

 

著者
せきしろ
出版日
2017-06-28

 

本書には、芥川龍之介の『トロッコ』の描写がたびたび出てきます。おもしろいことに夢中になったり、仲のよい友人ができたりして調子に乗ると、ふいに梯子を外されるように裏切られる……この感覚を「トロッコ感」と表現しているのです。

大小の裏切りを経験しながら、主人公はハガキの投稿を続けます。パーソナリティの好みを探ったり、コーナーの分析をしたり、はたまた郵便事故の可能性を考えたり。1度でも番組にハガキを出したことのある人は、読まれた時の高揚感や不採用だとわかった時の落胆などに共感できるでしょう。

「何者」にもなれない自分に苛立ちながらも、居場所を求め、少しずつ進んでいこうとする主人公。ラジオ好きはもちろん、生きることに孤独を感じている人や、他人との関係に悩んでいる人にもおすすめの一冊です。